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自賠法免責の抗弁に関する昭和44年7月11日東京地裁判決理由全文紹介

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平成26年 7月28日:初稿
○「過失割合不明な場合の人身傷害保険金請求金額・順序等関する質問4」の続きで重要判例紹介です。
それは、昭和44年7月11日東京地裁判決(交民2巻4号942頁、判タ2377号232頁)理由全文で、別コンテンツで私なりの説明をします。

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理由
一 (事故の発生)

 本件事故の発生したことは、原告Xの傷害の部位、原告車の所有者の点を除き、当事者間に争いがない。そして、〈証拠〉によれば、原告Xは、本件事故により、右大腿骨頭骨折、骨関節打撲捻挫の傷害を受けたことが認められる。

 なお、被告ははじめ、原告会社が原告車を所有していることを認めたが、それは、事実に反し、錯誤にもとづくものであるから、右自白を撤回すると主張する。成立に争いのない乙第1号証によれば、本件事故当時、原告車の所有名義はA株式会社であつたことが認められるが〈証拠〉によれば、原告会社は、昭和41年9月23日A株式会社から原告車を代金42万円余で月賦で買い受け、昭和43年3月に右代金を完済したことが認められる。従つて、原告車が原告会社の所有に属しないものということはできないから、被告の右自白の撤回は理由がない。

二 (責任原因)
(一) 本件事故は、被告がBを使用し、同人が同被告の業務を執行中、発生したものであることは、当事者間に争いがない。そこでBの過失について判断する。
 まず、本件事故現場の道路状況についてみると、〈証拠〉によれば、本件事故現場は、別紙図面記載のとおり、三宿方面から渋谷方面に通ずる道路と淡島方面に北西に通ずる道路および上目黒方面に南東に通ずる道路とが交差する信号機の設置されている交差点であること、右東西道路は、幅員30メートルで、両側には各3メートルの歩道があり、道路中央には東急玉川線の軌道が敷設され、3車線が設けられているアスファルトの舗装道路で、交通量はかなり多いこと、北西道路は、幅員6メートル、両側には各2、5メートルの歩道があり、南東道路は、幅員4メートルで歩車道の区別がなくいずれもアスファルト舗装の道路であること、右交差点の中央附近から東西道路の見とおしは良好であること、右交差点の信号機は、東西道路を三宿方面に向かつて34メートル先にある三宿交差点にある信号機と連動していることがそれぞれ認められ、右認定に反する証拠はない。

 次に、本件事故発生当時の原、被告車の状況について判断すると、〈証拠〉を総合すると、Bは被告車を運転して、別紙図面のとおり渋谷方面から青信号の表示に従つて、本件交差点に至り、淡島方面に右折するため交差点中央附近に進み、三軒茶屋方面から渋谷方面に向けて右交差点を進行中の一団の車輛の通過を待ち、右車輛が通過したあと、その後方30メートル先に本件交差点に向けて進行中の原告車を発見したが、原告車が交差点手前で停止して、被告車に進路を譲つてくれるものと判断し、時速約5キロメートルの速度で右折、進行したところ、予期に反して、原告車がそのまま交差点に進入してきたのでさける間もなく、被告車の左前部と原告車の右前部とが衝突したこと、一方原告Xは、原告車を運転して、三軒茶屋方面から渋谷方面に向けて時速約50キロメートルの速度で進行していたところ、右折のため交差点中央附近で待機中の被告車を約50メートル先に発見したが、被告車がそのまま停止して原告車の通過を待つてくれるものと判断し、そのままの速度で進行したところ、被告車が右折進行してきたためさける間もなく衝突したことを認めることができる。

 しかし、原告車の進行方向の信号機が原告車の交差点進入の際青信号を示していたものか、それとも黄信号を表示していたものかどうか、さらに、原告車が右交差点に至るどの地点ですでに黄信号を表示していたものかは、本件全証拠によるも、これを確定することは困難である。

