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マンション敷地駐車場建物に関する平成7年12月26日福岡高裁判決紹介2

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平成28年 7月15日:初稿
○「マンション敷地駐車場建物に関する平成7年12月26日福岡高裁判決紹介1」を続けます。
今回は裁判所の判断の前半です。


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第四 判断
一 本件土地の共有権者

1 前記争いのない事実及び証拠(甲2、5、6、12、29、原審証人庄崎憲一、中村照男の各証言、控訴人代表者の当審における供述)によれば、次の事実が認められる。
(一) 控訴人は、昭和57年5月頃、マンション建築の目的で本件土地を含む土地を購入した。控訴人は、当初、本件土地を含む一体の土地を敷地として、A棟、B棟、C棟の分譲マンション棟と、それに付属する設備として、マンションの購入者が利用し得る陸屋根式の駐車場建物を建築する計画であった。その後、最終的には、A棟、B棟を分譲マンションとし、C棟を自社所有の賃貸マンションとすることに計画を変更した。そこで、控訴人は、本件土地にいずれも11階建のA棟、B[1]、B[2]棟の分譲マンションとD号館を建築し、本件土地を除いた部分の土地に11階建の賃貸マンションのC棟を建築し、後にC棟の敷地を売却している。

(二) 控訴人は、本件マンション完成前の昭和57年6月頃から分譲を開始し、昭和58年9月頃A棟(80戸)を完成(登記簿上同年9月20日新築)し、各専有部分の購入者に同年10月頃から引渡を始め、更に、昭和59年6月頃B[1]、B[2]棟(84戸)を完成(登記簿上同年6月1日新築)し、各専有部分の購入者に同年7月頃から引渡を始め、いずれも完売されている。

(三) 控訴人は、A棟と同時にD号館の建築にも着手し、昭和58年9月頃、A棟の完成と期を同じくしてこれを完成している。
 D号館は、陸屋根式平家建の建物であり、本件駐車場建物(登記簿上昭和58年9月20日新築)、集会所、機械室から成っている。機械室は本件マンションの不可欠の施設として機能し、集会所は管理組合の集会等に利用されている。
 控訴人は、D号館のうち本件駐車場建物につき、昭和58年10月18日受付の所有権保存登記を経るとともに、その敷地である本件土地部分を占有している。本件土地部分は本件土地の「空地」として残された面積の約24パーセントを占めている。

(四) 控訴人は、本件駐車場建物の一階を46区画、二階(陸屋根部分)を60区画に線引き管理して、マンション購入者の「駐車場」の用に供することにした。

(五) 控訴人は本件土地につき1万分の90の共有持分の登記名義を有している。本件マンションの各専有部分の購入者は、敷地権として、控訴人の右共有持分を除いた共有持分につき、概ね各専有部分の床面積の割合に応じた共有持分権の移転登記を経ている。

2 右認定事実によれば、本件土地は元来控訴人の所有であったところ、控訴人は本件土地上にマンション棟と共に本件駐車場建物を建築し、それら建物と敷地全部につき所有者となった後、マンションの購入者に各区分所有建物の目的物である各専有部分を販売するに際し、これに付加して各敷地権として本件土地の各共有持分権を譲渡したのであるが、その際、本件土地の各共有持分権の全部を譲渡することなく、その一部である1万分の90の共有持分権を自己の権利として留保していることが明らかであるから、そのマンション販売方法の是非はともかくとして、控訴人はその共有持分権の権利者であるというほかない。そうすると、本件土地はマンションの購入者である各区分所有者のみによる共有ではなく、販売業者である控訴人も1万分の90の持分を有する共有権者であるということになる。

 控訴人が本件マンションの各専有部分の購入者と交わした「土地付区分建物売買契約書」には、「敷地については、全区分所有者の共有に属するものとし、この共有持分は各々の所有する建物の専有部分の床面積の割合を基準として定めた別表の持分による。」と定められている(但し「別表」は添付されていない。)(甲6、7)が、この記載は控訴人を除く土地共有者の持分割合だけについて記述していると解することもできるから、右のとおり認定することを妨げるものではない。

