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債務整理事件大量処理事務所職員整理解雇を無効とした判例紹介1

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平成28年 8月 4日:初稿
○債務整理事件、過払金返還請求事件を取り扱う法律事務所に雇用された裁判所書記官の経歴を有する者の整理解雇が無効とされた平成27年9月18日東京地裁判決(判時2294号65頁)の裁判所の判断部分を2回に分けて紹介します。債務整理事件を大量処理していた事務所の実態が判ります。多重債務整理・過払金返還請求事件が大量にあった時代の東京には、このような事務所が一定数あったと思われますが、規模の大きさに驚くばかりです。

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第4 当裁判所の判断
1 争点1(本件解雇の有効性)

(1) 争いのない事実に加え,証拠(甲56,乙2ないし乙6,乙10,乙11の1から3まで,乙12ないし乙14,乙15の1から7まで,乙16,乙17)及び弁論の全趣旨によれば以下の各事実が認められる。
ア 平成22年9月の株式会社武富士の会社更生事件開始以降,被告らの債務整理事件,不当利得(過払金)返還請求事件による売上げが激減していた。

イ 平成23年5月,被告法人は,当時182人いた派遣社員のうち108名の契約を満期終了とし,さらに同年11月には73人の派遣社員のうち50人の契約を満期終了とした結果,平成23年11月時点で派遣社員数は23人に減少した(第1次措置)。

ウ 平成23年11月,被告法人は,原告を含む166人を対象に,退職者に対し手当金として給料の6か月分を支給し,さらに退職者が再就職支援会社のサービスを受けることを希望する場合には,被告法人がその費用を負担する措置を講じて希望退職者(退職日平成23年12月末日)を募り,もって,人員を削減する方針を決定し,全職員に対してその旨説明した。この結果,全職員の約58パーセントにあたる96人が当該措置を利用し,希望退職に応募した。この結果平成23年12月末日時点での職員数は70人となった(第2次措置)。被告法人は,平成24年1月,上記人員削減に伴い空いたフロアを返却した。

エ 平成24年6月から8月にかけて,被告法人は,知的財産チームの部門閉鎖に伴う人員削減(職員5人の退職,弁理士2名の契約解除)を行った(第3次措置)。

オ 平成24年6月,被告法人は,勤務弁護士23人全員を対象に,給与体系を改定することを告げ,希望退職を募ったところ,13人が退職を希望して同年8月末日をもって退職した(第4次措置)。

カ 平成24年8月,被告法人は,大阪支店を閉鎖し,同支店所属の職員3人及び弁護士1人が退職した(第5次措置)。

キ 平成24年11月,被告法人は,当時賃借していた1フロアの半分を返却して,執務スペースを半フロアにした。

ク 平成25年2月12日,被告法人は,債務整理事件減少の影響により未申立事件が大幅に減少し,事務員が過剰となっていた再生申立チームを部門閉鎖すべく,同チーム所属事務員の整理解雇を行うこととした。被告法人は,原告に対し,同年3月31日付けをもって解雇する旨の意思表示をした(本件解雇)。
 また,被告法人は,再生申立チーム以外でも早期退職者の募集を行い,平成25年3月末日付けで15人の職員が退職した。これにより,平成25年3月末日時点での職員数は45人となった(第6次措置)。

ケ 被告法人は,さらに,平成25年3月中に希望退職者の追加募集を行い,これにより4名が同年4月末日をもって退職した(第7次措置)。また,人員削減に伴い,被告法人は同日をもって事務所を移転した。

(2) 被告法人の就業規則第20条第8号には,事業の縮小,閉鎖,その他事務所の経営上やむを得ない事由があるときには,解雇ができる旨の定めがあるが,解雇が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合には,その解雇権を濫用したものとして無効となる(労働契約法16条)。本件解雇は,いわゆる整理解雇として,使用者の経営上の理由により解雇するものであるから,①人員削減の必要性,②解雇回避努力義務の履践,③被解雇者選定基準の合理性,④解雇手続の適法性の各要素を総合して,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合には,その権利を濫用したものとして無効となると解すべきである。

