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事業債務整理・破産事件受任の注意点-財産散逸防止2

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平成25年 5月25日(土):初稿
○「事業債務整理・破産事件受任の注意点-財産散逸防止1」を続けます。
破産申立受任後は、債務者本人自らの財産処分禁止ルールに違反した弁護士さんが何と515万円もの損害賠償義務が認められた平成25年2月6日東京地裁判決(判時2177号72頁)で裁判所が認定した事案概要は以下の通りです。

・A社約3億円の負債を抱えて支払不能として平成23年8月22日事業を停止
・A社代表者Bは、同年同月25日、C弁護士に相談、A社資産概要(賃借ビル保証金3800万円等)と事業内容説明、B個人は月額賃料120万円のマンションに住み、使用しているフェラーリ等リース契約清算の必要性も説明
・C弁護士は少額管財事件となる見通し、A社残務整理はBが行うこと、債権者への支払禁止、使用現金は使途明細を記録することを説明するも、A社現金・預貯金等をC弁護士が管理することは説明していない
・B個人の破産申立はB自身が行うことでCには依頼せず、A社破産のみに依頼することとして同月30日着手金47万円受領、同月31日各債権者に破産申立受任通知
・D社は営業保証金返金として同年8月29日までにA社口座に約700万円入金し、これをB個人が同年8月29日からから11月4日までに約515万円を払い戻し自己のために費消


○C弁護士は、A社破産について代表者Bから8月25日に相談を受け、30日に正式依頼を受け着手金を受領し、翌31日に債権者に受任通知を出しています。この時点でA社口座に約700万円が入っていましたが、C弁護士は、この口座管理を代表者Bに任せ、Bは、内約515万円を自分で払い戻して自己のために費消しました。

○A社破産事件受任当たっての代表者BとC弁護士の遣り取りは争いがありますが、判決では「被告は,Bに対し,破産会社の残務整理等はBが行うことになること,債権者への支払をしてはいけないことを説明し,現金についてきちんと出納帳をつけて,何に使ったのかをはっきり分かるようにしておくよう指示をしたが,破産会社の預貯金,現金を被告の預り金口座にて管理すること,委任契約後,同口座に破産会社の預貯金,現金を入金すること等の説明は行っていない。
 Bは,被告に対し,自分の給料の受領の可否について確認した。これに対し被告は,破産会社の残務整理もあるし,あなたにも生活があるだろうからとの説明をした。その際,被告はBに対して,役員報酬を受領することは原則として認められない等の説明は行っていない。
」と認定されています。
この認定を前提に被告C弁護士の責任が以下の通り認定されました。破産事件受任当たっては大いに自戒すべきです。

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2 争点(2)(被告の責任)について
(1)債務者との間で同人の破産申立てに関する委任契約を締結した弁護士は,破産制度の趣旨に照らし,債務者の財産が破産管財人に引き継がれるまでの間,その財産が散逸することのないよう,必要な措置を採るべき法的義務(財産散逸防止義務)を負う。また,正式な委任契約締結前であっても,依頼者と弁護士の関係は特殊な信頼関係に立つものであるから,委任契約締結後に弁護士としての職責を全うし,正当な職務遂行をなすため,依頼者の相談内容等に応じた善管注意義務を負う。

(2)ア 本件では,平成23年8月25日にBが行った説明によって破産会社には一定の資産が存在する事実が確認できたのであるから,被告としては,上記善管注意義務として,委任契約後の破産会社の資産管理は原則として被告が行うこと等の説明を行い,また,委任契約後には財産散逸防止義務として,上記説明に加え,破産会社の預貯金通帳等を被告において預かること,あるいは,被告の開設にかかる破産会社の財産管理用の預り金口座に預貯金,現金等の入金を行うこと等の具体的な指示説明を行う必要があった。

 また,被告は,同日,破産会社の代表取締役であるBから,同人の給与の受領の可否について問われているところ,取締役の役員報酬請求権は一般の破産債権であって原則として役員報酬の受領が認められないこととなるのであるから,上記善管注意義務としてその旨の説明を行い,また,委任契約後には財産散逸防止義務として,上記説明に加え,破産会社の破産申立てまでの間にBが行った具体的労務の内容を把握し,労働債権性を有する部分の判定,労働債権性を有する部分の支払の可否等の判断を適切に行い,必要かつ妥当な範囲での支払を行う等の対応をとる必要があった。
 しかし,上記認定事実のとおり,被告はBに対して上記のような説明を行っておらず,かつ,破産会社の財産を適切に管理するための方策もとっていない。
 したがって,被告には財産散逸防止義務違反が認められる。

イ 被告は,本人尋問において,被告の預り金口座での管理を行う旨の説明や対応をした旨供述するとともに,同趣旨の記載があるC司法書士の陳述書(乙12)を提出する。しかし,破産会社の破産申立て手続に関する委任契約後,同契約の履行のために破産会社の資産管理にかかる被告の預り金口座が開設されたことを認めるに足りる証拠はなく,かえってC司法書士がBに対して送信したメールの内容では顧客(債権者)への返金手続をBに任せていることが窺われる。そうすると,被告の上記供述及び乙12号証は,その裏付けを欠き,他の証拠とも矛盾するから,採用することができない。

 その他に被告は,委任契約締結後のBの対応の問題や,破産手続開始決定後のBの経済活動の点を指摘しており,上記認定事実のとおり,Bには破産手続を申し立てる会社の代表者がとるべき対応として不適切,不十分な点が存在したことを窺わせる事情が認められ,破産手続開始決定後のBの経済活動を裏付ける証拠も存在する。しかしながら,上記アのとおり,被告において財産散逸防止義務を履行した事実が認められない以上,Bの上記対応は,被告の責任を減免する事情とはならないというべきである。
 したがって,この点に関する被告の主張は採用できない。


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