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自賠責保険後遺障害非該当を実質第12級後遺障害認定した判決全文紹介

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平成27年10月20日:初稿
○交通事故による後遺障害は、自賠責認定が極めて重要で、裁判官はなかなかこれに反する認定をしてくれないのが一般です。「交通事故による傷害としての半月板損傷に関連する裁判例紹介」で趣旨を紹介した判例のうち、右膝関節の機能障害については自賠責は非該当としたものを実質第12級に認定した平成9年5月28日東京地裁判決(交民30巻3号778頁)全文を紹介します。

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主  文
1 被告は、原告に対し、金1462万9338円及びこれに対する平成3年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告のその余の請求を棄却する。
3 訴訟費用は、これを10分し、その1を原告の負担とし、その余を被告の負担とする。
4 この判決は、第1項に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 被告は、原告に対し、金1621万9338円及びこれに対する平成3年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
一 争いのない事実

1 原告は、平成3年10月31日午後2時26分ころ、東京都北区岩渕町33番先路上において、右足を着いて自動二輪車(以下「原告車」という。)を停車させていたところ、被告が運転する普通乗用車(以下「被告車」という。)が原告の右足をひいたことにより負傷した(以下「本件交通事故」という。)。

2 原告は、本件交通事故により、右足関節外側靭帯断裂、右膝関節捻挫、右足内側半月板損傷の傷害を負い、平成3年10月31日から平成5年1月21日まで(実治療日数70日)赤羽病院に、平成4年4月21日から平成5年1月28日まで(実治療日数7日)東京都済生会中央病院にそれぞれ通院した。

3 原告は、被告から、本件交通事故の損害賠償として440万6211円の支払を受けた。

二 争点
1 原告の主張

(一) 本件交通事故の態様は次のとおりである。
 原告は、原告車を運転して、北本通りを川口方面から王子方面に向かつて第二車線を直進走行していたところ、対面信号が赤色を表示し原告車の前に4、5台が停車していた(被告車を含む。)ので、右停車車の左側(第二車線上)を直進し、被告車の左前方に右足を着けて停車した。このとき原告車の前には3台停車していた。

 原告は、対面信号が青色に変わつたが先行車が直ちに発進しなかつたため、そのまま停車していたところ、被告が、先行する原告車の発進を待たず、また、原告車の状況を十分に確認しないで、被告車を発進させたため、右足をひかれたものである。
 したがつて、本件交通事故は、被告の過失によるものであるから、民法709条に基づき、原告の損害を賠償すべき義務がある。
 なお、原告には本件交通事故につき過失はない。

(二) 原告は、本件交通事故により、次のとおり損害を受けた。
(1) 治療関係費 86万2793円
(2) 将来の手術費 100万0000円
 右膝内側半月板損傷が将来増悪した際に必要となる手術費。
(3) 休業損害 468万9960円
 原告は、平成3年10月31日(本件交通事故日)から平成5年1月28日(症状固定日)までの456日間休業した。そして、原告の1日当たりの収入は、1万0285円である。
 したがつて、休業損害は、次の数式のとおり468万9960円となる。
 10,285×456=4,689,960
(4) 逸失利益 878万2796円
 原告は、右足関節外側靭帯断裂及び右足内側半月板損傷による後遺障害として、右足関節、及び右大腿部から下腿部にかけて、労働に差し支える程度の疼痛が起きるため、走る、重い物を持ち上げるなどの作業ができないから、右後遺障害による労働能力喪失率は14パーセントである。
 そして、年収が375万4025円(1万0285円に365日を乗じた金額。前記(3)参照)、37年間(30歳(症状固定日である平成5年1月28日の年齢。前記(3)参照)から67歳までの年数)のライプニツツ係数が16・7112であるから、逸失利益は、次の数式のとおり878万2796円である。
 3,754,025×0.14×16.7112=8,782,796
(5) 慰謝料 389万0000円
(6) 弁護士費用 140万0000円

