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加害者代位請求についての昭和54年11月28日東京高裁判決一部紹介

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平成26年 5月 4日(日):初稿
○「加害者代位請求についての昭和53年11月30日東京地方裁判所判決一部紹介」の続きで、その上級審昭和54年11月28日東京高裁判決(民集 36巻8号1671頁、交民12巻6号1477頁)です。
一審判決を覆し、被害者が同一訴訟手続で加害者に対して損害賠償を請求するとともに、保険会社に対し加害者の保険金請求権を代位行使して保険金の支払を併せ請求し、併合審判のなされる場合においては、裁判所は、被害者の加害者に対する損害賠償請求を認容するとともに、被害者の加害者に代位してする保険金請求を将来の給付の請求としてその必要があるかぎり認容することができるとしました。
しかし、いずれにしても私が保険会社に対して直接請求した約款第6条(3)号での加害者に対する損害賠償請求権不行使承諾書面提出に基づくものではなく、事案が異なります。

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主  文
一 一審被告有限会社Aの本件控訴を棄却する。
二 原判決を左のとおり変更する。
 一審被告有限会社Aは、一審原告らそれぞれに対し、金1169万円及びこれに対する昭和52年4月1日以降右支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
 一審被告東京海上火災保険株式会社は、一審原告らそれぞれに対し、一審被告有限会社Aに対する本判決が確定したときは、金575万円及びこれに対する右確定の日の翌日以降右支払済みに至るまで年5分の割合による金員を支払え。
 一審原告らのその余の請求を棄却する。
三 訴訟費用は第一、二審を通じこれを3分し、その1を一審原告らの、その2を一審被告らの負担とする。
四 この判決は、一審被告有限会社A業に対し金員の支払を命じた部分にかぎり、かりにこれを執行することができる。

(中略)

(ニ)一審原告らは、右約款中に被害者の保険金直接請求権を定めた条項は存しないところ、責任保険の目的等から司法的規制を加え、約款を補充して一審被告東京海上火災保険に対する保険金の直接請求を認めるべきであると主張するが、これを排斥すべきことは、原判決理由説示(原判決21枚目表冒頭以下同23枚目表9行目まで)のとおり(ただし、原判決23枚目表2行目末尾に「以上のように解したからといつて、たやすく一審原告ら主張のごとく正義、公平の観念に反するものとはいえず、本件普通保険約款中その主張の部分の効力は否定されない。」を加える。)であるから、これをここに引用する。

(三)そこで次に一審原告らの債権者代位権に基づく請求について判断する。
 本件普通保険約款四章17条によると、被保険者の保険者に対する保険金請求権は、損害賠償責任額について被保険者と損害賠償請求権者との間で判決が確定したとき又は裁判上の和解、調停もしくは書面による合意が成立したときに発生し、これを行使することができると規定されているから、右損害賠償責任額がいまだ確定していない本件においては、一審原告らは、一審被告東京海上火災保険に対し、現在の給付として一審被告A産業の保険金請求権を代位行使するに由ないものというべきである。

 しかしながら、本件のごとく被害者が同一訴訟手続で加害者に対して損害賠償を請求するとともに、保険会社に対し加害者の保険金請求権を代位行使して保険金の支払を併せ請求し、併合審判のなされる場合においては、裁判所は、被害者の加害者に対する損害賠償請求を認容するとともに、被害者の加害者に代位してする保険金請求を将来の給付の請求としてその必要があるかぎり認容することができるものと解すべきである(弁論の全趣旨から、一審原告らの一審被告東京海上火災保険に対する請求には、かかる将来の給付の請求も含まれているというべきである。)。

 このように解することは、本件保険契約の性質、内容になんら反するものではなく、右請求を排斥すべき実質的理由は見出し難い。しかるところ、一審被告A産業の一審被告東京海上火災保険に対する保険金請求権は、前記本件普通保険約款4章17条から一審原告らの一審被告A産業に対する判決の確定と同時にその履行期が到来するものと解せられること(もつとも、保険金請求権の履行期は、通常の場合右約款四章17条2項所定の保険金支払請求がなされ、同18条所定の調査期間経過後に到来するものと解せられるが、保険会社が加害者とともに訴訟当事者として関与する本件のごとき例外の場合には、右条項にかかわらず、被害者の加害者に対する損害賠償請求を認容する判決が確定すると同時に保険金請求権の履行期が到来するものというべきである。)、一審被告らが一審原告らに対する損害賠償義務、保険金支払義務を争つていること、一審原告らの速かな救済が必要とされることを考えれば、引用にかかる原判決説示の本件普通保険約款一章四条の定めにかかわらず本件は予めその請求をなす必要がある場合にあたるものということができる。

 なお、一審被告A産業が無資力であることは、一審原告らと一審被告東京海上火炎保険との間で争いがなく、また、本件のように一審被告A産業の一審原告らに対する損害賠償債務が未確定の間は一審被告A産業が一審被告東京海上火炎保険に対して保険金請求権を行使しえないことは前記説示のとおりであるから、債権者代位権の客体である保険金請求権が既に適法に行使されているため代位行使しえなくなるという事態も起りえないし、右事態の発生を窺わせる証拠もない。そうすると、一審被告東京海上火炎保険は、一審原告らに対し、一審原告らの一審被告A産業に対する本判決が確定したときは、同一審被告の損害賠償すべき額の範囲内にある一審原告らの本訴保険金請求に応ずべき義務がある。

三 以上の次第であつて、一審原告らそれぞれに対し、一審被告A産業は1169万円及びこれに対する昭和52年4月1日以降右支払済みに至るまで年5分の割合による遅延損害金を、一審被告東京海上火炎保険は、一審原告らの一審被告A産業に対する本判決が確定したときは、575万円及びこれに対する右確定の日の翌日以降右支払済みに至るまで年5分の割合の遅延損害金を支払うべき義務があり、一審原告らの本訴請求は右の限度で理由があるからこれを正当として認容し、その余は理由がないからこれを失当として棄却すべきもので、したがつて、一審被告A産業の本件控訴は理由がないからこれを棄却し、右と趣旨を異にする原判決を右のとおりに変更すべく、訴訟費用の負担につき民訴法89条、92条、93条、96条を、仮執行の宣言につき同法196条を各適用して、主文のとおり判決する。
(昭和54年11月28日 東京高等裁判所第5民事部)

以上:2,764文字

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