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フランチャイズ契約違反に関する平成27年12月22日東京地裁判決紹介3

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平成29年 3月 2日:初稿
○「フランチャイズ契約違反に関する平成27年12月22日東京地裁判決紹介2」の続きで裁判所の判断部分です。

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第3 当裁判所の判断
1 認定事実
 前記前提事実に証拠(甲23,24,27,28,乙30,31,被告A本人,被告B本人)及び弁論の全趣旨を併せれば,以下の事実が認められる。
(1) 本件説明会

 被告Aは,原告を取り上げたテレビ番組を見て原告に興味を持ち,平成23年9月15日,原告が原告の運営するフランチャイズシステムへの加盟希望者向けに実施した説明会(以下「本件説明会」という。)に被告Bと共に参加した。同説明会では,原告の関係者3名が説明を行ったが,フランチャイズシステムに関する説明は,このうち,原告から説明業務を委託された会社の従業員であるD(以下「D」という。)が担当した。

 本件説明会において,原告は,参加者に対し,乙1と同一又はほぼ同一の資料を配布し,これをスライドに投影しながら,原告のフランチャイズシステムや店舗経営における売上や経費等についての説明を行った。本件説明会の終了後,被告AはDに対し,加盟から開店までの期間や開業資金の調達方法等について質問するなどした。

(2) 本件説明会後から本件契約締結までのやり取り
 被告Aは,平成23年10月ころ,原告に対し,原告の運営するフランチャイズシステムに加盟する意思を伝えた。
 被告Aが,これ以降,本件契約を締結するまでの間にDに送信した電子メールには次のとおりの記載がある。
ア 平成23年10月27日
「お電話でアドバイスいただいたように,予算的に厳しい部分があるので,関内石川町は,断ることになりそうですが,Dさんに相談させていただき」,「できれば横浜から出店したいのですが,よい物件に縁がなかった場合は大宮を最初の1店舗にしたいなと強く考えています。」

イ 同年11月29日
「昨日は面接をセッティングしていただきまして,ありがとうございます。」,「とても大変だったり苦しい時期もあるということを最悪のケースを踏まえて,きちんとご説明いただけたのかな,と思い,心にとめておきたいと思いました。」

ウ 同月30日
 「既存のものを使えば,改装費を抑えて開業できるのかな?(かかっても2,500万円程度,うまくすれば2,000万円程度)と感じました。」,「別の仲介業者さまに,川口徒歩3分の物件も内覧させてもらいました。」

エ 同年12月20日
「投資計画表ですが,融資をうけるための見積りだと思うのですが,実際の金額はもう少し抑えることは可能でしょうか?(できれば3,000万円以下)」

(3) 本件契約の締結及び営業の開始
ア 原告は,平成23年12月27日,被告Aとの間において本件契約を締結し,これによって,被告Aが本件店舗(住所は省略)において,原告のライセンシーとして,本件各商標を使用してカレー店の営業を行うことを許諾した。なお,本件契約には,前記前提事実(第2,2(2)ア)で認定したとおりの内容の条項が定められている。

イ 被告Aは,本件契約に基づき,平成24年2月15日から本件店舗において「ゴーゴーカレー」の店舗としてカレー店の営業を開始し,原告は,本件契約に基づき,被告Aに対し,システムの提供,指定商品の販売及び販促活動等を行った。

(4) 未払ロイヤリティ等
 被告Aは,本件契約に基づく平成26年1月分以降のロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等につき,次のとおり,その全部又は一部を支払っていない。

ア 平成26年1月分 163万0764円
 原告は,平成26年2月10日ころ,同月20日を支払期限として上記金額を支払うよう求めた。しかし,被告Aは,同月20日,原告に対し「大雪の影響で予想を大きく下回る売り上げとなってしまいましたので,用意できませんでした」,「今月末日までにはお支払できる予定ですので,もうしばらくお待ちください」と連絡し,同日に支払をしなかった。原告は,「貴社の入金の遅れにつきましては当社の資金繰りにも影響を与える結果となっております。取り急ぎ支払い可能分をご入金願います。残額につきましては入金後に金額,時期についてお知らせ願います」と回答して支払を催促したものの,被告Aは,同月末日を経過しても支払をしなかった。

