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統合失調症既往症患者頚随損傷被害交通事故損害賠償請求事件判決紹介1

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平成27年 4月 9日:初稿
○「統合失調症既往症患者頚随損傷被害交通事故損害賠償請求事件顛末6」に続けてその一審判決である平成26年8月5日仙台地方裁判所判決(判例集未登載)を2回に分けて紹介します。元本プラス損害金で約9000万円が認められました。

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平成26年8月5日判決言渡
平成24年(ワ)第690号 損害賠償請求事件
ロ頭弁論終結日 平成26年6月27日

主   文

1 被告は,原告X1に対し,7186万円及びこれに対する平成24年1月13日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告X2及び同X3に対し,各440万円及びこれに対する平成22年10月30日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
3 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
4 訴訟費用は,これを2分し,その1を原告らの負担とし,その余を被告の負担とする。
5 この判決は,第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。

事実及び理由
第1 請求

1 被告は,原告X1に対し,2億9839万6821円及びこれに対する平成24年1月13目から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。
2 被告は,原告X2及び同X3に対し,各880万円及びこれに対する平成22年10月30日から支払済みまで年5%の割合による金員を支払え。

第2 事実の概要
 本件は,横断歩道上を通行中の自転車の左側面に交差点を右折進行してきた普通乗用自動車が衝突した交通事故について,上記自転車に乗っていた原告X1(以下「原告X1」という。)が,上記普通乗用自動車を運転していた甲野太郎(以下「甲野」という。)の過失に起因する上記交通事故により四肢麻痺等の重篤な後遺障害を負ったなどと主張し,甲野と自動車総合保険契約を締結していた被告に対し,同保険契約の直接請求条項に基づき,自動車損害賠償保障法3条及び民法709条による損害賠償として,2億9839万6821円(損害賠償元本3億1704万7131円及びこれに対する上記事故日である平成22年10月30日から既払金3776万円の受領日である平成24年1月12日までの民法所定の年5%の割合による遅延損害金1910万9690円から上記既払金を控除した残元本)及びこれに対する既払金受領日の翌日である平成24年1月13日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求め,原告X1の父である原告X2(以下「原告X2」という。)及び母である同X3(以下「原告X3」という。)が,被告に対し,上記直接請求条項に基づき,甲野の不法行為による近親者の慰謝料及び弁護士費用として,各880万円及びこれに対する上記事故日から支払済みまで民法所定の年5%の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

1 前提事実(末尾に認定根拠を示したもの以外は争いがない。)
(1)当事者

 原告X1は本件事故当時40歳の男性,甲野は本件事故当時57歳の男性,原告X2及び同X3は原告X1の実父母,被告は保険会社である。

(2)本件事故の発生
ア 発生日時 平成22年10月30日土曜日午前7時29分ころ
イ 発生場所 仙台市泉区市名坂字黒木川原54番地の1
ウ 加害車両 甲野運転の普通乗用自動車(登録番号 宮城○○ゆ○○○○,以下「甲野車両」という。)
エ 被害者 原告X1
オ 事故態様 
  原告X1が上記発生場所交差点(以下「本件交差点」という。)の北側に設置された横断歩道(以下「本件横断歩道」という。)上を自転車(以下「本件自転車」という。)で通行中,上記交差点を県道泉塩釜線岩切方面から国道4号仙台バイパス富谷方面へ右折進行してきた甲野車両が時速約30km~40kmの速度で本件自転車に左側面から衝突した。

(3)本件事故現場の概要(甲2の3)
 本件交差点は,南北に走る国道4号仙台バイパスと東西に走る県道泉塩釜線が交差する,信号機による交通整理の行われている十字路交差点である。
 国道4号仙台バイパスは,中央分離帯で区分された片側2車線の道路であり,本件交差点北側の上り車線は,右折専用車線設置の3車線,南側の下り車線は,右折及び左折専用車線の1車線ずつが設置された4車線となる。
 県道泉塩釜線は,中央分離帯で区分された片側2車線の道路であり,本件交差点東側の下り車線は,右折専用車線設置の3車線,西側の上り車線は,右折専用車線2車線が設置された4車線となる。
 本件交差点には,縁石により区分された歩道が設置されており,四方の出口には,横断歩道及び自転車通行帯が明瞭に表示されている。
 甲野車両は,県道泉塩釜線の東側下り車線の右折専用車線から本件交差点に進入して右折進行し,北側出口に設置された本件横断歩道上を西側に向かって進行中の本件自転車に左側面から衝突したものである。

(4)事故後の状況
ア 本件事故により,原告X1は,頸髄損傷,骨盤骨折,頭部挫傷等の傷害を負い,東北大学病院に138日間(平成22年10月30日から同年12月20日まで及び平成23年3月17日から同年6月10日まで),東北厚生年金病院に88日間(平成22年12月20日から平成23年3月17日まで)の計226日間入院した(甲3の1~4の18)。

