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フランチャイズ契約違反に関する平成27年12月22日東京地裁判決紹介2

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平成29年 2月28日:初稿
○「」フランチャイズ契約違反に関する平成27年12月22日東京地裁判決紹介1を続けます。

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4 争点に関する当事者の主張
(1) 争点1(本件解除の有効性)について

[原告の主張]
 被告Aは,自己の資金繰りが悪化したため,原告による再三の催告にもかかわらず,平成26年1月分ないし3月分のロイヤリティ等の支払をしなかったのであるから,本件契約27条1項(8)号に該当し,本件契約の解除事由となる。なお,フランチャイザーとフランチャイジーはいずれも独立の事業者であるから,本件解除の有効性を判断するに際して,契約当事者間の信頼関係が契約解除を正当ならしめるほど破壊されたかどうか,という基準によることは妥当ではない。

 仮に,被告らの主張するとおり,本件契約の解除に契約当事者間の信頼関係を破壊するに足る事情が必要であるとしても,ロイヤリティ等の支払義務が本件契約における根幹をなす重要な義務であること,原告は被告Aに対し解除前に再三催告をしていることに鑑みれば,原告と被告Aの間の信頼関係が破壊されていることは明らかであって,本件解除は有効である。

 しかるに,被告Aは,本件契約の解除後も本件各商標の使用及び本件店舗におけるカレー店の営業を継続したから,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),商標権侵害及び不正競争(本件各商標の周知性には争いがなく,混同のおそれも存在する。)がそれぞれ成立する。

[被告らの主張]
 本件契約は継続的契約であり,契約当事者間の信頼関係にその基礎をおいているから,契約当事者間の信頼関係が契約解除を正当ならしめるほど破壊されたかどうかという観点から契約解除の有効性が判断されるべきであるところ,次のような事情に照らせば,被告Aによるロイヤリティ等の不払が,被告Aと原告間の契約解除を正当ならしめるほど両者間の信頼関係を破壊したとまではいえず,本件解除は無効である。したがって,被告Aによる本件各商標の使用等は本件契約に基づき原告から許諾されたものであるから,被告Aには,本件契約上の義務違反(競業避止義務違反,商標等取扱義務違反),商標権侵害及び不正競争のいずれも成立しない。

ア 本件店舗は,開店当初から売上げが見込みを大きく下回り,そのことについて被告Aが原告のサポートを要請しているにもかかわらず,原告はそれに対して何も対応しないばかりか本部に関する情報をシャットアウトするなど,営業妨害に近い行為すら行った。また,原告は,原告に対して提起された別件訴訟における和解条項(乙8の第4項)を遵守しなかった。被告Aが原告に対して平成26年1月分以降のロイヤリティ等を支払わなかったのは上記のような原告の対応を理由とするものであって,正当な目的による不払である。

イ 原告が被告Aの要請に対応しない以上,他に対抗手段を持たない被告Aとしては,もはやロイヤリティ等の不払で原告の対応を引き出そうとするしか方法がない。被告Aは,開店から平成25年12月までの約1年10か月間はロイヤリティ等をきちんと支払ったのであり,支払わなかったロイヤリティ等の額及び期間は,原告がそれ以前に支払った額と期間に比して過大なものではなく,不払が原告の対応に対抗する手段として不相当であるとはいえない。

(2) 争点2(原告の損害額)について
[原告の主張]
 本件店舗における平成26年3月の売上は393万0152円である一方,同月の原材料費はカレールーの代金とサテライトからの出荷食材代金を合計した143万0987円に当時の消費税(5%)を乗じた150万2536円であるから,1か月当たりの利益は上記売上から上記原材料費(税込)を控除した242万7616円であり,1日当たりの利益は7万8310円となる。

 そして,被告Aの故意又は過失による商標権侵害行為又は不正競争行為がなければ,原告は,自らが営業するカレー店において利益を得ることができたのであるから,被告Aの商標権侵害行為又は不正競争行為による原告の損害額は,本件解除の翌日である平成26年4月25日から同年8月26日までの124日間に,1日当たり7万8310円を乗じた額である合計971万0440円となる。

[被告らの主張]
 争う。

(3) 争点3(本件各違約金条項の法的性質)について
[原告の主張]
ア 本件違約金条項1の目的は,商標等取扱義務違反の制裁を定めることによって,商標等の適正な取扱いを確保して商標等が無断で使用され自他商品識別機能が害されることを防ぐことにあり,違約金とともに損害賠償の請求ができることも明示的に規定されている。また,本件違約金条項2の目的は,競業避止義務違反の制裁を定めることによって,競業避止義務の履行を確保し,営業秘密の保護を含むフランチャイザーとしての正当な利益を保護する点にあり,違約金以外に損害賠償請求ができることも明示的に規定されている。したがって,本件各違約金条項は,いずれも違約罰の定めであると解すべきである。

