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マンション敷地駐車場建物に関する平成7年12月26日福岡高裁判決紹介1

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平成28年 7月14日:初稿
○久しぶりにマンションの法律問題の相談を受けています。マンション敷地使用権についての参考判例を探していますが、マンション分譲業者が敷地の一部に駐車場建物を所有している場合において、駐車場の収益の内、土地から生じる分は区分所有者らに、建物から生じる分は業者に帰属させる旨の土地管理委託契約類似の無名契約が成立したとされた平成7年12月26日福岡高裁判決(判タ914号170頁)全文を2回に分けて紹介します。


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主  文
一 控訴人(附帯被控訴人)の控訴に基づき原判決を次のとおり変更する。
1 控訴人(附帯被控訴人)は被控訴人(附帯控訴人)に対し
(一) 別紙認容金額一覧表記載の各賃料相当額及び各金員に対する同表の各利息起算日から完済までいずれも年5分の割合による金員
(二) 平成7年10月1日から控訴人(附帯被控訴人)が別紙物件目録(一)記載の「専有部分の建物の表示」記載の建物の所有権を被控訴人(附帯控訴人)に移転するまで月額金43万1876円の割合による金員を支払え。
2 被控訴人(附帯控訴人)のその余の請求(当審で拡張された請求を含む)を棄却する。
二 被控訴人(附帯控訴人)の附帯控訴を棄却する。
三 訴訟の総費用はこれを二分し、その一を被控訴人(附帯控訴人)の負担とし、その余を控訴人(附帯被控訴人)の負担とする。

事実及び理由
第一 申立
一 控訴の趣旨

1 原判決中控訴人(附帯被控訴人)(以下「控訴人」という。)敗訴部分を取り消す。
2 被控訴人の請求を棄却する。
3 訴訟費用は第1、2審とも被控訴人(附帯控訴人)(以下「被控訴人」という。)の負担とする。

二 附帯控訴の趣旨
1 原判決を次のとおり変更する。

2 控訴人は被控訴人に対し別紙物件目録(一)記載の建物を収去して同目録(二)記載の土地のうち別紙図面斜線部分961・69平方メートルを明渡せ。


(一) 主たる請求
 控訴人は被控訴人に対し
(1)  昭和58年10月から平成7年9月まで別紙請求金額一覧表(以下「一覧表」という。)の「損害金月額欄」記載の各金員及び各金員に対する同表の「遅延損害金起算日A欄」記載の日から各金員支払済みまで年五分の割合による金員
(2)  平成7年10月1日から右明渡済みまで月額金60万7192円の割合による金員を各支払え。
 (平成4年1月1日から右明渡済みまでの請求につき、当審における請求金額の拡張となる。)

(二) 予備的請求1
 控訴人は被控訴人に対し
(1)  昭和58年10月から平成7年9月まで一覧表の「損害金月額欄」記載の各金員及び各金員に対する同表の「遅延損害金起算日C欄」記載の日から各金員支払済みまで年五分の割合による金員
(2)  平成7年10月1日から右明渡済みまで月額金60万7192円の割合による金員を各支払え。

(三) 予備的請求2
 控訴人は被控訴人に対し
(1)  昭和58年10月から平成7年9月まで一覧表の「損害金月額欄」記載の各金員及び各金員に対する同表の「遅延損害金起算日B欄」記載の日から各金員支払済みまで年五分の割合による金員
(2)  平成7年10月1日から右明渡済みまで月額金60万7192円の割合による金員を各支払え。
 (予備的請求1、2の平成4年1月1日から右明渡済みまでの各請求につき当審における請求金額の拡張となり、予備的請求1、2は付帯請求の法的性質の違いによるものである。)

4 控訴人は被控訴人に対し金200万円及びこれに対する昭和58年10月13日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

5 訴訟費用は第1、2審とも控訴人の負担とする。

6 仮執行宣言

第二 事案の概要
一 本件は、マンション建築販売業者からいわゆる分譲マンションを購入して土地付区分所有権を取得したマンションの所有者らが、マンション業者が敷地の一画に設置している駐車場建物により、マンション敷地に有する各共有持分権を侵害されたとして、土地共有持分権に基づき駐車場建物の収去土地明渡し、不法行為ないし不当利得に基づき土地共有持分権侵害による損害賠償ないし駐車場建物敷地の利用による利得の返還を求めている事件である。

 被控訴人は、マンションの各区分所有権者によって構成される管理組合の理事長であり、管理組合の総会決議により訴訟追行権者に選任された者である(弁論の全趣旨)。したがって、本件における実体法上の権利義務の実質的帰属主体はマンションの各区分所有権者ないしその管理組合であり、本件判決の効果も実質的に各区分所有権者ないしその管理組合に及ぶことになる。