2 被告の主張
(一) 本件交通事故の態様は次のとおりである。
 被告は、被告車を運転して、北本通りを川口方面から王子方面に向かつて第三車線を直進走行していたところ、対面信号が赤色を表示し被告車の前に2、3台停車していたので、それらに続いて停車した。このとき第二車線に車はなかつたが、被告車が停車した直後、被告車の左後方から走行して来た原告車が、被告車の3・6メートル左斜め前方に停車した。

 原告車は第二車線右端から五センチメートル第三車線に入つた位置に停車し、原告は第二車線右端から35センチメートル第三車線に入つた位置に右足を着いていた。
 被告は、対面信号が青色に変わつたので先行車に続いて被告車を発進させたところ、第二車線上、原告車の前に車がなく、また、原告車の対面信号が青色に変わつたにもかかわらず、原告が、原告車を発進させずに右足を着いたままであつたため、被告車で原告の右足をひいたものである。

 そして、被告車ボンネツトの長さが二メートルであること、原告車の停止位置が被告車の運転席から左斜め前方3・6メートルの所であること、原告が右足を着
いたのが第二車線の右端から35センチメートル第三車線に入つた位置であることからすると、被告は、原告の右足を発見することができなかつたから、被告には本件交通事故につき過失はない。
 すなわち、本件交通事故は原告の故意又は重過失によるものであつて、被告は本件交通事故につき損害賠償義務を負わない。
 また、仮に被告が損害賠償義務を負つたとしても、右で述べた本件交通事故の態様からすると原告には90パーセントの過失がある。

(二)
(1) 原告の後遺障害は、後遺障害認定調査書(乙第3号証)によると、〈1〉右足関節靭帯損傷に伴う右足関節痛につき第14級10号、〈2〉右膝関節損傷に伴う右膝関節痛につき第14級10号、〈3〉これら〈1〉及び〈2〉に伴う右足関節及び右膝関節の機能障害については自賠責後遺障害の認定基準に至らず非該当としている。

(2) また、東京都済生会中央病院のカルテ(乙第2号証)によると、平成4年6月25日に「右膝可動域正常、安定性良好、X―P所見・膝問題なし」の記載があり、同月8日31日にも「可動域正常、安定性良」との記載がある。
 そして、右カルテ(17頁)によると、肢体不自由の状況及び所見のうち動作・活動が正常となつている。
 すなわち、原告の後遺障害は、他覚的所見の乏しい神経症状であつて、将来回復の可能性の見込みがあるものである。

(3) したがつて、後遺障害による労働能力の喪失はない。

第三 当裁判所の判断
一 本件交通事故の態様について

1 本件交通事故の態様につき、原告の主張に沿う証拠として甲第7号証(原告作成の上申書)、甲第20号証(原告作成の図面)、乙第7号証(原告の供述調書)及び原告の供述(同人平成6年11月29日付け本人調書2項・5項・6項・8項・9項・11項ないし13項・23項・34項ないし36項)があり、被告の主張に沿う証拠として甲第1号証の1・2(被告の指示説明による実況見分調書)、乙第6号証及び第8号証(原告の供述調書)及び被告の供述(同人の本人調書1項ないし6項・10項ないし17項・21項ないし23項)があるところ、原告の供述等には不自然な点がないが、被告の供述等には次のような不自然な点がある。

2 すなわち、被告は、本件交通事故後、車線を変えることなく被告車を前進させて第一車線に停車したと供述する一方で、第三車線から車線を変えて第一車線に停車したとも供述し(同人の本人調書16項・17項)、被告が本件交通事故当時に走行していた車線をはつきり記憶しているのか疑いが残る上に、被告が第三車線を走行していたとする根拠は、東京へ行くとき本件交通事故現場でいつも第三車線を走行していた(同人の本人調書23項)というものにすぎず、被告の供述の裏付けとしては弱いものである。

 また、被告は第二車線の原告車の前方に他の車が停車していなかつたと供述する(同人の本人調書六項)が、午後2時26分ころ(本件交通事故発生時)に第二車線のみそのように空いていたとは考えにくい上に、被告が右供述と異なる供述をしていること(乙第八号証二丁表)、第二車線上の原告車の前方に車が停車していない状況の下で原告車が停止線まで進行しないで、被告車の左斜め前方に近接して停車する(原告の本人調書四項・10項・11項・22項)とは考えられないことからすると、本件交通事故の態様に掛かる被告の供述は容易には採用できない。

