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無症状脊柱管狭窄症既往症の神経障害と事故との因果関係認めた判例紹介2

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平成29年 9月 7日:初稿
○「無症状脊柱管狭窄症既往症の神経障害と事故との因果関係認めた判例紹介」の続きで、乗用車後部座席同乗中の追突事故で、脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症(OPLL) 等で5級2号の四肢麻痺を請求する57歳男子の事案で、比較的軽微な追突であるも、後ろを振り返った瞬間に追突された事などから、事故との相当因果関係を認め、自賠責認定の9級10号で後遺症逸失利益を認定し、事故前無症状であった「脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症」が治療程度、期間、後遺障害に影響を与えたものと30%の素因減額を認めた平成13年4月24日東京地裁判決(自動車保険ジャーナル・第1405号)の関連部分を紹介します。

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2 争点
(一) 本件交通事故により生じた原告の後遺障害の程度
ア 原告の主張

 原告は、本件事故により、外傷性椎間板ヘルニア、頸椎捻挫、頭部外傷、頸椎損傷等の傷害を負い、4肢麻痺の後遺症を負った。右後遺症は、後遺障害等級第5級2号に該当する。
 仮に、本件交通事故と第2事故との因果関係が認められないとしても、原告は、第2事故以前に既に、原告は、後遺障害等級第9級10号に該当する後遺障害を負っていた。

イ 被告らの主張
 本件交通事故と第2事故との因果関係は認められず、原告の症状固定時期は、遅くとも第2事故前の平成7年10月1日とすべきであり、当時の原告の症状は、「労働には通常差し支えないが、医学的に証明しうる脊髄症状を残すもの」として後遺障害等級第12級12号に該当するものである。
 仮に、原告の後遺障害等級が第9級10号に該当するとしても、原告の症状からして、労働能力喪失率については、第12級相当の14%とし、喪失期間も5年にとどまるというべきである。

(二) 素因減額
ア 被告らの主張
 原告には、脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症の素因が存在し、これによって少なくとも50%の減額がなされるべきである。

イ 原告の主張
 仮に、原告に被告ら主張のような経年性の脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症が存在していたとしても、原告の年齢本件交通事故以前は全く症状もなく、かつ診断さえなされなかった事実等を総合考慮すると、本件においてこれらを素因減額の対象とすべきではない。

第三 裁判所の判断
1 争点一(原告の後遺障害の程度)について

(一) (証拠略)によれば以下の事実が認められる。
ア 原告は、初診時から、頭・頸部痛、両手のしびれがあり、症状が増悪したため、平成7年6月1日(※事故日平成7年5月31日)、MRIを施行したところ、第4、5頸椎椎間板ヘルニア、第5、6頸椎脊柱管狭窄症、第5、6後縦靭帯骨化症等が発見された。原告は、入院を嫌っていたが、特に第4、5頸椎の狭窄が著明なため入院を勧告され、同日、入院した。

イ 原告の受傷直後、脊髄症状は見られたものの、画像所見と比べて症状は軽く、翌2日には、保存的療法で改善しているので、このまま2週間保存的に観察し、経過を見て手術適応を考えるものとされた。

ウ 同年8月8日には、診療録に、「仕事、忙しい」「今月いっぱいリハビリ」「患者」「仕事へ」との記載があり、同月17日には、「直らなくても良い、仕事が忙しい。」との原告の申し出があった。

エ 同月23日には、原告の主治医である三愛病院の済陽輝久医師(以下「済陽医師」という。)は、後縦靱帯骨化症、脊柱管狭窄症は難病指定なので、あと2、3か月の治療及び経過観察としたかったが、原告のたっての希望により治療を中止することとした。

オ 同日の症状についての脊髄症状判定用紙によれば、上肢運動機能としては、「二:不自由ではあるが箸を用いて食事ができる。」、下肢運動機能としては、「一:平地でも杖または支持を必要とする」、知覚については、上肢・下肢・躯幹につき、いずれも「一:軽度の知覚障害またはシビレ感がある。」、膀胱につき、「二:軽度の排尿困難(頻尿、開始遅延)」との判断がなされた。

