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会社役員報酬減額なしでの休業損害・逸失利益についての参考判例紹介1

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平成28年 9月 8日:初稿
○会社役員が交通事故で傷害を受け、業務を休業しても役員報酬が減額されず支払が継続されている場合、示談交渉段階での保険会社は、原則として休業損害・逸失利益が発生しないとして休業損害・逸失利益を損害に計上しません。特に後遺障害等級12級以下の場合、報酬減額が証明できないとして休業損害・逸失利益いずれも認めない扱いです。

○しかし、現実にその役員が交通事故傷害により、一部業務を休業している場合、会社売上等に影響していることは間違いありません。しかし、役員休業による会社売上減を会社自体の損害として認められるかと言うと、これは企業損害として、会社自体は交通事故によって直接的に加害されていないとして認められないのが原則です。

○交通事故による傷害で役員が休業しても役員報酬減額がない場合、会社は役員から労務提供がないのにも拘わらず、役員報酬中の労務対価部分を支払ったのだから、交通事故により本来支払わなくても良い支出を余儀なくされた部分を会社自体の損害として交通事故加害者に対して賠償請求できます。問題は、請求権者が会社となり、その損害額を立証しなければならず、ここが難しいところです。

○この点について、会社役員の報酬中には、役員として実際に稼働する対価としての実質を持つ部分と、利益配当等の実質を持つ部分とがあり、後者は役員の地位にある限り当然に支払われるものであるから、会社役員の逸失利益については、役員として実際に稼働する対価としての実質を持つ部分についてのみ判断すれば足りるとし、交通事故により頭部外傷、頭皮挫創・割傷、全身打撲、左腓骨遠位端骨折、右肩甲関節周囲炎、同拘縮の傷害を負った被害者(57歳・男・会社代表取締役)の休業損害につき、年収の8割を実際の稼働による対価とし、これを基礎として入院していた計54日間は100パーセント、その他の期間中、403日間については50パーセント、336日間については25パーセントの労働能力を制限されたものとして算定され、事故に遭った直後、十分に働くことができなかった場合に、被害者の勤務先会社が被害者に対して役員報酬を支払っていたことにつき、これは被害者及びその家族が、事故以前と同程度の生活を維持するために支払をしたものであるとして、被害者の労務の対価に相当する分の限度で事故と相当因果関係ある損害と認めた平成10年9月21日東京地裁判決(交通民集31巻5号1421頁)全文を2回に分けて紹介します。

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主  文
一 被告らは、原告X1に対し、連帯して金195万円及びこれに対する平成6年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告A株式会社に対し、連帯して金925万9903円及びこれに対する平成6年7月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
三 原告X2の請求並びに原告X1及び原告A株式会社のその余の請求をいずれも棄却する。
四 訴訟費用は、2分の1を被告らの負担とし、その余を原告らの負担とする。
五 この判決は、第一項及び第二項について、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

一 被告らは、原告X1に対し、連帯して金440万円及びこれに対する平成6年7月31日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
二 被告らは、原告X2に対し、連帯して金132万円及びこれに対する平成6年7月31日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 被告らは、原告古河樹脂加工株式会社に対し、連帯して金2083万6222円及びこれに対する平成6年7月31日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、住宅街の信号機により交通整理の行われていない交差点において、左折しようとした自転車と、左折する方向から交差道路を直進してきた自動車が出会頭に衝突した交通事故について、自転車に乗っていた者及びその妻、自転車の運転者が役員をしていた会社が、自動車の運転者及び所有者に対し、民法709条、711条(類推)、自動車損害賠償保障法三条に基づき、損害賠償を求めた事案である。

一 前提となる事実(証拠を掲げないものは争いがない。)
1 次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 発生日時 平成6年7月31日午後0時5分ころ
(二) 発生場所 東京都杉並区上荻四丁目五番一号先路上
(三) 加害車両 被告Y1が所有し、被告Y1が運転していた普通乗用自動車(トヨタセルシオ、練馬33も9893)
(四) 被害車両 原告X1(以下「原告X1」という。)が乗っていた自転車
(五) 事故態様 北から南へ進行し、信号機による交通整理の行われていない交差点を西へ左折しようとした被害車両が、交差道路を東から西へ進行してきた加害車両と出会頭に衝突した。

2 原告X1の負傷内容及び入通院の経過
 原告(昭和12年5月13日生まれ)は、本件事故により、頭部外傷、頭皮挫創・割傷、全身打撲、左腓骨遠位端骨折、右肩甲関節周囲炎、同拘縮の診断を受け、次のとおり入通院して治療を受けた(甲4~15、18の1)。
(一) 杏林大学医学部附属病院
 入院 平成6年7月31日から同年8月3日 (合計4日)

(二) 社会福祉法人康和会久我山病院
 入院 平成6年8月3日から同年9月15日 (合計44日)
 通院 平成6年9月30日から平成7年6月20日 (実通院日数21日)
 入院 平成7年6月22日から同年6月28日 (合計7日)
 通院 平成7年7月3日から同年10月30日 (実通院日数48日)

(三) 医療法人社団岡田クリニック
 通院 平成7年10月31日から平成8年9月30日 (実通院日数113日)

3 原告らの関係
 原告X1は、原告古河樹脂加工株式会社(以下「原告会社」という。)の代表取締役であり、原告X2(以下「原告X2」という。)は、原告X1の妻である(甲24、弁論の全趣旨)。

