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2010/ 1/ 1 第20号 パーカー・パインの弁護士広告(1)

平成24年 2月29日(水):初稿
横浜弁護士会所属 大山滋郎弁護士作

 明けましておめでとうございます。本年も頑張って発行していきますので、宜しくお願い致します。

 さて、パーカー・パインというのは、アガサ・クリスティーの作った名探偵の一人ですね。エルキュール・ポアロやミスマープルほどではありませんけれど、それなりに有名な人です。パイン氏はイギリスの統計局に長く勤めていたそうです。そこで、人の不幸には5つのパターンしかなく、それらすべてが論理的に解決できるという統計理論を発見しました。(ホンマかいな!)その理論を実地に試すべく、人生相談所を開設し、不幸なお客さんを幸福にしてあげるわけです。

 例えば、妻に相手にしてもらえない夫が、相談に来るんですね。これに対してパイン氏は、「奥様から見たあなたの価値は最低になっています。そもそも、他の女性が欲しがらないような男性には、奥様も価値を見出せないのです。」なんてアドバイスします。そして、凄い美女が、その夫に夢中になっているということにして、奥さんから見た夫の価値を高めようとするんですね。私なんか、自分もパーカー・パイン氏に頼もうかしらと思うような、親身な対応です!その結果がどうなったかは、(まあ、大体想像はつきますよね)本を読んでいただくとして、こういった感じの小説なんです。

 昔この小説を読んだときには、単にパイン氏の事件解決の手際に感心しただけでした。しかし、自分自身が零細企業主となって、弁護士事務所を開設すると、パーカー・パイン氏の話しも違った角度から考えるようになりました。つまり、統計局のサラリーマンから独立開業したパイン氏が、どうやってお客様を開拓したのかというところが、とても気になってきたんです。

 ポアロほどの有名人ですと、黙っていても依頼者の方でどんどんやって来ます。しかし、パーカー・パイン氏の場合は、そうはいきません。積極的に広告を出して、お客様を集める必要があるのです。

 そこで、「あなたは幸福ですか。もし違うなら、パーカー・パインにご相談を。」とだけ書いてあって、あとは連絡先があるだけの3行広告を新聞にだします。「アーユーハッピー?」だなんて、矢沢永吉かと思ってしまいますが、現在の生活に満足していない多くの人たちが、これを読んでパイン氏に相談に来るわけです。

 先ほど紹介した、妻に相手にされない夫の他、夫の浮気に悩む奥さん、平凡な日常にうんざりしているサラリーマン、生きがいをなくした大金持ちの未亡人といった人達が来るんですね。

 「おいおい、本当にこんなにうまくいくのかよ。」という気がする一方、こんな広告があれば、自分も興味を持ちそうだなという気もします。

 弁護士の場合、長い間広告自体禁止されていました。それだけに、どうやって依頼者を集めるのかというノウハウ自体、ほとんど無いんですね。

 そんなわけでして、新年早々くだらない話で恐縮ですが、次号では、パーカー・パインに学ぶ弁護士広告ということで、少し検討してみたいと思うのです。

 
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 弁護士より一言

 年は改まりましたが、前回からの続きです。なぜか何人かの方から、「痴漢で逮捕されて、大変だったですねえ。」なんて言われましたが、別に逮捕されたわけではないのです。

 満員電車で、前の女性に振り向かれて、心臓が止まるかと思ったという話しですね。私は気が小さいのです。「次の駅で、『痴漢だ!』などと言われたらどうしよう、いくら冤罪だと言っても信じてもらえないのではないか、走ってそのまま逃げたいが、私の足では直ぐに追いつかれるな、どうしてもっと真剣に減量しなかったんだろう。」などと思いが巡ります。ところが、次の駅で、何事もなかったように、前の女性は降りていきました。

 ああ、怖かった。

 本年も、皆様のコメントを、楽しみにしております。

 (2010年1月1日第20号)
以上:1,548文字

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