二 争いのない事実
1 控訴人は別紙物件目録(二)記載の土地(以下「本件土地」という。)上に第二ホワイトキャッスル下到津(以下「本件マンション」という。)を建築し、分譲した業者である。

2 本件マンションは、先ずA棟(80戸)が建築(登記簿上昭和58年9月20日新築)され、次いでB[1]棟、B[2]棟(84戸)が建築(登記簿上昭和59年6月1日新築)された。いずれも11階建である。

3 控訴人は、A棟、B[1]、B[2]棟の他に、A棟建築と同時に、別紙物件目録(一)記載の「一棟の建物の表示」にあるD号館(以下「D号館」という。)を建築し、そのうち同目録(一)記載の「専有部分の建物の表示」にある建物部分(登記簿上昭和58年9月20日新築、以下「本件駐車場建物」という。)を駐車場とし、同年10月18日自己を権利者とする区分所有建物としての所有権保存登記をした。
 D号館は陸屋根式の平家建で、本件駐車場建物のほか集会所、機械室(電気配盤、ポンプ収納)がある。

4 控訴人は、本件駐車場建物を所有することにより、本件土地のうち別紙図面斜線部分961・69平方メートル(以下「本件土地部分」という。)を占有している。

5 控訴人は本件土地につき1万分の90の共有持分の登記名義を有している。本件マンションは完成前から分譲契約が始まり完売され、昭和58年10月13日以降区分建物の保存登記及び敷地権たる本件土地の共有持分権の移転登記がされている。本件マンションの各専有部分を買受けた各区分所有者は、敷地権として、控訴人の右共有持分を除いた残余の共有持分につき、概ね各専有部分の床面積の割合に応じた共有持分権の移転登記を受けている。

三 争点
1 本件土地の共有権者
(一) 被控訴人の主張

 本件土地はマンションの分譲を受けた各区分所有者全員の共有である。本件マンションは完売されたのであるから、控訴人に留保された本件土地の共有持分権は存在しない。控訴人は各区分所有者に対し各専有部分の床面積の割合に応じた共有持分権の移転登記をすべきところ、これより少ない割合の共有持分権の移転登記をしたため、登記簿上、控訴人に本件土地の共有持分権が留保されているかのような記載になっているに過ぎない。控訴人は実体法上本件土地の共有持分権を有しない。

(二) 控訴人の主張
 本件土地は分譲マンションの各区分所有者のみによる共有ではなく、販売会社である控訴人も1万分の90の持分を有する共有権者である。

2 控訴人の本件土地部分の占有権限
(一) 控訴人の主張
(1)  地上権、使用貸借権の設定

〈1〉 控訴人は本件マンションの各専有部分を分譲するに際し、本件土地上に控訴人が本件駐車場建物を所有しており、これにより本件土地部分を専用使用することを説明しており、各マンション購入者はこれを承認して各専有部分の分譲を受けたものである。即ち、控訴人は分譲の都度各購入者との間に、控訴人が本件駐車場建物を所有するため、本件土地部分を期限の定めなく無償で専用使用する旨の地上権設定契約を締結した。

〈2〉 仮にそうでないとしても、右事情によれば、控訴人は本件マンションの各専有部分を分譲するに際し、分譲の都度各購入者との間に黙示的に右地上権設定契約をしたものである。

〈3〉 マンション購入者は各専有部分の区分所有権と共に地上権により制限された本件土地の共有持分権(敷地権)を取得したに過ぎない。すくなくとも、使用貸借権により制限された共有持分権を取得したに過ぎない。これを法現象として観察すると、控訴人は駐車場に使用する目的で本件土地部分の専用使用権を留保してマンションを分譲した関係になる。

(2)  団地建物所有による敷地利用権
 建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)65条によれば、一団地に数棟の建物があって、その団地内の土地がそれらの建物の所有者の共有に属する場合には、団地建物所有者は全員でその団地内の土地を管理することになる。本件マンション棟と駐車場建物は、別棟になっているが、この団地の法理の適用により、あたかも一棟の建物のように取り扱われる。控訴人は本件駐車場建物を専用部分として所有するとともに本件土地につき1万分の90の共有持分権を有している。したがって、控訴人は本件土地につき敷地利用権を有する。

(3)  権利濫用
〈1〉 控訴人はマンション購入者にとって不可欠な駐車場を確保するため約8000万円を投じて本件駐車場建物を含むD号館を建設した。D号館の建設費は、建物の負荷重量が大であること、防災設備を設置する必要があったことから割高となったが、本件マンションの分譲代金に加味していない。また、駐車場をマンション購入者に分譲すると購入者の資金的な負担が大きいことから、分譲方式をとらず、低料金による賃貸借の方式を採用した。

