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第16回業革シンポ海外視察旅行感想-仏弁護士事情等

平成21年 6月 9日(火):初稿 平成21年 6月14日(日):更新
「第16回業革シンポ海外視察旅行感想-独弁護士事情等」を続けます。ドイツの弁護士事情は相当厳しく、弁護士で食えなくてタクシー運転手をしているとの話もさほどオーバーな表現ではないことを実感してきましたが、それでも弁護士が多すぎて大変だなんて弱音は吐かず、創意・工夫・努力で稼ぐ弁護士は稼いでいることに感激し、私自身まだまだ創意・工夫・努力が不足していることを痛烈に自覚させられました。

○次に訪れたフランスでも、「第16回業革シンポ海外視察旅行5日目-元パリ弁護士会長」「第16回業革シンポ海外視察旅行6日目-仏弁護士養成状況」記載の通り、弁護士事情はドイツ程厳しくはありませんが、日本に比較し遙かに厳しい状況です。それでも人数制限すべきなんてことは言わず創意・工夫・努力の継続で生き生きと活動していると実感させて頂きました。

フランス訪問第1日目元パリ弁護士会長のお話を聞いた後、次の法律事務所訪問まで時間があり、フランス大審裁判所を見学しました。お昼時でしたが、裁判手続き中の法廷が結構ありました。その中で刑事事件があり、訪問団と通訳の弁護士の11名で法廷に入ると若い廷吏がズカズカと近い付いてきました。何か文句を言われるのではと思ったら、携帯の電源を切るように指示されただけでした。先進国は公開裁判が大原則であり法廷傍聴も自由に出来るはずですが、携帯の電源切り位は指示に従って然るべきです。

○この法廷見学で驚いたのは、裁判官、検察官、書記官等主な裁判スタッフが全員女性だったことです。男性は若い廷吏くらいでした。刑事裁判でしたが、当事者席に2人座っており、その後ろに法服を着た弁護士が座っていました。共同被告事件かと思いましたが、そうではなく、被告人(加害者)と被害者がそれぞれ弁護人をつけて対座していたとのことでした。刑事事件で民事の損害賠償事件も一気に片をつける手続のようでした。弁護人はいずれも男性でしたが、フランスでは女性の社会進出程度は相当高いようです。

○フランスではパリ弁護士会で元弁護士会長からフランス弁護士事情全般について、パリ弁護士養成学校で弁護士養成制度全般についてのお話を伺い、その合間に3つの法律事務所を訪問し、弁護士個人から自らの業務内容等についてお話を伺いました。その中で印象に残った話しは以下の通りです。

・最近はインターネットの発達と普及で依頼者自身の情報取得も早く、ネット情報を超えた専門化である弁護士へからの情報取得のための質問が増えており、且つ迅速な回答が要求されて、その要求に応えるために多くの勉強が必要で実際常に新しい情報取得を心がけている。

・1980年頃のパリの弁護士数は3000~3500名だったと思うが、2009年現在は2万2000人に増えた。しかし弁護士数が増えれば増えるほど増えた弁護士が新たな仕事を開拓し、その相手方の弁護士も必要になり弁護士需要が増えるから、弁護士は稼げるようになる。2人のパートナーでやっているというこの弁護士さんは、年間売上の具体的数字を上げてくれましたが、結構稼いでいるようです。

・専門登録は、無いよりはあった方が良いと言う程度で余り重視されてない。専門分野を持つのも良いが、特定の分野しかやっていないと全体を見通しが出来なくなりミスを犯す危険が生じるので、専門化であると同時にゼネラリストでもある側面が必要である。

・弁護士職務範囲が拡張されつつあり、従来出来なかった不動産売買仲介なども弁護士職務として出来るようになった。スポーツ選手の移籍交渉なども弁護士の職務に含める動きがある。

・共同事務所にするのは、色々な分野の専門家が集まり、依頼者の要求に広く応えることが出来るようにするためであり、また病気等になっても、相互に一定の報酬を保障することで、連帯感と安心感が生まれる。


○昭和51年(1976年)当時の弁護士数は日本1万0735人に対しフランス1万1869人でさほど変わりませんでしたが、平成21年時では日本約2万8000人に対し、フランス約4万8000人で2万人の差がつきました。平成21年時人口は日本が約1億2715万人に対しフランス6234万人で半分ですから、人口比では、フランスの弁護士数は日本より遙かに多いことになります。

○それでもフランスの法律事務所は余り派手な宣伝はしておらずまた弁護士倫理意識も日本と同様、ある面では日本以上に強い様に感じました。しかし弁護士も破産し、失業保険も受給し、食えずに妻に養って貰っているなんて例も珍しくなく、他の普通の職業の人々と余り変わらないと言う割には、訪問した事務所の弁護士の方々は、収入も高いように推測され、またそれほどマーケッティングに汲々としている感じは受けず、何となく優雅で余裕があるようにも感じました。

○ドイツでも強く感じましたが、ヨーロッパの建物は天井が高く、各部屋の間取りも広く、法律事務所が入っている建物も、ゴチャゴチャした感じが無く、余裕を感じました。これは日本とヨーロッパの社会資本力の差かも知れません。弁護士収入の比較も単に国際為替レートによる換算だけでは比較できないと感じた次第です。

○ドイツの弁護士もフランスの弁護士もいずれもサービス精神が大変強く、我々はお客様として歓待を受けました。これは日頃、依頼者に対するサービス精神も強く出しているためその延長ではないかと感じました。ただ両国を比較するとやはりお国柄というかフランスの方がややラフと言うか、柔軟というか、友人にするにはこちらの方が気楽だなとも感じました。勿論、たまたま当たった法律事務所の弁護士がそうだっただけかも知れませんが。
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