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母指関節可動域制限についての平成25年4月23日京都地裁判決一部紹介

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平成29年 6月20日(火):初稿
○「母指関節可動域制限についての平成25年9月30日横浜地裁判決一部紹介」に続いて母指IP関節可動域制限に関する判例紹介です。
左拇指IP関節機能障害を残し自賠責14級9号認定も、労災認定では10級6号が残存する36歳男子給与所得者の後遺障害逸失利益認定につき、「関節可動域表示並びに測定法」等による可動域角度の測定によれば、原告の「左拇指IP関節の屈曲・伸展の可動角度が、健側の2分の1以下に制限されている」と認定して、実収入を基礎収入に、67歳までの30年間27%の労働能力喪失により認めた平成25年4月23日京都地裁判決(自保ジャーナル・第1902号)の逸失利益認定部分を紹介します。


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第三 当裁判所の判断
1 責任原因及び過失割合


        (中略)

3 後遺障害に係る損害
(1)逸失利益(原告主張額1925万4828円)

① 前記第二、1、(4)の丙川医師の症状固定診断に誤りがあることを窺わせる証拠はないから、平成20年9月29日を症状固定日と認める。


ア 労働基準監督署長は、原告の左手第1指IP関節脱臼骨折の後遺障害として、左拇指IP関節の可動域が健側に比して2分の1以下に制限されているから「左手の母指の用を廃した」ものとして、労働者災害補償保険法施行規則別表第二10級6号に該当する障害が残存する旨判断したが(前記第二、1、(5)、②)、被告は、上記機能障害の残存を否定するので、この点について判断する。

イ 証拠(略)によると、原告の拇指IP関節屈曲・伸展の可動域角度について、次の測定結果が存在することが認められる。
(ア) 測定者不明の平成20年11月11日付け測定
 屈曲/伸展 右86/0、左48/-10

(イ) 労災協力医・丙川医師の診断(平成20年12月17日ころ。他動と推測される。)
 屈曲/伸展 右90/0、左48/-10

(ウ) C整形外科・丙川医師の診断(平成21年8月3日。他動)
 屈曲/伸展 右90/0、左50/-10

(エ) B病院丁山医師の診断(平成22年1月6日。他動)
 屈曲/伸展 右90/0、左50/-10

ウ 上記イ(ア)ないし(エ)の診断(検査)結果によれば、症状固定日以降、原告の左拇指IP関節の屈曲・伸展の可動域角度が、健側の2分の1以下に制限されているものと認められる。

エ これに対し、被告は、「診療録によると、原告の左拇指IP関節の可動域は、次第に改善しており、丁山医師の意見書によると、平成20年9月29日の症状固定時の上記関節可動域は、他動で屈曲70度、伸展-5度であり、左拇指IP関節の可動域が健側の2分の1以下に制限されているとはいえない。原告の上記関節可動域は、症状固定後、制限が高まっているが、その合理的理由は見当たらない。」などと主張する。

 証拠(略)によると、丁山医師は、原告の拇指IP関節の屈曲・伸展の可動域角度として、平成19年11月30日左0/30(屈曲/伸展。以下同じ)、同年12月14日左60/-5、同年12月21日左60/0、平成20年2月12日左60/ -25、同年3月26日左75/-10、同年4月15日左75/-10、同年7月1日左他動85/0、同年9月29日左他動90/0、右他動70/-5と測定したことが認められ、これによると、原告の左拇指IP関節の可動域は、本件事故直後に比し次第に改善したかのようであり、また、上記イ認定の各測定結果と対比すると、症状固定後、急激に悪化したかのようである。

 しかし、証拠(略)及び弁論の全趣旨によると、症状固定時前後の測定結果の差異は、丁山医師が、平成20年9月29日以前は、MP関節をできるだけ屈曲させて測定していたのに対し、平成22年1月6日の測定の際はMP関節を0度の状態で測定したこと、及び上記イ(ア)ないし(ウ)の測定者もMP関節を0度の状態で測定したことによるものと認められる。したがって、症状固定時まで上記関節可動域が改善したのは事実と考えられるが、平成20年9月29日までの丁山医師の測定方法と、同年11月11日以降の丁山医師を含む各測定者の測定方法は異なるから、これらの測定数値のみから、症状固定後、可動域制限が悪化したということはできない。

 平成16年6月4日基発第0604003号別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」及び日本整形外科学会身体障害者委員会・日本リハビリテーションセンター医学会評価基準委員会作成の「関節可動域表示並びに測定法」によれば、測定にあたっては、基本軸の固定が大切であり、手の拇指IP関節については第1基節骨を基本軸とし、第1末節骨を移動軸とするとされており、また、上記測定要領の参考図からすると、手の拇指IP関節の可動域角度の測定の際には、MP関節を屈曲させない肢位で測定することが予定されているものと認められるから、平成20年9月29日までの丁山医師の測定方法ではなく、同年11月11日以降の各測定者の測定方法が相当である。

 被告は、上記測定方法の相違により測定結果に上記のような差異が生ずることはなく、原告が医師の意見等を取得し、労災において後遺障害等級認定の獲得を目指していた同日以降の時期における測定結果は信用性が高くない旨主張する。しかし、証拠(略)及び原告本人尋問の結果によると、B病院の今井医師が、症状固定直前の平成20年9月12日に、根元を固定しMP関節を屈曲させない方法で原告の左拇指IP関節可動域角度を測定した結果は、屈曲40度、伸展-10度であったことが認められ、これを同月29日以前の丁山医師の測定結果と対比すると、その違いは歴然としており、測定方法の相違が測定結果の差異を生じたさせたことが明らかといえる。これに反する証拠(略)は採用できない。

 前記第二、1、(5)、①の事実も上記認定を左右しない。他に、原告の左拇指IP関節の屈曲・伸展の可動域角度が、健側の2分の1以下に制限されているとの上記認定を揺るがすに足りる証拠はない。

オ 原告は、上記の左拇指IP関節機能障害の後遺障害のため、その労働能力の27%を喪失したものと認める。なお、証拠(略)によれば、原告には、左拇指の運動時痛も残存したことが認められるが、これは、上記機能障害の派生障害と考えられるから、独自の後遺障害としての評価はしない。

 現時点では、本件事故前と比較し、原告に明らかな減収はないとしても、証拠(略)及び原告本人尋問の結果によれば、早出をして前倒しに仕事をするなどの原告の努力もあってのことと認められ、労働能力喪失期間が30年と長きに亘ることも考慮すると、上記の労働能力喪失割合を認めるのが相当である。

③ 証拠(略)によれば、平成19年分の原告の給与収入は463万9075円であることが認められる。これを基礎収入とし、証拠(略)によれば、原告は昭和46年6月生まれで、本件事故時36歳、症状固定当時37歳であると認められるから、症状固定時から67歳までの30年間の逸失利益の同事故時における現価を算定すると、1833万7,961円になる(1円未満切り捨て。以下同じ)。
 463万9075×0.27×(15.5928-0.9523)≒1833万7961
 1833万7961円に2割の過失相殺をすると、1467万368円となる。

(2) 後遺障害慰謝料(原告主張額530万円)
 後遺障害の部位、内容、程度等を総合し、530万円をもって相当と認める。これに2割の過失相殺をすると、424万円となる。

以上:3,139文字

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