(3)
ア 証拠(乙21ないし乙23)及び弁論の全趣旨によれば,被告の売上総利益は,平成23年3月の法人設立から同年12月までは約7億0683万円(月平均約7068万円),平成24年1月から12月までは約5億1878万円(月平均約4323万円),平成25年1月から3月までは約9226万円(月平均約3075万円)と急減していること,平成24年12月期については,被告法人は経費削減努力にもかかわらず,約20億円の赤字を抱え,被告Y2からの借入等で資金繰りを回す状態にあったことが認められ,これらは前記(1)アの認定事実のとおりの被告の売上を支えていた過払金返還請求事件及び債務整理事件の各減少が主因と考えられる。また,本件解雇後の受任件数等の推移を見ても(乙19,乙20),売上の回復の見込みは乏しかったことが推認できる。そうすると,被告法人において人員削減の必要性はあると認められる。

イ 次に,前記(1)イないしキの認定事実のとおり,本件解雇に先立ち,派遣社員の派遣契約を満了させ,希望退職者募集を行い,事業所の賃貸借を一部解除する等して相当の経費削減を行っていることは被告法人の経営上の措置として合理性が認められる。しかし,こと原告に関していえば,裁判所書記官としての長い経歴があり,多種多様な裁判事務を経験しているはずであるから,過払金返還請求事件及び債務整理事件以外の事件処理も一応可能であると推認でき,配置転換による解雇回避の検討がなされてしかるべきである。この点,平成24年4月ころに被告法人から原告に対して配置転換の打診がなされたようであるが(乙9),以後,被告法人が具体的に原告の配置転換を検討した事実を認めるに足りる証拠はない。そうすると,原告に対する解雇回避努力義務としては十分な対応があったとはいえない。

 また,取扱事件の減少による再生申立チームの閉鎖及びそれに伴う所属職員の解雇という被解雇者の選定理由についても,チーム閉鎖自体は使用者の経営判断上やむを得ないとしても,所属職員の配置転換による雇用継続の可能性の程度を明らかにする証拠はなく,被告法人が主張する本件解雇で考慮した消極要素については,原告被告ら間の過去の紛争の蒸し返しであって,客観的な選定基準として合理的なものとはいえない。そうすると,被解雇者の選定理由の合理性にも疑問がある。
 そして,被告法人が,原告に対し,本件解雇に当たり,十分な説明をしたと認めるに足りる証拠もない。

(4) 以上を総合すると,本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められず,解雇権を濫用したものとして無効であるというべきである。
 そうすると,民法536条2項により,原告は,被告法人に対し,平成25年4月以降の賃金請求権を失わず,基本給である51万3000円の賃金支払を求めることができる。もっとも,原告は平成26年8月6日に60歳の誕生日を迎えたことは当事者間に争いがなく,被告法人の就業規則第18条第1項本文によれば,同月31日をもって定年退職したことになるから(甲14の2),賃金請求権の終期は平成26年8月までとなる(なお,基本給以外の賃金請求権の成否の判断は後記2で,平成26年9月1日以降の原告被告法人間の法律関係の判断は後記3で示す。)。

2 争点2(賞与及び一時金請求の成否)
 証拠(甲5,甲38)によれば,原告被告Y2間の雇用契約において,具体的に定められた賃金は基本給に限られ,原告被告Y2間の雇用関係を包括承継した被告法人においても,具体的に定められた賃金は基本給に限られると認められ,賞与及び一時金が具体的請求権として原告被告法人間の雇用契約の内容となっているとは認められない。

 そうすると,原告の主張する賞与請求権及び一時金請求権は,法律事務所の業績,従業員の勤務成績等を考慮して,雇用主である被告らがその都度支給の可否及び額をその裁量により個別に決定することにより初めて具体的に発生する権利であったというほかなく,前記1の判示のとおり本件解雇は無効であるが,民法536条2項の「反対給付を受ける権利」に該当するとは認められない。

 また,賞与請求権及び一時金請求権が具体的に発生していない以上,損害の発生も観念しえないのであるから,不法行為に基づく損害賠償請求も認められない。
 よって,原告の主張は理由がない。