イ 原告は,平成23年3月7日,症状固定の診断を受け,平成24年1月10日,頸髄損傷による両上下肢麻痺(四肢麻痺)等の症状について,両上下肢筋力低下や表在感覚,深部感覚,圧覚の中程度の鈍麻及び膀胱直腸障害が認められることから,「神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し,常に介護を要するもの」として,自動車賠償責任保険(以下「自賠責」という。)において,後遺障害等級1級1号に該当するとの認定を受けた(甲5,9)。

(5) 甲野車両に係る自動車総合保険契約と直接請求条項
 被告は,本件事故当時,甲野との間で,被告を保険者,甲野を被保険者,保険期間を保険契約締結日から1年間として,対人事故により甲野が法律上の損害賠償責任を負担することによって受ける損害に対して保険金を支払う旨の条項を含む自動車総合保険契約を締結していた。

 同契約の約款には,対人事故によって被保険者の負担する法律上の賠償責任が発生した場合は,損害賠償請求権者は,被告が被保険者に対して支払責任を負う限度において,被告に対し,被保険者が損害賠償請求権者に対して負担する法律上の賠償責任の額から自賠責等によって支払われる金額を差し引いた額を請求することができ,損害賠償請求権者が被保険者に対する損害賠償請求権を行使しないことを被保険者に対し書面で承諾した場合は,被告が上記金額を損害賠償請求権者に対して直接支払う旨の直接請求条項がある。

 原告らは,甲野に対し,平成24年7月20日付けの書面をもって,本件事故に関する損害賠償請求権を行使しないことを承諾する旨を通知し,同書面は,同月21日に甲野に配達された(甲18の1,18の2)。

2 争点及び当事者の主張
 本件の争点は,① 事故態様と過失割合,② 原告X1の損害及び③ 原告X2及び同X3の固有の慰謝料であり,これらに関する当事者の主張は次のとおりである。
(1) 争点① 事故態様と過失割合について

ア 原告ら
(ア) 甲野は,業務として甲野車両を運転し,本件交差点を青色信号に従って右折進行するに当たり,本件交差点右折方向出口には本件横断歩道が設けられていたのであるから,前方左右をよく見て,横断自転車等の有無及びその安全を確認しながら右折進行すべき自動車運転上の注意義務があるのにこれを怠り,横断自転車等の有無及びその安全確認不十分のまま漫然時速約30km~40kmで右折進行した過失により,青色信号に従って本件横断歩道上を右から左に進行中の原告X1の乗った本件自転車の左側面に自車前部を衝突させたものであり,甲野の過失は重大である一方,原告X1には何ら過失がない。
 したがって,過失割合は甲野100%,原告X1は0%である。
 被告は,右折可の青色矢印信号(以下「右折可信号」という。)に従って右折進行した旨の甲野の供述に依拠して,原告X1が赤色信号を無視して本件横断歩道上を本件自転車で進行したと主張するが,上記供述は本件事故現場の客観的状況,本件事故時と同時間帯の交通状況,信号サイクル等に照らして信用できず,自己の責任軽減を図るための虚偽の供述である疑いが強いから,同供述に依拠する被告の主張は理由がない。

(イ) 仮に,原告X1に赤色信号無視の過失があったとしても,本件交差点における甲野車両の進行方向は見通しが良く,本件横断歩道上の自転車等に容易に気付くことができるにもかかわらず,これを看過した点において甲野の前方注視義務違反の程度が著しいことなどから,原告X1の過失割合が40%を超えることはないというべきである。

イ 被告
 本件事故は,本件交差点を右折可信号に従って右折進行した甲野車両が,赤色信号を無視して本件横断歩道上を進行中の原告X1の自転車に側面衝突したというものである。右折可信号に従って右折進行する車両にとって赤色信号を無視して横断する自転車があることは通常想定し難い事態であるから,原告X1の過失は大きく,甲野がクラクションに気を取られて左方向に視線を向けたために本件自転車の発見が遅れたことを考慮しても,過失割合は原告X185%,甲野15%というべきである。
 上記事故態様に沿う甲野の供述は,本件事故直後から一貫しており,本件事故現場の客観的状況等とも矛盾せず,衝突直前にクラクションに気を取られて左方向に視線を向けた旨の自己に不利な内容を含むことなどから,信用性は高い。

