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平成20年1月10日横浜地方裁判所低髄液圧症候群認定判決4

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平成22年12月17日:初稿
○「平成20年1月10日横浜地方裁判所低髄液圧症候群認定判決3」の続きで、裁判所の判断部分を3コンテンツに分けて一気に紹介します。
 被害者の脳脊髄液減少症による休業損害の主張を保険会社側は否認していますので、裁判所は脳脊髄液減少症罹患と認定した理由を丁寧に説明しています。本件では被害者本人が、保険利用の調査を担当していた者から、髄液減少症ないし低髄液圧症侯群の存在を聞き知り、自身の頭痛の原因ではないかと考えて同疾病の有効な治療法とされるブラッドパッチ療法を希望し、医師の紹介で脳脊髄液減少症の専門医を紹介されて受診し、その結果、脳脊髄液減少症と診断され、2回、ブラッドパッチ療法を受診しました。その結果、頭痛等が収まり、脳脊髄液減少症は治癒したとの診断を受けたことがポイントになっています。
 実務ではブラッドパッチ療法を受け、多少は改善するも完全治癒せず各種神経症状が残存している場合、ブラッドパッチ療法が効果を上げないので脳脊髄液減少症とは断定できないとの論理で否定される例も多く、治癒すれば認定され,治癒しないで苦しい状態が継続していると認定されないとの皮肉な結果となっているのが辛いところです。

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第三 当裁判所の判断
1 本訴請求について
 本訴請求は、被告の反訴請求と表裏の関係にある確認訴訟であるから、訴えの利益を欠き、却下を免れない。

2 被告甲野太郎の損害
(1)医療費(争点(1))について
ア 前記「争いのない事実等」、証拠(略)によれば、本件事故時の状況、被告甲野太郎の治療経過につき、以下のとおりの事実が認められる。

(ア)本件事故時の状況
 被告甲野太郎は、平成16年2月22日午後1時34分ころ、助手席に被告甲野花子を同乗させて被告車両を運転し、本件交差点を直進していたところ、対向車線から走行してきた原告車両が本件交差点を右折し、同車右前部が被告車両運転席側ドア付近に衝突した。被告甲野太郎は、その衝突の衝撃により頭部右側を打ち、一瞬意識を失ったが、被告甲野花子の泣き声に気付き、意識はもうろうとしていたものの、同被告を抱いて降車し、共にB病院へ搬送された。

(イ)被告甲野太郎の治療経過
a 被告甲野太郎は、同日、B病院において「頭部打撲」の診断を受け、頭部レントゲンの結果、骨折はしていないことが判明したことから、本件事故現場に戻った。同被告は、同月23日及び同月25日もB病院に通い、頭部から首、腰にかけての部位や肩の痛み等を訴えたが、経過観察のみで格別治療を受けることもなく、同日、自宅近くのD病院に転院した。

 同被告は、D病院において頸部痛、腰痛及び頭痛を訴えて「頭部挫傷、頸椎捻挫、腰部挫傷」の診断を下され、同年3月1日、同月5日及び同月9日通院し、けん引や温熱療法を受けたものの、症状は改善しなかった。D病院の診療録(証拠略)中、同年3月1日の欄には「眼の奥が痛い。頸部痛がある。」、同月9日の欄には「頸部腫脹があると。痛み著変ナシ」との記載がある。

b 同被告は、同年3月26日、E整形外科において受診した。当時の主訴は「右肩凝り、右上肢痛及びしびれ、右腰部痛、右下肢痛」、知覚は「上肢は左右差なく正常下肢は右L4、5領域に△30%の痛覚低下あり」、反射は「上肢正常下肢は左右とも膝蓋腱反射消失」であり、「頸椎捻挫、腰椎捻挫」の診断を受けた。

 同被告は、このときも多少の頭痛はあったものの、首、腰、右上肢、右下肢の痛みの方が強かった。同日以降、ほぼ1週間に1回程度の頻度でE整形外科に通院を続け、電気マッサージ等の理学療法を受け、また、鎮痛剤を処方された。
 同年4月以降、上記主訴に係る症状は和らぎ、同年5月から同年7月上旬ころにかけては本件事故前の体調に近くなった。もっとも、E整形外科の診療録(証拠略)中、同年7月6日の欄には「右眼のうらが痛い」との記載が見られる。

