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低髄液圧症候群との因果関係を認めた平成26年12月6日さいたま地裁判決紹介2

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平成28年 5月11日:初稿
○「低髄液圧症候群との因果関係を認めた平成26年12月6日さいたま地裁判決紹介1」の続きで,被告の主張です。



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5 被告の主張
(1) 原告が,本件事故により低髄液圧症候群を発症したとは認められない。

 低髄液圧症候群について,現在の我が国において最も信頼性の高い診断基準は厚生労働省研究班によるものであり,この基準に従って診断するのが相当であるところ,本件ではこの基準を満たさないから,原告が低髄液圧症候群を発症したと診断することは相当でない。具体的には以下のとおりである。

ア 起立性頭痛について
 一般に,低髄液圧症候群の診断においては,事故当初からの,立位又は坐位になると増悪する頭痛(起立性頭痛)の存在が極めて重要である。国際頭痛分類第2版における突発性低髄液圧性症候群の診断基準(7.2.3)のうち,「15分以内に憎悪する頭痛」という規定(甲88資料①)が,平成25年7月改訂(第3版)において削除され,時間的制限はなくなっても「起立性」頭痛が診断基準として掲げられていることには代わりがない。

 原告は,事故翌日以降,通院した□□□□クリニック及び□□□クリニックのいずれにおいても,起立性頭痛をうかがわせる所見は一切認められていない(単なる頭痛の記載すらない。)。原告に,起き上がると痛くなり,横になると消失するという起立性頭痛の症状が存在したのであれば,医師にそれを訴えないはずがなく,医師がそれをカルテに記載しないはずがない。

 原告は,事故当日から耐え難い激しい頭痛があり,しかも,それが起立性頭痛であったかのような供述をしているが,事故当日に警察の実況見分に立会い,警察官から救急車を呼ぶことを打診されてもそれを断り,その後,午後零時30分から□□□医院での説明会を一人で行い,午後6時30分から□□病院の医師と仕事の面談をし,事故当日及び夜間に受診しなかったという原告の一連の行動は,交通事故に遭遇し,耐え難い激しい頭痛等の症状がある者と行動として不自然きわまりない。したがって,事故当日,耐え難い激しい頭痛等があったが,受診を我慢したなどという原告の証言は信用できないものであって,むしろ,立位又は坐位であっても,何ら頭痛を訴えることなくリハビリ等を行っている様子が窺える。

 原告は,□□病院に入院後は,確かに頭痛を多く訴えるようにはなっているが,看護記録には,「起立性めまい」を示唆する記載は多数あっても,起立性頭痛を示唆する記載は一切見当たらず,むしろ,ベッド上横臥の生活をしていてもなお頭痛を訴えていることからすれば,横になったら消失するのが特徴である起立性頭痛でなかったことが明らかである。

イ 脳槽シンチについて
 A意見書(甲88)が脳槽シンチ上,髄液漏れの存在が確認できたとする資料③は,右下隅に印字されている日付から,平成18年8月20日に撮影されていることが明らかであり,原告のものでないことが強く疑われる。

 上記資料③が原告のものであると仮定しても,本件事故から約8か月近くが経過した平成21年3月3日に撮影されたということであろうから,本件事故による所見として認めることは極めて困難である。
 RI脳槽シンチの髄液漏出像について,厚生労働省の診断基準によれば,それだけで低髄液圧症候群を診断することはできないのであるから(像によって精々「疑」ないし「強疑」という判断がなされるにとどまる。),本件においてもRI脳槽シンチの髄液漏出像だけで低髄液圧症候群の診断を下すことはできない。針穴からの髄液漏出を否定することができない。

ウ ブラッドパッチの効果について
 国際頭痛分類第2版において,硬膜外ブラッドパッチ後72時間以内に頭痛が消失することが診断基準の一つとして掲げられている。
 しかし,原告の場合,9回ものブラッドパッチを行ってもなお症状の改善が認められなかったのであり,血液ではなく人工髄液(アートセレブ)を注入しても,症状は劇的に消失(完治)したというのであるから(甲84の6・13頁,甲84の7・13頁,甲84の8・8頁),この点でも低髄液圧症候群は否定的と言わざるを得ない。しかも,点滴でも症状が改善したというのであるから,その効果があったとは到底認められない。

 また,3回のブラッドパッチを行ったところ,その後のRI脳槽シンチ時には髄液漏が改善(24時間RI残存率が改善)したという主張についても,単にその検査時には針穴から髄液が漏出しなかったに過ぎないという説明が可能であるから,診断の決め手にならない。