(2) 争点② 原告X1の損害について(争いがある費目のみ)
ア 治療関係費
(ア) 原告X1 6万6780円
   内訳 入院費   3万4890円
      歯科治療費   7740円
      文書代   2万4150円
(イ) 被告 2万4150円
 入院費及び歯科治療養については,症状固定後における治療養であるため,本件事故と因果関係がない。
イ 交通費
(ア) 原告X1 3万0540円
   内訳 入院中の一時帰宅の際の往復交通費
      平成23年5月14日分   4200円
           同月15日分   4200円
          同年6月3日分 1万4700円
            同月4日分   4200円
      退院時の泊宅までのタクシー代
           同月10日分   3240円
(イ) 被告 0円
 症状固定後における交通費であるため,本件事故と因果関係がない。
ウ 入院雑費
(ア) 原告X1 33万9000円
 1日1500円×226日
(イ) 被告 19万3500円
 1日1500円×129日
 症状固定日までの129日分に限って本件事故と因果関係がある。
エ 付添看護費 
(ア) 原告X1 158万2000円
 1日7000円×226日
(イ) 被告 90万3000円
 1日7000円×129日
 症状固定日までの129日分に限って本件事故と因果関係がある。
オ 休業損害
(ア) 原告X1 374万6250円
 原告X1は,原告X2と共に食料品の買物,清掃,ゴミ出し等の家事を担当しており,約7.5か月の入院期間中にこれらの家事に従事することができなかったのであるから,平成22年産業計・企業規模計・平成22年学歴計男子40~44歳の平均月給49万9500円×7.5か月=374万6250円が休業損害となる。
(イ) 被告 0円
 原告X1の稼働実績が確認できず,家事を担当していたことを裏付ける証拠もないから,休業損害は認められない。
カ 遺失利益
(ア) 原告X1 1億0199万9898円
 症状固定日において原告X1は40歳であり,平均余命39年のライプニッツ係数は17.017,平成22年産業計・企業規模計・平成22年学歴計男子40~44歳の平均給与は599万4000円,労働能力喪失率は1.0であるから,逸失利益は,599万4000円×1.0×17.01 7=1億0199万9898円となる。
 原告X1は,長年にわたり統合失調症を患っているが,本件事故前は回復の兆しを見せており,就労意欲も高かったのであるから,就業の蓋然性があったというべきである。
(イ) 被告 0円
 原告X1は,昭和63年2月に統合失調症を発症し,以後,本件事故 での長期にわたり入通院を繰り返してきており,その症状は改善が困難な状 態に陥っていた。また,原告X1が,本件事故前に安定した収入を得ていた ことを具体的に示す証拠はない。
 したがって,原告X1が将来安定した職業に就き,定期的な収入を得る蓋然性はなかったというべきである。
 仮に,一定額の将来収入を得る可能性を認めるとしても,平成23年賃金センサスの全学歴計・全年齢男子平均収入526万7600円の10%相当が基礎収入の上限である。また,労働能力喪失率については,既往症である統合失調症の影響を考慮し,0.8とどまるというべきである。
キ 入院慰謝料
(ア) 原告X1 312万円
(イ) 被告 300万円
ク 後遺障害慰謝料
(ア) 原告X1 3100万円
(イ) 被告 3000万円
ケ 将来介護費用
(ア) 原告X1 1億2252万2400円
 原告X1は,後遺障害等級1級1号に該当する重篤な後遺障害を負っており,日常生活における全面的な介護が必要であるところ,現在は自宅で原告X2及び同X3が介護に当たっているが,原告X2は昭和14年6月25日生,同X3は昭和17年3月3日生といずれも高齢であり,原告X2は糖尿病等,同X3は心臓弁膜症等の持病を患っているため,現状のまま介護を続けることは困難であり,職業付添人の介護が必須となる。その費用は,日額2万円×30日×12か月×平均余命39年ライプニッツ係数17.017=1億2252万2400円となる。
(イ) 被告 4968万9640円
   職業付添人の介護が必須であり,かつ,日額2万円の介護費用を要することを認めるに足りる証拠はないから,今後も親族の付添人による介護が可能であることを前提に,日額8000円の介護費用に限って認める。
コ 将来車両購入代
(ア) 原告X1 343万2000円
(イ) 被告 343万2400円
   ただし,職業付添人による将来介護の費用を認める場合には,親族による介護の場合に必要となる車いすごと移動可能な特殊車両は不要となるため,全額を否認する。

(3)争点③ 原告X2及び同X3の固有の慰謝料について
ア 原告X2及び同X3
 原告X2及び同X3は,原告X1が昭和63年2月に統合失調症を発症して以降,原告X1と常に共に生活して療養に努めており,近年は症状の改善が見られ,職業訓練や独立移動,短時間の就労等も可能なほどにまで回復していた。それにもかかわらず,原告X1は,本件事故により,40歳の若さで頸髄損傷による四肢麻痺となり,日常生活において全面的な介助を要する状態に陥った。これにより,原告X2及び同X3は,原告X1の生命侵害を上回る精神的苦痛を受けており,その慰謝料は各800万円を下らない。
イ 被告
 否認する。本件事故による原告X2及び同X3の精神的苦痛については,原告X1の慰謝料の中で評価し尽くされている。


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