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裁判所鑑定心因性視力障害で素因減額が否定された例11

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平成22年11月 3日(水):初稿
○争点3「Xの右肩関節の機能障害の有無」に関する裁判所認定です。

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3 争点3について
(1)□△整形外科の診療録(甲21・15頁以下,乙4・15頁以下)によれば,本件事故後約3週間が経過した平成16年10月27日の測定において,Xの右肩には,挙上90度であり,以後右肩は90度以下の拳上しかできない状況が続いていたこと,平成17年1月24日の診察では,Xの右肩はかなり腫れがひき,痛みも鎮まってきたこと,同年2月2日の診察では,腫れはほとんどなく,110度まで拳上できるようになったこと,同年4月4日の診察において,同医院渡辺医師はXの右肩につき軽度拘縮が認められ,挙上170度と測定され,症状固定と判断したこと,渡辺医師の同年6月23日付け回答書(甲15の4)によれば,Xの右肩の屈曲は90度,外転が90度,内転が40度(いずれも他動)と測定されたこと,これを受けて渡辺医師は,同年6月28日、Xの症状は治療終了時より悪化しており,これを後遺症と判断したこと(甲21及び乙4・35頁),平成21年5月29日に坂本記念木町通整形外科において右肩可動域を測定した結果(甲第50号証)によれば,屈曲が90度,外転が90度,内転が40度(いずれも他動)と測定されたことが認められる。また,□○病院の診察においても,同病院佐藤医師は,平成16年12月15日、 Xの右肩を関節拘縮と診断していることが認められる(甲21及び乙4・4頁)。

 これらの事実によれば,Xの右肩には拘縮という器質的損傷が存在し,これが一旦は回復したものの,再度悪化し,現在に至るも残存するものであることがうかがわれる。そして,平成17年4月4日から再度の悪化が見られた同年6月23日まではわずか2か月半程度しか経過しておらず,本件の全証拠を見てもXの右肩につき,本件事故のほかに機能障害を発生ないし悪化させると思料される要因が認められないこと等をも併せ考慮すれば,Xには右肩の機能障害という後遺症が存在し,これは本件事故と因果関係があると推認される。

(2) この点被告らは,レントゲンやMRIでは異常所見が認められず,上記症状悪化は本件事故以外の要因により生じた可能性があること,可動域制限には変遷が見られること等を挙げ,本件事故との因果関係は認められない旨主張する。

 しかし,□△整形外科の診療録等(甲21,乙4)によれば,同医院においてはXが右肩の痛みを訴えていたのに対して注射を行っていたところ,Xの主張するように,同号証の34頁の平成17年4月1日の欄には「B」 との記載があり,これはその前後の記載から見てブロック注射であることがうかがわれ,そうであるとすれば同年4月4日の可動域の測定にもブロック注射が影響を与えている可能性がある。被告らは渡辺医師がブロック注射を行っていたのだとすればこれを考慮しないで後遺障害診断書を作成したとは考え難いとするが,後遺障害診断書(甲7)及び診療録(甲21,乙4)の記載からすれば,渡辺医師はこの点も考慮した上,右肩関節の拘縮が残存しているとして,これを本件事故の後遺症として後遺障害診断書に記載し,さらにその後の可動域制限を症状の悪化と捉え,後遺症として認定するとの判断のもとに診療録にかく記載したものであることがうかがわれるところである。そして,これらの点に上記認定事実を併せ考慮すれば,Xの右肩の機能障害という後遺症の存在と本件事故との間に因果関係があることを認めるのが相当である。
 また被告らは,機能障害が認定されるためには,事故による関節の動きが制限される原因となる器質的損傷が生じたことが必要とされている旨主張するが,被告ら自身も主張するように,器質的損傷には関節拘縮が含まれると考えられるところ,Xを診察した医師らは一貫して,Xの右肩関節に拘縮が認められるとの診断をなしていることは上記のとおりである。
 したがって,Xの右肩の機能障害という後遺症の存在と,本件事故との因果関係については,これを認めるのが相当である。

(3)そして,後造障害等級第10級10号は,「1上肢の大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの」を挙げており,「機能に著しい障害を残す」とは,関節の可動域が健側の可動域角度の2分の1以下に制限されているものをいうと解されるところ,上記認定のとおりXの右肩関節の症状はこれに該当すると認められるから,後遺障害等級第10級10号に該当すると認められる。

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