 以上の如く、Bの注意義務判定上の重要な事実である本件交差点における信号機の表示が不明である本件にあつては、事故発生時、Bにいかなる注意義務が要求されていたかを判断するに足りる具体的状況を確定することが困難である。そうだとすれば、Bの過失について立証責任を負う当事者の不利益に判断するほかはない。従つて、原告会社の損害につき、被告の民法715条1項の責任を認めることはできず原告会社の請求は失当というほかない。

(二) 被告が被告車を所有し、自己のために運行の用に供していたものであることは、当事者間に争いがない。
 そこで被告の主張する免責の抗弁について判断すると、被告としては、Bに過失がなかつたことを立証すべきところ、前示のとおり、この点が明かでない以上、被告の不利益に判断するほかないから、その他の免責要件について判断するまでもなく、理由がない。従つて、被告は、自賠法3条にもとづき、原告Xの損害を賠償する責任がある。

 次に過失相殺の抗弁について判断すると、原告Xの過失についても、Bのそれと同様、前示のとおり、その注意義務を判断するに足りる具体的状況を確定することが困難であるから、原告らの賠償額の算定につき、原告Xの過失も斟酌することができないというほかはない。

三 (原告Xの損害)
(一) 入院治療費
 〈証拠〉によれば、原告Xは、本件受傷により昭和42年3月2日より同年6月までC病院に入院し、入院治療費として、24万8650円を支出したことが認められ、同額の損害を受けたものということができる。

(二) 入院雑費
 〈証拠〉によれば、原告は、右入院期間中、洗面器、花瓶、電熱器など雑費として1万1800円を支出したことが認められるが、右入院雑費中、洗面器、花瓶、電熱器合計2100円を除き、その余の雑費については、本件事故と相当因果関係にあるものと認められるから、9700円の限度で被告に負担させるのを相当とする。

(三) 附添看護婦代、貸布団代
 〈証拠〉によれば、原告Xは、本件受傷により入院し、附添看護婦代として17万5600円、貸布団代として7920円をそれぞれ支出したことが認められ、同額の損害を受けたものということができる。

(四) 通院交通費
 原告Xが通院交通費として1200円を支出したことは本件全証拠によるもこれを認めることができない。

(五) 休業損害
 〈証拠〉によれば、原告Xは、本件事故当時、原告会社に自動車運転者として勤務し、日収として平均1777円を得ていたところ、本件受傷により昭和42年3月2日より同年6月20日まで111日間休業を余儀なくされ、その間右収入を得られなかつたことを認められるから、原告Xは、19万7247円の得べかりし利益を失つたものということができる。

(六) 慰藉料
 原告Xは、本件事故により前記傷害を受け、前記のとおり入院し、退院後も二カ月間は勤務を休まざるを得なかつたことは、先に認定したとおりである。従つて、原告Xが本件事故により、精神的苦痛を受けたことは容易に推認されるところ、慰藉料としては40万円を相当とする。

四 (損害の填補)
 原告Xが自賠責保険から50万円を受領したことは、当事者間に争いがないから、原告Xの右損害から右金額を控除すべきことになる。

五 (弁護士費用)
 〈証拠〉によれば、原告Xは、被告が右損害の賠償の任意の弁済に応じないので、原告訴訟代理人にその取立を委任し、手数料として5万円、成功報酬として5万円を支払うことを約したことが認められる。従つて、本訴認容金額のほぼ1割に当る5万円の限度で被告に負担させるのを相当とする。



六 (結論)
 よつて、原告Xは、被告に対し58万9117円および右金員のうち、弁護士費用を除く53万9117円に対する訴状送達の日の翌日である昭和42年8月19日以後支払ずみまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があり、その余の請求および原告会社の請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法92条、89条、仮執行の宣言につき同法196条をそれぞれ適用して、主文のとおり判決する。
(福永政彦) 

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