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平成19年4月17日最高裁判決第一審平成16年7月5日福岡地裁判決全文紹介2

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平成28年12月14日:初稿
○「平成19年4月17日最高裁判決第一審平成16年7月5日福岡地裁判決全文紹介1」の続きで裁判所の判断前半部分です。

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第三 争点に対する判断
一 立証責任について

 前記第二の一(4)で認定した本件契約の内容によれば、被保険自動車の盗難その他偶然な事故の発生は、本件契約に基づく保険金請求権の要件の一つであるから、本件契約に基づき保険金を請求する者は、被保険自動車の盗難その他偶然な事故の発生を主張立証すべき責任を負担するものと解するのが相当である(最高裁第二小法廷平成13年4月20日判決民集55巻三号682頁)。
 そこで、本件盗難事故が偶然な事故によるものであるかどうかについて検討する。

二 事実関係について
 証拠(甲第3号証、第5ないし7号証、乙第3ないし6号証、第8号証、証人Aの証言、原告本人尋問(第1、2回)の結果、検証の結果)及び弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。

(1) 原告について
 原告は、約14年前に人材派遣の仕事をはじめ、約5年前から、有限会社スカイという人材派遣会社を設立し、同社の代表取締役を務めており、現在の売上げは、年間約6000万円で、原告の収入は年間960万円程度ある。原告は、平成12年ころ、本件マンションの1002号室を購入し、同年12月ころ、本件車両を約500万円で購入した。本件盗難事故当時、原告は、本件車両を含めて車を三台保有しており、そのうちの一台は友人から借りていたセルシオであり、もう一台は、日産製のラルゴであり(名義は原告名義ではない。)、原告が購入してから少なくとも10年は経過している。原告は、自動車の免許を取ってから19年くらいになり、車は仕事、プライベートにかかわらず良く乗っている。
 原告には、マンションのローンがまだ残っており、また、本件盗難事故後、約1000万円でベンツを購入し、そのローンも残っている。

(2) 本件車両について
ア 原告は、平成12年11月ころ、頭金80万円、下取価格60万円(クラウン)、割賦支払金263万5500円で、本件車両(車両本体価格が339万円であり、諸費用が51万円である。)を購入した。

イ 本件車両は、売買代金の完済まではローン会社に所有権が留保されており、原告は、平成14年7月に代金を完済した。本件車両の車検は、平成14年11月30日が満了日である。

ウ 本件車両には、イモビライザーが搭載されている。イモビライザーの仕組みは、あらかじめ登録された固有のIDを持つ小型の電子通信チップ(トランスポンダー)がエンジンキーのグリップ部分に埋め込まれており、そのキーを自動車のキーシリンダーに差し込むと、そのIDコードが、キーシリンダーに巻かれているアンテナコイルに送信され読み取られ、アンプを介して車両側コントローラ・ECU(エンジン・コンピュータ・ユニット)に送信され、ECUにあらかじめ登録されているIDコードと電子的に照合が行われ、照合したコードが一致した場合のみエンジンが点火、燃料噴射可能状態となり、IDコードが一致しない場合には、電気的にエンジンが作動しないというシステムであり、キーを使用せずにエンジンを始動させるいわゆる直結という方法や、物理的にキーの鍵山だけを複製した合い鍵を使用する方法では、エンジンは始動しない。

 IDコードは、「1」と「0」のデジタル信号の組み合わせであり、その組み合わせにより、数1000万種のIDコードの生成が可能である。また、定期的に乱数を用いてIDコードを生成し、当該コードを暗号化することでコードの秘匿性を確保するシステムも実用化されている。イモビライザーが搭載された車両のエンジンを始動させるには、当該車両専用のキーを使用するか、車両本体内の電子制御装置に登録されているIDコードと同じIDコードを有するキーを入手するか、キーの記憶回路を事前に車両のコンピューターに再登録し、再登録されたキーを使用しなければならない。

 もっとも、本件車両のドア自体には、盗難防止装置はついておらず、ドアを無理にこじ開けることも可能である。
 原告は、本件車両購入時に、本件車両に盗難防止装置が装着されていることは知っており、盗難防止装置が装着されていれば、車は盗まれないと聞いていた。

エ 本件車両と同種・同型の車両の平成14年当時の中古車市場価格は、約329万円である。

(3) 本件駐車場について
 本件駐車場は、敷地外からの出入口が二箇所あり、いずれもチェーンで施錠されており、専用のリモコンを操作することで、チェーンを解錠し、駐車場を開けることができる。駐車場を開けて車両が出入りした後、自動的にチェーンが上に上がり施錠される。リモコンは、白色プラスチック製の箱型で、縦15センチメートル、横五センチメートル、厚さ一センチメートルくらいの大きさで、真ん中あたりにボタンがついているという比較的単純な構造のものである。