(二) これに対し、被告らは、上記脊髄症状判定用紙の信用性につき、本件交通事故が軽微な事故であったこと、診断日が訂正されていること、原告本人尋問の結果、診療録の客観的記載等からして、信用できないと主張する。
 まず、本件交通事故は、乙16によれば、比較的軽微な事故ということができ、一般に後遺障害等級に該当するような脊髄症状を引き出すような事故とは見られない。

 しかし、甲24によれば、原告は、原告車の後部座席で、後ろを振り返った瞬間に追突され、首をねじった形になったということであり、確かに、このような態様の事故ならば、軽度の衝撃でも後遺障害等級に該当するような脊髄症状が生じたとしても不自然ではない。
 また、日付の訂正については、過去の診断日での症状記載を求められ、診断書作成日を誤って記載してしまうことは珍しいことではなく、これをもって上記判定用紙の信用性を否定することはできない。


 さらに、被告らが引用する原告本人尋問の結果は、示談書の作成経緯の中で聞かれた質問であり、前後の流れの中で(被告ら代理人の「あなたは示談する気になった一つの理由、病院をやめた理由にそんなに重くないと思ったからもう働こうと思って治療をやめたんだと言いましたね、さっき。」という質問に引き続いてなされた)、原告が十分に記憶を喚起せずに自己に有利に述べようとしたとも考えられる。

 確かに、診療録(乙10ないし12)の記載によれば、上肢のシビレが交互に出ていること、筋力テストで好成績を示していること、上肢や下肢等の運動障害について記載がないこと等が認められ、これによれば原告の後遺障害の程度は重くはないかのようである。
 しかし、症状があれば記載されないはずはないという前提には不明確な点があるほか、上肢のシビレが交互に出ている事実などをしても、上記脊髄症状判定用紙記載の事実そのものを否定することまではできない。

(三) さらに、原告は、本件交通事故と第2事故とも因果関係があるとし、第2事故後の原告の症状をもとに後遺障害等級が決せられるべきであると主張する。
 この点につき、診療録(乙12)によれば、第2事故につき、原告は、作業中、2~3mの高さから転落したものとされている。これに対し、原告は、脚立の一段目に上ろうとしたところで、意識を喪失し、転倒したと主張する。

 診療録の記載には客観性があるし、本件交通事故後の原告の症状に、意識喪失等の記載がないこと、また、原告主張のように従前から意識喪失が出ていたのであれば、高い脚立に登ることは自殺行為であるとも考えられることなどから、第2事故と本件交通事故との因果関係は認めることはできない。

(四) 原告の症状固定時期については、済陽医師が「症状固定時期は受傷から6か月程度」としていること、上記(一)で認定した事実によれば、原告は、同日までも仕事をしていたと考えられ、治ゆを遅らせていたと考えられること、第2事故は、原告が無理をして脚立の高いところに登ったことによるものと考えられること等から、第2事故のあった前日の平成7年10月25日をもって、症状固定日ととらえるべきである。

 そして、同症状固定日による原告の後遺障害等級は、上記脊髄症状判定用紙の記載により、後遺障害等級9級10号と判断する。

2 争点二(素因減額)について
(一) 被告は、原告には脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症の素因が存在し、これによって少なくとも50%の減額がなされるべきであると主張する。

(二) 確かに、乙19の1ないし4、乙22ないし25によれば、脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症のいずれも難病に指定されていること、本件交通事故のみを契機にこれらが発症したとは考えられないこと、本件交通事故がなくても日常生活もしくは受傷の機会により同様の症状が発生した可能性があることなどが認められる。

 しかし、原告本人尋問の結果によれば、原告は、これまで、脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症の治療を受けたことはなく、かかる病態による症状が発現したこともないことが認められる。
 また、原告が事故前に罹患していた脊柱管狭窄症、後縦靱帯骨化症の程度についても、本件全証拠によっても明らかではない。


(三) 以上の諸事情を考慮すれば、原告が罹患していた脊柱管狭窄症、後縦靭帯骨化症が、原告が受けた治療の程度、期間、さらには、後遺障害に与えた影響は30%を超えないものと考えられ、右割合を本件交通事故による原告の総損害から控除するものとする。
以上:3,510文字

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