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民法第709条責任を否認するも自賠法3条責任を認めた判例紹介1

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平成27年 5月14日:初稿
○「交差点内出会い頭衝突物損事故過失割合に関する注目判決全文紹介」では、交差点出会い頭衝突事故でいずれが赤信号無視で交差点に進入したのか立証できない場合に、双方の前方不注視を認定し、最終的に過失割合を5対5と認定した判例を紹介しました。今回は、同様にいずれが赤信号無視で交差点に進入したのか立証できない場合の人身損害の請求について、被告に民法第709条の責任はないと明言しながら、自賠法第3条の責任を認めた平成25年7月16日大阪地裁判決(自保ジャーナル・第1912号)判決全文を2回に分けて紹介します。


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主 文
1 ②事件被告は、②事件原告に対し、114万4319円及びこれに対する平成21年12月3日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 ①事件原告兼②事件原告の①事件被告に対する請求及び②事件被告に対するその余の請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は①事件②事件を通じてこれを2分し、その1を②事件被告の負担とし、その余は①事件原告兼②事件原告の負担とする。
4 この判決は主文第1項に限り仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

1 ①事件被告は、①事件原告に対し、257万7143円及びこれに対する平成21年12月3日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 ②事件被告は、②事件原告に対し、257万7143円及びこれに対する平成21年12月3日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

第二 事案の概要
 本件は、①事件原告兼②事件原告(以下「原告」という。)が、交通事故の相手方である①事件被告(以下「被告乙山」という。)に対して民法709条に基づく損害賠償を求めると共に、②事件被告(以下「被告会社」という。)に対して自賠法3条及び民法715条に基づく損害賠償を求める事案である。

1 前提事実
 以下の事実は、当事者間に争いがないか、後掲各証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる。
(1) 交通事故の発生
 大阪府大東市<地番略>付近の交差点(以下「本件交差点」という。)付近の概況は、別紙図面1・2のとおりである。
 平成21年12月3日午後5時02分頃、本件交差点において、東西道路(最高速度規制時速40㎞)を西から東に向けて走行してきた被告乙山運転の事業用普通貨物自動車(以下「被告車」という。)と、南北道路を南から北に向けて走行してきた原告運転の普通自動二輪車(以下「原告バイク」という。)が衝突する交通事故が発生した(以下「本件事故」という。)。

(2) 被告らの責任原因
ア 被告乙山について
 原告と被告らの双方が相手側の信号が赤であった旨主張しており、争いがある。

イ 被告会社について
 本件事故当時、被告乙山は、被告会社の従業員としてその業務執行中であったから、被告乙山が民法709条に基づく損害賠償責任を負う場合は、被告会社も民法715条に基づく損害賠償責任を負う。
 また、本件事故当時、被告会社は、被告車の運行供用者であったから、被告乙山が無過失等でない限り、人身損害について自賠法3条に基づく損害賠償責任を負う。

(3) 原告の受傷等
 原告は、本件事故により、頭部打撲、左下腿打撲、右足関節挫傷等を受傷し、次のとおり入通院治療を受けた。
 B病院
 入院:平成21年12月3日~同月21日(19日)
 通院:同月22日~平成22年6月30日(実通院59日)
 C病院(実通院7日)
 そして、平成22年6月30日に両下肢痛等を残して症状固定したと診断されたが、自賠責保険により、後遺障害等級非該当と判断され、異議申立をしたが、非該当との判断は変わらなかった。

2 原告の主張
(1) 本件事故態様

 原告バイクは、別紙図面2の①付近に差し掛かった際、3台の四輪車が信号待ち停止中であったので、その場で停止した後、東西の歩行者用信号が青点滅したのを見て、間もなく北行き信号が青になるだろうと予測して、発進して3台の四輪車を追い越して同②付近で再度停止し、北行き信号が青であるのを確認して軽く左右を確認して発進して本件交差点に進入したところ、左方から19.1mものスリップ痕を残す高速で進入してきた被告車の右前部が原告バイクの左側面に衝突し、原告及び原告バイクが十数mはね飛ばされたものである。
 したがって、被告車は、対面信号が赤であったにもかかわらず、速度規制を大きく超える時速60㎞程度で本件交差点に進入して、対面信号青で本件交差点に進入した原告バイクに衝突したということになる。
 
(2) 被告らの責任原因
 被告乙山は、信号遵守義務違反及び速度超過の故意又は過失により、本件事故を発生させたから、民法709条に基づく損害賠償責任を負う。
 また、被告会社は、民法715条及び自賠法3条に基づく損害賠償責任を負う。