c しかしながら、同月、主治医の丁山医師が、鎮痛剤の副作用に対する懸念から、服用量の漸減を勧めて1錠を半錠にするなど処方を減らしたところ、上記症状は悪化した。そこで、丁山医師は、同月29日、再度鎮痛剤を増量するとともに、新たに副作用の強い副腎皮質ホルモンプレドニンを処方した。また、丁山医師は、同被告が眼の裏の痛みを訴えていたので、同日、眼科併診を勧めたが、同被告は、鎮痛剤を服用すれば痛みが和らぐことから、必要ないものと考えて拒絶した。同年8月ころからは特に頭痛が強くなり、鎮痛剤を服用すると一時的に痛みは和らいだが、その効果は長く続かなかった。同被告の頭痛は更に強いものとなっていき、立っていられないほどの激痛に至り、横になれば楽になるものの、同月及び同年9月はほとんど仕事に出られなかった。なお、平成16年9月8日付け作成の「病状の経過・治療の内容および今後の見通し」には同年8月21日現在における同被告の主訴の内容として「右眼の奥が痛い。」と記載されている。
 同被告は、同年9月11日には、Lホスピタルにおいて、頭部、頸部及び腰椎のMRI検査を受けた。

d 同被告は、同年10月、激しい頭痛が耐え難いものとなり、鎮痛剤も効かなくなってきたことから、丁山医師に相談し、同月25日以降、毎日後頭神経ブロックを受けるようになった。後頭神経ブロックとは、後頭部に注射で局所麻酔薬を浸潤するもので、後頭部の緊張性頭痛の治療に用いられる。しかしながら、後頭神経ブロックも、当初は加療後一、二日の間は痛みが治まったものの、薬効が切れると激痛が戻り、しかも、次第に鎮痛効果の持続する時間は短くなり、一、二時間程度にまでなった。また、マッサージを受けると時的に痛みが和らぐことから、丁山医師の許可を得て、N指圧センターやJ治療院等に通ってマッサージを受けるなどしたが、これも一時的な対症療法に過ぎなかった。

 さらに、同年11月4日にはHクリニックにおいて頭部CTスキャン等を、同月12日にはCクリニックにおいて脳CTスキャン、精密眼底検査等をそれぞれ受け、同年12月27日からはK病院へ、平成17年2月15日からはM病院へ通うようになったが、頭痛の原因は判明せず、鎮痛剤の処方を受けるなどしたのみで、格別、治療は施されなかった。なお、Cクリニックにおける前記検査においては右耳の聴力低下が認められた。

e 同被告は、保険利用の調査を担当していた者から、髄液減少症ないし低髄液圧症侯群(以下「髄液減少症」という。髄液圧が正常であっても低髄液圧症侯群同様の症状が出現することから、髄液減少症と呼ばれることが多くなった。)という疾病の存在を聞き知り、自身の頭痛の原因ではないかと考えて同疾病の有効な治療法とされるブラッドパッチ療法(硬膜内に自らの血液を注入して髄液漏れの孔をふさぐ処置)を希望し、丁山医師の許可を得た。そして、丁山医師から、上記療法を行っているO病院の医師あて及びP病院の医師あての各紹介状をもらったものの、前者は既に半年先まで予約が入っていたために受診できず、後者は受診はできたものの、病床に空きがないために治療を受けられなかった。
 そこで、同被告は、M病院の医師からの紹介により、F病院の己川医師の診察を受けることになった。

f 同被告は、同年4月18日、己川医師の診察を受け、同年5月9日に入院し、同月10日から同月12日にかけて頸椎、腰椎及び頭部のMRI検査を受けたところ、頭部MRIの検査結果において、硬膜下腔拡大や造影増強等髄液漏れを疑わせる所見が認められた。己川医師は、同被告が訴える頭痛、めまいの症状及び上記所見に加え、副作用の強い副腎皮質ホルモンプレドニンを服用しても症状が改善しなかったことから、髄液減少症の診断を下した。

 同被告は、同月13日、腰部にブラッドパッチ療法を受けたところ、頭痛が直ちに軽減し、数時間後に消失した。なお、己川医師が上記療法を腰部に施行したのは、一般的に受傷部位が頸椎であっても、髄液漏れは腰部に生じることが多く、また、腰部にブラッドパッチを入れるとある程度は頸椎まで効果が及ぶことによる。

 同被告は、同月18日に退院し、その後も数日おきに通院を続けたが、経過は依然として良好であり、同年6月11日の通院時には「仕事を始めた。かなり疲れはするが、状況は以前とは比べものにならないほど良い。」旨申告した。その後、同月18日、再度腰部にブラッドパッチ療法を受け、同年7月末日、髄液減少症は治ゆした旨の診断を受けた。


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