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保険会社への直接請求が交通事故訴訟のあるべき姿

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平成22年 2月19日(金):初稿
○繰り返し記載していますが、私は交通事故による損害賠償請求は任意保険に入っている場合は,保険会社への直接請求を大原則にすべきとと確信しています。数名の若い弁護士さんから私の考えに共鳴して頂き、或いは、ご自分でそのように考えていたところ、私のHPを見て元気づけられたと言うことで、保険会社への直接請求訴状書式、実際和解例、判決書を頂きたいと申出を頂いたことがあります。交通事故訴訟においては保険会社直接請求することが一般的になって欲しいと念願しています。

○私が任意保険加入の交通事故事件について保険会社への直接請求を大原則とすべきと考える最大の理由は保険適用事故が発生した場合、加害者と保険会社は利益相反関係になることです。自動車を運転する人間が任意保険(自動車総合保険)に加入する目的は、万が一、加害者になった場合は被害者の方に十分な損害賠償金を支払うためです。この十分な損害賠償金とは、法律上認められる適正な損害賠償金です。加害者は保険会社に対し適正な損害賠償金を支払えと請求する権利を有し,保険会社はその義務を有するものでこの両者の関係は明らかに利益相反です。

○然るに実際の交通事故訴訟においては、保険会社の顧問弁護士が、実質は保険会社が支払う損害賠償金額を少なくするため、即ち実質保険会社の利益ために、形式は加害者本人の代理人と称して登場して、保険会社の、保険会社による、保険会社のための訴訟活動を遂行します。後遺障害が争いになる場合など、時に、唖然とするような顧問医の科学的・医学的見地と称する意見書が出て来て紛争をいたずらに医療訴訟化させます。

○このような保険会社側の姿勢について、赤本2003年版265頁で河邊義典判事が、「平素、交通事件を担当していますと、なぜ、このような事件でここまでする必要があるのかと思うくらいに、保険会社の代理人が、カルテを取り寄せ、顧問医等の意見書等を提出したりして、原告の請求を争う場合があります。」と、また赤本2004年版310頁で芝田俊文判事が、「治療経過や後遺障害の内容・程度が問題となるケースがあることは認めるところですが、そうではなく、何か争うところはないかととりあえず証拠収集する等して、いたずらに医療訴訟化させることは問題ですし、これは訴訟を長引かせる原因ともなります。」と保険会社側の態度に苦言を呈しており、私も同様に感じることが時々あります。

○保険金支払額を出来るだけ少なくするため保険会社がこのような姿勢を示すことはやむを得ない面もありますが、通常、被保険者の加害者はこのような保険会社の態度には納得できないはずです。このような保険会社の態度に被害者は加害者に対する恨みが深くなるばかりだからです。加害者としては,被害者に迅速に適正な損害賠償金を支払って貰うために保険契約を締結しているわけですから、交通事故訴訟における保険会社の姿勢は被保険者の意思に反することは明白です。

○また過失割合が争いになる事案の場合、保険会社は損害賠償額を少なくするため被害者の過失割合を多く認めさせるため、加害者の過失が小さいことを訴え、加害者にそのように主張するよう指導するのが一般です。加害者としては自己の過失が大きいと自覚していても保険金を支払って貰うため保険会社の姿勢に同調せざるを得なくなります。

○私はこのような状況も由々しき問題と思っております。実質保険会社との争いである交通事故訴訟においては加害者は当事者ではなく、公平な第三者としての位置づけにあるべきです。過失割合を決する証拠資料としての加害者は、訴訟当事者ではなく真実義務のある証人として出廷し、保険会社におもねることなく真実を述べる立場にあるべきで、これが交通事故訴訟のあるべき姿と確信し、原則として保険会社を相手に訴えを提起しています。

注!残念ながらこの考えは、「嗚呼無情!最高裁も約款3号に基づく直接請求を認めず」記載の通り、「保険会社による保険金の給付は、これに先だって、加害者(被保険者)が負担する損害賠償の額が確定していることが論理上前提となる。」との平成26年3月28日仙台高裁判決が確定して、否定されてしまいました。これ以降、私は、加害者本人も被告に加えて訴えを提起しています。
以上:1,746文字

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