 なお,本件違約金条項1においては,違約金の額につき「少なくても(中略)24ヶ月分」という定め方がされているが,違反の程度や行為の悪質性によって請求額を変動させることも考えられるのであり,定額又は固定された算定方法でないという一事をもって違約罰でないと解することはできない。

イ 原告が,訴状において,原告及び被告Aが本件契約を締結したこと,及び本件各違約金条項の定める違約金の性質が違約罰であることを明示的に主張したのに対し,被告らは,平成27年1月15日の本件弁論準備期日において「認める。」と認否している。ある性質の条項を含む契約を締結したことを認める陳述は,あくまで合意の事実についての自白であるから,自白の成立は妨げられないし,被告らによる自白の撤回は認められないから,裁判所は,違約罰の合意が存在したという事実に拘束される。

ウ 本件各違約金条項による各違約金額は,それぞれ,違反が発生した直近月である平成26年3月分のロイヤリティ額21万6158円の24ケ月分である518万7792円となるから,違約金の合計額は1037万5584円となる。

[被告らの主張]
 争う。本件各違約金条項の定める違約金の性質は,違約罰ではなく,損害賠償の予定を定めたものと解すべきである。但し,平成26年3月分のロイヤリティ額が21万6158円であることは認める。
 なお,原告は,本件各違約金条項がいずれも違約罰の定めであることを被告らが自白したと主張するが,被告らはあくまで本件各違約金条項の存在を認めたにすぎず,その解釈まで認めたものでないから,自白は成立していない。仮に自白が成立したとしても,錯誤に基づき真実に反してされたものであるから撤回する。

(4) 争点4(相殺の成否)について
[被告らの主張]
 被告Aは,次のア,イのとおり,原告に対し,原告による「ぎまん的顧客誘引」又は「情報開示・提供義務違反」を原因とする不法行為に基づく損害賠償債権を有しているところ,後記ウのとおり,同債権を自働債権として,原告が本件訴訟において訴求する債権と対当額で相殺したから,原告に対する債務は消滅した。また,被告B及び同Cについても,保証債務の附従性により,原告に対する保証債務は存在しない。
ア 原告の被告Aに対する不法行為
(ア) 本件契約の実質はフランチャイズ契約であるところ,フランチャイズ契約においては,本部が,加盟者を勧誘するに際して,信義則上,フランチャイズ・システムの内容,契約上の権利義務関係,当該フランチャイズが対象とする商品・役務の市況動向の見通し等について,客観的かつ的確な情報を開示・提供すべき義務を負う。それにもかかわらず,原告は,被告Aに対し,売上や収益の予測を提示するに際し,被告Aが実際にそのような売上・収益を上げられるのかを検討せず,根拠ある事実や合理的な算定方法等に基づかない合理性の乏しい売上や収益の予測に関する情報を提供した。具体的には,原告は,当初,初期投資額は多くても2000万円と伝えながら,本件契約締結後,しかも本件店舗の賃貸借契約も済ませた後になって,当該金額を大幅に上回る3200万円以上という投資額を伝えているのであり,明らかな虚偽発言をしている。また,原告従業員は,被告Aが本件店舗の賃貸借契約を締結した後,被告Aに対し「この立地であれば月の売上は600万円は確実だ」と告げたが,売上は月額400万円程度が精いっぱいであった。

 また,本件店舗の売上が原告従業員の述べた水準を大きく下回り,そのことについて被告Aが原告のサポートを要請しているにもかかわらず,原告は,ほとんど何もしようとしなかったばかりか,被告Aらを「ライセンスオーナー会」から一方的に締め出し,本部に関する情報をシャットアウトするなど,営業妨害に近い行為すら行っている。

(イ) 以上のとおり,原告が被告Aを勧誘した手法は,ぎまん的顧客誘引に該当し,また,原告には被告Aに対する情報開示・提供義務違反が認められるのであって,いずれの違法性も極めて大きいから,被告Aに対する不法行為が成立する。

イ 被告Aの損害額
 被告Aは,原告が本件店舗の売上・収益予測をしっかりと行った上,その結果を開示・提供していたならば,本件店舗を開店することは決してなかった。したがって,原告による上記アのぎまん的顧客誘引ないし情報開示・提供義務違反と被告Aによる本件店舗の開店との間には相当因果関係があり,本件店舗を開店するために支出した費用(後記(ア))が被告Aにとっての損害に当たる。また,被告Aは,本件店舗を開店していなければ他の職について収入を得ていたはずであるから,当該逸失利益(後記(イ))も,原告のぎまん的顧客誘引ないし情報開示・提供義務違反と相当因果関係を有する損害である。したがって,これらを合算した4535万0248円が,被告Aの損害額である。

