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裁判所鑑定心因性視力障害で素因減額が否定された例5

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平成22年10月31日:初稿
○「裁判所鑑定心因性視力障害で素因減額が否定された例4」を続けます。右眼視力障害に関する医学的論点が多岐に渡り、原告被告双方の主張が詳細になされ、それに対し判決も詳細に認定して、約3万字に及ぶ長文判決になっております。
本日は、争点1Xの右眼の障害(視力低下,視野狭窄)の有無についての被告の主張です。被告は各種検査の結果、Xの右眼視力障害は詐病の可能性が強く、視力障害は存在しないと力説しています。

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(2)被告らの主張
 以下の事情からすれば,Xの視力障害等については詐病の可能性を疑わざるを得ず,Xの右眼には外傷性の視力障害及び視野狭窄は認められない。

ア 視力検査・視野検査は,被験者の応答に依存する自覚的検査のため,得られた検査結果をそのまま信用することはできず,それが他党的検査(被験者の応答に依存しない検査)の結果との整合性を検討した上判断しなければならない。
 しかし,Xについては,視神経障害の存在を示す他覚的検査結果は見当たらない。×○病院における平成16年10月29日の頭部MRIにおいても異常所見は認められていない。A回答書における外傷視神経症の診断根拠も,事故後視力低下を生じたという自覚症状と,オクトパス視野検査・ゴールドマン視野検査という自覚的検査結果だけであり,他覚的検査についての記載は何もない。

イ 外傷性視神経症は,眉毛部外側の打撲により介達性に視神経管部が障害されるという事故時の外力作用部位・方向性に特色がある。
 Xにおいては右眉下方,右眼上下に裂傷があったが,これは外傷性視神経症の受傷部位ではないし,力の作用方向も異なっているから,外傷性視神経症を起こすような受傷機序ではない。

ウ 外傷性視神経症の診断には,「Swinging flash light test」(視神経の左右差を検出する他覚的検査)により相対性瞳孔求心路障害(RAPD)を認めるということが重要なポイントとなる。同テストは,健眼視力1.0、患眼視力0.8程度の視力差しかない軽度の外傷性視神経症でも陽性となる,非常に鋭敏な検査である。
 しかし,Xの場合,×○病院での検査結果(乙第4号証77頁)は異常所見なしと記録されており,RAPDが陰性となっている(同号証45頁)。Xの主張するように,健眼(左眼)視力1.5,患眼(右眼)視力0.05という著しい視力差が本当に右眼の外傷性視神経症によるものであるならば,同テストにおいて必ずRAPDは陽性となるはずである。

 この点,A回答書は,被告らが上記のとおり指摘した,自覚的検査結果と他党的検査結果との解離について,「平成16年10月2日の外傷後24日を経た10月26日のオクトパス視野検査及び同月27日のゴールドマン視野検査で中心視野の感度低下が主たる視野異常となっており,これは視神経線維の外傷性障害が黄斑中心部からのものに限られ,視力に関わる神経線維に限定的な障害が残ったものと考えられる。このような状態においては,RAPDが陰性であることもありうると考えられる。」としている。
 しかし,A回答書は,オクトパス視野検査の所見の読みに大きな誤りがある。すなわち,オクトパス視野検査結果は「Comparisons」で視野検査を評価するところ,A回答書のいう「中心・感度の低下」なら,中心部のみ数値が記載され(中心部ほど大きな数値となる),その他の部分はすべて十表示となるはずが,本症例では,傍中心部に低下があるものの,周辺部にはそれ以上の低下があり,中心感度の低下あるいは中心暗点と評価されるような検査結果ではない。平成16年10月27日のゴールドマン視野検査も,中心感度の低下あるいは中心晴点というパターンではない。
 これほど多くの点で有意の低下があるのなら,視神経繊維は中心ばかりでなく周辺繊維もかなり障害されていることを意味し,RAPDは当然陽性となるはずであるが,RAPDは陰性である。
 なお,Xは同検査は1回だけであると主張するが,診療録(乙第4号証)77頁の「対光反応」の欄に記載があるのは「16.10.26」だけで,以後は空欄となっているが,これは「Swinging flash light test」を行っているものの異常所見がないことから空欄となっているだけである。X自身も本人尋問において,毎回対光反応の検査を受けていたことを認めている(X本人33頁)。

エ 視神経障害があると受傷時から一定期間が経過すると視神経萎縮による視神経乳頭の蒼白化が眼底所見から認められるはずである。
 しかし,本件では,事故後しばらくしてから右眼神経乳頭の蒼白化は出現していない。すなわち,診療録(乙4)の49頁以下において記載されているとおり,初診時より2ないし3か月間にわたって,右眼底の蒼白化ないし視神経萎縮は認められていない。
 この点,A回答書では,上記のように「本例のようにきわめて限定的な障害であれば,視神経萎縮が明らかにならないことも考えられる。」としているが,平成16年10月26日のオクトパス視野検査が中心部だけの感度低下ではないことは上記のとおりであるし,オクトパス視野検査は同年12月2日及び平成17年4月1日にも実施されているが,さらに悪化して感度低下が顕著である。オクトパス視野検査で実施されたすべての点において,これほどまでの低下が真にあるのであれば,絶対に視神経萎縮に陥るはずである。

オ 外傷性視神経症の場合には,受傷直後がもっとも顕著な祝機能低下に陥り,その後徐々に回復するという経過をたどるのが一般である。
 しかし,Xにおいては,事故後24日後の平成16年10月26日眼科初診時の右眼の視力は0.05とされているが,真に外傷性視神経症であったのならそれ以前はもっと悪い視力であったはずであり,そうであれば事故後すぐに眼科を受診したはずであるが,Xはそうしていない。
 また,ゴールドマン視野計を用いて視野の異常の有無等を測定する自覚的検査であるゴールドマン視野検査は,平成16年10月27日,同年12月21日,平成17年3月28日の3回実施されているが,初回検査が最も視野範囲が広く良好との結果となっており,これも外傷性視神経症とは異なる経過となっている。2回目及び3回目の同検査では求心性視野狭窄の所見であるが,一般に外傷性視神経症の視野は水平性欠損,特に上方欠損という形を取ることが多く,求心性視野狭窄や中心晴点などの所見を呈する場合には一般には他の疾患を疑うべきであるとされている。
 平成16年10月27日のゴールドマン視野検査結果(乙第4号証・56頁)は,A回答書にいう「内部インプターの縮小」というより,「ほぼ正常に近い視野のまま,全体的に感度が低下しており,マリオット盲点の拡大も認められる」と評価されるものであり,黄斑からの神経線維が傷害された中心感度の低下というような検査結果ではない。


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