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マンション敷地駐車場建物に関する平成7年12月26日福岡高裁判決紹介3

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平成28年 7月15日:初稿
○「マンション敷地駐車場建物に関する平成7年12月26日福岡高裁判決紹介2」の続きで、裁判所の判断部分後半です。



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3 右のとおり、控訴人の本件土地部分の占有権限が認められたからには、控訴人のその他の占有権限の主張について判断する必要はないことになるが、控訴人はその他の占有権限の主張をもって金員請求権の不存在の理由としているので、そのうち地上権の主張について、ここで判断することにする。

 控訴人は、本件駐車場建物の敷地に明示的に、すくなくとも黙示的に地上権の設定を受けたと主張し、その法律関係は次のとおりであると主張する。即ち、控訴人は、自己の所有土地上に地上権を設定して駐車場を建築したが、マンション販売以前は混同の法理により、その地上権は顕在化されておらず、所有権に包摂され潜在的な状態にあり、販売と共に共有持分の形で土地所有権の観念的一部が譲渡されるに及んでこれが顕在化され、マンションが完売された時点ではじめて地上権が完全なものとなる関係にある。それを別の観点から観察するとき、マンション購入契約時に購入者において敷地の一部に売主に対し地上権設定の合意をすることである。このように、特殊な契約成立の過程を経ることから、当事者間で明確な認識のもとに「地上権設定契約」という法的に整理された形の交渉や契約書の作成は行われないというに過ぎない。

 しかし、区分建物及び敷地の共有持分しか譲り受けていないマンションの購入者は、購入時に敷地それ自体について地上権を設定する権限を有しないし、共有持分権に対して地上権を設定することも許されていない。また、自己所有土地に自己の有する地上権を設定することは現行法の予定しないところであるから、土地所有権に包摂されて潜在的に存した地上権がマンションの完売時に顕在化するということもない。結局、控訴人が地上権を取得するためには、マンション完売後に敷地共有者全員(管理組合)との間に地上権設定契約をする(これは共有物の変更にあたる。)ほかないが、そのような契約があったとの主張、立証もない。

 控訴人の地上権に関する主張は理由がない。

三 金員請求権の存否
1 不法行為に基づく損害賠償請求権

 被控訴人は、控訴人は本件土地部分を不法に占有していると主張する。
 ところで、控訴人による本件駐車場建物所有による本件土地部分の占有は、前示の土地使用貸借を伴う土地管理委託契約類似の無名契約に基づくものであった。そうすると、控訴人による本件土地部分の占有、それ自体は右契約に基づき許容されているのであって、区分所有者らとの関係で不法行為を構成しない。
 そうすると、被控訴人の不法行為に基づく損害賠償の請求は理由がなく、右請求が理由があることを前提とする被控訴人の弁護士費用の損害賠償の請求も理由がない。

2 不当利得返還請求権
(一)
(1)  右契約は、他面、本件土地部分と本件駐車場建物から成る複合不動産から生じる収益につき、本件土地部分から生じる分をマンションの区分所有者らに、本件駐車場建物から生じる分を控訴人にそれぞれ帰属させることをその内容としているのであるから、控訴人が本件土地部分から生じる収益を自らに帰属するものとして独占的に収益する法律上の原因はないのであり、控訴人は右契約の当事者として、このことを知って本件土地部分から生じる収益を自らに帰属するものとして独占的に収益している悪意の受益者とみるべきであり、その限りにおいてマンションの区分所有者らに対し不当利得の返還義務を負担するというべきである。
 控訴人の善意を前提とする被控訴人の予備的請求1は理由がない。

(2)  控訴人は、本件土地部分から生じる収益がマンションの区分所有者らに帰属することを右契約の当事者として知っていたのであるから、控訴人の民法189条1項の善意占有者の果実取得権を根拠として右不当利得返還請求権の成立を争う主張は理由がない。

(3)  また、控訴人は本件土地部分に本件駐車場建物所有目的の地上権を有するから、本件土地部分から生じる収益は控訴人に独占的に帰属するとして、右不当利得返還請求権の成立を争うが、右地上権が成立しないことは前示のとおりである。

