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通行対価たる償金の請求が権利の濫用として否認された裁判例紹介2

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平成29年 8月26日(土):初稿
○「通行対価たる償金の請求が権利の濫用として否認された裁判例紹介1」の続きです。


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理   由
一 当裁判所も、原審と同様に、控訴人らの請求を失当として棄却すべきものと判断するのであるが、その理由は、次のとおり附加、訂正をするほかは原判決の理由説示のとおりであるから、ここに、これを引用する。
1 理由中、「別紙図面」とあるのを、すべて「別紙図面(一)」に改める。

2 《証拠付加略》

3 同11枚目表九行目の冒頭に「前顕甲第九号証、第10号証、」を、同裏五行目の「本人尋問の結果」の次に「並びに弁論の全趣旨」を、同行の「前記のとおり」の次に「旧五番土地中、」を、同六行目の「(2)」の次に「残余のB土地中、」を、同10行目の「分譲したものであるところ、」の次に「A、B両土地は、それ自体はいずれも袋地ではないものの、A土地を売却し、更にB土地を細分して分譲する場合には分割により袋地が生じることをも見越し、将来の袋地のための通路とし、また、それが袋地ではないA土地の通路としても便宜なところから、共通の道路とするために、A土地の売却に先立ち、」をそれぞれ加え、同行の「右(2)の各土地は」から同末行の「譲受人のために」までを削る。

4 同12枚目表三行目の、「『本件尾根道』という。」の次に「本件尾根道は、別紙図面(三)表示の1245を通ずる部分であり、別紙図面(一)の1《別紙図面(三)の1と同じ。》の東方は公道に通ずるが別紙図面(一)の14《別紙図面(三)の5と同じ。》の西方は現在行き止りで袋小路となっている。本件尾根道の周囲の各土地《ただし、のちに分筆によって生じた地番を含む。》の位置関係と形状は別紙図面(三)のとおりである。」を、同九行目の「公道への通路として」の次に「旧道路部分とは別に、その北に位置し、五番39から旧道路部分と平行に東方に延びる」をそれぞれ加え、同行の「は現在の」から同10行目の「平行に」までを、同末行の「事実上」を、同裏一行目の「もので、」から同行の「なかった」までを、それぞれ削る。

5 同13枚目表一行目の「訴外会社が」の次に「後記のように」を、同三行目の「として」の次に「平素」を、同末行の「(空地)」の次に「や田畑の畔道」をそれぞれ加える。

6 同14枚目表一行目の「みえる」を「みえないではない」に改め、同行の「もし、」以下同15枚目裏一行目の「そして」までを「但木が本件尾根道を開設したのは、A、B両土地の分譲をするに当り、これらの土地が将来細分化して譲渡された場合の両土地の多数の住民らの共通の道路とする目的に出たものであることは前述のとおりであるが、地役権の対象となるべき部分を分筆するとか、実測のうえ確定するとか、地役権設定を窺わせる特段の行為をしたこともないのであり、結局、A土地売却に当り、A、B両土地利用のために本件尾根道を通路として相互に利用することを承認するものの、これを物権たる権利に高めて地役権を設定することまでの契約がなされたものと認めることは困難である。また、B土地ないし乙土地がのちに被控訴人ら又はその前者等に譲渡されるに当り、B土地ないし乙土地のために、本件尾根道中の旧道路部分について地役権が設定されたものと認める証拠はない。」に、同三行目の「右所有者」から同16枚目表六行目の終りまでを「右所有者らは、本件尾根道が開設された前記の趣旨と経過に鑑み、その通行をなすべき権原の有無は問わずに、無償の通行を許容してきたものと認めるのが相当である。」に、それぞれ改める。

7 同16枚目表八行目の「証人加藤逸郎の証言」の次に「並びに弁論の全趣旨」を加え、同裏九行目の「8」の次に「(別紙図面(三)の23)」を、同10行目の「4」の次に「(別紙図面(三)の12)」をそれぞれ加える。

8 同17枚目表五行目の「五番44の土地」の次に「(別紙図面(一)の89《別紙図面(三)の34》を結ぶ通路の東側半分)」を、同裏三行目の「取得者」の次に「等」を、同四行目の「経由させた」の次に、「(以上の如き分筆を経て本件道路《甲地》と西側道路及びその周辺土地の地番、位置関係、形状が別紙図面(二)及び(三)の各記載並びに控訴人らの当審における補足主張2のとおりとなった。)」をそれぞれ加える。

9 同18枚目表九行目の「ようである」を「ように見えないこともない」に改め、同10行目の「目的は」の次に「、従前から住民が旧道路部分を通行するのを、A土地の歴代の所有者らが容認してきたという経緯から、訴外会社もこれを尊重し、旧道路部分に代る道路として本件道路を従前からの住民にも無償で開放することをも副次的に意図していたものと認められるけれども、その主眼は」を加え、同裏六行目の「むしろ」以下同八行目の終りまでを削る。

