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2019年06月16日発行第247号”弁護士の飴と鞭”

令和 1年 6月17日(月):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの令和元年6月16日発行第247号「弁護士の飴と鞭」をお届けします。

○昔の殿様商売時代の弁護士委任契約書には、依頼者の都合で契約解除に至っても受領した着手金は返還しませんと言う定型文言が入っているのが普通でした。事務所の活動に不服があれば、着手金全額返還で契約を解除できるという「鞭」の発想は素晴らしいものです。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の飴と鞭


昔から、人を動かすには「飴と鞭」を使えと言いますよね。良いことをしたら褒美を与えると共に、悪いことをしたら、罰を与えるということです。現代社会でも、国は様々な飴と鞭を使いこなしています。

鞭の代表は、何といっても刑法です。好ましくない行いをした人に、刑罰という鞭を与えます。その一方、国家にとって好ましい行為をした場合に、様々な「飴」を用意することもよくあります。個人事業者が、納税の際に青色申告をしたら、税金を安くするというのも飴の一種です。女性や身障者を積極的に雇用した会社には、補助金その他を優先的に与えるというのも飴です。結婚したときに、政府に婚姻の届け出をすれば、色々な便宜を図るという、国の婚姻制度も飴といえるでしょう。

現代社会は、鞭ではなくて、出来るだけ飴を使おうとするそうです。政治家を含む多くの人は、「鞭」を振るうのは嫌ですから、出来るだけ「飴」をあげることで、世の中をコントロールしようとするんでしょうね。例えば、現在「少子化」が大問題となっています。これについて、ほとんどの人が「飴」をあげることで解決しようとしています。「女性が子供を生むたびに1000万円あげれば、少子化問題は解決する。」なんていう、凄い意見を先日読みました。

確かにこれで解決するかもしれませんが、「そこまで飴を使うのか!」と感じたのも事実です。良くも悪くも、少子化問題は、飴ではなくて鞭を使えば、もっと簡単に解決できそうな気もします。日本は、外国から「人口調整手段として中絶している。」なんて批判されるほどの中絶大国です。日本の法律では中絶は原則禁止されており、違反した本人だけではなく、中絶手術をした医師にも、厳しい罰則が定められています。しかし現状、この法律は事実上適用されていないんですね。法律を文言通りに適用するだけで、「鞭」の効果により、毎年十数万人の人口増加が見込めます。

しかし、そんな社会はだれも望んでいないでしょう。私だって、少子化問題を「鞭」によって解決することには、反感を覚えます。2300年ほど前に書かれた、中国の「韓非子」は、「飴と鞭」の使い方の説明から始まります。韓非子大先生は、「飴を人にあげるのは良い気持ちになれるし、相手からは感謝される。それに対して、鞭を与えるのは、自分も気が進まないし、人から恨まれるのが嫌だ。」といった人間の本性を説明します。そんな本性を前提に、人の上に立つものは、飴だけではなく、鞭も自分で使わないといけないというのが韓非子の教えです。言うは易いのですが、自分でやるのはやはり難しそうです。

というわけで、弁護士にとっての飴と鞭です。弁護士の報酬は、依頼を受けるときに発生する着手金と、目的達成のときに生じる成功報酬の2本立てが普通です。この成功報酬は、まさに良い結果に対する「飴」というわけです。一方、手抜きの活動をしても、余程のことがないと鞭はありません。だから、着手金泥棒なんて批判される弁護士も相当数出て来るんです。

うちの事務所では、事務所の活動に不服があれば、着手金全額返還で契約を解除できるという「鞭」を作ることにしたのです。契約解除という鞭があれば、気を引き締めて活動できるという考えです。さらに弁護士の場合、裁判所の決めた納期を守らなくても、ほとんど罰則はありません。逆に、真面目に納期を守っても、特に飴を貰えないんですね。そんなわけで、多くの弁護士は、納期を守ろうという意識が低いんです。裁判所としても弁護士に鞭を振るいたくないでしょう。私みたいに(ホントかよ!)真面目に納期を守っている弁護士には、せめて何かしらの飴を与えることを考えて欲しいものです。

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◇ 弁護士より一言

4月から大学生になった長女は、アルバイトを始めました。最初に貰ったアルバイト代で、妻と私にご馳走してくれました。さらに、祖父母にもてプレゼントを選んでいます。妻は、「優しいね。」と感動して、その後娘に誘われるままショッピングへ出かけ、いろいろと買ってあげてました。「まず飴を与えるとは、なかなかやるな!」と、私も感動したのです。
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