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パワハラと自殺の因果関係を認めた福井地裁の画期的判例紹介2

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平成27年 4月23日:初稿
○「パワハラと自殺の因果関係を認めた福井地裁の画期的判例紹介1」の続きで、裁判所の判断です。パワハラの具体的状況が、被害者手帳に詳細に生々しく記載されており、この記載内容を事実と認定しています。

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第3 当裁判所の判断
1 争点(1)(被告bによる不法行為の有無)について

 (認定事実)
 前記前提事実に加え後記括弧内に摘示する証拠及び弁論の全趣旨を総合すると,以下の事実が認められる。
(1) d(平成3年8月29日生)は,高校を卒業後の平成22年4月1日(以下,年月日だけで示すのは平成22年である。),被告会社に入社し,メンテナンス部に配属された。そして,各企業が事務所及び作業所・工場等に消防法に基づいて設置した防火施設の消防法によるメンテナンス等について,被告会社がそのメンテナンス業務の委託を受けている事業所の消防設備や消火器等の保守点検業務に従事していた。(乙7,9)

(2) dの通常の業務は以下のとおりである(甲29,乙3,7,被告c供述)。
 午前7時30分ころサービスセンター(福井市i町)に出勤し,営業車に乗り合わせ,本社(福井市j)に移動し,本社において午前7時45分ころから環境整備(清掃),午前8時15分から朝礼を実施後,点検現場に出発し,消防設備のメンテナンス業務を行う。現場業務が終了後,午後5時から6時ころに本社に戻り,本社で翌日の現場の書類準備等を行った後,サービスセンターに戻り後始末,翌日の準備をした後帰宅する。

 現場における業務の内容は,消防設備の点検である。対象設備は建築物(企業,公共施設,商業施設等)の消火器,火災報知器,消火栓,誘導灯などの設備であり,消防法に定められた点検を行い,不良箇所が見つかれば整備を行う。現場ごとにリーダーが定まり,現場の規模により2名ないし4名程度で作業を行うが,dの場合には2名での作業が多かった。一日に複数の現場を回ることもあれば,ひとつの現場に数日を要することもある。

(3) dは,当初,消火器の点検などの比較的簡単な作業に従事していたが,作業に慣れるに従って7月ころから消火栓や火災報知器などの点検業務にも従事するようになった。この点検業務に当たっては,dの直属の上司に当たる被告bに同行し,被告bから指導を受けることが多かった。

 被告bは,dの仕事の覚えや悪いことから,自分が注意したことは必ず手帳に書いてノートに書き写すように指導していたが,dが仕事上の失敗が多く,被告bが運転する車中で居眠りをするなどのことが重なったため,いらだちを覚えるようになり,7月9日には「一人で勝手に行動しない。分かりもしないのに返事をしない。」と言うようになった。dは,被告bの上記指導に従って,被告bから受けた指導内容,言われた言葉やこれらを巡って自問自答する内容をノートに記述するようになった。(甲29,乙5,7,8,被告b供述)

 その内容は次のとおりである。
ア 7月9日(甲9・63頁)
 一人で勝手に行動しない,分かりもしないのに返事をしない。分からないときは必ず聞く。聞いたら手帳に書いて忘れない。

イ 7月10日(甲66の2)
 ・ヘタに手伝って作業をしている人のジャマをしない
 ・人の話を聞いて理解してから行動する
 ・自分の意識を高める
 ・注意をされたこと,気を付けることは,すぐに手帳に書く,家に帰ったら,手帳に書いたことをノートに書き移す(ノートはなくさないような場所に保管する)
 ・1人で勝手に行動しない
 ・分かりもしないのに返事をしない
 ・分からないことがあるときは必ずリーダーや責任者に聞く,聞いたことは手帳に書いて忘れない

ウ 7月12日(甲9・63頁)
 絶対にねるな,絶対にねるな,絶対にねるな,絶対にねるな,自分は変わる,自分は変わる,自分は変わる,自分はもっと良くなる。
 1分1秒がおしい,皆ヒマじゃない,自分は何で変わらない,皆やることがある。

エ 7月26日(甲9・64頁)
 何かすることが分かっているなら手伝え!