(4)  更に、控訴人は、団地建物所有による本件土地の利用権を有するから、右不当利得返還請求権は成立しないと主張する。そして、控訴人が本件駐車場建物につき区分建物としての保存登記をしており、かつ、本件土地につき共有持分権をしていることは、前示のとおりであるから、控訴人は区分所有法65条により本件土地につき敷地利用権を有するかのようでもある。しかし、本件駐車場建物が区分所有法65条所定の団地建物に該当するとしても、同法は、もとより敷地の共有持分権者らが共有土地の収益方法を定めることを排除するものではないから、前示マンションの購入者らと控訴人間の契約により、本件土地部分から生じる収益をマンションの区分所有者(管理組合)に帰属させることになっているのであるから、本件土地部分から生じる収益を自らに帰属するものとして独占的に収益することは、マンションの区分所有者らに対する関係でやはり不当利得となる。控訴人の右主張は理由がない。

(二) そうすると、前示のとおり、本件マンションは完成前から分譲契約が始まり完売され、昭和58年10月13日以降区分建物の保存登記と敷地権たる本件土地の共有持分権の移転登記がされているから、控訴人は区分建物所有者ら(管理組合)に対し、同日から控訴人が本件駐車場建物の所有権を区分建物所有者ら(管理組合)に移転するまでの間の右複合不動産から生じる現在及び将来の収益のうち本件土地部分から生じる収益額を不当利得として返還すべき関係になる。

(三) そこで、本件土地部分と本件駐車場建物から成る複合不動産から生じる収益のうち、本件土地部分から生じる収益額を求めることになるが、それは結局本件土地部分の賃料相当額ということになる。
 当審鑑定人原田明二は、本件土地部分の平成元年12月15日時点の月額賃料を月額40万4000円(420円/平方メートル)と評価している。右鑑定は、近隣地域における標準的使用の状況、将来の動向、本件土地部分の個別的要因及び公法上の規制内容等に鑑み、本件土地部分の最有効使用を現況通り「駐車場の敷地」と評価した上、積算法による積算賃料月額39万7800円(414円/平方メートル)(取引事例比較法によって求めた比準価格と収益還元法によって求めた価格との開差について熟慮のうえ更地価格を求め、これに基づいて基礎価格を決定し、これに期待利回りを乗じ、必要経費を加算して求めた価格)と配分法に準ずる方法による賃料月額40万9700円(426円/平方メートル)(隣接土地に帰属する純収益を求め、これに必要経費を加算し、本件土地部分が高度利用できないことを考慮して求めた価格)を求め、その平均値をもって月額賃料相当額と評価したものであり、鑑定の手法、経過、結果も合理的であるから、これによることとする。

 これと異なる原審鑑定人土手栄治の鑑定の結果は、本件土地部分の最有効使用を中高層共同住宅の敷地と評価した上でのものであって、右鑑定の結果は既にその点において採用できない。

(四) してみると、控訴人は区分建物所有者ら(管理組合)に対し、(一)別紙認容金額一覧表記載の各賃料相当額の不当利得金及び各金員に対する同表の各利息起算日から完済までいずれも民法所定の年5分の割合による利息、(二)平成7年10月1日から控訴人が本件駐車場建物の所有権を区分建物所有者ら(管理組合)に移転するまで月額43万1876円の割合による不当利得金の支払義務を負担することになる。

四 結論
 以上の次第であるから、被控訴人(本件マンションの各区分所有権者ないしその管理組合の訴訟追行権者)の請求は金員請求の予備的請求2につき主文第二項の限度で理由があるからこれを認容し、その余の請求(当審で拡張された分を含む)を失当として棄却すべきところ、これと異なる原判決を控訴人(附帯被控訴人)の控訴に基づき変更し、被控訴人(附帯控訴人)の附帯控訴は理由がないからこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民事訴訟法96条、92条、89条を適用して、主文のとおり判決する。
 (裁判長裁判官 田中貞和 裁判官 宮良允通 裁判官 野崎彌純)


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