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無保険車・人身傷害保険に関する平成24年4月27日最高裁裁判決全文紹介

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平成27年 1月25日:初稿
○「無保険車・人身傷害保険に関する平成21年7月9日名古屋高裁判決紹介」の続きで、平成24年4月27日最高裁判決(判タ1371号133頁、判時2151号112頁)全文を紹介します。

○事案の流れと主文の変遷は以下の通りですが、内容については、別コンテンツで私なりに説明します。
一審平成20年12月2日名古屋地裁判決は、全く落ち度のない状態で1級1号を残すこととなったXの傷害・後遺障害慰謝料を3200万円、両親各200万円、子100万円の慰謝料計3700万円、入院付添費日額6300円、退院後の将来分介護料日額7000円等の損害額元本から自賠責保険金を控除して、年6分の遅延損害金を認定
一審主文
1 被告は、原告甲野花子に対し、1億2951万2815円及び内金1億1077万2378円に対する平成20年8月16日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
2 被告は、原告丙川三郎に対し、200万円及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
3 被告は、原告丙川春子に対し、200万円及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
4 被告は、原告甲野夏子に対し、100万円及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
5 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
6 訴訟費用は、これを5分し、その2を原告らの負担とし、その余は被告の負担とする。

7 この判決は第1項ないし第4項に限り、仮に執行することができる

双方控訴の二審平成21年7月9日名古屋高裁判決は、無保険車傷害保険金に付する遅延損害金は、「加害者に対して請求できる以上に被保険者(被害者)に権利を付与することまでは予定されていないものと解すべきであるから、無保険車傷害保険金に係る遅延損害金の利率は、年5分であるとするのが相当である」と認定し、自賠責保険金の填補については、「自賠責保険から支払われた4000万円については、9条の規定により決定される損害の額(元本)からこれを差し引くのが相当である」と認定
二審主文
1 控訴人甲野花子の控訴及び本件附帯控訴に基づき、原判決中、控訴人甲野花子の請求に関する部分を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は、控訴人甲野花子に対し、1億1888万0615円及びうち4465万2618円に対する平成21年4月16日から、うち7118万413円に対する平成18年3月2日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人甲野花子のその余の請求を棄却する。
2 控訴人甲野花子が当審において追加した請求を棄却する。
3 控訴人丙川三郎及び同丙川春子の控訴及び本件附帯控訴に基づき、原判決中、控訴人丙川三郎及び同丙川春子の請求に関する部分を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は、控訴人丙川三郎及び同丙川春子に対し、それぞれ、205万円及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人丙川三郎及び同丙川春子のその余の請求をいずれも棄却する。
4 控訴人甲野夏子の控訴及び本件附帯控訴に基づき、原判決中、控訴人甲野夏子の請求に関する部分を次のとおり変更する。
(1) 被控訴人は、控訴人甲野夏子に対し、105万円及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
(2) 控訴人甲野夏子のその余の請求を棄却する。
5 訴訟費用は、第1、2審を通じてこれを2分し、その2を被控訴人の負担とし、その余を控訴人らの負担とする。
6 この判決の第1項、第3項及び第4項の各(1)並びに第5項は、仮に執行することができる。



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主 文
1 原判決を次のとおり変更する。
(1)
ア 上告人甲野花子の控訴及び被上告人の同上告人に対する附帯控訴に基づき、第1審判決中同上告人に関する部分を次のとおり変更する。
(ア) 被上告人は、上告人甲野花子に対し、1億1583万6731円及びうち1億1202万3538円に対する平成18年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(イ) 上告人甲野花子のその余の請求を棄却する。
イ 上告人甲野花子の原審で拡張した請求を棄却する。

(2)
ア 上告人丙川三郎、同丙川春子及び同甲野夏子の控訴に基づき、第1審判決中同上告人らに関する部分を次のとおり変更する。
(ア) 被上告人は、上告人丙川三郎及び同丙川春子に対し、各205万円及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払
え。
(イ) 被上告人は、上告人甲野夏子に対し、105万円及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
(ウ) 上告人丙川三郎、同丙川春子及び同甲野夏子のその余の請求をいずれも棄却する。

