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第14級で50%逸失利益を認めた平成27年2月27日札幌地裁判決紹介1

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平成27年12月23日:初稿
○自賠責後遺障害等級は、形式的に第14級と認定しながら、14級の一般的労働能力喪失率は5%であるところ、60歳女子ダンス教室インストラクターの後遺障害逸失利益を具体的不利益から労働能力喪失率50%、後遺障害慰謝料400万円を認めた平成27年2月27日札幌地裁判決(自保ジャーナル・第1945号)の損害部分についての当事者主張・裁判所判断部分全文を2回に分けて紹介します。この判例は、当事務所で扱っている多くの自賠責認定後遺障害等級第14級事案について、大変、参考になる判例です。


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2 争点2 原告甲野の損害額
 原告甲野の損害額は以下のとおりと認められる(証拠等認定根拠は各部分に記載した。)。この判断結果を一覧性をもってまとめたものとして別紙2原告甲野の損害額一覧表参照。
(1) 治療費(文書料含む。) 1187万3201円(請求額1193万0271円)
ア 平成24年6月7日(症状固定日)までの分
 1181万8861円(別紙3(原告準備書面(20)の抜粋)の2項の平成23年8月11日分から平成24年6月7日分(4560円)までの合計である。別紙3の該当部分に引用の証拠及び弁論の全趣旨[裁判所の平成26年3月17日付け釈明に対する第1回弁論準備手続期日における被告乙山の主張])
イ 症状固定日後の分 5万4340円
(ア) 別紙3の2項の平成24年6月21日の8500円(1万3060円から6月7日分の4,560円を控除した額)から平成25年7月31日分までの合計10万3120円(別紙3の該当部分に引用の証拠)
(イ) 平成25年8月28日分 5560円
 平成25年8月28日については、原告甲野は8290円を請求するが、同年8月分の診療報酬明細書の請求点数2625点のうち、2345点分については、被告乙山から本件事故と関係のないものである旨の主張がされているところであり、280点分(1点10円で2800円分)を超える部分につき本件事故に関するものと認めるに足りる証拠はない。原告甲野の負担割合はその30%であるから、840円が本件事故と関係のある同年8月分の診療費である。他に文書料3360円と丁山医師への意見書代1360円が認められるので、以上の合計は5560円である。
(ウ) 以上の合計は10万8680円であるところ、被告乙山は、症状固定後の治療費は、通常のリハビリが継続されているに過ぎず、被告乙山が賠償すべき損害ではないと主張するが、リハビリは運動機能低下、生活機能低下の防止のために一定の効果があることは認められるから、症状固定後の損害ではあるものの、その5割につき、被告乙山が賠償すべき損害と認めるのが相当である。

(2) 入院雑費 36万6000円(請求額39万3600円)
ア 原告甲野の主張
 日額1600円×246日
イ 当裁判所の判断
 日額1500円×244日(前提となる事実(3))

(3) 通院費 9600円(請求額認容)
 別紙3の平成24年5月10日から平成25年8月28日までの通院20日間に関し、日額480円の通院交通費を要したことが認められる(弁論の全趣旨。c駅からd駅)。
 480円×20日

(4) 治療慰謝料 305万円(請求額336万円)
 原告甲野の傷害の部位、程度、入通院状況等の諸事情を考慮し、上記額が相当と判断した。

(5) 休業損害 239万8668円(請求額451万6068円)
ア 原告甲野の基礎収入についての前提事実
 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、原告甲野は、本件事故当時、夫の甲野四郎が代表取締役を務める有限会社Fダンススタジオ(以下「ダンス会社」という。)の取締役であり、ダンスのインストラクターをし、平成21年、平成22年には役員報酬として年300万円を得ていたことが認められる。
イ 原告甲野の主張
 本件事故前2年間の平均年収670万0518円(日額1万8358円)として246日分の休業損害が認められる。
 1万8358円×246日=451万6068円
 2年間の平均年収の根拠は、ダンス会社の役員報酬年300万円(2年で600万円)が全額労務対価であることに加え、原告甲野が個人でアルバイト的にダンスパーティーを主催し、それによる収入が、平成21年分と平成22年分で合計740万1036円であることである。
 また、原告甲野は、主婦として家事労働も行っていた。

