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交通事故傷害とPTSD発症の因果関係を認めた地裁判例紹介3

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平成31年 4月22日(月):初稿
○「交通事故傷害とPTSD発症の因果関係を認めた地裁判例紹介2」の続きで、平成24年4月18日京都地裁判決(自保ジャーナル・第1878号)の必要部分を紹介します。

○43歳女子有職主婦の原告は、平成15年3月8日午後5時53分頃、京都市下京区内の片側2車線道路を自転車に乗って横断中、右後方から被告運転の乗用車に衝突され、顔面挫創等とPTSDを発症、併合11級後遺障害を残し、労働能力を35%喪失したとして、既払金462万4569円を控除し、3962万0443円を求めて訴えを提起しました。

○原告は、B病院入院中の平成15年3月15日、同室の患者との間でトラブルを発生させ、同月27日には部屋のドアをベッドで押さえ、興奮状態になり、翌28日、診療内科を受診して反応性うつ(ベースに軽度の人格障害がある可能性あり)と診断され、平成18年5月15日ないし同年11月27日、Fクリニックで、PTSDと診断されました。

○平成24年4月18日京都地裁判決は、原告が入院先病院内でのトラブル、リストカット等、PTSDのため日常生活において頻繁に支障を生じる状況にあり、就労に当たっては相当の配慮を要し、別表第二の12級13号(本件事故当時は12号)に該当するものと認めるのが相当であるとし、12級顔面醜状とともに労働能力に影響するというべきであり、外貌醜状による労働能力喪失の程度につき被告も積極的に争っていないことも考慮し、原告の後遺障害による労働能力喪失率は20%と認めました。

○PTSDは、心的外傷というストレス因子と個体の脆弱性等の内因が相俟って発症しますが、6、7割は2、3ヶ月以内に自然治癒し、慢性化する者の割合は少ない、あるいは、3年以内に消失するなどとされていることが認められることから、原告のPTSDが慢性化したことについては、原告の内因が寄与したものであり慢性化する者が少数であることを考慮し、公平の観点から素因減額するのを相当で、その割合は、PTSD以外の傷害及び後遺障害があることなども考慮し、損害の全体につき1割として、約1220万円を損害と認定しました。

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主  文
1 被告は、原告に対し、1219万8885円及びこれに対する平成15年3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用はこれを3分し、その1を被告の負担とし、その余は原告の負担とする。
4 この判決の1項は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求の趣旨

1 被告は、原告に対し、3962万443円及びこれに対する平成15年3月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 仮執行宣言
 (被告は、担保を条件とする仮執行免脱宣言を求めた。)

第二 事案の概要
 本件は、道路上で原告運転の自転車と被告運転の自動車が衝突した事故について、原告が、被告に対し、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という)3条又は民法709条に基づき、損害賠償を請求する事案である(遅延損害金請求の起算日は事故の日)。
1 争いのない事実及び容易に認定できる事実

         (中略)


第三 当裁判所の判断
1 事故態様(責任原因、過失割合)

(1)① 前記第二、1、(1)の事実、証拠(略)(後記認定に反する部分を除く。)によると、次の事実が認められる。
ア 本件事故現場付近の状況は、別紙図面のとおりであり、同事故現場は、南北に通ずる歩車道の区別のある4車線の直線道路(以下「本件道路」という。」)の北行車線(以下、単に「北行車線」という。)上である。北行車線の車道幅員は、第1通行帯が約2.9m、第2通行帯が約2.8mである。同事故現場付近は、最高速度が毎時40kmに規制されている。

イ 本件事故直前、原告は、原告自転車を運転して北行車線の左端付近を北進していた。原告は、前方の横断歩道で本件道路を西から東に横断する予定であった。原告が、本件事故現場に接近した際、北行車線の左端に停止車両があり、歩道には歩行者が横並びで歩行しており歩道に上がることも困難であったことから、原告は、本件道路を東側に向かって横断しようと考え、進路を北東に変更し、本件道路を北東方向に向かって斜めに横断し始めた。

