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平成19年4月17日最高裁判決控訴審平成18年2月23日福岡高裁判決全文紹介1

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平成28年12月15日(木):初稿
○「平成19年4月17日最高裁判決第一審平成16年7月5日福岡地裁判決全文紹介3」の続きで、今回は、その控訴審である平成18年2月23日福岡高裁判決(民集61巻3号1061頁、交民40巻2号328頁)全文を2回に分けて紹介します。

○この判決は、認定事実によれば、全くの第三者が本件車を窃取することは極めて困難であるといわざるを得ず、また、被控訴人の供述に不自然、不合理な点が認められ、これらを総合すれば、本件車を持ち去った人物が被控訴人とは全く無関係の第三者としてこれを窃取したものではなく、被控訴人と意を通じ合っていたのではないかとの疑念を払拭できず、結局、本件については偶然性の証明がないといわざるを得ないとして、平成16年7月5日福岡地裁判決を取り消し、請求を棄却しました。

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主  文
原判決を取り消す。
被控訴人の請求を棄却する。
訴訟費用は第1、2審を通じて被控訴人の負担とする。

事実及び理由
第1 当事者の求める裁判
1 控訴の趣旨

 主文同旨

2 原審における被控訴人の請求の趣旨
 控訴人は、被控訴人に対し、450万円及びこれに対する平成15年3月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
1 事案の概要は、後記2のとおり修正するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」記載のとおりであるから、これを引用する。


(1) 原判決3頁7行目の「本件車両の盗難」を「本件車両の持ち去り」と改める。

(2) 原判決の「事実及び理由」欄の「第2 事案の概要」記載中の各「本件盗難事故」を各「本件車両持ち去り」と改める。

第3 当裁判所の判断
1 立証責任について

 原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の「1 立証責任について」記載のとおりであるから、これを引用する。

2 事実関係について
 事実関係については、後記3のとおり修正し、後記4及び5のとおり付加するほかは、原判決の「事実及び理由」欄の「第3 争点に対する判断」の「2 事実関係について」記載のとおりであるから、これを引用する。


(1) 原判決9頁14行目から23行目までを次のとおり改める。
 「 本件契約締結の経緯についての被控訴人の説明は次のとおりである。
 すなわち、平成13年10月ころ、被控訴人は、自宅に忘れ物を取りに帰るため、本件車両を本件マンションの外にとめ短時間その場を離れたが、その間、車のドアが開けられ中を物色された形跡があったため、そのことを本件マンションの管理人に話したところ、本件マンション周辺では車の盗難事故が多いということを聞かされた。そこで、被控訴人は、そのころ、控訴人の代理店を経営しているAに連絡し、同年11月12日付けで本件契約を締結したというものである。
 ちなみに、上記の件については、被害がなかったため、被控訴人は警察に対し被害届の提出をしていない。」

(2) 原判決10頁7行目から16行目までを次のとおり改める。
 「 本件車両持ち去りが行われた本件駐車場の位置関係は原判決添付別紙盗難現場見取図のとおりであり、本件車両は、本件車両持ち去りがされたときには、同見取図の『69』の位置に駐車していたものである。本件車両持ち去りの状況は、同見取図の上方の『防犯ビデオ』の位置から概ね5秒間隔で撮影されていた。乙6(防犯カメラのビデオテープ)の画像を解析すると次のとおりとなる。

19時18分47秒(ビデオ画像開始時)から19時20分50秒までの間           防犯カメラに人が近づくとセンサーが反応して点灯するオレンジ色のライト(以下「本件ライト」という。)は点灯していない。
19時20分55秒   人が同見取図の出入り口の右斜め上にある壁の後部から出てきた。このとき本件ライトが初めて点灯した。
19時21分00秒   本件車両に近づこうとする人の動きあり。同人は最初に画面に現れて他の車には見向きもせず同車に接近。
              このとき、本件ライトは点灯している。
19時21分05秒   人の姿が壁の陰に隠れた。人は本件車両の助手席側のドアの外に回ったと推測される。
             本件ライトは点灯している。
19時21分10秒   人の姿が現れた。
             本件ライトは点灯している。
19時21分15秒   人の姿が消えた。人は本件車両の運転席側のドアの外に回ったと推測される。
             本件ライトは点灯している。
19時21分54秒   本件車両が動き出す。
             本件ライトは点灯している。
19時21分59秒   本件車両の車体全部が壁に隠れた駐車位置から出た。
             本件ライトは点灯している。
19時21分59秒から19時22分09秒(ビデオ画像終了時)までの間           本件ライトは点灯している。

  以上のとおり、本件車両を持ち去った人物は、本件車両の助手席側に回ってから本件車両を発進させるまでに約49秒かかっている。」

(3) 原判決11頁10行目の「原告」から同14行目の「提出した」までを次のとおり改める。
 「 控訴人は、平成14年10月22日午後3時ころフィリピンから帰国し、知人と外で食事をした後、同日午後9時から10時ころまでの間に帰宅し、その後、本件車両がない旨を警察に連絡し、約10分後に到着した警察官に対し被害届を提出した」