 原告は、リモコンを、本件車両のドリンクホルダーに保管していた。リモコンは、それが駐車場を開けるリモコンだと知っている人でなければ、直ちにそれが駐車場を開けるリモコンであるということは分からない。
 本件駐車場は、車両を78台駐車でき、防犯ビデオが八台設置されている。屋内の駐車場には、本件車両の他にも高級車が数台駐車されている。

(4) 本件契約締結の経緯
 原告は、以前から本件車両に車両保険をかけたいと思っていたところ、平成13年10月ころ、原告の自宅に忘れ物を取りに帰るため、本件車両を本件マンションの外に駐車し、車を離れて自宅に戻っている間に誰かが本件車両にいたずらをしたと感じ、本件マンションの管理人に聞いたところ、本件マンション周辺で車の盗難が多いということであった。そこで、原告は、被告の代理店を経営しているBに相談をして、車両保険に入ることにし、平成13年11月12日、被告との間で、本件契約を締結し、保険料13万5010円を支払った。

 原告は、車上荒らしに遭ったとまでは思わなかったので、警察に被害届を出していない。
 なお、原告とBとは、約25年前に、原告の父が自動車保険に加入して以来のつきあいであり、原告自身も高校を卒業してから、Bを通じて自動車保険に加入しており、原告は平成14年夏ころまでは、事故もなく、等級も上がり、19等級の60%割引にまでなっていた。

(5) 車両保険の使用
 原告は、平成14年夏ころ、本件車両で接触事故を起こし、左前バンパーを擦ったことから、本件契約に基づき、車両保険を使用して、本件車両を修理した。

(6) 本件盗難事故の状況
 本件盗難事故のあった本件駐車場の位置関係は、別紙盗難現場見取図のとおりであり、本件車両は、本件盗難事故当時、同見取図の69の位置に駐車していたものであるが、盗難当時の状況は、同見取図の防犯ビデオの位置から5秒間隔のビデオで撮影されており、この駐車場の奥に設置されたビデオによると、犯人は、平成14年10月12日午後7時20分55秒に同図面の出入口の右斜め上にある壁の後部から出てきて、同21分00秒に本件車両の前まで行き、同21分05秒に本件車両の助手席側に入り込み(69の記載の上側の壁で隠れる)、同21分10秒に再び本件車両の前面に出た後、再び本件車両の運転席側に入り、同21分54秒に本件車両を発進させて本件駐車場から出て行っている状況が撮影されている。
 また、本件駐車場の入り口付近の壁には、本件マンション管理組合の名義で「このマンションは監視カメラにて監視しております。」との掲示板が貼り付けられている。

(7) キーについて
 本件車両のメインキーは、長さ約8・0センチメートル、幅(最大)約3・6センチメートルの大きさであり、ドアの開閉、エンジンの始動及びトランクのロックの解除等キーの機能に限定はなく、さらに、ドアの施錠、解錠及びトランクを開けるためのボタンが付いており、リモコンで、ドアの施錠、解錠及びトランクを開けることができる。サブキーは、長さ約7・5センチメートル、幅(最大)約3・2センチメートルの大きさであり、ドアの開閉及びエンジンの始動のみをすることができ、トランクのロックの解除はできず、リモコン操作用のボタンも付いていない。メインキーは黒色であり、サブキーはメインキーの色と比べて緑色がかっている。また、メインキーは、サブキーと比べると分厚い構造になっている。

 原告は、平成14年10月12日午後1時ころ、本件車両を本件駐車場に駐車し、自宅に戻らずにそのまま福岡空港に向かったため、本件車両のサブキーをフィリピンに携行していた。原告は、その当時メインキーを所持していなかった。

(8) 被害届の提出
 原告は、平成14年10月22日午後3時ころフィリピンから帰国し、知人と外で食事をし、同日午後9時から10時ころまでの間に帰宅し、サウナに行くために本件駐車場に行ったところ、本件車両がないことに気が付いた。原告は、すぐ警察に連絡し、約10分後警察官が到着したので、被害届を提出した。そのとき、警察官から、防犯ビデオのことを指摘され、防犯ビデオに犯人が写っていないか確認して、写っている場合には、テープをダビングして警察に持ってくるように言われた。

 原告は、翌23日朝、本件マンションの管理室に行き、管理人と防犯カメラのビデオテープの内容を確認した。本件盗難事故の日の一週間くらい前からビデオテープを早送りで再生しながら見ていたところ、ふと気が付いたところで本件車両がなくなったので、巻き戻して確認し、上記(6)の状況が撮影されていたので、その部分をダビングした。原告は、本件車両がなくなった部分さえあれば良く、その前後の部分は必要ないと思い、本件車両がなくなった部分だけをダビングした。