二 控訴人の本件土地部分の占有権限
1 証拠(甲5、6、7、8の一、2、甲13、29、乙一、原審証人庄崎憲1、中村照男の各証言、控訴人代表者の当審における供述)によれば、次の事実が認められる。
(一) 控訴人が本件マンションの分譲のために昭和57年8、9月頃作成使用した「散らし」(広告有効期限同年8月末日、同年9月末日)の「概要」欄には「駐車場」として「153台(予定)」との記載がある。控訴人がその後使用した「散らし」(広告有効期限昭和58年2月末日、8月末日、10月末日、昭和59年2月末日、7月末日)の各「概要」欄には「駐車場」として「153台(予定)-屋内駐車場113台(東宝住宅所有)屋外駐車場40台(管理組合所有)」と記載されていた。

(二) 控訴人が本件マンションの分譲にあたり作成した宅地建物取引業法35条一項所定の「重要事項説明書」には、「専用使用権に関する規約等の定め」の項に、管理組合が管理する駐車場が40台分ある旨記載されているほか、「その他」の項に、本件マンションは「一敷地内にA棟とB棟のマンションと駐車場(東宝住宅所有)と別敷地内にC棟(予定)からなっています」と記載されている。

(三) 控訴人が本件マンションの各専有部分の購入者と交わした「売買契約書」には、建物及び敷地の共用部分として付属設備の中に「屋外駐車場」と記載されており、売買物件欄の土地欄に専用使用部分として「駐車場」と記載され、第26条2号に「本物件に属する敷地の一部について一部の区分所有者に専用駐車場として有償で専用使用させることを買主は承諾する」旨記載されているが、本件駐車場建物が存することを明記した部分は見当たらない。

(四) 控訴人がマンションの分譲に際し予め作成した本件マンションの原始「管理規約」には、「供用部分の範囲」として別表2に「駐車場」があげられているが、本件駐車場建物が存することを明記した部分は見当たらない。土地に関する定めとして、14条に「土地の一部を特定の者に専用使用させることを承認する。」、15条二項に「区分所有者は、管理組合が総会の決議を経て敷地の一部について第三者に使用させることを承認する。」、28条に「敷地に係る専用使用料はその管理に要する費用に充てるほか、修繕積立金として積み立てる。」とされ、また、「敷地の変更、処分」は46条により「組合員総数の4分の3以上の多数決により決すべき特別決議事項とされている。

(五) 控訴人は、本件マンションの分譲にあたり、駐車場を希望する各専有部分の購入者、居住者に、抽選の方法により、まず管理組合の管理する駐車場を割当て、次いで同じく抽選の方法により、本件駐車場建物の駐車場の区画を割当て、結局、駐車場を希望する者全員に、駐車場が確保された。控訴人は、本件駐車場建物の余った駐車場の区画をC棟の居住者及び部外の銀行等に駐車場として賃貸している。管理組合の管理する駐車場は30台分であり一区画当たり月額7000円であり、管理組合がその収益を管理している。本件駐車場建物の屋上駐車場は一区画当たり月額7000円、一階駐車場は一区画当たり月額1万1000円であり、控訴人がその利益を収受している。

2 そこで、右認定事実に即して検討するのに、本件マンション分譲の際の初期の「散らし」の記載は用意される駐車場の数のみであるが、後期の「散らし」には「屋内駐車場113台(東宝住宅所有)」と記載されており、控訴人がマンション敷地上に駐車場に使用する目的の建物を所有することを窺うことができること、しかし、そこからその根拠となる権利の有無、その具体的内容、駐車場使用による収益の帰属先等を直接明らかにすることはできないこと、宅地建物取引業法35条1項5号の2によれば、物件説明書には「敷地に関する権利」の記載を要するところ、本件「重要事項説明書」では本件駐車場建物に関するものとして、わずかに「駐車場(東宝住宅所有)」と記載されているに過ぎず、そこからは、控訴人がマンション敷地上に駐車場に使用する目的の建物を所有することを窺うことはできるが、やはり、その根拠となる権利の有無、その具体的内容、本件土地部分を駐車場に使用したことによる収益の帰属先等を直接明らかにすることはできないこと、売買契約書には、買主は敷地の一部を一部の区分所有者に専用駐車場として有償で専用使用させることを承諾する旨の記載があるが、本件駐車場建物が存することを明記した部分は見当たらないこと、原始「管理規約」にも本件駐車場建物に関し直接明記した部分は見当たらないが、土地に関する定めとして、敷地の一部を一部の区分所有者に専用使用させることの承認、管理組合が総会の決議を経て敷地の一部を第三者に使用させることの承認、敷地の専用使用料の使途、帰属先についての規定、敷地の変更、処分を特別決議事項とする規定等があること、一度現地に赴けばマンションの敷地上に本件駐車場建物が存することは一見して明らかであること、現にマンション購入者の多くの者が本件駐車場建物の駐車場の割当てを受けて使用していること、以上の事実が明らかである。