オ 8月11日(甲9・37頁)
 今後どうするか,答えを出せ,怒られたいのか,そうじゃないのか,学ぶ気持ちはあるのか,いつまで新人気分?サギと同じ,3万円を泥棒したのと同じ,毎日同じことを言う身にもなれ,ワガママ,申し訳ない気持ちがあれば変わっているはず,指示を確実に実行する,受信機は必ず止める。6:00までに終わらす,帰る,少しは考えて行動しろ。

カ 9月1日(甲9・65頁)
 待っていた時間がムダになった,聞き違いが多すぎる・・・動きにムダ,ムラ=遅い,耳が遠いんじゃないか?仕事終了後,ムダに休まない,涼まない,なんでkさんの前では書かなくてbさんの前では書く?今まで書いたことを実行してきた?

キ 9月7日(甲9・64頁)
 うそをつくようなやつに点検をまかせられるわけがない,「手伝う」と言う前に「スミマセン」と謝るのが先じゃないか,お客様のことを一番に考える,自分の考えが甘甘すぎる,今の自分にできることなんか何もない,点検もしてないのに自分をよく見せようとしている,ムダな汗,答えを出すのに時間かかりすぎ。
 人の資格を使わせてもらっているのに適当
 ↑のようなヤツに仕事はさせられない
 相手するだけ時間のムダ,何でウソをつく,○○するつもりはなかった=ウソつき,ウソをつく,お金を払っていただいているのはお客様。

ク 9月11日(甲8・4~7頁)
 l病院
 失敗点:人の話をきかずに行動・・・動くのがノロイ,時間をかけても点検は中途半端,問題を直す意気込みがない・・・指示が全く聞けない・・・そんなことを直さないで信用できるか,・・・注意しても直さない,ムダなミスをして作業をストップさせる,何で自分が怒られているのかすら分かっていない,反省しているフリをしているだけ,ウソを平気につく,そんなやつ会社に要るか?ウソをついたのに悪気もない。

 改善:まず人の話をきく。何も考えずに発言しない←それがウソにつながる,・・・やる気出せ←根本的な,ダラダラしすぎ,全然点検に集中してない,根本的に心を入れ替えれば?会社辞めた方が皆のためになるんじゃないか,辞めてもどうせ再就職はできないだろ,自分を変えるつもりがないのならば家でケーキ作れば?店でも出せば?どうせ働きたくないんだろう?・・・いつまでも甘甘,学生気分はさっさと捨てろ,今までずっとそんな気持でやってきた,自分がアホらしい,死んでしまえばいい,一度くらい折れてみればいい,辞めればいい,死んでしまえばいい,もう直らないなら,この世から消えてしまえ,まずは直してみれば?その腐った考え方を,色んな意味で直す,生き返らせる,少しはbさんの負担も考えてみろよ,大変だぞ・・・それに比べて,自分は,土日も休んで,点検自体もろくに出来ないくせに,お金はほしいと言う,・・・人の指示もろくに聞けない,動けない,注意されてもメモに残さない,メモをノートに毎日書き写さない,書かないから忘れる,また同じことで怒られる←これのくり返し,毎日毎日,申し訳ないと思っているなら変わるだろ,変わって見返そうと思わない,結局自分に甘い,もっと動けるんじゃないか,限界って決めつけてるだけ?・・・自分は何もせずに,ただ○○ごっこをしているだけ,何もしないだけ,見ているだけ,そんなやつに点検はできんだろ,まかせられないだろ?ウソなんかつくやつに,辞めてしまえば?辞めたくないとか言ってるだけ,先輩はやってるのに自分は見ているだけ?そんなやつ辞めろ,死ね,自分を変えろ。
 辞めろやら,死ねやら,言ってたところで,何も変わらないし,よい方法にもいかない,やり直し。
 失敗点
・人の話を聞かずに行動
・動きが遅い
・時間をかけても点検は中途半端
・問題を直す意気込みがない
・指示を全く聞けない
・注意しても直さない
・ムダなミスをして作業をストップさせる
・何で自分が怒られているのかすら分かっていない
・反省しているフリをしているだけ
・ウソを平気でつく