エ 他傷病・心因について
(ア) 本件では,当初,頸椎捻挫の診断がなされており,頸椎捻挫やむち打ち損傷において,頭痛はごく一般的に認められる症状であることから,頭痛が存在したとしても,頸椎捻挫等の整形外科的な要因による可能性の方が圧倒的に高いものである。

(イ) □□病院に入院中は,頭痛の原因に関して,起立性低血圧の指摘がなされたり,心因性の指摘がなされ,心療内科の受診を進められたり,脊髄の器質的障害はなく自律神経失調症状と肩甲帯の下垂による筋力低下が原因であるとした指摘が再三なされており,これらの原因も除外することができない。

(ウ) 山王病院においても,向精神薬,睡眠薬が大量に投与されており,かつ医学的理由は全く不明であるが,「内容は何でもOK」という点滴が著効していることに鑑みれば,原告の症状は,髄液漏れという器質性のものではなく,心因性のものであることが強く窺える。

(エ) 原告は,本件事故前から,ヘルニアにより歩行困難になるほどの腰痛を訴えていたり(甲86・13頁・91頁・132頁),原因不明の下肢痛を訴えるなどして通院しており,もともと他の傷病による痛みも訴えていたのであり,入院中の訴えの大多数は,腰痛である。

(オ) したがって,原告の本件事故後の症状には,他傷病の影響や心因が強く窺えることからしても,本件事故による低髄液圧症候群と診断することはできない。

オ 本件事故によって低髄液圧症候群を発症したものとは到底みとめられず,平成21年2月12日(山王病院初診時)以降の治療費等の請求に関しては,本件事故との相当因果関係を認める余地がない。

(2) 症状固定について
ア 追突前,被告車両は相当程度に減速していたことから,追突による衝撃は軽微なものであったと推察される。原告車両の損傷はリヤバンパーカバー程度であり軽いものであり,追突の衝撃は被告本人がほとんど感じない程度のものであった。実際に原告車両の損傷は,バンパーの取替え(修理費7万9033円)にとどまり,被告に至っては,ほとんど損傷がみられない(乙4,5)。したがって原告が受けた衝撃も極めて軽微であったと考えられる。

イ 原告は,事故直後,「意識消失なし,頭部外傷なし」という状態で,元気に警察の現場検証に立ち会ったとのことである。□□□□クリニックにおいてもロキソニン(消炎鎮痛剤)等の投薬加療が選択されただけであった。本件事故後1か月くらいからは診療内容に変化がなく,消炎鎮痛等処置及びシップテープ等の支給のみであった。通院頻度も平成24年10月頃からは少なくなっている。

ウ 原告の本件事故による傷害は,軽度の頸椎捻挫ないし外傷性頸部症候群にとどまる(甲79)のであるから,本件事故から6か月程度で治癒ないし症状固定することが多く,実際に治療経過からみても,平成21年1月上旬頃に治癒ないし症状固定したものと判断すべきである。

(3) 後遺障害について
 本件では,原告が残存していると訴える症状が,器質的障害か,心因のものか,疾病によるものか,さらには詐病によるものか等,全く不明である。□□病院においては,器質的障害は否定的で,不定愁訴が主体であり,心因性や自律神経症状であるという指摘がなされている(甲86・95丁・124丁・138丁)。したがって,原告が残存しているという症状に基づく損害と,本件事故との間に相当因果関係を認めることはできない。

 平成20年10月8日に□□病院を軽快退院する時の状態は,自律神経失調症状と筋力低下のために,ふらつきなどはあるものの,退院1週間後には友人の結婚式の司会をするところまで回復し(甲86・130頁),心配なことは腰痛で,それも既往障害であるというのだから,退院時において本件事故による後遺障害は全く認められない。そして,外傷による症状は,事故直後が最も重篤で,その後,経時的に軽快していくのが通常であるのだから,退院後に症状が悪化したとしても,それは事故との相当因果関係が認められないものである。

 したがって,仮に,平成21年1月の時点において退院時より症状が悪化していたとしても,それは本件事故による後遺障害とは認められない。
 そもそも,原告は,現状においても,7級の後遺障害を認めることは到底できない。

(4) 原告主張の損害を争い,素因減額を主張する。
 本件では後遺障害を認定することはできないが,何らかの後遺障害を認めることがあったとしても,本件事故の軽微さや診療経緯からすれば,本件症状の重篤化は,原告の既往(腰痛等),自律神経失調,心因等が多大に影響していることが明らかであるから,民法722条2項に照らして大幅な減額がなされるべきである。

(5) 既払金
ア 被告側は原告に対し,合計56万9113円を支払った(乙6)。
イ 労災から,原告に,休業特別支給金を除き合計637万7558円が支払済みであるから(乙7),賠償額から控除すべきである。


以上:3,956文字

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