イ 被上告人の上告人丙川三郎、同丙川春子及び同甲野夏子に対する附帯控訴をいずれも棄却する。

2 訴訟の総費用は、これを3分し、その1を上告人らの負担とし、その余を被上告人の負担とする。

理 由
 上告代理人岩田修一の上告受理申立て理由3(2),4について
1 本件は,交通事故により後遺障害が残った上告人X1及びその両親又は子であるその余の上告人らが,上告人X1との間で自動車保険契約を締結していた保険会社である被上告人に対し,上記保険契約に適用される普通保険約款の無保険車傷害条項に基づき,保険金及びこれに対する商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1)
ア 上告人X1は,平成16年7月3日,普通乗用自動車を運転中,Aの運転する普通乗用自動車に衝突される事故(以下「本件事故」という。)に遭い,同上告人には,頚髄損傷による四肢麻痺の後遺障害が残った。
イ 上告人X2及び同X3は,上告人X1の両親であり,上告人X4は,上告人X1の子である。

(2) 上告人X1は,本件事故当時,被上告人との間で,自動車保険契約を締結しており,上記保険契約に適用される普通保険約款(以下「本件約款」という。)には無保険車傷害条項が置かれているところ,上告人X1は上記条項に係る被保険者であり,Aの運転していた普通乗用自動車は上記条項にいう無保険自動車に当たる。
 上記条項は次のア及びイのようなものであり,また,本件約款には次のウのような定めがあった。
ア 被上告人は,無保険自動車の使用等に起因して,被保険者の身体が害され,その直接の結果として後遺障害が生じること等によって被保険者又はその父母,子等(以下「被害者等」という。)の被る損害に対して,賠償義務者がある場合に限り,保険金(以下「無保険車傷害保険金」という。)を支払う。

イ 無保険車傷害保険金の額は,被害者等の被る損害の額から,①自動車損害賠償責任保険からの支払額,②賠償義務者以外の第三者が負担すべき金員で被害者等が既に取得したものの額等(以下「自賠責保険金等」という。)の合計額を差し引いた額とする。

ウ 被上告人は,被保険者又は保険金請求権者が保険金請求の手続をした日から30日以内に保険金を支払う。

(3) 本件約款には,被上告人が被害者等の被る損害の元本に対する遅延損害金を支払う旨の定めはない。

(4)
ア 本件事故により上告人X1の被った損害の額は,無保険車傷害保険金の内払金311万8612円を差し引くと,1億5669万5310円である。
イ 上告人X1は,平成19年4月10日,自動車損害賠償責任保険から4000万円(以下「本件自賠責保険金」という。)の支払を受け,また,平成17年8月15日から平成21年4月15日にかけて,原判決別紙「計算表」記載のとおり,国民年金法に基づく障害基礎年金合計467万1772円(以下「本件障害基礎年金」という。)の支給を受けた。

(5) 本件事故により上告人X2及び同X3の被った損害の額は各205万円,上告人X4の被った損害の額は105万円であり,これらが同上告人らに支払われる無保険車傷害保険金の額となる。

(6) 上告人らの代理人である岩田修一弁護士は,平成18年2月18日,被上告人に対し,無保険車傷害保険金の支払を請求した。

3 原審は,上記事実関係の下において,次の(1)ア及びイ並びに(2)のとおり判断して,①上告人X1の請求を,無保険車傷害保険金の残元本1億1583万6731円のほか,無保険車傷害保険金の元本のうち休業損害及び逸失利益を塡補する部分に対する弁済期の翌日である平成18年3月21日から平成21年4月15日までの民法所定の年5分の割合による確定遅延損害金の未払額304万3884円,上記部分の残元本である4465万2618円に対する平成21年4月16日から支払済みまでの上記割合による遅延損害金,無保険車傷害保険金の元本のうち上記部分以外の部分である7118万4113円に対する平成18年3月21日から支払済みまでの上記割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容し,②その余の上告人らの各請求を,無保険車傷害保険金(上告人X2及び同X3につき各205万円,同X4につき105万円)及びこれに対する平成18年3月21日から支払済みまでの上記割合による遅延損害金の支払を求める限度で認容した。

