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高低差のある土地の境界擁壁修繕費用負担に関する判例紹介2

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平成29年 2月15日:初稿
○「高低差のある土地の境界擁壁修繕費用負担に関する判例紹介」の続きで、2m程の高低差のある低地隣接地所有者からほぼ境界に沿った擁壁について倒壊のおそれがあり妨害予防請求として改修を要求されているとの相談に関連する判例として、仮換地に土砂崩壊予防のための擁壁を放置する費用を仮換地使用収益権と隣地所有者との共同負担とした昭和51年4月28日東京高裁判決(判例タイムズ340号172頁、判例時報820号67頁)全文を紹介します。

○妨害予防請求としての予防工事の請求について、「一審原告Xが一審被告Yに対しその費用のみをもつて本件予防工事の実施を求める請求は理由がないとせざるをえない(右予防工事の実現については、両者の協議、合意でまずなすべきであるが、協議が整わないときは一方がまずこれを施工したうえ、その費用の補償を他方に請求すべき筋合である。)」として棄却しました。

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主 文
一、第一審被告Yの控訴(昭和47年(ネ)第2570号事件)について
(一) 原判決主文第二項を取り消す。右部分についての第一審原告Xの請求を棄却する。
(二) その余の部分についての控訴を棄却する。
二、第一審原告らの控訴(昭和47年(ネ)第2577号事件)を棄却する。
三、訴訟費用は、第1、2審を通じ、これを10分し、その五を
 第一審原告Xの、その三を第一審被告Yの、その二を第一審原告Xを除く五名の、名負担とする。

事 実《省略》

理   由
第一 一審原告らの一審被告Yに対する請求について

一 一審原告Xが本件土地を所有してその地上に本件建物を所有していたこと、本件土地付近一帯の土地が区画整理地区に編入され、一審被告Yの先代Aに対しその従前の土地に対する仮換地として本件仮換地が指定され通知されたこと、その指定、通知は右Aあてになされたけれどもこれを相続人である一審被告Yに対する指定、通知として有効と解することができること、したがつて一審被告Yは本件仮換地に対する使用収益権を取得したこと、しかし一審被告Y自身は右指定、通知を知らなかつたこと、昭和41年6月28日台風に伴う風雨のため本件仮換地の一部が崩壊し、その土砂が本件土地に流下して一審原告X所有の本件建物を損壊するとともに右建物に居住中の亡B(一審原告中Xを除く5名の母)が死亡したこと、本件仮換地が高さ約20メートル、約5○度の傾斜地でくずれやすいこと、しかしながら一審被告Y自身としては、本件仮換地が自己のため指定、通知されたことを知らなかつたため隣地所有者たる一審原告X及び同所に居住するB及びその相続人たる前記一審原告5名に対して損害を与えることを知りまたはこれを予見しうべきものであつたとはいえず、したがつて一審原告らに対し民法第709条による損害賠償責任を負うとは認められないこと、以上の点についての当裁判所の認定と判断は、次に訂正するほかは、原判決理由の冒頭(原判決13丁裏5行目)からその五の30行目(原判決18丁表4行目)までと同一である。

 原判決の訂正〈省略〉

二 そこで一審原告Xの一審被告Yに対する妨害排除の請求につき検討する。
 本件土地内に前記風雨により本件仮換地から崩壊流下した少くとも約150立方メートルの土砂が現に堆積され本件土地の利用が妨害されていることが、〈証拠〉によつて認められるが、右土砂は、一審被告Yが使用収益権を有する本件仮換地の一部を形成していたものが流下したものであり、同人はその所有者に準ずる地位にあるものということができるから、同人は右土砂堆積により一審原告Xに対し本件土地の利用を妨害しているものと認められる。したがつて、一審原告Xは、本件土地の所有権に基づく物上請求権により、一審被告Yに対しその費用をもつて右土砂を撤去すべきことを請求することができるもいうべきである。

 この点につき一審被告Yは、当審において、右義務のないことを種々の理由をあげて主張するので、これらにつき判断する(前記事実欄の一審被告Yの主張(一)ないし(四))。
(一) 右主張の(一)について。仮換地に対する使用収益権が所有権そのものでないことはいうまでもないが、所有権と同一内容のものである。(土地区画整理法第99条第1項)から、その裏腹として、たとえ現実にこれを使用収益していなくても、その使用収益しうべき地位から生ずる対社会的な義務は仮換地指定がなされた者が負うものと解すべきであり、本件のような妨害排除の義務もこれに属するといえる。かく解されないと、その義務は仮換地自体の所有者(従前の土地としての所有者)に属することとなり、使用収益権を奪われた者に義務を負わす不合理を生ずる。よつて一審被告Yの右主張は採用できない。