3 以上のことからすると、本件交通事故の態様は原告主張(前記第二の二1(一))のとおりと認められる。
 すなわち、被告は、自動二輪車である原告車が、先行車が直ちに発進しなかつたため、そのまま停車していたから原告が足を着いていることを予見できたにもかかわらず、先行する原告車の発進を待たず、また、原告車の状況を十分に確認しないで、被告車を発進させたため本件交通事故を起こしたといえる。
 したがつて、被告は、民法709条に基づき、原告の損害を賠償すべき義務がある。
 なお、右認定によれば、被告主張の本件交通事故の態様を前提とする、免責又は過失相殺に係る被告の主張はいずれも失当である。

二 損害について
1 冶療関係費 86万2793円
 治療関係費は、原告主張の86万2793円を下回らない(甲第2号証の1ないし15、第19号証の1ないし7)。

2 将来の手術費 0円
 原告が右膝半月板損傷の手術につき積極的でないこと(証人久保川登の証人調書27頁・28頁)に加え、右損傷が将来増悪し、手術が必要となるとまで認められないことからすると、損害とすることはできない。

3 休業損害 468万9960円
 原告が受けた右膝内側半月板損傷の症状固定日が平成5年1月28日であるところ、平成3年10月31日(本件交通事故日)から右平成5年1月28日までの456日間就労できなかつたと認められる(甲第2号証の2、第3号証の1、第15号証、弁論の全趣旨)

 そして、原告の1日当たりの収入は、原告主張の1万0285円を下回らない(甲第11号証、第18号証35頁・36頁、原告の平成6年11月29日付け本人調書15項、弁論の全趣旨)。
 したがつて、休業損害は、次の数式のとおり468万9960円となる。
 10,285×456=4,689,960

4 逸失利益 878万2796円
(一)
(1) 原告の本件交通事故後の症状は、次のとおりである(甲第5号証、第8号証、第18号証、第26号証、第27号証の1・2、同人の平成6年11月29日付け本人調書24項・33項、平成8年3月4日付け本人調書)。
ア 右足が身体の一部という感覚がなく、自由に動かない(ただし、触つてみると皮膚の感覚はある。)。
 〈1〉 ゆつくりにしか動かない。
 〈2〉 健康なときと同じ動きができない。
 〈3〉 右足が義足のようである。

イ 右足は、ゆつくりとは動かせるが痛みを伴う。
 〈1〉 右膝、右足首を曲げたとき、右膝、右足首に強烈な痛みが生じる。
 〈2〉 右膝は、90度以上曲げたとき、特に痛みが強く、曲げたままの状態ではいられない。
 〈3〉 右足のふくらはぎ、右太ももの筋肉が、常にがちがちに硬くなつており、痛む。
 〈4〉 強い痛みがあるときは、正常な歩行ができない。

ウ 長時間(2、3時間以上)立つていることができない。
 立つていたり、歩いていたりすると、右足全体に痛みが出てくる。

エ 右膝及び右足首に荷重負担を掛けることができない。
 〈1〉 ちよつとした重い物を持とうとしても、右足が支えられない。
 〈2〉 あぐら、正座ができない。
 〈3〉 和式トイレでかがめない。
 〈4〉 走れない。
 なお、原告の症状は、東京都済生会中央病院のカルテの肢体不自由の状況及び所見(乙第2号証17頁)のうち動作・活動欄の記載と矛盾しない(証人松本秀男の証人調書22頁参照)。

(2) また、医師久保川登作成の自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(甲第2号証の1)は、原告の後遺障害につき、傷病名「右足関節外側靭帯断裂」、自覚症状「右足関節痛」、精神・神経の障害 他覚症状及び検査結果「右足関節異常可動性」(右足関節外側靭帯断裂により、右足関節が、本来と異なる動きをするため足関節が不安定となり、これにより痛みを生じる(証人久保川登の証人調書1頁ないし4頁)。)、関節機能障害「足関節 背屈 他動 右五度 左15度・自動 右五度 左10度、底屈 他動 右30度 左35度・自動 右35度 左35度」としており、右足関節外側靭帯断裂により、右足関節痛及び右足関節の機能障害が生じていることが認められる。