(3) 原告の損害
 原告は、本件事故により、次の損害を被った。
ア 人損
  (ア) 治療費 133万6034円
  (イ) 入院雑費 2万8500円
 1500円×19日
  (ウ) 休業損害 171万6806円
 月24万5,258円×7ヶ月
 なお、原告は、本件事故当時、運転手として勤務し、事故前年には月平均24万5258円の給与を得ていたところ、勤務先の都合による賃下げのため、事故前3ヶ月では月平均16万1467円の給与となっていたが、原告は、極端な賃下げが耐え難く現実に転職を考えていたのであるから、基礎収入は事故前年の平均月収とすべきである。
  (エ) 入通院慰謝料 150万円
  (オ) 文書取得費等 4万9690円
  (カ) 損害の填補
 労災療養給付 133万6034円
 労災休業給付 86万7672円
 自賠責保険金 44万8641円

イ 物損
  (ア) 車両損害(全損) 18万0960円
  (イ) 車両引取及び廃車費用 5万2500円
  (ウ) ヘルメット・衣服・眼鏡・携帯電話など 15万5000円

ウ 弁護士費用 21万円

エ 差引合計 257万7143円

(4) 本件請求
 よって、原告は、被告乙山に対して、民法709条に基づく損害賠償請求として、257万7143円及びこれに対する平成21年12月3日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求めると共に、被告会社に対して、人損部分については自賠法3条に基づく損害賠償請求として、物損部分については民法715条に基づく損害賠償請求として、合計257万7143円及びこれに対する平成21年12月3日から支払済みまで年5%の割合による遅延損害金の支払を求める。

3 被告らの主張
(1) 本件事故態様について

 被告車は、東西道路を時速50㎞程で走行してきて、本件交差点に進入する直前の別紙図面1の③付近で対面信号が青から黄に変わったため、そのまま本件交差点に進入したにすぎないし、その際、南北道路の本件交差点南側には、信号待ち停止中の車両はなく、原告バイクのみが走行していた。そして、本件交差点の東西方向の信号周期は、黄3秒、全赤3秒である。
 したがって、原告バイクは、対面信号(北行き信号)赤で、停止も減速もすることなく本件交差点に進入したということになる。
 
(2) 被告らの責任原因について
 被告乙山に信号遵守義務違反及び速度超過の過失があり、同人が民法709条に基づく損害賠償責任を負うことは、否認ないし争う。
 被告会社が民法715条及び自賠法3条に基づく損害賠償責任を負うことは、否認ないし争う。本件事故につき、被告乙山は何ら注意を怠っておらず、被告会社も被告車の運行に関して何らの注意も怠っていないし、本件事故は赤信号無視をした原告バイクの過失が原因であるし、被告車には何らの構造上の欠陥も機能の障害も無かったから、自賠法3条ただし書きにより運行供用者責任を負わない。
 
(3) 原告の損害について
 不知ないし争う。

第三 当裁判所の判断
1 本件事故態様について

 原告は、原告バイクは青信号で本件交差点に進入した旨主張し、原告本人も、原告バイク(100cc)を運転して普段時速30~40㎞程度で走行する南北道路を進行してきて別紙図面2の①付近に差し掛かった際、3台の四輪車が信号待ち停止中であったので、その場で10秒程停止して、タイミングを見ていた旨、東西の歩行者用信号が青点滅したのを見て、間もなく北行き信号が青になるだろうと予測して、車に邪魔されずに先頭に立って出られるようにするため、ゆっくり発進して3台の四輪車を4~5秒程かけて追い越して同②付近で再度停止した旨、追い越している間は、東西道路を走行する車両があった旨、その場で5秒程停止し、軽く左右を確認し、北行き信号が青であるのを確認して、発進して本件交差点に進入した旨、同②付近で停止している間は、東西道路を走行する車両は見ていないし、本件交差点に差し掛かって停止する車両も見ていない旨、衝突したときのことは覚えていない旨を供述している。

 他方、被告は、被告車(2㌧トラック)は信号が青から黄に変わったところで本件交差点に進入したもので、原告バイクが赤信号で本件交差点に進入した旨主張し、被告乙山本人も、a交差点を右折するために先頭で信号待ち停止後、青に変わり、対向車が無かったので右折進行して東西道路に入った旨、時速50㎞程で走行してb交差点を青信号で通過した旨、被告車の前後に車両は無かった旨、本件交差点の手前で南北道路を本件交差点に向けて普通に走行中の原告バイクを見たが他の車両はなかった旨、その際は被告側の対面信号が青だったので、原告バイクが停止すると思った旨、本件交差点の停止線手前5~6m(別紙図面1の③付近)に至った時に、原告バイクが本件交差点の北行き停止線を越えて走行していたため、危険を感じた旨、その時に対面信号が青から黄に変わった旨、急ブレーキをかけたが間に合わずに衝突した旨、原告バイクはブレーキをかけていなかった旨を供述している。
 そこで、両供述の信用性等について検討する。

(1) 客観的事実等について
 証拠(略)及び弁論の全趣旨によれば、本件事故に関する客観的事実ないしまず間違いのない事実として、以下の各事実が認められる。
ア 東西道路の本件交差点(c交差点)の約150m西側には、b交差点(以下「b交差点」という。)があり、更にその約120m西側にはa交差点(以下「a交差点」という。)がある。