 そして、右認定判断を総合すれば、控訴人はマンション敷地内に駐車場建物を建築所有することを明らかにし、それらの土地、建物の状況を前提として、そのような土地利用形態を伴うマンションの購入契約の申込みの誘引をしたこと、マンションの購入者もこれに応じて本件駐車場建物の敷地について共有持分権を取得しても控訴人の本件駐車場建物の存在によって利用が制限されることを知った上で申込みをし、これを承諾した控訴人との間にマンションの各専有部分の売買契約が締結されたこと、即ち、少なくとも、マンションの購入者らは、控訴人に駐車場建物所有の目的でマンション敷地の一部を使用させることを承認して区分建物とその敷地権たる共有持分権を取得したと認めるほかない。

 ただ、右認定事実からは、その根拠となる権利の性格、その具体的内容、本件土地部分を駐車場に使用したことによる収益の帰属先等については、明確な定めがあったとは認められない。むしろ、控訴人は分譲マンションの販売対策としてマンションの購入者全員の駐車場を確保する必要と意図があったこと、原始管理規約によって管理組合の管理に委ねられた30台の駐車場だけではその必要を満たさなかったこと、本件土地部分に野外の駐車場を設置することにしてもなお不足すること、マンションの購入者全員の駐車場を確保する必要と意図を満たすためには本件土地部分を立体的に利用してその不足を補う必要があったこと、控訴人としても本件駐車場建物を建設するために相応の費用を要することから、その回収のため本件土地部分を駐車場建物の所有のために使用したことによる収益に与かる必要があったこと等から、マンション購入者らと控訴人の意思を合理的に推定すれば、マンション購入者らは控訴人に駐車場建物所有の目的でマンション敷地の一部を使用することを承認した上で、本件土地部分と本件駐車場建物から成る複合不動産から生じる収益につき、当面、本件土地部分から生じる分(控訴人の共有持分に相当する分も含めて)をマンションの区分所有者らに帰属させ(その収益は原始管理規約28条所定の敷地に係る専用使用料に該当し、管理組合が修繕積立金として積み立てることになる。)、本件駐車場建物から生じる分を控訴人にそれぞれ帰属させる(本件駐車場建物の建設に要した費用の回収にあてられることになる。

 控訴人がその回収の手段としてマンション購入者による駐車場の需要を満たした残余の駐車場を第三者に賃貸することも許容される。)ことにし、控訴人が本件駐車場建物から生じる収益をもって本件駐車場建物の建設に要した費用を回収した暁には、本件駐車場建物の所有権を最終的にマンションの区分所有者らに帰属させることを内容とする契約をしているものと解するのが相当である。そうすると、その契約の法的性格は土地の使用貸借を伴う土地管理委託契約類似の無名契約であるというべきである。


 更に、区分所有法は区分所有の目的とすることのできる「建物」について区分所有者の権利義務、供用部分の管理等に関する事項を主として規定するものであり、もとより区分建物の敷地に関する権利の内容を直接規定するものではないから、敷地に関する権利の内容は専ら当事者間の契約の内容によって決まるというほかないが、本件にあっては、契約当事者間の意思を右のように解釈することによって、マンションの区分所有者らのマンション敷地の利用権能とマンション販売業者の販売対策は合理的に調和することになり、これにより右契約の存立を支えているというべきである。

 そうすると、控訴人は右土地使用貸借を伴う土地管理委託契約類似の無名契約に基づき本件土地部分を占有しているのであるから、被控訴人の本件土地部分の明渡を求める請求は理由がない


以上:5,407文字

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