3 争点3(定年制の有効性及び継続雇用の成否)
(1) 前記1のとおり,本件解雇が無効であっても,被告法人の就業規則第18条第1項本文によれば,同月31日をもって定年退職したことになり,原告被告法人間の雇用契約関係は終了する。

(2) これに対して,原告は,定年制の無効を主張する。過去55歳定年制の有効性が争われる事件があったことは当裁判所に顕著な事実であるし,諸外国では定年制がない国も存する(乙46,乙47)。しかし,いわゆる60歳定年制については,高年法8条が許容しており,同法9条1項は同法8条を前提として,各種の高年齢者雇用確保措置を講じるよう事業主に義務付けているものである。そうすると,60歳定年制を採用する被告法人の就業規則が無効となるとはいえない。また,被告法人には嘱託職員就業規則(乙44)が存在し,65歳の高年齢者雇用確保措置として高年法9条1項2号の継続雇用制度が採用されていると認められる。

(3) また,原告は,事業者が高年法9条1項の各措置に反している場合には,定年の定め自体,高年法9条1項に違反するものとして無効とされるべきであり,この場合,高年法9条1項により,使用者が継続雇用制度を実施するまで定年は65歳に設定したものとみなされ,労働者は65歳に達するまで雇用契約上の地位確認を請求しうると主張するが,明文の規定もないのにいわゆる補充的効力(労働契約法12条,労働基準法13条参照)を認めるかのような解釈は採用できず,原告の独自の見解というほかない。

(4) さらに,原告は,雇止め法理の類推適用により,平成26年9月1日以降も従前と同一の労働条件での雇用契約関係が継続する旨主張するが,高年法9条1項2号が継続雇用制度を採用し,従前の無期雇用契約と異なる契約の定めを許容し,かつ,契約条件につき事業主の合理的な裁量が認められるというべきところ,一般に,60歳以降の労働条件につき,従前と同一の労働条件であるとの合理的期待が契約当事者間に存するとはいえず,原告の主張を採用することはできない。

(5) 加えて,原告は嘱託職員就業規則が種々の理由により無効である旨を主張するが,仮に無効であるとしても,それがゆえに原告被告法人間に定年前の雇用契約関係が復活するわけではないし,高年法9条1項2号は,前記(4)のとおり,従前の無期雇用契約と異なる契約の定めを許容しているのであるから,被告法人が,従前の雇用関係の維持を義務付けられるわけではない。

(6) そうすると,原告被告法人間で定年後も従前の雇用関係が維持されることはない。また,以下のとおり,原告被告法人間で被告法人の嘱託職員就業規則に基づく嘱託雇用契約も成立しない。
 証拠(甲84の1)及び弁論の全趣旨によれば,平成26年5月30日付け通知書(以下「通知書」という。)にて,原告は,被告法人に対し,被告法人の就業規則第18条第1項但書に基づき,継続雇用の申入れをする旨通知したが,被告法人はこれに応答せず,嘱託職員就業規則の開示も行わなかったことが認められる。原告の本件訴訟における応訴態度からすれば,通知書の意思解釈としては,原告は被告法人に対して定年後も従前の労働条件に基づく就労を求めたものと理解でき,原告が被告法人の嘱託職員就業規則に基づく継続雇用制度の希望をしたとは認められない。他方で
,被告法人は,通知書に何ら応答せず,嘱託職員就業規則の開示も原告に行っていないのであるから,原告被告法人間での意思表示の合致はなく,契約の締結の事実を認めることはできない。
 なお,高年法9条1項は事業主の責務として高年齢者雇用確保措置を講じることを義務付けているが,労働者が同措置の利用を希望するかどうかは別論であるし,労働者が同措置を希望しない場合に労働者と使用者間でどのような協議のもとで定年後の再雇用契約を締結するかは私的自治の領域の問題であり,高年法9条1項の範疇外のことである。

(5) よって,原告被告法人間の雇用契約関係は,平成26年8月31日の原告の定年退職によって終了したというべきであるから,原告の主張は理由がない。


 
以上:5,275文字

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