イ 本件交差点の信号周期は、1周期50秒で、東西方向の車両用が青19秒・黄3秒・全赤3秒・赤25秒、東西方向の歩行者用が青13秒・青点滅4秒・赤33秒、南北方向の車両用が赤25秒・青19秒・黄3秒・全赤3秒である。

ウ b交差点は、車両感応式信号である上、信号周期は1周期70秒である。
  
エ 平成21年12月3日の本件事故当日は、昼間は雨であり、本件事故現場で被告乙山の立会の下で実況見分が行われた午後6時頃も雨で、路面は濡れていた。
  
オ 上記実況見分の際、警察官は、被告乙山から、a交差点へ南西方向から走行してきて信号待ちで先頭で停止し、青信号で発進してその交差点内で右折待ち後、対面信号が青から黄に変わって右折発進して東西道路に入って東方向に走行した旨、そのままb交差点を青信号で通過して時速約50㎞で走行した旨、本件交差点直前の別紙図面1の③付近で対面信号が青から黄に変わった旨などを聴取した。
  
カ 本件事故当日、上記警察官は、被告乙山からの上記聴取内容に基づき、走行実験を3回行ったが、いずれもb交差点で赤信号となった。
  
キ 同月15日に本件事故に関する目撃者立会の下で実況見分が行われた。その際、警察官は、目撃者から、本件事故当日に東西道路の歩道を自転車で進行中、b交差点で信号待ち停止中の被告車を見た旨、b交差点と本件交差点の間を進行中に被告車に追い抜かれた旨、その後、衝突音を聞き、本件交差点で被告車が停止し、原告バイクと原告が転倒しているのを見た旨、その時の信号表示は見ていない旨などを聴取した。
  
ク 同月21日に原告立会の下で実況見分が行われた。その際、警察官は、原告から、本件交差点の南側で信号待ち車両の後ろの別紙図面2の①付近で信号待ちした旨、その後、東西道路の歩行者用信号を見て発進し、同②付近で再度停止した旨、そして北行き信号機を見て発進した旨、その後のことは覚えていない旨などを聴取した。

 
(2) 被告乙山本人の供述の信用性について
ア まず、被告乙山本人の上記供述内容は、本件事故現場に至る経緯の説明(b交差点を青信号で通過したとの説明)において、目撃者の説明(b交差点で信号待ち停止中の被告車を見たとの説明)と矛盾している。本件証拠上、利害関係のない第三者である目撃者の説明内容の方が誤りであることを示す証拠があるわけではなく、被告乙山の上記説明内容には疑念を抱かざるを得ない。
  
イ また、被告乙山本人の上記供述内容は、東西道路に入る経緯の説明(a交差点で信号待ち停止後、青信号に変わり、対向車が無かったので右折進行して東西道路に入ったとの説明)において、警察官が本件事故当日に聴取した説明(a交差点で右折するために信号待ち後、発進して交差点内で右折待ちし、青から黄に変わって右折発進して東西道路に入ったとの説明)と整合していない。警察官は、被告乙山からの聴取内容に基づいてその真偽を確かめるために3回も走行実験をしているのであり、聴取の仕方がいいかげんなものであったとは考えにくいし、交差点内で右折待ちをするというような場面は他にはないのであり、誤解したとも考えにくい。被告乙山の上記説明内容には疑念を抱かざるを得ない。

ウ 加えて、証拠(略)によれば、東西道路は、各交差点(b交差点や本件交差点)で赤信号停止する(青信号で真っ直ぐ行けることはない)ことがほとんどであることや、a交差点では対向車がいることがほとんどであることが認められる。被告乙山本人は、このとき(本件事故のとき)に限ってa交差点で対向車が無かった旨や、このとき(本件事故のとき)に限って東西道路で青信号が続いた旨を供述するが、本件事故に至る経緯において、ほとんどない事象が2度も続くという事態は、可能性としてはあり得るとしても、ごく自然な合理的なこととはいい難い。

エ そして、本件証拠上、被告乙山本人の上記供述内容を裏付ける客観的証拠があるわけでもない(一定程度普及しているドライブレコーダーが被告車に装備されていれば、本件事故態様も容易に明らかになったであろうが、証拠(略)によれば、被告車にドライブレコーダーは装備されていない。)。

オ 上記のとおり、被告乙山本人の供述内容は、目撃者の説明内容や警察官の聴取内容とも矛盾したり不整合であったりするものであることや、自然な合理的なものとはいい難いものであることなどに照らせば、本件事故のときに限って青信号が続いた旨、ひいては本件交差点に青から黄に変わったところで入った旨の上記供述内容には、疑念を抱かざるを得ず、信用性に乏しいといわざるを得ない。


以上:6,225文字

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