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追突事故頚椎捻挫後の自殺に10%の寄与度を認めた判決理由全文紹介2

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平成26年10月24日:初稿
○「追突事故頚椎捻挫後の自殺に10%の寄与度を認めた判決紹介1」を続けます。
事故と低髄液圧症候群の因果関係も認められています。

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(3)ア 以上によれば、本件事故以前、亡X1に精神疾患の既往はなく、同人は、本件事故後の首から肩にかけての疼痛、頭痛、頭重感などの治療の過程の中でうつ病を発症したものであり、また、当該疼痛などの結果、休職を余儀なくされ、日常生活に支障をきたしたことや本件事故に係る賠償問題が円滑に進まなかったことに対して精神的苦痛や不安を感じていたことが認められる。

 以上の事実に基づいて亡X1のうつ病は、本件事故を契機とするものであるとするC鑑定及び照会事項に対するE医師の回答の信用性に対して特段の疑念を抱くべき事情は存在しない。証人Bの供述書においても頸椎捻挫からうつ病を発症することはあるとされているところ、亡X1は、本件事故後、これによる首から肩にかけての疼痛、頭痛、頭重感を訴え、頸椎捻挫との診断を受けているのであるから、前記供述書の内容も亡X1のうつ病が本件事故を契機とすることと整合するものである。それゆえ、亡X1のうつ病は、本件事故を契機とし、これに起因するものであると認められる。

 そして、うつ病発症者の約15パーセントから20パーセントは、遷延性経過をとるとの報告が存在するところ、亡X1は、頸椎捻挫という身体疾患に長期間悩まされており、遷延化の要因が存在したといえ、また、うつ病は、寛解後も半年から1年間は再発予防のための維持療法を通院にて受ける必要があること、亡X1のうつ病が平成17年5月17日の時点で遷延化していることから、亡X1のうつ病症状の寛解、寛解維持のためには、平成17年5月17日の時点から約2年間の精神神経科通院治療を必要としたと認められる。

 以上によれば、本件事故及びこれに伴う前記疼痛や精神的苦痛、不安を契機とし、これに起因して発症し、遷延化した亡X1のうつ病は、本件事故によって通常生ずべき損害といえ、亡X1のうつ病と本件事故との間には相当因果関係があるというべきである。

イ 被告は、亡X1のうつ病発症に対して夫である原告X2の認知症や原告X3の婿及びその父との人間関係、発症年齢なども強い誘因となっている旨主張する。
 確かに、亡X1のうつ病発症は平成16年6月であり、そのころ、亡X1は、針治療を受けて疼痛の激化を感じたと訴えている。また、原告X2は、同じころ、アルツハイマー型認知症との診断を受けて三好病院での治療を受け始めており、当時、亡X1と原告X2は、自宅において二人で生活をしている。そして、その後、原告X2の認知症が進行し、これに対する不安を亡X1がE医師に対して度々述べていることからすれば、これらの事情が亡X1のうつ病の発症及びその寛解の阻害に寄与していた部分は大きい。また、亡X1がE医師に対して原告X2の亡X1の病気への理解その他家庭における不満を述べていることや義弟からの非難その他家族との関係への不満を述べていることからすれば、少なくとも亡X1の主観においては家族関係が良好ではなく、これによるストレスを感じていたといえ、亡X1のうつ病発症、寛解の阻害に寄与していたといえるが、これらの事情によって因果関係の有無は左右されない。

(4)ア C鑑定は、交通事故体験者の9割は、交通事故によってうつ病を発症するものではないうえ、原告X2の認知症や家族関係などの家庭的要因が亡X1のうつ病発症に寄与しており、本件事故が亡X1のうつ病発症に寄与した割合は10パーセント程度であるとするところ、前記のような諸要因を考慮すれば、同鑑定の判断は合理的であると認められる。E医師による、本件事故がうつ病発症の原因となったとの判断は、他の家庭的要因等のうつ病発症への寄与の有無及び程度について言及するものではなく、C鑑定の信用性を左右しない。