4 福岡トヨタ自動車株式会社の副店長Bの面談での回答(乙3)
1分間弱でエンジンを始動させる方法はありますかとの質問に対し
〈1〉 当該車両のマスターキー及びサブキーであれば当然可能である。
〈2〉 キーの記憶回路を車両に事前にコンピューターに再登録し、再登録したキーを使用すれば可能である。
〈3〉 1分間でキーの回路のコンピューターを入れ替えることは不可能である。

5 被控訴人の本件車両の鍵の本数等についての説明の変遷
(1) 前記のとおり、被控訴人は、Cに対し、平成14年11月5日及び同年12月14日、本件車両の鍵は購入時以来1本だけであり、その鍵は本件車両持ち去りの際はフィリピンに携行していた旨述べていた。

(2) 被控訴人の平成15年7月1日付け陳述書(甲6)には次の趣旨の記載がある。
「 本件自動車を購入する際に、鍵を2本受け取ったのではないかと思います。そして、1本は、自分自身が所持して、もう1本は本件自動車の助手席のダッシュボード内に置いていたと記憶しています。ただ、それは今になって記憶をたどってみて、そう思うのであって、事件当時は、自分が持っていない鍵の方についてはあまり意識していませんでした。」
平成14年11月上旬に調査に来たCに対し、
「 私は、当時、もう1本の所在について記憶が曖昧であったことから、『鍵は所持している1本はあるが、もう1本はよく覚えていない』ということを話しました。」
「 私はその後、時間をかけて記憶をたどったところ、最近になって、上記に述べたように鍵を2本受け取って、1本は助手席のダッシュボードに置いていたということを思い出したのであり、盗難当時は、もう1本の所在についてあまり記憶がはっきりしなかったので、よく分からない旨のことを言っていました。そして、私は、C氏から鍵の本数について、書類にサインするよう言われたときには、2本あったかも知れないという程度の認識はありましたが、A氏のアドバイスを聞いて本件では鍵の本数については重要な事項ではないし、早く解決をしたいと思って鍵は1本しかないという書面にサインしたのです。」

(3) また、被控訴人は、平成15年10月27日の本人尋問において、次の趣旨の供述をしている。
第47項
「 私は鍵を1本渡しました。そしたらCさんのほうがもう1本あるんじゃないですかということで聞かれたもんで、いや、もう1本あったと思うと、でも私ちょっと記憶があいまいで、どこに置いているか分かんないので探しときますということで、そのときは、ちょっと分かんないということで答えました。」
第60項
平成14年12月14日に「キーについて」と題する書面に「キーについてはC様へわたした1本だけだと思います」と記載した際のCとのやりとりに関し
「 そのとき私のほうから、署名するけど、鍵はあったような記憶があるということで私は言いました。」
第61項
「 書面にサインしたときには、あなたはもう1本あったかもしれないというようなところまでの記憶はあったということですか。」との問いに対し、
「 はい、それはありました。それはCさんのほうにも私は正直に話しました。」
第66項
「 鍵についてですけども、あなたの陳述書で助手席のダッシュボードに置いてたんじゃないかということを言われてますけど、これについては保険が下りないということになって、私のほうに相談されて、その過程で記憶を喚起して、大分思い出したということですね。」との問いに対し
「はい、そうです。」
第67項
「 もう1本の鍵についてどういったことを思い出しましたか。」との問いに対し
「 もう1本の鍵について、途中まで思い出さなかったんですけど、一生懸命先生と話していくうちに、そう言えば鍵が、1度リモコンの鍵が壊れて1回見てもらったことがあって、バッテリーじゃなくリモコンの鍵が開かなくなったことが昔あったもんで、それから、その後にそう言えば鍵が開かなくなってて、修理をするために車に載せてたんじゃないかなというのを少し思い出して、それからあと、トランクがあの車は開かなくなるんですよ、中にボタンがあって、それを間違って押しちゃうと、もう一つの鍵じゃないと開かないもんで、ただリモコンの鍵というのが大きかったもんで、どうしてもリモコンが開かないのに必要性があんまりないみたいで、それで車に置いてたというのを段々思い出しました。」
第68項
「 恐らく助手席のダッシュボードに入れてたんだろうということは、それはかなり購入されてすぐの時点のことということですね。」との問いに対し
「 はい、そうです。」
第81項
「 車を買ったときにあなたは鍵を何本もらったんですか。」との問いに対し
「 今思い出したら2本かな、3本はなかったと思うんですよ。2本かなと。」
第175項
平成14年12月14日にキーは1本だけだと思うと記載した点に関し
「 私がダッシュボードに置いてたり、車の中に鍵を載せてたら、それが悪いことじゃないかなと私はそっちのほうを心配して、例えば車の鍵をなくなしてとか、ダッシュボードに置いて、車の中に置いてたというのが私のミスになって、正直なところ言って保険を掛けてるのに、そのミスで下りないんじゃないかなというのが不安で、こういう形になったと思います。」


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