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素因減額する対象限定した平成22年1月21日最高裁判例全文紹介

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平成25年 7月17日:初稿
○公刊されている判例集には、殆ど登載されていませんが、素因減額を考慮する上に置いて重要な平成22年1月21日最高裁判所第1小法廷判決(LLI/DB、判例秘書)全文を紹介します。
 判時概要は、市立中学に通っていた際に同級生から受けたいじめで統合失調症を発症したとして,県や市,当時の同級生らに対し,損害賠償を求めた訴訟の上告審において,判例を踏襲し,慰謝料につき既存の疾患を斟酌するにあたり,統合失調症の発症による慰謝料に限定せず,いじめに対する慰謝料をも減額の対象とした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があるとして,上告人敗訴部分を破棄し審理を原審に差し戻したものです。

○交通事故訴訟でも、交通事故後発症した症状について素因減額される場合がよくありますが、その素因減額する対象について損害内容を吟味する必要があることを示した判例です。
この詳しい説明は別コンテンツで行います。

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主 文
原判決中,上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,本件を広島高等裁判所に差し戻す。

理 由
 上告代理人○○○○,同○○○○の上告受理申立て理由第3について
1 本件は,被上告人広島市が設置する公立中学校に在学していた上告人が,同じく上記中学校に在学していた被上告人Y1,被上告人Y2及び被上告人Y3(以下,併せて「被上告人生徒ら」という。)からいじめを受け,これが原因となって統合失調症を発症したなどと主張して,被上告人生徒ら並びに被上告人Y1の両親である被上告人Y4及び被上告人Y5に対して民法709条,719条に基づき,被上告人広島市に対して国家賠償法1条1項に基づき,被上告人広島県に対して同法3条1項に基づき,慰謝料1000万円及び弁護士費用100万円の損害賠償を請求する事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要等は,次のとおりである。
(1)被上告人生徒らは,平成13年4月ころから平成15年6月にかけて,上告人に対し,首を絞める,文房具や教科書を隠したり壊したりする,小石をぶつける,水をかけるなどし,さらに,上告人にゲームソフトの万引きをさせた上,万引きをしたことをはやし立て,警察に告げるなどと言って金銭を脅し取ろうとした(以下,これらの被上告人生徒らの行為を「本件いじめ」という。)。

(2)上告人は,平成14年6月17日以降,登校しなくなり,同年7月ころからは妄想や幻覚の症状が現れ,同年11月6日に統合失調症と診断された。
 上告人が統合失調症を発症したのは,以前から脳に何らかの生理学的・生化学的機能や構造の異常(以下「本件疾患」という。)があったところに,本件いじめによるストレスが加わったことが原因である。

3 原審は,前記事実関係の下において,被上告人らの損害賠償責任を認め,本件いじめと上告人の統合失調症の発症との間に相当因果関係があるとした上で,損害賠償の額につき要旨次のとおり判断して,上告人の被上告人らに対する請求を,各自330万円の限度で認容すべきものとした。
 本件いじめの程度,期間,被害の重大性その他本件に現れた一切の事情を考慮すると,慰謝料の額は,本件いじめによる精神的苦痛に対するものと統合失調症の発症による精神的苦痛に対するものとを合わせて1000万円とするのが相当である。

 上告人の統合失調症の発症には,本件疾患が関与しており,本件いじめがなくても上告人はいずれ統合失調症を発症した可能性がある。そうすると,本件において損害賠償額を定めるに当たり,民法722条2項の規定を類推適用して,上告人の本件疾患をしんしゃくすべきであり,その減額割合は7割が相当である。

 したがって,被上告人らが負担すべき慰謝料額は,上記1000万円から7割を減額した300万円である。
 また,弁護士費用の額は,30万円とするのが相当である。

4 しかしながら,原審の上記損害賠償の額に関する判断のうち,慰謝料の額を本件いじめによる精神的苦痛に対するものと統合失調症の発症による精神的苦痛に対するものとを合わせて算定した部分については是認することができるが,本件いじめ自体による精神的苦痛に対する慰謝料についても民法722条2項の規定の類推適用による減額の対象とした部分は,是認することができない。その理由は,次のとおりである。

被害者に対する加害行為と加害行為前から存在した被害者の疾患とが共に原因となって損害が発生した場合において,当該疾患の態様,程度などに照らし,加害者に損害の全部を賠償させるのが公平を失するときは,裁判所は,損害賠償の額を定めるに当たり,民法722条2項の規定を類推適用して,被害者の疾患をしんしゃくすることができる(最高裁昭和63年(オ)第1094号平成4年6月25日第一小法廷判決・民集46巻4号400頁参照)。

しかるに,本件いじめについては,上告人の本件疾患は何ら原因となっていないのであるから,本件いじめ自体による精神的苦痛に対する慰謝料の額を定めるに当たっては,上告人の本件疾患をしんしゃくすることはできないというべきである。

 そうすると,上告人の本件疾患をしんしゃくして被上告人らが負担すべき慰謝料の額を定めるに当たって,統合失調症の発症による精神的苦痛に対する慰謝料に限定せず,本件いじめ自体による精神的苦痛に対する慰謝料をも減額の対象とした原審の判断には,法令の解釈適用を誤った違法があり,その違法は判決の結論に影響を及ぼすことが明らかである。論旨は理由があり,原判決中,上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして,本件については,被上告人らの負担すべき損害賠償の額につき更に審理を尽くさせる必要があるから,上記部分につき本件を原審に差し戻すこととする。

 よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。
    最高裁判所第一小法廷
        裁判長裁判官     甲斐中辰夫
           裁判官     宮川光治
           裁判官     櫻井龍子
           裁判官     金築誠志
        当事者目録
(以下略)
以上:2,548文字

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