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一人暮らしの老人の休業損害・逸失利益を認めた判例紹介1

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平成24年10月28日(日):初稿
○「1人暮らしの人の家事労働と休業損害・逸失利益」で、「一人暮らしで無職の78歳の女性に、78歳で家事労働に従事していたとして65歳以上の女子労働者学歴計の平均賃金293万8500円の基礎収入を認めた判例(東京高裁H15.10.30、判例時報1846号20頁)」の触りを紹介していましたが、現在、取扱中の事件で、この判例を精査する必要が生じています。そこで私がじっくり読むため判例全文を紹介します。過失割合も大きな争点になっていますが、この部分は省略します。

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主文
一 一審原告X1の控訴に基づき、原判決中、一審原告X1に関する部分を次のとおり変更する。
(1)一審被告は、一審原告X1に対し、6851万0610円及びうち6760万0178円に対する平成10年9月3日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
(2)一審原告X1のその余の請求を棄却する。
二 一審原告X2及び一審被告の本件控訴をいずれも棄却する。
三 訴訟費用は、一審原告X1と一審被告及び参加人との間では、第1、2審を通じてこれを五分し、その一を一審原告X1の、その余を一審被告及び参加人の各負担とし、一審原告X2と一審被告及び参加人との間では、控訴費用を一審原告X2の負担とする。
四 この判決の一項(1)は、仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 控訴の趣旨

(一審原告ら)
一 原判決中、一審原告X1に関する部分を次のとおり変更する。
 一審被告は、一審原告X1に対し、8722万4538円及びうち8631万4106円に対する平成10年9月3日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え(請求の減縮)。

(1)原判決中、一審原告X2に関する部分を取り消す。
(2) 一審被告は、一審原告X2に対し、220万円及びこれに対する平成10年9月3日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
三 訴訟費用は、第1、2審とも一審被告の負担とする。
四 仮執行宣言

(一審被告)
一 原判決中、一審原告X1に関する部分のうち一審被告敗訴の部分を取り消す。
二 同部分に係る一審原告X1の請求を棄却する。
三 訴訟費用は、第1、2審とも一審原告X1の負担とする。

第二 事案の概要
一 事案の要旨

 本件は、一審原告X1(当時78歳)が歩行者用信号機の設置された交差点を横断歩行中、一審被告運転の普通貨物自動車に衝突されて負傷した交通事故(以下「本件事故」という。)について、一審原告らが、本件事故当時、歩行者用信号が青色を表示し、一審被告の対面信号(車両用信号)が赤色を表示していたなどと主張して、一審被告に対し、民法709条及び自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づいて、損害賠償として、一審原告X1は8724万0818円及びうち8633万0386円に対する平成10年9月3日(本件事故日)から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を、一審原告X2(一審原告X1の娘)は220万円(近親者の慰謝料と弁護士費用)及びこれに対する上記遅延損害金の支払をそれぞれ求め、これに対し、一審被告が、本件事故当時、歩行者用信号が赤色を表示し、車両用信号が青色を表示していたなどと主張して争った事案である。

 原審は、本件事故時、一審被告の主張するとおり歩行者用信号が赤色を表示し、車両用信号が青色を表示していたと認定し、本件事故における過失割合を一審原告X1が6、1審被告が四であるとして過失相殺をした上で、一審原告X1の請求について、2854万1812円及びうち金2763万1380月に対する上記遅延損害金の限度で請求を認容し、一審原告X2の請求については、これを棄却した。

 一審原告らが、これを不服として控訴を提起したほか、参加人が、一審原告X1に対し、控訴を提起した(その結果、一審被告について控訴の効果が生じた。)。なお、一審原告X1は、当審において、第一の(一審原告ら)の一記載のとおり請求を減縮した。

二 前提事実(争いのない事実及び証拠により容易に認定することができる事実)
(1)本件事故の発生

 一審被告は、平成10年9月3日午後6時55分ころ、普通貨物自動車(以下「加害車両」という。)を運転し、片側二車線の県道栃木藤岡線(以下「本件県道」という。)の右側車線を栃木市方面から藤岡町方面(北から南)に向けて進行中、栃木県下都賀郡大平町大字富田2334番地一の車両用信号機と歩行者用信号機により交通整理の行われている交差点(以下「本件交差点」という。)の横断歩道外の中央寄り部分において、同交差点を西から東に向けて横断歩行中の一審原告X1に、加害車両右前部を衝突させ、同人をその場に転倒させるという本件事故を起こした。
 なお、加害車両は、平成9年12月10日をもって、自動車検査証の有効期限が経過していた。

(2)傷害の程度、治療経過及び症状固定
 一審原告X1は、本件事故により、左第三ないし第11肋骨骨折、左多発骨折、血気胸、両恥座骨骨折、頭部打撲、右拇指挫創、顔面挫創、肺挫傷等の傷害を負い、本件事故日の平成10年9月3日から同年12月2日までの間、下都賀総合病院に入院し(入院日数91日)、同月3日から平成11年5月24日までの間、同病院に通院し(実通院日数28日)、平成10年12月7日から同年12月28日までの間、高田整形外科病院に入院し(入院日数22日)、同年12月4日から同月6日まで及び同月29日から平成11年2月28日までの間、同病院に通院し(実通院日数6日)、同年2月25日から同年4月22日までの間、日本大学医学部附属板橋病院に通院し(実通院日数5日)、同年12月22日から平成12年2月4日までの間、帝京大学医学部附属病院に通院して(同年1月7日までの実通院日数2日)治療を受け、平成12年1月7日、同病院において、症状が固定した旨の診断を受けた。
 上記の入院日数は合計113日、症状固定日である平成12年1月7日までの実通院日数は合計41日となる。

(3)後遺障害の程度
 一審原告X1は、平成13年2月20日、自賠法72条所定の政府の損害てん補業務を所管する国土交通大臣から、本件事故による後遺障害について、神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの(後遺障害別等級表第三級三号)、一上肢の三大関節中の一関節(左肩)の機能に障害を残すもの(同第12級六号)、一手の母指(右手母指)の用を廃したもの(同第10級七号)、一下肢の三大関節中の一関節(左膝)の機能に障害を残すもの(同第12級七号)、肋骨に著しい奇形(変形)を残すもの(同第12級五号)、局部に頑固な神経症状を残すもの(同第12級12号)、女子の外貌に醜状を残すもの(同第12級14号)に該当するものであり、併合第二級が相当であると認定された。

(4)一審原告らの身分関係等
 一審原告X1は、本件事故時78歳、症状固定時80歳の女性であり、一審原告X2は、一審原告X1の娘である。

(5)一審被告の刑事処分
 一審被告は、平成10年11月30日、本件事故に関し、業務上過失傷害の罪で、罰金10万円の略式命令を受けた。


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