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平成19年4月17日最高裁判決第一審平成16年7月5日福岡地裁判決全文紹介1

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平成28年12月14日:初稿
○「車両盗難保険に関する平成19年4月17日最高裁判決全文紹介」の続きで、平成19年4月17日最高裁判決の第一審判決です。
第一審平成16年7月5日福岡地裁判決(民集61巻3号1041頁、交民40巻2号3155頁)は、保険金請求者は、被保険自動車の盗難その他偶然な事故の発生を主張立証すべき責任を負担すると解されるところ、認定事実によれば、防犯ビデオにより、本件盗難事故が原告以外の犯人により行われていることが明確な本件においては、ビデオに写っている犯人と原告との結びつきがうかがわれるような事情が全く認められない以上、本件盗難事故における偶然性は立証されたものとして処理されてもやむを得ないとして、本件車両の盗難を偶然に起きた事故であると認め、請求を全部認容しました。3回に分けて全文紹介します。


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主  文
一 被告は、原告に対し、金450万円及びこれに対する平成15年3月25日から支払済みまで年6分の割合による金員を支払え。
二 訴訟費用は被告の負担とする。
三 この判決は仮に執行することができる。

事実及び理由
第一 請求

 主文同旨

第二 事案の概要
 本件は、原告が、被告との間で締結した家庭用総合自動車保険契約の被保険自動車につき、盗難事故にあったとして、被告に対して保険金及びこれに対する訴状送達の日の翌日から商事法定利率である年六分の割合による遅延損害金の支払いを求めた事案である。
 被告は、上記盗難事故の偶然性を争っている。

一 争いのない事実ないし証拠により容易に認められる事実
(1) 被告は、損害保険業を目的とする株式会社である。

(2) 原告の所有自動車
 原告は、次の自家用普通乗用車(以下「本件車両」という。)の所有者である。
ア 車名 トヨタセルシオ
イ 型式 E―UCF21
ウ 登録番号 〈省略〉
エ 車台番号 〈省略〉

(3) 保険契約の締結
 原告は、平成13年11月12日、被告との間で、次のとおり車両保険契約(以下「本件契約」という。)を締結した。
ア 保険の種類 家庭用総合自動車保険(IAP―F)
イ 証券番号 〈省略〉
ウ 保険期間 平成13年11月12日午後4時から平成14年11月12日午後4時まで
エ 被保険自動車 本件車両
オ 保険金額 450万円

(4) 本件契約に適用される家庭用総合自動車保険約款には、次の定めがある(乙第一号証)。
ア 被告は、偶然な事故によって被保険自動車に生じた損害及び被保険自動車の盗難による損害に対して、被保険者(被保険自動車の所有者)に保険金を支払う(第六章車両条項第一条一項)。
イ 保険契約者、被保険者または保険金を受け取るべき者、所有権留保条項付売買契約に基づく被保険自動車の買主の故意により生じた損害に対しては、保険金を支払わない(同章第四条(1))。

(5) 原告の海外渡航(甲第四号証、第六号証)
 原告は、平成14年10月12日午後1時ころ、福岡市〈以下省略〉aマンション(以下「本件マンション」という。)の一階にある駐車場(以下「本件駐車場」という。)に本件車両を駐車し、福岡空港から、午後4時の便でフィリピンに出発し、同月22日午後3時ころ、フィリピンから帰国した。

(6) 本件車両の盗難(乙第六号証)
 本件車両は、平成14年10月12日午後7時21分ころ、原告以外の何者かによって、本件駐車場から持ち去られた(以下「本件盗難事故」という。)。

(7) 保険金請求
 原告は、被告に対し、本件契約に基づき、本件車両の盗難によって損害を被ったとして車両保険金450万円の支払を請求をしたが、被告は、原告に対し、平成15年1月7日付け内容証明郵便により、支払拒絶の通知をした。

(8) 本件訴状送達の日の翌日は、平成15年3月25日である。

二 争点
 本件盗難事故が偶然に起きたものか否か

三 争点に対する当事者の主張
 (原告の主張)

(1) 原告は、平成12年12月ころ、本件車両を約500万円で購入した。
 支払方法は、20回程度の分割払いによるものであり、平成14年秋ころには、ローンの支払いは終わっていた。

(2) 原告は、平成13年10月ころ、本件車両を、本件マンションの外に駐車していたところ、ドアを開けられるといういたずらにあった。原告は、本件マンションの管理人から、本件マンションの周辺で盗難が多いということを聞き、車両保険に入ることにし、同年11月12日、本件契約を締結した。