(二) 右主張の(二)について。物上請求権は物権の円満な行使が妨げられた状態そのものによつて生ずるものであり、その妨害者の責に帰すべき事由の存否を問わないものである(大判昭和12年11月19日、民集16巻14号1881頁参照)。なお、不可効力による場合は別に考える余地があるとしても、本件の場合は、風雨による土砂崩壊であるとはいえ、本件仮換地がともかく一審被告Yのため有効に指定されていたこと、しかも崩壊の蓋然性の存する土地であることを考えると、不可抗力に基づいて生じた妨害状態とまではいえない。

(三) 右主張の(三)について。この主張は当審に至つて初めてなされたものではあるが、そのため訴訟を遅延せしめるものとはいえないから、時機に遅れたものとして却下されるべきものとは認められない。ところで、本件仮換地がその地形からみて利用価値が乏しいことは検証の結果により肯認できないではないが、全然無価値なものといえないことはもちろん、〈証拠〉によれば、その従前の土地も傾斜地で、本件仮換地はこれに照応するものとして指定処分がなされたことが認められるから、一審被告Yに不利益のみを する処分ではなく、したがつて違法な処分とは到底いえないから(なお妨害予防の義務について後記するところ参照)、この主張も理由がない。

(四) 右士張の(四)について。一審被告Yは本件仮換地の従前の土地の所有権を放棄することにより本件妨害排除義務を免れる旨主張するけれども、およそ権利の放棄は、これにより第三者の権利を害する場合には許されないか、放棄しても当該第三者の権利には影響を及ぼさないものと解すべきである(民法268条1項、第398条、民訴法第598条第1項等の趣旨参照)。本件において、一審被告Yは本件仮換地の使用収益権者たる地位において前記妨害排除の義務を負つたことは前記のとおりであるから、その侵害状態発生後において従前の土地の所有権、したがつて仮換地の使用収益権を放棄すれば、一審原告Xは妨害排除を求める相手方を失うことになり、その権利を害することは明らかであるから、一審被告Yの権利放棄の主張は理由がない。

三 次に一審原告Xの一審被告Yに対する妨害予防の請求についてみる。
 本件仮換地が急な傾斜地でくずれやすい土地であることは前認定のとおりであり、現に本件の土地崩壊が起こつたことを考えると、将来も激しい風雨などにより再び同様の事故が発生するおそれがあると認められる。しかしながら、本件土地と本件仮換地とは相隣地の関係にあり、本件仮換地につき将来の土地崩壊を予防することは、両地にとつて等しく利益となり、その必要も両地に等しく存するといえる。しかもその予防工事には莫大な費用を要することは明らかであるから、一方的に一審原告Xの一審被告Yに対する物上請求権に基づく予防工事施行の請求を認めることには躊躇せざるをえない(予防工事施行の請求を認めることは、その相手方たる一審被告Yのみの費用をもつて実施すべきことを命じることになることは、民法第414条第2項から明らかである。)。

 そこで右予防については、土地相隣関係の調整の見地からこれを考えるべきものと解されるが、民法上その直接の規定を欠く。もつとも民法第216条はこの場合に比較的近いようであるが(この場合には、損害を受けるおそれのある土地所有者が相隣地所有者に対しその費用をもつて予防工事を求めうる。)、同条は水流に関し、しかも工作物の破壊ないし阻塞による損害の場合であるから、本件のように単に土砂崩壊による損害の場合に短推するのは適当でなく、むしろ本件において一審原告Xが設置を求める擁壁のごときは、高地低地間の界標、囲障、しよう壁境界線上の工作物に近い性質をあわせ有することも考えると、民法第223条、第226条、第229条、第232条等の規定を類推し、相隣者たる一審原告X、一審被告Yが共同の費用(通常は平分と解する。)をもつてこれを設置すべきものと解するのが相当である。したがつて、一審原告Xが一審被告Yに対しその費用のみをもつて本件予防工事の実施を求める請求は理由がないとせざるをえない(右予防工事の実現については、両者の協議、合意でまずなすべきであるが、協議が整わないときは一方がまずこれを施工したうえ、その費用の補償を他方に請求すべき筋合である。)。

 以上のとおりであるから、本件予防工事の実施を求める請求は、その他の主張に論及するまでもなく理由がないものというべきである。

第二 一審原告らの一審被告横浜市に対する請求について。
 一審原告らは、一審被告横浜市ないしその市長が行政上の指導による防災義務を懈怠したことを理由として、一審原告らが本件事故により受けた損害の賠償を求めるものであるが、当裁判所もその理由はないものと判断するものであつて、その詳細は、原判決19丁表末行から20丁表1行目までに説示するところと同一である。

第三 結論
 以上説示のとおりであるから、一審被告Yの控訴に基づき、原判決中その主文第二項を取り消して、一審原告Xの一審被告Yに対する擁壁設置の請求を棄却し、一審被告Yのその余の部分に対する控訴を棄却し、一審原告らの控訴はいずれも理由がないから棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法第95条、第96条、第89条、第92条、第93条を適用し、主文のとおり判決する。
 (瀬戸正二、小堀 勇、青山 達)
以上:4,222文字

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