ウ 被告乙山の主張
 原告甲野のダンス会社の役員報酬の全てが労務対価であるとはいえず、少なくともその5割は会社役員としての利益配当部分と見るのが相当であるから、労務対価部分は年150万円が相当である。
 ダンスパーティーの収益については、収支をまとめた一覧表が証拠として提出されているだけで、収支の詳細を明らかにする客観的資料(領収書等)は提出されていないため、収益があったか否かさえ明らかではない。仮にそのダンスパーティーにより収益があったとしても、原告甲野はその収入を税務申告しておらず、原告甲野個人が主催したことを示す証拠も存在しないのであり、パーティーの規模や名称等からしてダンス会社が主催したものと推認され、原告甲野個人の収入とは認められない。
 原告甲野が家事労働を行っていたかは不知。

エ 当裁判所の判断
(ア) 上記アの前提事実、証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、次の事実が認められる。
a ダンス会社は、役員が原告甲野とその夫の2人だけで、他に従業員もいない会社であるため、原告甲野とその夫が、受講者に直接ダンスを指導し、受講生らからの入会金、月会費、レッスン券を主な収入源としている。原告甲野は、会社の金銭の管理も行っていた。経費としては、平成21年及び平成22年については、原告甲野とその夫の役員報酬がそれぞれ年300万円(計600万円)、他に地代・家賃が年360万円であり、これらが経費の大部分を占めていた。原告甲野と夫は、それぞれ担当する受講者が別々である(原告甲野の方が多くの受講生を担当していた。)ため、原告甲野がダンスのレッスンができない状態になれば、原告甲野が担当していた受講者はダンス会社での受講を止めてしまう原因になる。

 原告甲野は平成23年8月11日の本件事故後、244日間入院しているが、平成23年のダンス会社の売上高(会社の決算報告書に計上されている分)は、平成21年が1045万8500円、平成22年が727万8600円であったのと比較して481万1600円にまで減少しており、本件事故による原告甲野の休業も相当程度影響しているものと推認される。また、平成23年には原告甲野に対して役員報酬が支払われていない。なお、ダンス会社の売上高の減少及び原告甲野に対する役員報酬の不支給は平成24年も同様である。

b 平成21年及び平成22年に原告甲野が関与してダンスパーティーが開催され、一定の収益が得られたことが認められるが(ただし、証拠(略)のみで、税務申告の資料もなく、収益の詳細の客観的な原資料も提出されていないため、直ちに証拠(略)記載の収益があったとまでは認められない。)、原告甲野個人の収入として税務申告されているわけでもなく(b市長に対する調査嘱託、もっともダンス会社の収入として申告していることもうかがえない。)、平成21年8月23日開催のパーティーは「G記念舞踏晩餐会」というダンス会社の主催であることをうかがわせる名称であり、その会場となったホテルに支払った会場使用料の領収証の宛先はダンス会社であった。

c また、原告甲野は、夫と2人暮らしであり、家事労働も行っていた。

(イ) 上記認定事実に基づいて判断する。
 ダンス会社の主な収入は受講者からの入会金、月会費、レッスン券であり、原告甲野によるダンス指導という労務の提供の結果がそのまま会社の収入になり、会社の主要な経費として役員報酬が支払われていること、原告甲野の役員報酬の年額300万円は原告甲野が現実に夫と分担してダンス指導を行い、会社の金銭の管理も行っていることから見て、全額労務の対価として評価して差し支えない程度の金額であること、他に利益配当的部分が含まれているという具体的事情もうかがえないこと等からすれば、原告甲野がダンス会社から支給された役員報酬年300万円は、全額が労務の対価と認められる。

 ダンスパーティーの収益は、パーティーという興行が産み出した収益であって、原告甲野の労務の対価という性質のものではないし、上記(ア)bの事情に照らすと、ダンス会社の収益と見るのが自然であり、仮に原告甲野がダンスパーティーの準備を仕切り、その収益を夫から取得することを許されたことがあったとしても、それをもって原告甲野個人の休業損害の基礎となる収入と見ることはできない。

 なお、本件事故の前年の平成22年のダンス会社の損益計算書を見ると、売上高が727万8600円であるのに対し、原告甲野及び夫の役員報酬が計600万円、地代・家賃が360万円でそれのみで赤字であるから、経営的立場にもある原告甲野が現実に労務対価分として300万円を取得できる状況にあったのかという問題もあるが、ダンスパーティーの収益のように損益計算書に計上されないダンス会社の収益があったと認められる(弁論の全趣旨)上、夫との関係においても、原告甲野の方が受講生を多く担当し、売上により多く貢献していたといえることからすれば、300万円全額を労務対価と見て差し支えない。