イ 平成26年2月分 152万1892円
 原告は,平成26年3月8日ころ,同月20日を支払期限として,同年2月分のロイヤリティ等152万1892円に未払の上記アを加えた金額を支払うよう求めた。さらに,原告は,セキュリティサービス料金の減額やセキュリティサービスの解約等についても案内し,再度,上記金額の支払を求めたが,被告Aは,同月20日を経過しても支払をしなかった。

ウ 平成26年3月分 126万8716円
 原告は,平成26年4月10日ころ,同月20日を支払期限として3月分のロイヤリティ等176万8716円に未払の上記ア,イを加えた金額を支払うよう求め,また,同月11日付内容証明郵便を送付して,再度,その支払を求め,同書面は,同月13日に被告Aに,同月19日に被告Bに,それぞれ到達した。しかし,被告Aは,同月20日を経過しても支払をしなかった。

エ 被告Aは,平成26年3月31日,原告に対し,同年1月分及び2月分のロイヤリティ等の一部である33万0764円を支払った。
 原告は,被告らに対して,同年4月2日付け内容証明郵便を送付して,再度,同年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の未払分を同年4月10日までに支払うよう催告し,同書面は,同月3日,被告A及び同Bに到達した。被告Aは,同月21日,原告に対し,同年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の一部である50万円を支払った。

(5) 本件契約の解除
 原告は,平成26年4月23日,被告らに対して,同年1月分から3月分までのロイヤリティ,商品代金及びシステム使用料等合計409万0608円の不払を理由に本件契約を解除する旨の書面を送付し,同書面は,同月24日,被告A及び同Bに到達した(本件解除)。

2 争点1(本件解除の有効性)について
 被告は,本件契約が継続的契約であることから,その解除には契約関係の継続を困難ならしめる事由が必要であると主張するが,被告の主張を前提としても,ロイヤリティ等の支払義務が本件契約における重要な義務であること,被告Aの不払(一部不払も含む。)が3か月間にわたり,不払額の総額も400万円超(ただし,保証金充当前の金額)と多額であること,被告Aが原告の再三の支払催告に応じなかったばかりか,本件解除前には具体的な資金繰りの見込みを示すことさえしなかったこと(被告A本人)に照らせば,被告Aによるロイヤリティ等の不払が,本件契約の継続を困難ならしめる事情に当たることは明らかである。

 なお,被告らは,被告Aのロイヤリティ等の不払の理由について,原告側の対応に問題があったため,その改善を促す目的でやむなく支払を停止したなどと主張するが,被告Aが,本件解除に至るまでの間,原告に対し,そうした主張を一切していなかったばかりか,かえって「本日,2013年12月分のゴーゴーシステム様宛の支払いの期限かと思うのですが,こちらの都合でもうしわけありませんが,資金の調達などの関係で,2014年1月25日までに振込みさせてもらいます。こちらの都合で申し訳ありませんが,よろしくお願いいたします。」「オープン時より,売上げのあがる努力や今年にはいって本格的に経費削減を進めておりますが,そろそろより本格的に対策しなければ今後も支払いが若干遅れる可能性が大きくなってきました。」(甲5),「本日中にお支払できる予定だったのですが,大雪の影響で予想を大きく下回る売り上げとなってしまいましたので,用意できませんでした。申し訳ありません。」「今月末日までにはお支払できる予定ですので,もうしばらくお待ちください。」(甲7の1)などと,資金繰りが付かないことを理由に,再三にわたってロイヤリティ等の支払の延期を求めていたことに照らせば,上記主張は到底採用することができない。