〈2〉 本件土地の一部に本件駐車場建物が存するからといって、将来本件マンションを建替えるにあたり、同一面積のマンションであれば建ぺい率の関係で妨げになることはない。

〈3〉 その他諸般の事情によれば、本件駐車場建物を収去して本件土地部分の明渡を求める被控訴人の請求は権利の濫用であって許されない。

(二) 被控訴人の主張
 団地建物所有による敷地利用権について
 控訴人は実体法上本件土地の共有持分権を有しないから、控訴人の団地建物所有による敷地利用権の主張は前提を欠き失当である。また、本件駐車場建物は原始管理規約においても団地建物の対象とされていない。控訴人は本件土地に共有持分権を有するというが、それに基づく議決権行使、費用負担の実績もない。

3 金員請求権の存否
(一) 被控訴人の主張

(1)  本件土地部分の賃料相当額は一覧表の「損害金月額」欄記載の各金員のとおりである。各損害金月額は平成元年12月15日時点の月額賃料相当額56万8000円を平成2年度の月額賃料相当額とし、別紙地代相当額計算書記載の消費者物価指数により各年度の月額賃料相当額を算出したものである。また、昭和58年10月は13日から31日までの分である。

(2)  控訴人は、本件土地部分を不法に占有しているから、被控訴人に対し、昭和58年10月13日から明渡済みまで一覧表の「損害金月額欄」記載の各金員及び各金員に対する同表の「遅延損害金起算日A欄」記載の日から各金員支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。

(3)  仮に不法行為が成立せず、かつ、控訴人が善意であるとしても、控訴人が一覧表の「損害金月額欄」記載の各賃料相当額を不当利得していることにかわりはなく、被控訴人は控訴人に対し不当利得返還請求権を有するところ、右不当利得返還請求権は期限の定めのない債権であるから、催告により遅滞に陥る。被控訴人は、平成元年2月ころ、控訴人に対し、その支払を催告した。したがって、右不当利得返還請求権は、平成元年2月までに発生した分につき遅くとも平成元年2月28日までに遅滞に陥っており、またそれ以降に発生した分については直ちに遅滞に陥っていることになる。
 よって、控訴人は被控訴人に対し、昭和58年10月13日から明渡済みまで一覧表の「損害金月額欄」記載の各金員及び各金員に対する同表の「遅延損害金起算日C欄」記載の日から各金員支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払義務がある。

(4)  仮に不法行為が成立しないとしても、控訴人は被控訴人に対し、昭和58年10月13日から明渡済みまで一覧表の「損害金月額欄」記載の各賃料相当額を悪意で不当利得していることになるから、各金員及び各金員に対する同表の「遅延損害金起算日B欄」記載の日から各金員支払済みまで民法所定の年五分の割合による利息の支払義務がある。
 右の利息の起算日は、昭和58年10月13日から平成元年12月15日の訴状送達の日の属する月である平成元年12月までの各賃料相当額につき被控訴人の原審平成3年12月2日付準備書面送達の日の翌日である平成3年12月3日であり、平成2年1月以降の各月の賃料相当額につき各翌月1日である。

(5)  被控訴人は本訴の提起、追行を被控訴人訴訟代理人に委任し弁護士費用200万円の損害を被った。右損害は控訴人の本件土地部分占拠の不法行為に因り生じた損害である。

(6)  よって、控訴人は被控訴人に対し、不法行為ないし不当利得に基づき附帯控訴の趣旨記載の各金員を支払う義務がある。

(二) 控訴人の主張
(1)  地上権、使用貸借権

 控訴人は前記のとおり地上権、使用貸借権、団地建物所有による敷地利用権を占有権限ないし法律上の原因として本件土地部分を占有し、それによる利益を得ているのであるから、不法行為ないし不当利得に基づく債務を負担しない。
 団地建物所有による敷地利用権者は、一棟の建物の区分所有者が他の区分所有者に地代の支払をする関係にないのと同じように、他の団地建物所有による敷地利用権者に対し、敷地利用による債務を負担しない。
 また、控訴人には不当利得として返還すべき現存利益も存しない。

(2)  善意占有者の果実取得権
 控訴人が仮に本件土地部分の占有につき無権限者であったとしても、控訴人は占有権限があると信じてこれを占有してきたのであるから、民法189条一項の法定果実に類するものとして地代相当の使用利益を取得する権利があるから、敷地利用による債務を負担しない。

第三 証拠関係
 記録中の原審・当審の証拠関係目録の記載を引用する。


以上:5,829文字

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