ウ 被告は、本件事故直前、被告車を運転して北行車線の第2通行帯を北進し、本件事故現場に接近したところ、左斜め前方約26mの別紙図面ア地点(以下、単に符号をもって示す地点は別紙図面の同一符号の地点を指す。)付近を北進する原告自転車に気付いた。被告が前進を続けたところ、原告自転車は、イ地点付近、ウ地点付近と北東に向けて進行した。被告は、②地点付近を経て③地点付近に至ったとき、原告自転車が約10.4m離れたウ地点付近まで自車の進路前方に迫っているのを見て衝突の危険を感じ、ハンドルを左に転把するとともに制動措置を採ったが間に合わず、約10.3m先の④地点付近まで進行したところで、×地点付近の原告自転車後部と被告車の右前部が衝突した。原告は、衝突の衝撃で約5m先まで飛ばされて転倒し、被告車は衝突地点から約9m進行して停止した。


         (中略)

2 原告の損害
(1) 治療関係費(原告主張額201万1520円)

         (中略)

(7) 逸失利益(原告主張額は前記第二、2、(6)、①、イのとおり)
① 後遺障害の内容、程度
ア 頸部・腰部由来の症状及び顔面部の醜状痕
 前記第二、1、(5)、①の損害保険料率算出機構の認定のうち、同ア、イ、ウの認定判断が不当であることを窺わせる証拠はない。同アについては、後記のとおり、労働能力喪失の有無、程度が問題となり得るが、少なくとも自賠責保険における障害等級認定として、これを別表第二の12級14号と判断することに誤りはない。

イ PTSD
(ア) 証拠(略)によれば、Fクリニックの丙川三郎医師(精神科)は、原告のPTSDに関し、次のとおり診断したことが認められる。
a PTSD症状は本件事故直後からそろっていたが、明らかなフラッシュバックは同事故から半年経過後に出現した。車の音によって強い恐怖感、動悸、体の硬直等の生理的反応が出現する。事故の時の感覚のフラッシュバック等の侵入的回想が続いている。事故のことを考えるのを強く避け、事故以来、自転車に乗らないなどの回避も続いている。事故後、不安と悲哀感はあるが、幸福感や充実感が感じられなくなり、感情の鈍化がある。集中力低下、過度の心配等過覚醒も続いている。些細なことで不安が強くなり、気分が落ち込みやすい。自分の身体の調子や車の不安ばかりに注意が行きがちで他への関心が不足している。集中力が低下しているため作業の持続が困難である。通院はしばしば遅れがちである。対人関係では他者への不信感、不安が強くなっており、上手くいかないことがある。外出時は、車のために気持ちが動揺し、考えが混乱しがちで危機対応が困難である。事故や車以外のストレスに対しても自力での解決が困難となっている。
 現在の症状は、抑うつ気分、不安・焦燥、侵入的回想、回避、感情の鈍化、過覚醒で、残存症状の中核は、再体験、回避、過覚醒である。

b 能力低下の状態は次のとおりである。
(a) 適切又は概ねできるもの
 適切な食事摂取、身辺の清潔保持

(b) 時々助言、援助が必要なもの
 仕事、生活、家庭に関心を持つこと。仕事、生活、家庭で時間を守ること。仕事、家庭において作業を持続すること。仕事、生活、家庭における他人との意思伝達。仕事、生活、家庭における対人関係・協調性。

(c) 頻繁に助言、援助が必要なもの
 屋外での身辺の安全保持・危機対応。仕事、生活、家庭における困難・失敗への対応。

c PTSDは、2年以上経つと改善が困難になる。原告の場合、3年以上症状が持続しており、薬物療法を試みたが効果は限られており、現在の症状と機能障害が今後も残ると考えられる。

