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交通事故による脳脊髄液減少症を認めた名古屋高裁判決紹介6

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平成23年12月27日:初稿
○「交通事故による脳脊髄液減少症を認めた名古屋高裁判決紹介5」の続きで、損害についての結論です。




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4 損害について
 以上の認定説示を踏まえて、控訴人の本件事故による損害を検討すると、以下のとおりとなる。
(1)治療費                306万3684円
ア 被控訴人も認める分(乙1)      169万0049円
イ その他の控訴人主張の自己支出分    137万3635円

(2)入院雑費
                 6万6000円
ア 山田赤十字病院(36日×1500円)   5万4000円
イ 熱海病院(控訴人請求8日分×1500円) 1万2000円

(3)通院交通費               57万7500円
 以上の(1)ないし(3)の費目は、控訴人が本件事故により脳脊髄液減少症となり、その完治のためには熱海病院での診療が必要不可欠であったことからすれば、全て認められるべきである。

(4)休業損害               843万3306円
 控訴人は、本件事故による受傷後、完治を宣言された直前の平成21年11月末ころまでは治療を要する状態にあり、実際に仕事をしていなかったことが認められ、この間については休業損害が認められるべきであるが、控訴人の症状や診療の経過等に鑑み、以下のとおり4時期に分けた上で、適宜減額をするのが相当である。

 なお、休業損害額の算定に当たっては、控訴人の基礎収入としては、受傷時の月収である25万円を基準とするのが相当である。この点、控訴人は、餅の売り上げなどの利益をも休業損害として計上しているが、控訴人の名で税務申告をしておらず、控訴人特有の収入であるとは認められないから、採用することはできない。

ア 受傷後平成17年1月末まで        393万3306円
  この期間は、被控訴人も認める休業相当期間であり、全く就労が不能であったということができる。したがって、平成15年分の82日68万3306円(8333円×82日)と、平成16年1月から平成17年1月までの13か月(25万円×13か月)の325万円の合計393万3306円がこの期間の休業損害として認められる。
 なお、上記期間内には就労可能な期間もあった旨を山田赤十字病院の整形外科医が記載した箇所はあるが(甲235)、その程度は判然とせず、この記載をそのまま採用することはできない。

イ 平成17年2月から平成18年7月末まで  270万0000円
 控訴人は、上記アの期間後も、熱海病院を紹介されて第1回めのブラッドパッチ治療を受け終了後その効果が顕れたといえる平成18年7月末ころまでは、依然として従前からの頭痛等が続き就労は極めて困難であり、実際に就労していなかったものと認められるが、他方、この治療を受けるまでには相当長い期間が経過しており、このような治療の遅延により生じた損害を全て加害者である被控訴人の負担とすることは、損害の公平な分担の見地から相当ではないので、このような事情を勘案して、40%を減額することが相当である。
 したがって、平成17年2月から平成18年7月末までの間に認められる休業損害額は、270万円(25万円×18か月×0.6)となる。

ウ 平成18年8月から平成20年9月末まで  162万5000円
 控訴人は、第1回目のブラッドパッチ治療終了後、頭痛等が大きく軽減し、髄液漏出についての画像所見も改善しており、客観的に症状が軽減していることが認められるから、第2回ブラッドパッチ終了後の平成20年9月末ころまでは、労働能力が相当程度回復していたと見ることができ、このことと、上記イと同様の事情を勘案して、通常の休業損害の25%を認めることが相当である。
 したがって、平成18年8月から平成20年9月末までの間に認められる休業損害額は、162万5000円(25万円×26か月×0.25)となる。

エ 平成20年10月から平成21年11月末まで 17万5000円
 控訴人は、第2回、第3回ブラッドパッチ治療を経て、更に頭痛等の症状が軽減し、第3回後にはアルバイト程度の就労も可能となり、平成21年12月には篠永医師から完治を告げられているが、その直前の同年11月末ころまでは、依然、労働能力の一部を喪失していたと認められるところであり、この期間中である平成21年5月ころ、控訴人に後遺障害があることを前提として、別表第二併合第14級の判断がなされていること(甲274)等をも勘案して、通常の休業損害の5%を認めることが相当である。
 したがって、平成20年10月から平成21年11月末までの間に認められる休業損害額は、17万5000円(25万円×14か月×0.05)となる。
 そして、平成21年12月以降の休業損害を認めることは相当でない。

オ 以上を合計すると、控訴人に認められるべき休業損害額は、843万3306円となる。

(5) 後遺症逸失利益
 控訴人は、頭痛乙の病状が完治したことによって、最終的に後遺障害がなくなっているのであるから、後遺症逸失利益を損害として認めることは出来ない。

(6) 慰謝料
 本件事故の態様は、歩道線内を何ら過失もなく歩行していた控訴人に対し、後ろから被控訴人車がいきなり相当の高速度で衝突したものであって、詳細な状況は証拠上不明であるものの、被控訴人が脇見運転をしていたことや、衝突時までの制動措置を取らなかったことなどもうかがわれるところであって、被控訴人の過失の内容及び程度は重大なものであること、事故後の対応も加害者としての誠意がうかがわれないこと、本件事故直後の控訴人の入院が1か月以上に及びその後も長らく頭痛等の症状が改善せず、長期間の通院治療を余儀なくされたこと、この間、控訴人が稼働できないことから、実家の家業が廃業となり、夫婦仲の悪化により離婚を余儀なくされるなどの精神的苦痛をも加わったこと等を総合勘案すれば、本件事故において認められる控訴人の慰謝料額は、300万円とすることが相当である。

 なお、控訴人は、慰謝料請求については、後遺障害が残存していることを前提として、入通院等慰謝料290万円と後遺障害慰謝料110万円とを分けて掲記しているが、その後控訴人の症状が完治し、後遺障害がなくなった以上、上記の趣旨を400万円の限度で本件事故による慰謝料を請求しているものと見ることが可能であるから、その範囲内で上記のとおり300万円を認めるものである。

(7) 以上(1)ないし(6)の合計           1514万0490円

(8) 既払金(乙2・甲238ないし258)       ▲975万5839円

(9) 既払金控除後の金額                 538万4651円

(10) 弁護士費用                      50万0000円
 本件訴訟の経緯、認容額等を総合すると、本件において認められる弁護士費用相当の損害額は、50万円と認めるのが相当である。

(11) (9)と(10)の合計額              588万4651円

第4 結論
  よって、上記判断と一部異なる原判決を変更することとし、主文のとおり判決する。

名古屋高等裁判所民事第3部
裁判長裁判官 高田健一
裁判官    尾立美子
裁判官    上杉英司
   
以上:3,069文字

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