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これからの弁護士像-”弁護士の都鄙問答”紹介

平成22年12月19日(日):初稿
○「弁護士会館有料相談激減-弁護士も淘汰時代突入実感」を続けます。
法務省HPの「司法試験第二次試験出願者数・合格者数等の推移」の通り、旧司法試験最終合格者数は、昭和24年の265名から始まり、昭和37年に459名となり平成元年の499名までは、500名前後の時代が長く続きました。この時代は合格率は、昭和49年から1%台に低下し、国家試験の最難関で、中国の科挙に喩えられました。試験が難しいがその分合格後の身分は超エリートでした。裁判官・検事は勿論、弁護士になっても弁護士数が不足していましたので、いわば金の卵で就職先に苦労するなどあり得ず、独立開業してもさしたる営業努力もせず食える時代でした。

○その理由は、当時の弁護士には①独占(法律事務独占)、②寡占(少人数での独占)、③競争排除(価格統一、宣伝・広告禁止)という3大特権が与えられていたからで、そのお陰で正に「殿様商売」でも成り立っていました。そしてこのことを、多くの弁護士は、俺たちは、難しい試験を受かったんだから当たり前と思い、更に俺たちは「社会正義と人権」の擁護者でいわば世の指導者であり、普通の商売とは違う特別の存在だとも思っていました。私自身も、この特権に守られ実にいい商売だと思っていましたが、反面、こんな厚遇はいつかはなくなるとの危惧も持っていました。

○そして、平成13年2月に仙台弁護士会会報に「これからの弁護士-三大特権喪失の時代に備えて」との表題の記事を掲載し
私は昭和55年4月から弁護士業務につき、間もなく21年を経過する。この21年間、弁護士業務はサービス業としてみる限りは実に恵まれていると思い続けてきた。
(中略)
三大特権の運命は、風前の灯火の状況である。10年先には3大特権で厚く保護された時代は、古き良き時代として懐古の時代となることは確実となった。

と述べていたとおり、現在の状況は来るべきものが来ただけと認識しています。従っていたずらに「古き良き時代」を懐古し、その時代に戻って欲しいなんて思っても仕方なく、「普通の商売」になった弁護士業でも何とか食えるべく努力をするしかないと覚悟しております。

○この覚悟を支えるべく私が畏敬する弁護士マーケッティングのエキスパート横浜のO弁護士のニュースレターから「弁護士の都鄙問答」を紹介します。「石田梅岩」、昔、日本史で習いましたがその思想内容など忘却の彼方でした。ウィキペディア等で調べてみましたが,大人物です。O弁護士は、平成19年5月22日、東京弁護士会主催春季弁護士研修講座で「弁護士独立開業マーケティング」との表題で講演をされており、平成22年12月にはその講義録が発刊されるはずです。

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本年もいよいよ最後のニュースレターになりました。そこで今回は、今後の弁護士のあり方について、私の考えを書いておきます。

都鄙問答(とひもんどう)というのは、江戸時代の大思想家、石田梅岩の代表作です。「都」の思想家である梅岩が、「鄙(いなか)」の頑迷固陋な人たちの考えを論破していくという内容ですね。経営者の聖典として、長いこと商人たちに読まれてきました。
田舎の人たちが信奉していた思想というのは、つまるところ、当時の支配階級である武士に都合のよい思想だったわけです。武士は「義」のために存在していると持ち上げる一方で、商人は「利」のことしか考えないと貶めます。

こういった、「武士だけが偉いんだ!」という思想に異議を唱えたのが石田梅岩です。梅岩は、商人の活動が、社会のためにどれほど役立っているのかを根拠づけたんですね。商人が売買で利益を得るのは、武士が俸給を得るのと同じで、なんら恥ずべきことではないと主張したわけです。商人が、自由な競争の中、物やサービスを提供することで、売手も買手も社会も利益を得るのだと教えました。
武士の支配する時代が終わって、既に百数十年たっています。石田梅岩の思想は、多くの人たちには当たり前のこととして受け取られてきました。しかし、未だに商人蔑視の思想を持った人たちがいるのです!!

弁護士や税理士といった、最後に「士」が付く職業は、サムライ業と呼ばれているんですね。特に弁護士について言えば、江戸時代のサムライ達と、非常に似ていると気が付きました。

江戸時代のサムライは、雇い主から俸給を貰って生活していたわけです。弁護士の場合、少し前までは弁護士需要に比べて、国家が供給を制限していました。従いまして、開業すればある程度の仕事が来て、生活できるのがあたりまえでした。お上が、弁護士の数を制限していたからこういうことが出来たわけですから、まさに俸給を貰うのに匹敵しますね。

俸給を貰って生活する中で、競争して利益を得るのは悪いことだという考えが、弁護士の中では息づいています。自分たちは商人のような悪どい金儲け!をするのではなく、世のため人権のために働いているという、「サムライの論理」です。

最近はご承知のように、弁護士の数がかなり増えてきました。そうした中で、少し前まではあたかも「俸給」のように貰えていた報酬も、貰えなくなってきたわけです。これからは、普通の商人と同じように、自由に競争して、稼がなくてはいけないのです。こういう事態に直面し、多くの弁護士の、「商人蔑視」思想が噴出しています。「おれたちサムライに、私利私欲しか考えない商人と同じことをさせる気か!」というわけです。

私は、これからの弁護士は、良き「商人」になるべきだと考えています。そして、「商人というのは、私利私欲のかたまりではない。自由競争のもと、お客様に喜んで頂ける物やサービスを提供する、立派な生業なのだ!」という「企業の常識」を、少しでも多くの弁護士が理解するようになれば良いなと思っているのです。

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