(ア) 本件店舗を開店するために支出した費用
 下記①ないし⑱の合計額であり,2889万0248円である。
  記
① 加盟申込金 52万5000円
② 加盟金 315万円
③ 本件店舗の保証金のうち償却費相当額 52万5000円
  計算式は,保証金500万円×5.25%(年間償却率)×2年間(賃借期間)
④ 本件店舗の賃料のうち当初の1か月分 65万円
⑤ 本件店舗の賃借に係る礼金 65万円
⑥ 本件店舗の賃借に係る不動産仲介手数料 68万2500円
⑦ 開店のための工事費用 1260万円
⑧ 設計管理業務委託料 52万5000円
⑨ 什器備品及び券売機のリース料 733万9500円
  計算式は,12万2325円(リース料月額)×12か月×5年(リース期間)
⑩ 卓上用品・厨房用品等購入費 85万4646円
⑪ 支援費用・移動交通費 17万9871円
⑫ チラシ・トッピングチケット購入費 28万3000円
⑬ 現場人件費・業務関係費 20万1437円
⑭ 厨房備品一式購入費 19万8924円
⑮ ゴーゴーTシャツ,ゴーゴー帽子等購入費 17万8500円
⑯ PC・FAXプリンター・ウイルスソフト購入費 14万6470円
⑰ 害虫駆除費 12万6000円
⑱ のぼり等購入費 7万4400円

(イ) 逸失利益
 被告Aは,本件契約を締結してから本件店舗を閉店するまでの32か月間(平成24年1月から平成26年8月まで),他の職に就くことができなかった。被告Aは,本件契約締結時において37歳であったから,この32か月間の逸失利益は,1646万円(平成23年賃金センサス大学・大学院卒35~39歳の617万2500円に32か月/12か月を乗じた金額)となる。

ウ 相殺の意思表示
 被告Aは,平成27年1月15日の本件弁論準備期日において,原告に対する上記ア,イに係る不法行為による損害賠償債権と,本件訴えにおいて原告が訴求する被告Aに対する債権とを対当額で相殺する意思表示をした。

エ 相殺禁止に当たらないこと
 原告の本件訴訟における請求債権は,①競業避止義務違反に基づく違約金債権,②商標等取扱義務違反に基づく違約金債権,③商標の不正使用(商標権侵害,不正競争)に基づく損害賠償債権である。少なくとも上記①及び②は不法行為によって生じた債権ではないから,被告Aによる相殺のうちこれらを受働債権とするものについては,民法509条によって相殺を禁止されることはない。

[原告の主張]
ア 原告の被告Aに対する不法行為が成立しないこと
(ア) ぎまん的顧客誘引に当たらないこと
 原告は,被告Aに本件契約の内容を説明し,被告Aはその内容を承諾して本件契約に係る契約書に署名押印しているのであって,原告が,被告Aに対し,事実に反する説明をし,又は不確定な事実を確定的に説明したことはない。また,被告Aは,本件契約と同日付けで,不動産の選定,店舗イメージ業務(総投資額を含む。),店舗の経営及び運営についての決定を自ら行い責任を負う旨の承諾書3通を作成し,原告に提出している。

 したがって,原告の被告Aに対する勧誘等の行為がぎまん的顧客誘引に当たらないことは明らかである。

(イ) 情報提供義務違反がないこと
 公正取引委員会のガイドライン(「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」)によれば,「加盟者募集に際して,予想売上げ又は予想収益を提示する本部もあるが,これらの額を提示する場合には,類似した環境にある既存店舗の実績等根拠ある事実,合理的な算定方法等に基づくことが必要であり,また,本部は,加盟希望者に,これらの根拠となる事実,算定方法等を示す必要がある。」とされており,フランチャイザーに対する予想売上又は予想収益に関する情報提供義務は規定されていない。したがって,原告は,被告Aに対し,売上・収益に関する情報提供義務を負っていない。

イ 被告Aの損害の有無及び額
(ア) [被告らの主張]イ(ア)記載の費用のうち,被告Aが,原告に対し,①加盟申込金及び②加盟金を支払ったことは認めるが,その余は不知。被告ら提出に係る見積書(乙11,14~22)は,いずれも実際の支出を示すものではないし,乙11の宛名は被告Aではなく株式会社コンツとなっている。

(イ) [被告らの主張]イ(イ)記載の逸失利益について,被告Aは,これまで行ってきた事業と本件店舗の営業を兼業して行うと述べていたから,本件店舗の営業を行っていたことによる損害は生じていない。仮に逸失利益が生じるとしても,被告Aは確定申告をしているから,確定申告書類を基準とし,営業開始直前の収入と本件店舗営業期間中の収入との差額を逸失利益算定の基礎とすべきである。

ウ 相殺禁止に当たること
 仮に被告ら主張に係る自働債権が存在するとしても,本件訴訟で原告が請求する被告Aに対する債権(受働債権)には,不法行為に基づく損害賠償債権が含まれるから,少なくともこの部分については,民法509条により相殺が許されない。


以上:6,192文字

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