仙台,弁護士,小松亀一,法律事務所,宮城県,交通事故,債務整理,離婚,相続

旧TOPホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター2 >    

2019年04月01日発行第242号”弁護士の限嗣相続”

平成31年 4月 2日(火):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成31年4月1日発行第242号「弁護士の限嗣相続」をお届けします。

○「限嗣相続(げんしそうぞく)」と言う言葉は、恥ずかしながら知りませんでした。ネットで解説を探すと「相続方法を限定する制度。親族内で相続の順位を定め、不動産などの財産が売却や贈与で分割されることを防ぐ。多くの場合、長男を先頭に男系の親族をたどって、たった1人の男性の相続人がすべてを継ぐよう決められ、女性は相続できない。」との解説が一番判りやすいものでした。

○戦前の原則長男への家督相続と同じにも見えますが、限嗣相続では、「1人の男性の相続人」に限定するのは同じですが「長男」には限定されず、遠縁の男子でも構わない点が違うようにも見えます。限嗣相続では、「世襲財産は相続権のある一族全体の財産であり、現所有者はその使用権を有しているだけである(つまり地代や利子は消費、譲渡できるが土地や元金は処分できない)というもので、当主は相続した財産をそのまま次の代に残すことが求められた。」との解説も参考になります。

○最近、遺言書を巡る争いを解決しましたが、遺言書を残しても争いが生じることは多々あります。相続財産を巡る争いを残さない決定的な相続財産を残さないことに尽きるとつくづく感じており、「財産は自分の為に楽しく使い切ろう」かなとも思っています。もっとも「使い切る」と表現できるほどの財産はありませんが(^^;)。

*******************************************
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の限嗣相続


「限嗣相続(げんしそうぞく)って、何?」と、少し前に妻に聞かれたんです。何だって、いきなりそんなことを聞くんだろうと思ったら、「ダウントンアビー」という英国のドラマに出てくるんだそうです。伯爵家の財産をめぐるドラマですね。その伯爵家には、娘しかいません。そうしますと、「限嗣相続」によって、遠縁の男性に相続権が認められてしまう。そこで、その男性と、伯爵家の娘を結婚させてしまおうという動きになり、ドラマが進んでいくわけです。日本でもヒットしたドラマのようで、妻もとても楽しみにしていました。そんな中での妻の質問だったわけです。

自分の娘に相続させることができずに、遠縁の「男性」が相続するのは変じゃないかということです。確かに、現在の伯爵一家から見れば、これはとてもおかしな制度に見えます。しかし、かつて限嗣相続を決めた祖先から見れば、別におかしなことはないんです。自分の爵位や財産を誰に相続させようかという問題です。今後、何代の相続が起ころうとも、自分の血を引いた「男性」に相続させたいと思う人は沢山いるはずです。

日本でも、こういうことを考える人はいました。徳川家康なんて有名です。息子の秀忠に徳川将軍家を継がせる一方、将軍家に男子がいない場合は、他の息子達が継いだ徳川御三家から将軍を持ってくるという制度です。これはまさに「限嗣相続」の考えです。男性にのみ相続させようなんて考えるなら、限嗣相続にしないと、行き詰ってしまいます。だから、「万世一系」の天皇家が綿々と続いていくなんて、明治時代に作られた神話だと言われているわけです。

限嗣相続なんて、現代日本の普通の人には関係ない制度です。しかし、「昔の人の意思が、現代の人を拘束する制度」ということで考えると、決して他人事じゃありません。法律の世界でも、こういう問題はよく起こってきます。一番有名なのは、何といっても憲法です。何十年も前の国民が作った法律に今の国民が拘束され、多数決でも変更できないという制度です。考えてみれば、かなりおかしな制度に思えます。まあ、日本人の場合は、喉元過ぎれば熱さを忘れ易そうですから、その位で良いのかもしれませんが。。。

相続の場合、昔の人の考えが、今の人を事実上縛ることはよくあります。先祖伝来の土地を相続して、それを守ることを義務付けられているなんて家、本当にあるんです。普段は会社勤めをしていて、質素な生活を送る。相続が発生すれば、巨額の相続税を何とか工面する。相続問題が解決したら、また次の相続が始まるなんて感じです。私なんかからすれば、先祖伝来の土地なんて売払って楽しく暮らせばいいと思うんですが、先祖の呪縛から抜けられないんでしょう。

先祖伝来なんて極端な話でなくても、財産を残す人の意思が、相続人を縛るのは、当たり前のことです。誰に財産が残されるのかは、残す人の考えで決まるのです。以前読んだ推理小説に、自分の子供達を少しでも長生きさせたいと考えた人の話がありました。その人は、子供たちに少しでも長生きして欲しいと考えました。そこで、一番長生きした子供に、自分の全財産を残すことにしたんです。子供たちはともかく、その子孫達にとっては、自分の親が財産を相続するかどうかが大問題になってきます。そういう中で、相続人の一人が殺害されるという、とても怖い推理小説です。

自分が死んだ後のことまで心配するのは、大きなお世話なだけではなく、害悪をもたらしそうです。財産は自分の為に楽しく使い切ろうと決意したのです。

*******************************************

◇ 弁護士より一言

妻は、義父が創業した会社の入っているビル(そんな大したものじゃないですけど。)を、数年前に相続しました。義父からは「売っても良いぞ。お前の好きにしろ。」と常々言われていたそうです。三姉妹の中で一番ドライに見える末娘の妻ですから、義父としても処分されてもやむを得ないと思って渡したんでしょう。でもいざそう言われると、妻も義父のビルをとても大切に管理しています。
子供のことをよく分かっていた、義父の作戦だったのかもしれないなと、今にして思うのでした。
以上:2,435文字

タイトル
お名前
email
ご感想
ご確認 上記内容で送信する(要チェック
※大変恐縮ながら具体的事件のメール相談は実施しておりません。

 


旧TOPホーム > 事務所 > 大山滋郎弁護士ニュースレター2 > 2019年04月01日発行第242号”弁護士の限嗣相続”