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追突事故頚椎捻挫後の自殺に10%の寄与度を認めた判決理由全文紹介3

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平成26年10月24日(金):初稿
○「追突事故頚椎捻挫後の自殺に10%の寄与度を認めた判決紹介2」を続けます。


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三 本件事故と自殺未遂、死亡との因果関係
(1) 原告らは、本件事故と亡X1のうつ病との間に因果関係があり、亡X1はうつ病に起因して平成18年12月21日及び平成20年3月23日の自殺行為に及んだことから、本件事故と亡X1の自殺行為及び死亡との間の因果関係を認めるべきであるとする。

 確かに、うつ病罹患者の自殺率は、うつ病に罹患していない人の自殺率よりも大幅に高く(約36から56倍)、精神障害の中でも自殺率が高いが、うつ患者の一般的な自殺率は15パーセントであり、うつ病に罹患していることから自殺行為が予見されるとまでいうことはできない。

(2)ア また、証拠〈省略〉によれば、亡X1のうつ病の経過について前提事実及び上記認定した事実に加えて以下の事実が認められる。
(ア) 亡X1は、平成17年12月ころから従前認められた希死念慮が見られなくなった。平成18年2月9日には友人、親類に支えられているとして前向きな発言が見え、同年4月6日には犬を飼いだして割と気分がよいこと、同年6月29日には花の世話をしたりして少しやることが出てきたとしている。E医師は、亡X1から処方される薬の減量を求められ、これを了承し、平成18年7月26日を最後に精神神経科における治療が中止されている。

(イ) 亡X1は、前提事実のとおり、平成18年7月26日、首から肩にかけての疼痛などの治療のため徳大病院脳神経外科を受診し、以後、平成18年10月6日まで同科における治療を受けているが、この間は担当医師の指示に基づき精神科処方の薬を服用していない。一回目のブラッドパッチ治療は効果があったが、二回目は効果がなかった。

(ウ) 亡X1は、平成18年11月14日から3時間ぐらいで目が覚めるなど特に睡眠障害が酷いとして田岡医院を受診し、同病院に入院した。

(エ) 亡X1は、前提事実のとおり、ホウエツ病院へ転院後、同病院三階の病室窓から飛び降り、その結果、骨盤骨折、腰椎圧迫骨折、右足関節開放骨折などの傷害を負ったことから、中央病院へ救急搬送され、同病院に平成19年3月13日まで入院し、その後、橋本病院での入院を経て、平成19年3月22日から徳大病院精神神経科に入院した。
 この間、身体症状としては腰から脚にかけての痛み、しびれや歩行障害の訴えがほとんどであり、首から肩にかけての疼痛や頭痛の訴えは、認められない。低髄液圧症候群については、起きるとしんどいと訴えることから継続しているが、頭痛が軽快しており改善が見られることから経過観察でよいとされている。この間の亡X1のうつ病は、重症うつ病エピソードであった。

イ 以上によれば、亡X1のうつ病は、平成18年7月に徳大病院精神神経科を退院したころには改善が見られており、その後の亡X1のうつ病悪化の原因は、同大学病院脳神経外科を受診していた期間は精神科の薬を服用していなかったこと、本件事故後、継続している起立性頭痛についてブラッドパッチ治療が奏功せず、保存的療法によらざるを得なくなったことによる精神的ショックによる可能性も否定できない。

(3) そして、本件では前記のとおり、本件事故によるうつ病発症自体への寄与の程度が10パーセントであるところ、本件事故の自殺への影響として特に重視すべき事情があるとは認められず、本件事故と亡X1の自殺行為との間の因果関係は認められない。平成18年12月21日のホウエツ病院における飛び降り行為が自殺未遂である場合も同様である。また、この飛び降り行為が、解離性障害によるものであっても本件事故と相当因果関係を認めるに足りる事情がないことに変わりはない。

四 被告が責任を負う範囲
 以上をまとめると、平成16年8月24日までの頸椎捻挫、頸髄損傷、バレリュー症状等の諸症状にかかる損害及び平成19年9月21日に症状固定した特発性低髄液圧症候群の諸症状とその後遺障害にかかる損害、並びに、うつ病による諸症状にかかる損害のうちの10パーセントについて本件事故と相当因果関係あるものと認定できるが、その余の損害については本件事故と相当因果関係あるものとは認定できない。

以上:1,789文字

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