(3) 原告は、本件車両を購入する際、鍵を二本(メインキー一本、サブキー一本)受け取った。メインキーは、本件車両のダッシュボード内に置いており、サブキーは、原告が所持していた。

(4) 原告は、平成14年10月22日、原告方に帰宅してすぐに本件駐車場に行ったところ、本件車両がなくなっていることに気が付き、警察に連絡し、盗難届を提出した。

(5) トヨタセルシオは、そもそも盗まれやすい車種であり、また、本件マンション付近では、車の盗難、車上荒らしの被害が多数ある。

(6) 原告は、収入にも余裕があり、お金に困っていることもないのであって、不当に保険金を請求する必要性はない。

(7) 本件駐車場に設置された防犯ビデオに、本件盗難事故の犯人が写っており、本件盗難事故が偶然に発生したことは明らかである。
 また、本件ビデオには、犯行直前からのダビングしかなく、それ以前の録画部分や、数日前のビデオを調査しなければ、犯人が物色したか否かは明らかにはならない。

(8) 被告の調査は、原告から渡されたビデオを確認し、原告本人と自動車関係の聞き取り調査をしただけであって、周辺住民への聞き取りや本件盗難事故前後のビデオテープの調査等を行わずに、〈1〉原告は鍵を一本しか持っていない、〈2〉犯人が物色することなく短時間で本件車両を盗んだと判断して、本件盗難事故に原告が関与していると判断しているにすぎないのであって、被告は十分な調査を行っていない。

(9) 本件車両が、原告以外の第三者による盗難に遭ったことは、ビデオや原告が、当時海外出張であったことから明らかであるから、被告は、原告とその犯人とが共犯関係にあることを疑わせる具体的な事実を主張、立証しなければ、本件保険金の請求を拒絶できないと解すべきである。

(被告の主張)
(1) 本件盗難事故が偶然な事故であることは、原告において主張、立証すべきものである。

(2) 原告の収入や原告が経営する会社の売上げについては、客観的な資料がなく、原告には、原告が購入した本件マンション1002号室及び原告が本件盗難事故後購入したベンツについては、まだローンが残っており、原告は、裕福な経済状態にはない。

(3) 原告は、自動車免許を取り、自動車保険をかけ続けて19年になり、車は、仕事、プライベートにかかわらず非常に良く乗り、自動車は三台所有しているが、本件車両に限って車両保険に入る必然性が明らかではない。

(4) 本件車両は、代金完済までは、ローン会社に所有権が留保されており、盗難事故が発生した場合、無条件に原告に保険金が下りる保証はない。原告は、本件車両のローンを平成14年7月に完済し、それからわずか約3月後の同年10月に本件盗難事故が発生しており、期間が短い。また、本件車両の車検は、同年11月30日が満期日であり、原告は、車検満了後は、本件車両を乗り続ける気持ちはなかったか、または、もはや必要としていなかったと考えても不思議ではない。

(5) 原告は、本件盗難事故の発生した場所にビデオカメラがあることを知らなかった。

(6) 本件車両の鍵は、イモビライザーが装着されたものであり、エンジンキーの中に認識信号が入ったICチップが埋め込まれているので、他のキーで本件車両のエンジンを作動させることはできない。そして、原告は、このことを知らなかった。
 盗難時の状況が映ったビデオを見ると、犯人は、盗難現場を歩き回って他の自動車を物色したりするわけでもなく、何のためらいもなく一直線に本件自動車に近づき、約40秒という短時間の内にドアを開け、運転席に座り、エンジンを始動させて車を発進させている。
 上記の本件自動車の鍵の特質及び犯人と思われる者のかかる行動を併せ考えると、犯人は、鍵の所持者である原告から、鍵を預かって使用したのでなければ、本件犯行は不可能である。

(7) 原告の鍵の本数や、保管状況に関する供述は、変遷しており、曖昧かつ不自然である。また、原告の供述によると、ダッシュボードにメインキーが入っていることを、知っている人に話しておらず、また、知っている人はいない。

(8) 本件盗難事故において、本件車両を本件駐車場から持ち去った者は、本件駐車場から出るため、本件駐車場のチェーンを開けるリモコンを使用したと考えられるが、そのリモコンは、それが駐車場のものだと知っている人でないとわからない。

(9) 以上からすれば、本件盗難事故は、原告の意を受けた者が原告の所持する鍵を使用して盗難を偽装したものである。


以上:3,728文字

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