 そして、後遺障害として原告が述べる右足関節に係る症状(前記(一))は、右後遺障害診断書の診断内容と矛盾しない(甲第26号証、第27号証の1・2、証人久保川登の証人調書)。
 なお、右足関節は、テーピングによりある程度の労働等も可能となるが、テーピングが緩むと痛みが出る(証人久保川登の証人調書30頁・31頁)ことからすると、テーピングをすることで右足関節に係る労働能力喪失がないとはいえない。

(3) また、医師松本秀男作成の自動車損害賠償責任保険後遺障害診断書(甲第2号証の2)は、原告の後遺障害につき、傷病名「右膝内側半月板損傷」、自覚症状「右大腿部~下腿部後面の疼痛、右大腿前面の疼痛、右膝関節の運動時痛、歩行時の下肢痛」、精神・神経の障害 他覚症状及び検査結果「内側半月板の損傷を疑わせる陰影」、関節機能障害「膝関節 伸展 他動 右0度 左0度・自動 右0度 左0度、屈曲 他動 右150度 左150度 自動 右150度・左150度」としており、右膝内側半月板損傷により、右下肢に疼痛が生じていることが認められる(甲第26号証、第27号証の1・2、証人久保川登の証人調書18頁ないし28頁、証人松本秀男の証人調書3頁ないし7頁も同趣旨である。)。
 そして、後遺障害として原告が述べる右膝に係る症状は、右後遺障害診断書の診断内容と矛盾しない(甲第26号証、第27号証の1・2、証人久保川登の証人調書18頁ないし28頁、証人松本秀男の証人調書)。
 たしかに、右診断書では関節機能そのものに異常は認められないが、右膝内側半月板損傷による右下肢の疼痛が生じているから、この疼痛は、後遺障害に当たるというべきである。

(4) さらに、右足関節外側靭帯断裂及び右膝内側半月板損傷により右下肢の疼痛等が生じていることは、後遺障害認定調査書(乙第3号証)が、原告の後遺障害につき、顧問医意見として「右足の関節造影、X―Pにて靭帯損傷を疑せる異常は認められる。機能障害及び関節痛はあるものと判断する。右膝X―P(ストレス)において関節腔の狭小が認められ半月板損傷があるものと判断する。神経症状は残存するものと判断する。」としていることからも裏付けられる。

(5) 以上のことからすると、原告には、他覚的所見のある右足関節外側靭帯断裂及び右膝内側半月板損傷による右下肢の疼痛等の後遺障害が認められ、右後遺障害からすると、原告の労働能力喪失率は14パーセントとするのが相当である。

(二) そして、原告の年収は375万4025円を下回らないこと(1日当たりの収入1万0285円(前記3)に365日を乗じた金額)、平成5年1月28日(右膝内側半月板損傷の症状固定日。前記3)において原告が30歳(昭和37年7月8日生まれ。甲第2号証の1・2)であるから37年間労働可能であると考えられること、37年間のライプニツツ係数が16・7112であることから、逸失利益は、次の数式のとおり878万2796円である。
 3,754,025×0.14×16.7112=8,782,796

5 慰謝料 340万0000円
 慰謝料は、弁論に現れた諸般の事情を考慮すると340万円とするのが相当である。

6 合計 1462万9338円
 1から5までの合計が1773万5549円であること、既払金が440万6211円あること(前記第二の一3)、弁護士費用が本件訴訟の認容額・経過からして130万円とするのを相当とすることからして、損害の合計は1462万9338円となる。

三 結論
 よつて、原告の請求は、被告に対し、金1462万9338円及びこれに対する平成3年10月31日から支払済みまで年5分の割合による金員の支払を求める限りで理由があるから認容し、その余は理由がないから棄却し、主文のとおり判決する。
 (裁判官 栗原洋三)
以上:6,961文字

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