 したがって,本件解除は有効である。それにもかかわらず,被告Aは,本件契約の解除後も,本件各商標の使用及び本件店舗におけるカレー店の営業を,仮処分決定に基づく保全執行が実施されるまで4か月間以上も継続したものであるから(前記前提事実),被告Aには,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),本件各商標権の侵害及び不正競争防止法2条1項1号所定の不正競争の成立(本件各商標の周知性には争いがない。また,被告Aが本件各商標を本件店舗において使用したことにより,原告の営業との混同のおそれも認められる。)がそれぞれ認められる。

3 争点2(原告の損害額)について
 原告は,本件店舗における1か月当たりの利益について,393万0152円(平成26年3月の売上)から150万2536円(同月の原材料費(税込))を控除した242万7616円であると主張するところ,証拠(甲12の1)によれば,原告の上記主張に沿う事実が認められる一方,本件店舗における利益額がこれを上回る,又は下回ると認めるに足りる証拠はない。したがって,本件店舗における利益の額は原告の主張どおりと認めるのが相当である。
 そして,被告Aは,本件契約の解除後に本件各商標と同一の商標を使用して本件店舗の営業を継続したことによって,本件解除の翌日である平成26年4月25日から同年8月26日までの124日間,上記利益を受けているから,これが原告(本件各商標の独占的通常使用権者)の損害額と推定されるところ(商標法38条2項類推,不正競争防止法5条2項),同推定を覆す事情を認めるに足る証拠は見当たらないから,原告の損害額は合計971万0463円(計算式は242万7616円÷31日×124日)と認めるのが相当である。

4 争点3(本件各違約金条項の法的性質)について
(1) 原告は,本件各違約金条項がいずれも違約罰の定めであるとして,本件各違約金条項が定める各違約金に加え,これとは別に,損害賠償の支払を求める。
 そこで検討するに,違約金は損害賠償額の予定と推定されるところ(民法420条3項),本件各違約金条項について,同推定を覆すに足る事情は見当たらない。かえって,本件各違約金条項が,いずれも違約金の額を「少なくても」ロイヤリティの24か月分とし,これを超える額の違約金が発生する場合があり得ることを前提としていることに照らせば,本件各違約金条項は損害の有無にかかわらず直近のロイヤリティの24か月分を損害賠償額と定めた損害賠償額の予定(ただし,これを上回る損害が生じた場合にはその額を基準として損害賠償の請求をすることができる。)を定める旨の条項と理解するのが自然であり,本件違約金条項2が,違約金「を上回る」損害賠償の請求を妨げない旨を定めていることも同解釈を裏付ける事情といえる。

 これに対し,原告は,本件各違約金条項がいずれも違約罰の定めである旨主張するが,原告の主張によれば,違約金は確定額となるべきところ,本件各違約金条項において,違約金が確定額とされていないことは前記のとおりであること等に鑑みると,原告の主張は採用することができない。

 以上のとおり,本件各違約金条項は,いずれも損害の有無及び額と関係なくロイヤリティの24か月分を請求することができる(ただし,同額を上回る損害が生じた場合には同額の損害賠償請求が可能である。)ことを内容とする損害賠償額の予定であると認めるのが相当である。そして,本件解除がされた日の直近月である平成26年3月分のロイヤリティ額は21万6158円であるから(当事者間に争いがない。),本件各違約金条項の定める各違約金の最低額はその24か月分である518万7792円となり(本件違約金条項2も本件違約金条項1と同額であると解すべきである。),各違約金の最低額を合計すると1037万5584円となって,上記3で認定した原告の実際の損害額の合計である971万0463円を上回るから,原告は被告らに対し,1037万5584円を請求できることとなる。