(イ) 検討
 上記のとおり、原告には、抑うつ気分、不安、侵入的回想、回避、感情の鈍化等の精神症状があり、屋外での身辺の安全保持・危機対応及び困難・失敗への対応の2項目につき頻繁に助言、援助が必要であり、仕事、生活、家庭に対する関心、仕事、生活、家庭における時間の遵守、仕事、家庭における作業の持続、仕事、生活、家庭における他人との意思伝達及び仕事、生活、家庭における対人関係・協調性の5項目について時々助言、援助が必要な状況にある。これを障害等級認定基準(昭和50年9月30日基発第565号。平成15年8月8日改正基発第0808002号)別添1「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準」における非器質性精神障害の認定基準に当てはめると、「通常の労務に服することはできるが、非器質性精神障害のため、多少の障害を残すもの」として、労基法施行規則別表第2及び労災保険法施行規則別表の障害等級12級の12とされることなどにかんがみると、原告は、PTSDのため日常生活において頻繁に支障を生じる状況にあり、就労に当たっては相当の配慮を要し、別表第二の12級13号(本件事故当時は12号)に該当するものと認めるのが相当である。

ウ 上記ア、イによれば、原告の後遺障害は、別表第二の併合11級に相当するものというべきである。

② 労働能力喪失率及び喪失期間
 労働能力喪失率の判断に関しては、外貌醜状の評価が問題となり得るが、原告が子どもを対象とする英語教室を長く経営し、今後も再開する可能性があると考えられることからして、原告の前額部の挫創痕は労働能力に影響するというべきであり、外貌醜状による労働能力喪失の程度につき被告も積極的に争っていないことも考慮し、原告の後遺障害による労働能力喪失率は20%と認める。

 頸部由来及び腰部由来の障害による労働能力喪失期間は数年程度と見るのが相当であるが、それを経過した後も全体の労働能力喪失率が回復するとは解されない。後記のとおり、PTSDは、一般には予後が良好で、将来症状が大幅に改善する可能性があるとされるが、原告の場合、発症から症状固定までに3年半以上経過しており、大幅改善の蓋然性が高いとはいえない。
 以上により、症状固定時(47歳)から67歳まで20%の労働能力の喪失を認める。

③ 算定
 平成18年賃金センサス産業計・企業規模計・女性・学歴計・全年齢の平均賃金343万2500円を基礎収入とし、本件事故時における逸失利益の現価を算定すると、739万378円となる。なお、本件事故から症状固定までは3年として計算する。
 343万2,500×0.2×(13.4885-2.7232)≒739万378

(8) 後遺障害慰謝料(原告主張額は前記第2、2、(6)、①のとおり)
 後遺障害の内容、程度等の事情を総合し、相当な後遺障害慰謝料を400万円と認める。

(9) 損害合計
 前記(1)ないし(8)の損害合計は、2182万4243円である。

3 素因減額及び過失相殺
 証拠(略)によれば、PTSDは、心的外傷というストレス因子と個体の脆弱性等の内因が相俟って発症するが、6、7割は2、3ヶ月以内に自然治癒し、慢性化する者の割合は少ない、あるいは、3年以内に消失するなどとされていることが認められる。これによると、原告のPTSDが慢性化したことについては、原告の内因が寄与したものと考えざるを得ず、慢性化する者が少数であることからすると、公平の観点から、素因減額するのを相当と判断する。素因減額の割合は、PTSD以外の傷害及び後遺障害があることなども考慮し、損害の全体につき1割とする。
 前記2182万4243円に、1割の素因減額及び2割の過失相殺をすると、1571万3454円となる。
 2182万4243×(1-0.1)×(1-0.2)≒1571万3454

4 損害填補
 前記1571万3,454円から前記第二、1、(6)の既払額(保険金額)462万4569円を控除すると、残額は1108万8885円となる。

5 弁護士費用
 事案の内容、訴訟経過及び認容額等の諸般の事情を考慮し、被告の不法行為と相当因果関係のある弁護士費用を111万円と認める。

6 結論
 以上の次第で、原告の本訴請求は、被告に対し、民法709条に基づき、1219万8885円及びこれに対する不法行為の日である平成15年3月8日から支払済みまで民法所定年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由がある。
 よって、主文のとおり判決する(仮執行免脱宣言は相当ではないからこれを付さない。)。
(口頭弁論終結日 平成24年2月1日) 京都地方裁判所第4民事部 裁判官 佐藤 明
以上:5,240文字

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