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弁護士報酬算定要素たる経済的利益の一例紹介

平成21年 2月 6日(金):初稿
○弁護士がお客様から受ける仕事は、一般には法律事務処理で、民法上は第643条(委任)「委任は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。」に該当します。弁護士は受任者になりますが、民法第648条(受任者の報酬)で「受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。」と規定されています。委任内容は「法律行為」と規定されていますが、事実行為も含み病気治療をする医師と患者の関係も委任になります。

○民法第648条(受任者の報酬)の規定は委任は無償を原則とするとの昔ながらの考えに基づくものですが、医師や弁護士等委任を受けることを仕事としている職種では有償が原則とされています。有償と言っても弁護士がお客様に委任報酬を請求できるのは、その金額について明確に定めた合意が必要で、現在は日弁連の「弁護士の報酬に関する規程」第5条で「弁護士は、法律事務を受任したときは、弁護士の報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならない。」と定められています。

○この弁護士の報酬は、その依頼された仕事の経済的利益を基準としてその一定割合の金額と定めるのが一般です。時に弁護士とお客様との間で報酬に関する紛争が生じますが、その紛争は、通常そんな高い報酬を支払うと約束していないとのお客様の不満から始まります。このような紛争を防止するために事前にキチンと報酬契約書を作成しておく必要があり、前記規程でも作成を義務づけられており、当事務所でも必ず作成しています。

○報酬の基準となる経済的利益額について時に争いになることがあります。平成20年5月20日東京地裁判決(判時2021号74頁)に驚くべきと言うか誠に羨ましい限りの結論が掲載されていましたので紹介します。「建物売買契約における売買代金の支払日の延期を主な目的とした事務処理の委任を受けた弁護士の報酬について,当該弁護士の事務所に据え置かれた報酬基準に基づき,主な算定要素としての経済的利益の額を当該売買代金額である約55億円と認めて3億円以上の報酬額が認定された事案」です。

○事案は、次の通りです。
弁護士XがYから事件依頼受任
①YがAからの55億円不動産(土地建物)を買い取る売買契約締結するも売買代金支払期日に決済できず解除されると約11億円の違約金が発生するため支払延期と延期後の代金決済を委任(第1委任契約)
XがAと交渉し支払日を3ヶ月延期する変更契約を締結
②延期された支払日までの本件建物を代金60億円で転売する転売先選定、転売契約締結(第2委任契約)
これは支払日までに実現できず

第1委任契約における報酬基準算定要素となるYの受けた経済的利益が争いになった。
Xは本件不動産55億円を維持したのでこれが経済的利益になると主張したのに対し、Yは解除による違約金額11億円が経済的利益で既にXに5000万円支払済みでもはや支払分はないと主張した。


○判決は以下の通りでした。
第1委任契約についてXの事務処理によって得た経済的利益は本件不動産所有権相当利益即ち時価相当額約55億円とし、報酬基準を適用して着手金約1億4000万円、報酬金約2億2800万円の合計3億6800万円と認定
「被告は本件売買契約を解除される寸前の状況にあり、本件残代金の支払日の延期の交渉を委任することは、すなわち本件不動産の所有権を取得することが出来る地位を維持することを意味するといえ,違約金の支払いを免れることは,本件売買契約が解除されなかった結果得られる反射的な利益に過ぎない


当事務所ではこんな大事件は一生に一度も出くわさないことは確実で、弁護士にとっては誠に羨ましい判決ですが、控訴されており控訴審でも維持されるかどうかは不明です。

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弁護士の報酬に関する規程

(平成十六年二月二十六日会規第六十八号)

第一条(目的)
 この規程は、会則第八十七条第二項及び弁護士法人規程第十九条に基づき、弁護士(弁護士法人を含む。以下同じ)の報酬に関し必要な事項を定めることを目的とする。

第二条(弁護士の報酬)
 弁護士の報酬は、経済的利益、事案の難易、時間及び労力その他の事情に照らして適正かつ妥当なものでなければならない。

第三条(報酬基準の作成・備え置き)
 弁護士は、弁護士の報酬に関する基準を作成し、事務所に備え置かなければならない。
2 前項に規定する基準には、報酬の種類、金額、算定方法、支払時期及びその他弁護士の報酬を算定するために必要な事項を明示しなければならない。

第四条(報酬見積書)
 弁護士は、法律事務を依頼しようとする者から申し出があったときは、その法律事務の内容に応じた報酬見積書の作成及び交付に努める。

第五条(報酬の説明・契約書作成)
 弁護士は、法律事務を受任するに際し、弁護士の報酬及びその他の費用について説明しなければならない。
2 弁護士は、法律事務を受任したときは、弁護士の報酬に関する事項を含む委任契約書を作成しなければならない。ただし、委任契約書を作成することに困難な事由があるときは、その事由が止んだ後、これを作成する。
3 前項の規定にかかわらず、受任した法律事務が、法律相談、簡易な書面の作成、顧問契約等継続的な契約に基づくものであるときその他合理的な理由があるときは、委任契約書の作成を要しない。
4 第二項に規定する委任契約書には、受任する法律事務の表示及び範囲、弁護士の報酬の種類、金額、算定方法及び支払時期並びに委任契約が中途で終了した場合の清算方法を記載しなければならない。

第六条(情報の提供)
 弁護士は、弁護士の報酬に関する自己の情報を開示及び提供するよう努める。

附則
1 この規程は、平成十六年四月一日から施行する。
2 この規程の施行の際現に受任している法律事務の外国法事務弁護士の報酬については、なお従前の例による。

以上:2,454文字

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