(2) なお,原告は,被告らが,平成27年1月15日の本件弁論準備期日において本件各違約金条項に係る各違約金の性質が違約罰であることを認めたから,自白が成立し,その撤回も許されない旨主張する。
 しかしながら,違約金条項の性質に関する主張は法的評価に関するものであって,具体的事実に関するものではないから,上記陳述をもって直ちに自白が成立するとはいえないし,この点を措くとしても,本件各違約金条項が,違約罰の定めであると認めることができないことは上記(1)のとおりであるから,上記陳述は,真実に反するものと認められ,そうである以上,錯誤によるものと推定されるから(なお,同推定を覆す事情を認めるに足る証拠はない。),仮に自白が成立するとしてもその撤回が許される。したがって,原告の主張は採用できない。

5 争点4(相殺の成否)について
(1) 被告らは,Dが,本件説明会において,被告Aに対し,「初期費用が2000万円を超えることはない」と述べ,また,原告従業員が,本件契約締結後,被告Aに対し,「この立地であれば月の売上は600万円は確実だ」と告げるなど,根拠のない不合理な初期費用・売上予測・予想収益を断定的に提示したとして,これが,原告の被告Aに対する欺まん的顧客誘引又は情報開示・提供義務違反に当たり,原告の被告Aに対する不法行為が成立するから,被告Aは原告に対し,不法行為に基づく損害賠償請求債権を有しているとして,同債権を自働債権として,原告が本件訴訟で求める債権と対当額で相殺する旨主張する。

(2) そこで検討するに,本件で提出された全証拠を精査しても,原告について被告らの主張する不法行為が成立すると認めることはできない。かえって,
①原告作成に係る本件説明会において配布されたものと同一又はほぼ同一の資料(乙1)に「キャッシュフローシミュレーション 都内駅前型(15坪15席)」と記載され,あくまで試算であることが明らかにされた上で,同資料の「初期費用合計」欄に「¥21,953,000」と記載され,さらに,これ以外に当初5年間のリース費用として合計678万円を要する旨の記載もあるなど,初期費用が2000万円を超えることが具体的に示されていること,
②被告Aは,上記1(2)ア,ウ及びエのとおり,Dに対し,本件契約の締結前に初期費用が2000万円を上回る可能性があることを前提としたメールを送信しており(なお,上記アのメールは,横浜のエリアでは2000万円の範囲内でやるのは難しいのではないかとのDからの助言を受けたものである[乙30]。),特に上記1(2)エのメールは,本件契約の締結に先立ってDから送信された,初期費用が3235万2150円であるとの見積りを示すメール(甲29,30)に対する返信として送られたものであり,「投資計画表ですが,融資をうけるための見積りだと思うのですが,実際の金額はもう少し抑えることは可能でしょうか?(できれば3,000万円以下)」と記載して,実際の初期費用をできれば3000万円以下に抑えられないかと尋ねる内容であること,
③上記1(2)イのとおり,被告Aが,Dに対し,リスクについても具体的に説明を受けたことを認める内容のメールを送信していること,
④被告Aが,本人尋問において,「プラス思考の方向で考えて,1か月当たり500万円程度の売上があげられると想定したが,実際には約422万円にとどまった」旨供述していること(被告A本人),
⑤本件説明会やその後のDとの面談に同席した被告Bは,被告Aに対し,もっと慎重になるようにと忠告したものの,被告Aが高揚感に包まれて聞く耳を持たなかった旨供述していること(乙31,被告B本人)
などに照らせば,原告において,被告らが主張するような不合理な初期費用・売上予測・予想収益を断定的に提示して勧誘した事実はなかったものと認めるのが相当である。

(3) したがって,被告らの上記主張は到底採用することができない。なお,被告らが主張するその余の事情(原告が被告Aのサポート要請に対応せず,原告に関する情報を渡さないなどの営業妨害に近い行為を行ったことなど)についてもこれを認めるに足る証拠はない。

6 結論
 以上によれば,原告の請求は,主文第1項ないし第3項の限度で理由があるから認容し,その余の請求はいずれも理由がないから棄却することとして,主文のとおり判決する。
 東京地方裁判所民事第47部  裁判長裁判官 沖中康人、裁判官 矢口俊哉、裁判官 廣瀬達人
以上:6,915文字

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