(1)
ア 上告人X1に支払われる無保険車傷害保険金の額を算定するに当たっては,上記2(4)アの損害の元本の額から,本件自賠責保険金の全額及び本件障害基礎年金のうち平成18年3月20日以前に支給された分の全額を差し引くのが相当である。
イ 本件障害基礎年金のうち平成18年3月21日以後に支給された分については,順次,上記アにより算定された無保険車傷害保険金のうち休業損害及び逸失利益を塡補する部分に対する各支給日までの遅延損害金の額,上記無保険車傷害保険金の元本の額から,この順に差し引くのが相当である。

(2) 無保険車傷害保険金の支払請求は,実質において賠償義務者に対する損害賠償請求と同じであるから,無保険車傷害保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は,民法所定の年5分と解するのが相当である。

4 所論は,本件約款上,無保険車傷害保険金の額を算定するに当たり被害者等の被る損害の額から差し引くものとされている自賠責保険金等の額とは,被害者等に支払われた自賠責保険金等の額のうち,損害の元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額をいうものと解すべきであり,また,無保険車傷害保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は商事法定利率である年6分であると解すべきであって,これと異なる原審の上記3(1)ア及び同(2)の判断には,法令の解釈を誤る違法があるというのである。

5 そこで検討すると,原審の上記3(1)アの判断は是認することができるが,同(2)の判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1) まず,本件約款によれば,無保険車傷害保険金は,被害者等の被る損害の元本を塡補するものであり,損害の元本に対する遅延損害金を塡補するものではないと解されるから,本件約款に基づき被害者等に支払われるべき無保険車傷害保険金の額は,被害者等の被る損害の元本の額から,被害者等に支払われた自賠責保険金等の全額を差し引くことにより算定すべきであり,自賠責保険金等のうち損害の元本に対する遅延損害金に充当された額を控除した残額を差し引くことにより算定すべきものとは解されない。このことは,自賠責保険金等が無保険車傷害保険金の弁済期後に支払われた場合であっても,異なるものではない(なお,原審の上記3(1)イの判断は相当でないこととなる。)。
 原審の上記3(1)アの判断は正当として是認することができ,この点に関する論旨は理由がない。

(2) 次に,無保険車傷害保険金の支払債務は,商人である被上告人との間で締結された保険契約に基づくものであるから,商行為によって生じた債務(商法514条)に当たるというべきであって,無保険車傷害保険金の支払請求が賠償義務者に対する損害賠償請求に代わる性質を有するとしても,そのことは,上記支払債務に係る遅延損害金の利率を賠償義務者に対する損害賠償請求の場合と同様に解すべき理由にはならない。したがって,無保険車傷害保険金の支払債務に係る遅延損害金の利率は,商事法定利率である年6分と解すべきである。
 以上と異なる原審の上記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,この点に関する論旨は理由がある。

6 以上説示したところによれば,上告人X1に支払われるべき無保険車傷害保険金の額は,上記2(4)アの損害の元本の額から,本件自賠責保険金及び本件障害基礎年金の全額を差し引いた1億1202万3538円となり,上告人らの請求は,無保険車傷害保険金(上告人X1につき上記同額,上告人X2及び同X3につき各205万円,上告人X4につき105万円)及びこれに対する弁済期の翌日である平成18年3月21日から支払済みまで商事法定利率である年6分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し,その余は理由がないから棄却すべきである。しかし,被上告人からの上告がない本件においては,原判決のうち上告人X1に関する部分を同上告人に不利益に変更することは許されないから,原判決を主文第1項のとおり変更するにとどめることとする。
 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 須藤正彦 裁判官 古田佑紀 裁判官 竹内行夫 裁判官 千葉勝美) 
以上:5,668文字

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