二 争点
1 責任原因・過失相殺

(一) 被告の主張
 被告らの責任原因については争う。
 原告X1は、被害車両を運転して下り坂を北から南方向に走行し、一時停止標識があるのに、一時停止をすることなく交差点に進入して、交差点を東方向へ左折しようとした。ところが、交差道路の東方向の安全を確認することなく、かなり膨らんで交差点を左折しようとしたため、交差道路を東から西方向へ進行してきた加害車両の走行車線内に進入し、加害車両と衝突した。したがって、被告らに責任原因が認められるとしても、原告X1にも、少なくとも4割の過失が認められる。

(二) 原告の反論
 原告X1は、本件交差点の手前で停止線で一時停止したか否か鮮明な記憶はない。しかし、片足を地面に引きずるように接触させて減速し、身を乗り出すようにして、東西道路の西方向の車両の有無を確認し、自らが進入する車線の安全を確認した。そして、すっかり減速した速度を回復させるため、ペダルを2、3回漕ぎ出して本件交差点を左折したところ、東西道路の東方向から右側(北側)の車線を走行してきた加害車両とほぼ正面衝突したものであるから、本件事故発生の責任は、すべて被告Y1にある。原告X1が、本件交差点の手前で一時停止をすることや東西道路の東方向の確認を怠ったことは本件事故発生の原因ではなく、原告X1に過失はない。

2 各損害額

第三 争点に対する判断
一 責任原因・過失相殺(争点1)
1 前提となる事実及び証拠(甲二の1・2、19の1~5、20、29~34、50の1・2、51~5三、乙一の1~10、二の1~14、3、原告X1本人、被告Y1本人)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。

(一) 事故発生場所は、東京都杉並区上荻付近の住宅街を青梅街道方面から神明通り方面に南北方向に走るアスファルト舗装道路(以下「南北道路」という。)と、環状八号線方面から善福寺方面に東西方向に走るアスファルト舗装道路(以下「東西道路」という。)が交差する交差点(以下「本件交差点」という。)付近である。本件交差点には信号機は設置されておらず、南西角及び東北角にカーブミラーが設置され、南北道路には、交差点の手前に一時停止の標識が設置され、停止線が引かれている。

 南北道路は、幅員約5・8メートルで、両側に幅員約1・3メートルの路側帯(側溝を含む)があり、車両通行部分との間に白線が引かれている。南北道路は、南方向へ一方通行の規制がなされており、北から本件交差点に向かって緩やかな下り坂となっている。東西道路は、幅員約6・8メートルで中央線が引かれており、北側に約0・7メートル、南側に約1・4メートルの路側帯(いずれも側溝を含む)がある。車両通行部分の幅員は、中央線を挟んで、北側及び南側とも約2・3メートルである。車両通行部分との間には、北側には白線が引かれ、南側にはガードレールが設置されている。東西道路は、東方向から進行して来ると、本件交差点で南側に約15度折れて西方向へ向かっている。本件交差点の角にはいずれも建物が建っており、南北道路及び東西道路のいずれにおいても、本件交差点に進入するにあたり、左右の見通しは悪い。なお、東西道路は、最高速度が時速30キロメートルに制限されている。

(二) 原告X1は、本件事故当日、被害車両を運転して上石神井方面から帰宅するため、西から東へ進行していた。原告X1は、本来、南北道路よりも一本東側に南北に走る道路に出ようと考えていたが、それより手前の南北道路で右折してしまい、そのまま南方向へ進行した。原告X1は、途中2、3回軽くブレーキをかけながら、おおむね東側路側帯の白線に沿って南北道路を数十メートル進行し、本件交差点の手前に差し掛かった。原告X1は、本件交差点を左折しようと考え、一時停止線で停止はしなかったが、スポーツサンダルを履いた左足を地面に滑らせて減速し、東西道路の西方向から来る車両の有無を確認した。その結果、車両は存在しなかったので、東方向を確認することなく左折を開始し、被害車両の前輪の少し前方の路面を見て2、3回ペダルを漕いだ。

(三) 被告Y1は、加害車両(車両の全幅は1・83メートル)を運転し、東西道路を時速約30キロメートルから35キロメートルで西方向へ進行して本件交差点の手前に差し掛かった。交通は閑散としており、すれ違う対向車両や加害車両の前方を走行している車両はなかった。被告Y1は、本件交差点を西方向へ直進しようと考え、本件交差点の西南角にあるカーブミラーを確認することなく、加害車両の右側部分が中央線を超えて反対車線にややはみ出した状態で直進しようとした。原告X1は、左折を開始したものの、前方路面を見つめてペダルを漕ぎ、東西道路の中央線寄りに接近してきたため、これを発見した被告Y1は急ブレーキをかけた。しかし、間に合わず、本件交差点入口付近で、かつ、中央線付近の反対車線(北側車線)内において、加害車両の前部右側部分と被害車両の前部が衝突した。原告X1は、衝突と同時にボンネットに跳ね上げられ、フロントガラス左側部分に頭部から衝突した。加害車両は、本件交差点中央のやや南側車線寄りに、車両前部をやや南側へ向けて停車し、原告X1は助手席側に転落した。
 被告Y1は、降車して原告X1と言葉を交わしたところ、原告X1は、「すみません。」とか、「道を一本間違えた。」などと述べた。

(四) 東西道路を東方向から西方向へ進行する車両は、右車輪を中央線に乗せたり、さらには、若干反対車線にはみ出して本件交差点を走行することが少なくはなく、時には、反対車線に大きくはみ出して走行する車両もある。


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