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パワハラと自殺の因果関係を認めた福井地裁の画期的判例紹介3

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平成27年 4月23日:初稿
○「パワハラと自殺の因果関係を認めた福井地裁の画期的判例紹介2」の続きで、パワハラと自殺の因果関係を明快に認め、認定損害額について一切減額することなく、全額認めています。
私が扱っている難しい交通事故事件もこのような果敢な判断をされる裁判官に当たりたいものです(^^;)。高裁で和解できない場合の、高裁判断がどうなるかが気になるところですが。

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2 争点(2)(被告cによる不法行為の有無)について
 被告cがdに対していじめないしパワーハラスメントと評される行為をしたことを認めるに足りる証拠はない。また,dが平成22年10月6日ころ被告cに対し退職の申し出をしたことは認められるが(甲8号証の14頁には「辞表はないがcさんに辞めたいことを伝える」との記載がある。),この申し出に対し,被告cがこれを拒否した上,厳しい叱責暴言をした事実を認めるに足りる証拠はない。

 原告は,被告bによるdへのパワーハラスメントを容易に認識できたにもかかわらず,自らの責任で被告bとdとをチームとして多く組む人員配置を続けたのであるからこの点で被告cに過失が認められると主張するが,メンテナンス業務が被告会社の構内での作業ではなく外注先での作業が大半を占めることからすると,被告bのdへの指導の実態について把握するのは困難であり,dが被告cに対し被告bからパワーハラスメントを受けていることを訴えた事実は認められないことからすると,この原告の主張は理由がない。また,被告cのメンテナンス部の部長としての役割は作業現場の人員配置と作業日程の決定にとどまっていたこと(乙7,被告c供述)等に照らすと,原告のその余の主張も理由がない。
 よって,原告の被告cに対する不法行為責任に基づく請求は理由がない。

3 争点(3)(被告会社による安全配慮義務違反の有無)について
 1摘示の被告bのdに対する不法行為は,外形上は,dの上司としての業務上の指導としてなされたものであるから,事業の執行についてなされた不法行為である。本件において,被告会社が被告bに対する監督について相当の注意をしていた等の事実を認めるに足りる証拠はないから,被告会社は原告に対し民法715条1項の責任を負うこととなる。
 原告の被告会社に対する請求は主位的には不法行為責任,予備的には債務不履行責任であるから,争点(3)については判断の必要はない。

4 争点(4)(被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係)について
 1において認定したごとく,dは,被告bから注意を受けた内容のメモを作成するように命じられ,誠実にミスをなくそうと努力していた中で,被告bから人格を否定する言動を執拗に繰り返し受け続けてきた。dは,高卒の新入社員であり,作業をするに当たっての緊張感や上司からの指導を受けた際の圧迫感はとりわけ大きいものがあるから,被告bの前記言動から受ける心理的負荷は極めて強度であったといえる。このdが受けた心理的負荷の内容や程度に照らせば,被告bの前記言動はdに精神障害を発症させるに足りるものであったと認められる。そして,dには,業務以外の心理的負荷を伴う出来事は確認されていないし,既往症,生活史,アルコール依存症などいずれにおいても問題はないのであって,性格的な偏りもなく,むしろ,上記手帳の記載を見れば,きまじめな好青年であるといえる。

 そうすると,dがロープを購入し,遺書を作成したと思われる平成22年11月29日には,被告bの言動を起因とする中等症うつ病エピソードを発症していたと推定され,正常な認識,行為選択能力及び抑制力が著しく阻害された状態になり,本件自殺に至ったという監督署長依頼に係る専門医の意見(甲34)はこれを採用すべきものであるといえる。本件自殺と被告bの不法行為との間の相当因果関係が認められる。

 被告らは,dが閉塞性睡眠時無呼吸低呼吸症候群に罹患していた等として本件自殺と業務との因果関係を否定するが,その根拠とされるh医師の意見書(乙10)も,同医師自らが,「正確な医学的検査をしていない。さらにdと直接会ったわけでもなく,また具体的に働いている現場を見ているわけではないので,推測でしかない。」と認めるように,医学的根拠に乏しく,被告らの主張は理由がない。
 よって,1に認定摘示した被告bの不法行為と本件自殺との相当因果関係はこれを認めることができる。


5 争点(5)(損害額)について
(1) 逸失利益

 dは,健康な19歳の男性であり,本件不法行為がなければ,平成22年賃金センサス産業計・企業規模計・学歴計男性平均賃金である年収523万0200円の収入を得た蓋然性が認められる。そして,就労可能年齢を67歳,生活費割合を5割として,ライプニッツ方式により逸失利益を算定するのが相当であり,これによると,次の計算式のとおり,4727万3162円が求められる。
 計算式 523万0200円×(1-0.5)×18.077(48年に対応するライプニッツ係数)=4727万3162円(円未満切り捨て)

(2) 慰謝料
 dが自殺に至った経緯,生活状況等,諸般の事情を考慮すると,dの死亡慰謝料は2300万円とするのが相当である。

(3) 賠償額の算定
ア 原告が平成25年5月29日に支給された遺族補償金366万0605円は,上記逸失利益(元本)に充当するのが相当であるところ(平成22年9月13日最高裁判所第一小法廷判決・民集64巻6号1626頁参照),4727万3162円から366万0605円を減じると4361万2557円となる。

イ 上記4361万2557円に(2)の慰謝料額2300円を加算すると6661万2557円となる。

ウ 上記金額,本件事案の難易,請求額等の事情に照らすと,本件と相当因果関係のある弁護士費用は600万円と認めるのが相当である。

6 以上の認定及び判断の結果によると,原告の被告会社に対する請求及び被告bに対する請求は,7261万2557円及びこれに対する平成22年12月6日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるからこれを認容し(両被告の債務の関係は不真正連帯債務である。),原告の被告会社及び被告bに対するその余の各請求並びに被告cに対する請求は理由がないからいずれも棄却することとし,主文のとおり判決する。
 (裁判官 樋口英明) 

 
以上:2,672文字

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