イ よって、本件事故のうつ病発症に伴う損害に対する寄与の割合は10パーセントと認めるのが相当である。

二 本件事故と低髄液圧症候群の因果関係
(1)ア 証拠〈省略〉によれば、低髄液圧症候群について、次の事実が認められる。
 外傷後の持続的な髄液漏出による髄液減少により脳神経、脊髄神経の障害や脳脊髄機能低下をもたらすことがあり、この病態は低髄液圧症候群に属する。
 その具体的な症状として、痛み(頭痛、頸部痛、背部痛、腰痛、四肢痛)、脳神経症状(めまい、聴力障害、耳鳴り、視力障害、複視、嗄声、咽頭違和感、顔面違和感、顎関節症、味覚障害、嗅覚障害など)、自律神経症状(微熱、血圧異常、脈拍異常、動悸、胃腸障害(腹痛、腹満、便秘、下痢)、手足冷感、レイノー症状、発汗異常など)、大脳機能障害(記憶力低下、思考力低下、集中力低下、睡眠障害、うつ)、その他(倦怠、易感染症、リンパ節腫瘍、内分泌障害)が挙げられ、これらが三項目以上三ヶ月以上持続する場合には低髄液圧症候群と診断する一要素となる。

 また、診断に当たっては造影脳MRIが有用であり、硬膜の広範な造影、脳の下垂、硬膜下液体貯留、脳室縮小、下垂体腫大、静脈洞拡張などが認められる。他の画像診断としてMRミエログラフィーによる漏出後の確認やRI脳槽、脊髄髄液腔シンチグラムによる3時間以内の早期膀胱内RI集積、髄液漏出、早期クリアランスのいずれか一項目の陽性の確認などがある。

イ 中央病院、藤内病院、徳大病院精神神経科(平成16年8月18日から平成18年7月まで)の診療記録によれば、亡X1には、本件事故後、肩から首にかけての疼痛や頭痛、頭重感、嘔気、睡眠障害、倦怠感、易疲労などの症状が平成16年6月までに現れており、起きるとつらく臥位が楽であり、症状が天候によって左右されるとされていること、徳大病院精神神経科入院期間中に飛蚊症を訴え同病院眼科を受診していることが認められる。

 また、徳大病院脳神経外科は、亡X1についてMRI、ミエログラフィーにて胸腰椎移行部に髄液漏出部位が認められたことから低髄液圧症候群と診断したものであり、また、第一回のブラッドパッチ治療は劇的な効果を挙げている。
 他方、三好病院、藤内病院及び徳大病院整形外科においては、X線写真、CT、MRI上器質的変化が認められないとしているが、脳神経外科の観点からの画像所見ではなく、住友病院でも、マクロ的神経障害はないがミクロ的な神経学的異常は否定できないとしていること等を考慮すれば、徳大病院脳神経外科の前記診断の信用性を否定すべき事情とはいえない。

ウ 以上によれば、亡X1の症状は一般的な低髄液圧症候群の症状と整合し、重要な判断資料であるMRI及びミエログラフィーの画像所見も低髄液圧症候群の所見を示していることから、亡X1は、平成18年8月当時、低髄液圧症候群の状態にあったと認められる。低髄液圧症候群については未解明な部分が存在するが、このことが上記判断を左右するものではない。

(2) 徳大病院脳神経外科は、亡X1の低髄液圧症候群について、その症状が本件事故後にこれを契機として出現し、他に原因となるような外傷既往がないことから、本件事故が原因であると判断している。この点、平成16年6月の針治療の影響も考えられないではないが、住友病院の診療録の針治療の針が後頸神経に接触した可能性を疑った記載がある以外は、その詳細が明らかではなく、低髄液圧症候群の原因となるべき外傷既往は、本件事故以外に認められないから、低髄液圧症候群と本件事故との間の因果関係を認めるのが相当である。

(3) 亡X1の低髄液圧症候群については、二回目のブラッドパッチ治療により症状の変化がないこと、保険適用のある有効な治療方法はない上、ブラッドパッチ治療についても同治療による神経癒着によって局所的神経症状を引き起こすおそれや髄膜炎等の合併症のおそれなどから保存的療法による以外にないことを理由に平成19年9月21日に症状固定したとされ、その信用性を疑うに足りる事情は存在しない。
 よって、亡X1の低髄液圧症候群については平成19年9月21日に症状固定したと認められる。

以上:3,371文字

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