 また、原告甲野は家事労働も行っているから、ダンス会社からの役員報酬と合わせて、平成23年の賃金センサス女子学歴計全年齢平均の年355万9000円を休業損害の基礎収入とみるべきである。
 原告甲野の入院期間が244日であることからすれば、症状固定日までの休業損害として、原告甲野が主張する246日分の休業損害を認めるのが相当である。
 355万9000円÷365×246=239万8668円

(6) 逸失利益 1671万5911円(請求額7387万1737円)
ア 基礎収入(前提事実)
 基礎収入については、休業損害と同様の争いがあるが、(5)の休業損害の部分で判断したとおり、ダンス会社の役員報酬の労務対価分300万円を含む年355万9000円と認める。

イ 原告甲野の主張
(ア) 原告甲野は、本件事故により、腰仙部痛、左下肢痛、右手関節・手部痛・関節可動域制限等の後遺障害を負い、体幹・四肢の筋力低下があり、臨床症状として手足に十分力が入らず、動作が遅い、手が不器用である、立つ、歩くのバランスが悪い、疲れやすい、正座などの姿勢が取れず、体が硬いといった症状が見られる。この後遺障害は日常生活上のものとしても「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの」に該当する(証拠(略)、なお、これは5級2号の表現であるが、証拠(略)では7級4号が相当であるとされている。また、証拠(略)では9級10号をうかがわせる表現となっている。)。

(イ) 原告甲野は、25歳でプロダンサーになった後、38歳までプロのインストラクターダンサーとプロの競技ダンサーとを兼任し、平成2年からプロの専門インストラクターをしてきたもので、本件事故がなければ、生涯(少なくとも85歳まで)それを続けていくつもりであった。しかし、本件事故により、プロダンサーとして致命的な後遺障害を負い、プロダンスパフォーマンスを行うことは全く不可能になり、自ら模範を示して練習生の相手をしなければならないインストラクター業を断念せざるを得なくなった。本件事故当時、60歳という年齢からして、それまで35年間続けてきたプロダンサーの仕事から他の仕事に転職することも事実上不可能であった(生活費を得るためにやむを得ず慣れないパート仕事をしたことはある。)。このような特殊な事情を考慮すれば、自算会が認定した後遺障害認定等級に拘らず、原告甲野が被ったプロダンサーとしての甚大な被害に見合う労働能力喪失率、喪失期間を認めるべきであり、症状固定時(平成24年6月7日)の61歳から67歳までの労働能力喪失率が92%、67歳から85歳までの労働能力喪失率が50%とすべきで
ある。
(ウ) 計算式
a 61歳から67歳まで
 670万0518円×0.92×5.134(6年の新ホフマン係数)=3164万8423円
b 67歳から85歳まで
 670万0518円×0.5×12.603(新ホフマン係数)=4222万3314円
 なお、原告甲野主張の新ホフマン係数は18年(24年-6年)に対応するものと解されるが、正しくは24年の新ホフマン係数15.4997から6年の新ホフマン係数5.1336を引いた10.3661を用いるべきであり、ここを修正すると、3472万9919円である。

ウ 被告乙山の主張
(ア) 原告甲野の後遺障害は腰仙部痛等で、他覚的所見はないとして自賠責保険の後遺障害認定で14級(局部に神経症状を残すもの)とされたものであり、特段の事情のない限り、労働能力喪失率は5%とすべきである。

(イ) 原告甲野は、プロダンサーとしての特別な身体的機能、能力等を強調し、それらの能力を失うことになったとし、競技会等で演技を競う現役のプロダンサーを想定しているが、本件事故当時、原告は現役のプロダンサーではなく、ダンス教師であって、現役のプロダンサー並みのアクロバチックな姿勢や動作がダンス教師として稼働するのに必要不可欠とはいえない。本件においては、ダンス教師としての業務を前提にその労働能力喪失率が検討されるべきであり、原告甲野の後遺障害の内容が比較的軽微な神経症状にすぎず、日常の運動動作に特段の障害はないこと、原告甲野の運動能力の低下が入院に伴う筋力の衰え、訓練不足等が主たる原因であること、主要関節等の可動域制限は大きなものではないこと等からすれば、原告甲野のダンス教師としての職業の特殊性を考慮して労働能力喪失率が5%を上回ることがあったとしても、その程度は後遺障害12級相当の14%を超えることはないものと考えられる。

(ウ) 労働能力喪失期間については、ダンス教師のような身体的負荷の大きい職業においては、一般的な就労可能年数を超える期間を認めることは不合理であり67歳までとすべきである。


以上:5,918文字

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