 原告は、翌24日、ダビングしたビデオテープを警察に持っていったが、警察官から、「人がきれいに映っていますか、分かりますかね。」と言われ、「私が見る限りじゃ影だけだから、もし知り合いの人だったら影だけでも分かるけど、これ難しい。」と答えたところ、警察は、捜査は難しいということで、ビデオテープを受け取らなかったので、原告は、ビデオテープを持ち帰った。

(9) 原告は、平成14年10月23日、Bに、本件盗難事故のことを報告し、Bは、原告から事情を聞いた上で、被告に事故報告をした。

(10) 被告は、本件盗難事故以前に、原告が本件車両で接触事故を起こした際、原告と被告との間で車両保険についてのトラブルがあったことから(その具体的な内容は不明である。)、本件盗難事故の偶然性を疑い、福岡損害保険調査株式会社に、防犯ビデオの入手や、関係者からの聞き取り調査を依頼した。

(11) 調査員Aの調査について
ア Aは、平成14年11月5日、原告と面談した。原告は、Aに対し、口頭で、本件盗難事故についての事情を説明しながら、車両盗難チェックリストに記入した。

イ 原告は、チェックリストにおいて、本件車両の鍵は、購入時にも、盗難前にもメインキー一本だけ、本件車両に置いていたものは、現金5万円、国際電話カード5万円分、車検証、駐車場のリモコンであり、本件盗難事故当時所有していた車両は、本件車両以外にはないと記入しており、Aに対しては、鍵は一本だけだと思うがちょっとわからないと説明し、原告の所持していたサブキーをAに渡した。その際、原告は、所持していたサブキーのことをメインキーと言っていた。原告は、本件車両を購入した有限会社エムオートにも問い合わせたが、分からないという回答であった。

ウ Aは、同日の夕方、原告から連絡を受け、原告宅を訪ね、本件盗難事故の状況を撮影したビデオテープの内容を確認した。その後、Aは、本件車両の鍵の本数について、再度、有限会社エムオートに問い合わせたが、はっきりとはわからなかった。Aは、原告から、パスポートの写し、オートローン申込書の写し、ビデオテープ等を預かった。

エ Aは、後日、原告に連絡し、本件車両の鍵のことについて再度確認したい旨伝えた。

オ 原告は、Bに、本件車両の鍵の本数について相談した。Bは、防犯ビデオに本件盗難事故の犯人が映っており、鍵の本数は問題にはならないし、曖昧な返事よりも、はっきり答えた方が良いと考え、原告に対し、「良く分からないのであれば、一本だと言えばいい。」とアドバイスした。

カ Aは、本件車両にイモビライザーが搭載されていること、本件車両が短時間で盗まれていることから、本件車両は、メインキーを使用して盗まれた可能性が極めて高いと考え、本件車両の鍵の本数を確認するため、有限会社エムオート代表取締役Cと面談した。
 Cは、本件車両の販売を担当したのが誰であったか、本件車両の鍵が何本あったかについて全く記憶がなかった。

キ Aは、平成14年12月14日、原告と面談した。Aは、原告に本件車両の鍵の本数と使用状況について尋ね、「キーについて」と題する書面を書かせて、署名、押印させた。その書面には、「キーについては、A様へわたした一本だけだと思います。通常は、このキーをいつも使用していました。平成14年10月12日は、このキーをフィリピンに持って行ってました。以上、相違ありません。」と記載されている。

ク Aは、平成14年12月20日、博多警察署に、原告から預かったビデオテープを持ち込み、内容を分析してもらうよう依頼した。

ケ Aは、被告に対し、本件盗難事故の犯人が、たった40秒近くで本件車両を発進させていること、犯人は、夕方7時過ぎという時間帯に、何も迷わず本件車両へ向かっていること、本件車両購入時には、本件車両の鍵は一本であり、現在も一本であるが、それはメインキーではなくサブキーであり、原告は、本件盗難事故当時、その鍵をフィリピンに持っていったにもかかわらず、本件車両は短時間で盗まれていること、本件車両には、イモビライザーが搭載されていること等から、原告は、犯人と共犯または、本件盗難事故に関与している可能性が十分に考えられるとの調査報告をした。
 なお、Aは、防犯ビデオの写っている犯人と原告との間の結びつきに関わる事情については、全く調査をしていない。

コ 被告は、平成15年1月7日、原告の保険金請求に対し、「偶然性」に欠けるとして、保険金の支払いを拒絶した。


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