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咀嚼障害を含む併合9級後遺障害の労働能力喪失率認定判例紹介

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平成30年 4月26日(木):初稿
○咀嚼機能障害で自賠責保険後遺障害等級第10級3号の認定を受けた方の逸失利益が問題になっている事案を訴訟事件として扱っています。後遺障害等級第10級の標準労働能力喪失率は27%です。保険会社側は、咀嚼機能障害による労働能力喪失について争っています。

○咀嚼機能障害とは、固形食物の中に咀嚼できないものがあること又は咀嚼が十分にできないものがあることが医学的に確認できる場合(不正咬合、咀嚼関与筋群の異常、顎関節の障害、閉口障害、歯牙損傷(補てつ不能の場合))解説されています。この咀嚼機能障害による実際の労働能力喪失率を認定した判例は余り見つかりません。

○28歳男子独立希望店長の併合9級後遺障害逸失利益を同学歴全年齢平均を基礎収入に5年間35%、以降67歳まで20%の労働能力喪失で認めた平成27年10月1日大阪地裁判決(自保ジャーナル・第1964号)の必要部分を紹介します。

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主  文
1 被告は、原告に対し、2217万6546円及びこれに対する平成18年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 訴訟費用は、これを20分し、その11を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。

事実及び理由
第一 請  求

 被告は、原告に対し、4742万2883円及びこれに対する平成18年2月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、原告運転の車両と被告運転の車両の間で起きた交通事故に関し、原告が、被告に対し、民法709条に基づき、人的損害の賠償及び本件事故の日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。

   (中略)

(3) 原告の後遺障害等
 原告は、以下のとおり症状固定診断を受けた(ただし、症状固定時期には争いがある。)。
①左上顎骨骨折、左頬骨体部骨折、下顎骨骨折、外傷性三叉神経障害による咬合異常、外傷性三叉神経知覚異常、流涎について(形成外科)
 平成21年5月28日
②顔面神経損傷顔面神経痛、顔面骨骨折後遺症による左三叉神経第2、3枝領域のアロデニア、感覚鈍麻、開口制限、流涎、しびれについて(麻酔科)
 平成23年6月14日
③外傷による歯牙欠損及び骨植不良について(歯科)
 平成25年3月15日
 そして、これらを踏まえ、③外傷による歯牙欠損及び骨植不良は、「3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの」として自動車損害賠償保障法施行令別表第二(以下「後遺障害等級表」という。)14級2号に、①左上顎骨骨折、下顎骨骨折に伴うそしゃく障害、開口障害は、「咀嚼機能に障害を残すもの」として同表10級3号に、②左口角、左鼻翼から頸部までの感覚消失、アロデニアなどについては、「局部に頑固な神経症状を残すもの」として同表12級13号に該当するものとされ、以上を併合して同表併合9級に該当するとの等級認定がなされた。
同表併合9級に該当するとの等級認定がなされた。

   (中略)

第三 当裁判所の判断
1 争点(1)について(消滅時効)

 消滅時効の判断の前提となる症状固定時期を検討する。

  (中略)

(2) 歯科
 次に、歯科に関する診療経過をみると、原告は、平成19年5月以降、C病院の形成外科から紹介を受けたE大学病院に通院して治療を受けていたが、医師との関係がよくなかったため、同年9月11日からF大学病院への通院を始めた。口腔補綴科、矯正科で診察を受け、矯正科でのカンファレンスの結果と口腔補綴科の医師らの見解を踏まえ、治療方針としては、①関節の状態を精査した上、②上の前歯の歯間の離開及び上の前歯の中心左側への偏位に関しては、リンガルアーチで状態の改善を図り、歯の移動及び歯根、骨の状態を確認し、状態に問題がないようであれば上の歯にエッジワイズ装置を装着する(補綴前矯正)、③補綴によって欠如している上顎左側側切歯及び前歯部の状態を改善する(補綴治療)ということになり、同年12月、原告の承諾の上で矯正・補綴の治療が始められた。②の装置を使用する期間は、1年半から2年程度が予定されていた。
 その後、矯正については、インプラント、マグネットデンチャー、部分床義歯又はブリッジの方法が検討され、まずはマグネットデンチャーが選択肢となったが、破損、再製の問題などから、最終的にはインプラントが選択され、平成24年3月29日、インプラントの1次手術が行われた。補綴治療は、平成25年3月15日で終了となった。

 以上の診療経過からすると、矯正を終えて補綴の方法を決めるのにやや時間を要していると考えられなくはないものの、当時の原告の歯の状況や将来の見通しなどを踏まえて慎重な検討が必要であるといった歯科治療の性質等に照らすと、不自然に治療期間が延びたとは認められない。矯正と補綴がうまくいって初めて治療が終了したといえることなども考慮すると、被告の指摘する点を考慮しても、医師の診断による平成25年3月18日をもって症状固定と認めるのが相当である。

  (中略)

3 争点(3)について(原告の損害額)

  (中略)

(4) 後遺障害逸失利益 1819万4106円
 基礎収入については、原告の経歴や本件事故前の収入、特に、原告が、H店で修業していた経歴から、以前勤務していた飲食店では従業員の教育役等を務め、給与面でも厚い待遇を受けていたことなどに照らすと、今後も相応の収入を得られる見込みがあるといえる一方で、自ら飲食店を開いて営業する場合には、必ずしも過去の給与収入と同等の収入を得られるとは限らないことなども考慮する必要がある。そうすると、原告が、男性、学歴計、全年齢の年収額を得られる蓋然性までは認め難いものの、平成25年の賃金センサス(男性、高専・短大卒、全年齢)による年収額の限度では認めることができる。

 その上で、労働能力喪失率をみると、後遺障害等級表併合9級の認定を受けた原告の後遺障害は、前記のとおり、③同表14級2号に該当する歯牙欠損及び骨植不良、①同表10級3号に該当するそしゃく障害及び開口障害、②同表12級13号に該当する左口角、左鼻翼から頸部までの感覚消失、アロデニアの3つである。

 このうち、まず、①そしゃく障害は、飲食業に従事する原告にとって、食材や酒類の調達で重い物を持ち上げる際に、噛み合わせが悪いことによって支障が生じると考えられる上、調理にも支障を及ぼしうるものといえる。原告が、将来的にも飲食業への従事を続ける意向を示していることからすると、生活の適応により労働能力喪失率の逓減があると思われるとはいえ、労働能力への影響は小さいとはいえない

 他方、③歯牙欠損は、一般的には労働能力に与える影響は少ないと考えられる上、原告が矯正と補綴の治療を受けていることなども考慮すると、労働能力に直接大きい影響を及ぼすものとまでは認め難い。

 以上に加えて、飲食店で接客を行う原告にとっては、②顔面等の感覚消失や流涎も些細な障害とは言い難いことなども踏まえると、原告の労働能力喪失率は、当初の5年間は35%、それ以降67歳までの27年間は20%と認めるのが相当である。原告は、少なくとも35%の労働能力の喪失が認められるべきであると主張するが、以上の検討に照らして採用できない。
 したがって、以下の逸失利益が損害として認められる。
 (計算式)
 477万5400円×0.35×4.3295(5年に対応するライプニッツ係数)+477万5,400円×0.2×11.4732(症状固定時35歳から67歳まで32年に対応するライプニッツ係数15.8027-35歳から40歳まで5年に対応するライプニッツ係数4.3295)=1819万4106円

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