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2019年02月16日発行第239号”弁護士の五重塔”

平成31年 2月17日(日):初稿
横浜パートナー法律事務所代表弁護士大山滋郎(おおやまじろう)先生が毎月2回発行しているニュースレター出来たてほやほやの平成31年2月16日発行第239号「弁護士の五重塔」をお届けします。

○末尾に正確に名前を挙げると「作曲家新垣隆これを作り、佐村河内守これを成す」くらい言ってあげても良いのではと記載されていますが、全く同感でした。実は、4年前佐村河内氏の問題が発生した時、「著作者人格権の譲渡禁止の趣旨とゴーストライティング契約の有効性1」以下に3コンテンツに分けて合計約5100文字も使って、私の感想を書いていましたが、スッカリ忘れていました(^^;)。

○佐村河内氏の問題は、佐村河内氏が対価を支払い新垣氏から同氏作品の提供を受け、佐村河内氏が全聾の作曲家として新垣氏作品を佐村河内氏作品として売り出し、大きな反響を呼んで佐村河内氏は「現代のベートーベン」ともてはやされていたときに、新垣氏が真相を告白して大騒ぎになったものでした。

○私は、佐村河内氏と新垣氏は「共犯」関係にあるのに佐村河内氏だけが一方的に悪者にされることに全く不公平と感じ、どちらかというと佐村河内氏擁護の感想を書きましたが、大山先生も「ほとんど売れない現代クラシック音楽を、佐村河内氏のマーケット力で広めたわけです」と佐村河内氏を評価してくれたことに安心しました。

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横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

弁護士の五重塔


「五重塔」は、明治の文豪、幸田露伴の小説です。お寺の五重塔の建築をめぐる、二人の大工の話なんです。寺の上人は、人望厚い棟梁の源太に任せようと思っていたところ、大工の十兵衛が自分にやらせてほしいと言ってくる。十兵衛は、大工としての腕はピカ一ですが、偏屈で、人と一緒に仕事ができない人です。上人は迷うんですが、最後は源太が譲る形で、十兵衛が建立を請け負います。十兵衛は建築にあたり多くの人とぶつかるんですが、そのたびに源太がとりなして、無事に五重塔が完成するんですね。最後に上人が、五重塔に「十兵衛これを作り、源太これを成す」と揮毫したという話です。小説は知らなくても、この「誰それこれを作り、誰それこれを成す」という名文句を聞いたことのある人も、沢山いると思います。

私は会社勤めが長かったんですが、会社の中でも技術者なんかには、十兵衛みたいな人いますよね。能力的には優れているんですけど、周りの人とはうまくいかないというタイプです。こういう人は、物の分かった源太みたいな先輩や上司がいると、凄い力を発揮します。こういうのは、弁護士にもいます。職人気質で、凄い能力はあるんですが、周りの人とはうまくやっていけない弁護士です。裁判官や、依頼者まで怒らせちゃうんですね。今まではこういう人も、自分一人の事務所で何とかやってきたんですが、競争が厳しくなってきた今後の弁護士業界では大変だと思います。

上人の名文句に戻りますと、双方に花を持たせたのは素晴らしいんですが、法律的に考えると、変な気がするのも確かなんですね。もともと近代法というのは、黒か白か、どちらか明確にする判断するものなんです。「五重塔を作ったのは、詰まるところ誰なのか明確にしろ!」というのが法律です。もっとも、明治以前の日本では、そんなに白黒はっきりした権利があったわけではないそうです。土地の権利にしても、みんながそれぞれの立場で利用していた。ところが、明治になって西洋法が入ってくると、絶対的な権利である「所有権」は誰にあるのかを、明確にしなければいけなくなったというわけです。

こういった、白か黒か、明確にするというシステムが、本当に日本人に合っているのか、私としては疑問も感じているのです。さきほど、会社の技術部門の話をしましたが、そこで生じる特許権などに関して、面白い話があります。特許の申請には、誰が「発明者」か明記しないといけません。しかし、かつて日本の会社では、開発自体には直接かかわらなかった上司などの名前も、共同開発者として載せるなんて、よくありました。まさに、五重塔の建築家として、十兵衛の他に、源太も加えるような感じです。ただ、開発はしなくても、予算をとってきたり、人間関係を調整したりした人が、その特許発明を「なす」と言われても、それほどおかしくない気もします。ところがこういう慣行が、米国で大問題になりました。発明者の情報を偽った場合は、特許自体が無効になるということで、多くの日本企業が戦々恐々としたのです。

何年か前に、耳の聞こえない作曲家として有名な、佐村河内守氏の作品が、実は他人に作曲して貰っていたなんて事件がありました。それまでは佐村河内氏を「現代のベートーベン」なんて持ち上げていたマスコミが、一斉に手のひら返しをしたのを覚えています。確かにウソは良くないですが、ほとんど売れない現代クラシック音楽を、佐村河内氏のマーケット力で広めたわけです。「作曲家これを作り、佐村河内これを成す」くらい言ってあげても良いのでは。おいおい。。。

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◇ 弁護士より一言

20数年前に結婚したとき、私は会社勤めでした。その後、弁護士になり独立して今に至ります。先日母が、「滋郎が弁護士になってやっていけてるのは、あなたのお陰よねぇ。」と妻に言うと、妻が、「とんでもない。お母さんがしっかり育ててくれたからですよ。」なんて楽しそうに二人で盛り上がっていました。私を作り、私を成したと称え合うのは自由ですが、言わせて下さい。わ、私も頑張ったんです。ううう。。。
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