10 同19枚目裏二行目の「整備した」の次に「主たる」を加える。

11 同20枚目表三行目の初めから同22枚目裏五行目の終りまでを次のとおりに改める。
「五 権利濫用の主張について検討するに、被控訴人らが、本件道路について各自の所有土地のために地役権を有するものでもなく、また民法213条による無償の囲繞地通行権を有するものでもないことは右説示のとおりであるが、但木が旧五番土地を、A、B土地の順に分譲するに先立ち、分譲地を取得する住民らが東方の公道に通じるための生活道路とするために、本件尾根道を開設し、A土地の歴代の所有者らもこの趣旨を承認して、B土地の分譲地を取得した附近住民らが本件尾根道を無償で通行することを異議なく容認してきたこと、その後、A土地が訴外会社により宅地造成のうえ更に分譲されるに当り、本件尾根道のうち旧道路部分に代り本件道路の位置に道路の付け換えがなされるとともに、道路の拡張整備がなされて現状の如き本件道路(別紙図面(二)のいろはにほへとちりぬるをわかよたれそつねならんうえのおくやい線内部分)となり、更に、これが本件尾根道の残余の部分、すなわち西側道路部分(これはB土地の分譲地取得者らの一部の者が各自、自己の所有地の一部を出し合って整備拡張し、約4メートル幅の道路としたもの)に接続されて、全体として現状(別紙図面(一)の1ないし14、別紙図面(三)の1ないし〔5〕の部分)のとおりの一本の道路となったものであること、そしてこの道路は、旧五番土地の分譲地の中央を通る生活道路として必須の道路となっており、訴外会社も、本件道路が主としてA土地の宅地造成と分譲の便宜に基づいて開設されたものであるけれども、沿革的にはB土地の分譲地取得者など従来の住民らの生活道路として無償の通行を容認されてきた旧道路部分の代替道路としての性格を有し、その必要から、これを西側道路部分に接続させて、従来の住民らの無償通行を許容するとともに、本件道路(甲地)を、公衆用道路に地目変更して、控訴人らを含む七人の者に贈与したものであることはすでに説示したとおりである。

 しかして、《証拠略》を総合すれば、本件道路とこれに接続する西側道路の附近に居住する住民らは別紙の如く多数あり、これらの者やその家族が多かれ少かれ、右各道路を、東方の公道に通じる生活道路として利用していること、西側道路が別紙図面(一)の14(別紙図面(三)の5)附近で行き止りとなり袋小路になっている(これは、五番二の土地から西方に通じる道路が、土地所有者の意向等により開設されないでしまったことによる。)ために、東方の公道に出るほかはなく、附近住民らの道路利用の状況は、公道に近い本件道路の方が、遠い西側道路より頻度と必要性の程度において優るものの、双方の道路ともA、B両土地の中央を通る一本の道路として、両土地居住の住民らの生活の利便に供されているのであり、外部からの自動車の進入、転回等を含め、本件道路のみならず西側道路も、控訴人らを含む、A土地共有者らにとっても必要な道路として、無償で利用されていることが、それぞれ認められるのである。

 以上のように、本件道路は、附近の住民らがその所有地の一部を提供して作った西側道路と一体をなす道路として、A、B両土地の居住者を含めた附近の住民全体の共通の生活道路として何人も相互に無償の通行を容認し合って来たものであり、従って、附近の住民らの間においては、従来より相互に道路部分に当る自己所有の敷地について、その使用の対価たる償金を請求しないことの一般的、黙示的な合意が存在し、何人もこれに従って来たものというべきであるから、控訴人らが、本件道路の敷地である甲地の共有権を取得したことを根拠に、附近住民の一部の者である被控訴人らに対し、自己の持分の割合に応じた道路使用の対価たる償金を請求することは、附近住民の如上の合意と慣行を破り、いたずらに秩序を乱すものとして許されないものであり、権利の濫用に当るものといわねばならない。」
別紙図面(一)
別紙図面(二)《略》
別紙図面(三)

12 控訴人らの当審における補足主張について
 控訴人らは、控訴人太郎が本件道路の補修維持のために費用を支出し、それだけの損失を負担し、また将来も同様の負担が見込まれるとして、その金額相当の通行料を償金として請求するのであるが、本件道路及び西側道路のいずれであるとを問わず道路の補修維持のために費用を要したとすれば、これらの道路を共通の生活道路として受益している附近住民らの共益費用として住民ら各自が応分の負担をなすべきものであることは勿論であるけれども、控訴人らの右請求は、このような共益費用の応分の負担を求めるものではなく、本件道路使用の対価の支払を求めているものである(控訴人らが過去に道路補修の費用等として支出した金額を主張しているのは、道路使用の対価を算出するための便宜的な基礎として主張しているにすぎないのであり、このことは、将来の分についても、一律に一定の金額の主張をしていることからも明らかである。)から、かかる意味における本件土地使用の対価の支払を求めることが許されないことは前述のとおりである。

 また、控訴人らは、被控訴人らを含む附近住民らによる本件道路ないし旧道路部分の無償通行が許容されて来た沿革や、訴外会社が本件道路の無償通行を、住民らに約束したとしても、本件道路敷地たる甲土地の共有者となった控訴人らが右の約束に拘束され、或は、その無償通行を受忍すべき根拠はないとし、償金請求の正当性を主張するのであるが、これが権利の濫用として許されないものであることは先に詳説したとおりである。

二 以上のとおりであって、原判決は正当であり、本件控訴は理由がないので民事訴訟法384条一項に従いこれを棄却し、控訴費用の負担につき同法95条、89条、93条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 奈良次郎 裁判官 伊藤豊治 石井彦寿)
別表《略》
以上:4,491文字

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