改善
・まず人の話を聞くこと
・何も考えずに発言をしないこと←これがウソにつながる
・清掃はスミズミまで,KSと同じ
・済証はきれいにはがすこと
・やる気を出すこと←作業をテキパキと,素早く行動する

 一度失った信用は当分戻ることはない,仕事であれば尚更,辞表の書き方を練習するべきか?
ケ 9月21日(甲9・42頁)
 一度失った信用は簡単には戻らない。

コ 10月6日(甲8・13頁)
 リーダーは作業しながら報告書も書いている,やっぱり字がきたない,作業が遅い,bさんより「今日使ったムダな時間を返してくれ」,点検以前の問題が多すぎる。

サ 日付け不明(甲8・7頁)
 自分は何をやっても文句(注意)を言われる←自分が悪い,直そうとしないから,真剣にやろうとしないから,←じゃあどうするの?
 →変わらずに続ける×(←10

6現在の現状変わっていない)
 →変わればいい
 →辞めてしまえばいい
 正直な話,二択でしかないと思う,両親に話してみる?

シ 11月10日(甲9・50頁)
 なぜうそをつくのか,なぜサボるのか

ス 日付け不明(甲8・23頁)
 なぜウソをつくのか→自分を良く見せたいから→なぜ?→自分さえ良ければいいと考えているから→なぜ?→他人のことを考えられないから→なぜ?→

セ 日付け不明(甲8・24頁)
 なぜサボるのか→働きたくないから→働くのがめんどうくさいから→仕事はつまらないと思っているから→

ソ 11月22日(甲8・25頁)
 自分みたいなやつは一度赤恥,恥をかかないと変われない,そうしないとどうせ分からない。

タ 11月24日(甲8・25頁)
 話すことは労働感について,自分は仕事中サボったり,ウソをついて先輩に怒られているが,自分は別にいいじゃないかと思っている,それは間違っているのだろうか,先輩は恥をかかないと直らないと言っている,毎日おんなじことを言われて何に対して怒っているのか,分かっているのに直らないのはなぜ?相手も同じなら自分が怒ってやらないといけないのではないか。

(4) その間,dは,7月半ばころ,仕事時間中にeに電話をし,「仕事をやめてもいいか」と尋ねた。そして,「『仕事がはかどらないから車の中にいろ』と言われて今車の中にいるんや」と言い,その後30分から40分ほど,泣きながら話をし,点検をして自分ではちゃんとやっているつもりなのに,後で見るとミスをしていて,ペアで作業をしている人に迷惑がかかり,やり直しなどで時間をとらせることになり,「俺の時間を返せ」と言われたことを告げた。

 秋ころからは,自宅において笑顔がなくなり,いつも疲れたような難しい顔をするようになった。また,帰宅をしてすぐにソファに横になり,食事もとらず,風呂にも入らないでいることが多くなった。
 (甲35,36,60,証人e証言,原告本人供述)

(5) dは,11月29日,本件自殺に使用したロープを購入し,遺書を記載した。同遺書のうち,被告らに関わる部分は以下のとおりである。(甲14,16)
 「aの皆様へ。半年ちょっとという短い期間でしたが,皆様と一緒に仕事ができて楽しかったです。
 社長へ,勝手に行ってしまって申し訳ありません。半年間だけでも,社長の元で勉強させていただいたことを,誇りに思います。半年間ありがとうございました。
 c部長へ,半年間,ご指導いただき,ありがとうございました。役たたずで申し訳ありませんでした。
 bさんへ,多分社員の中で一番迷惑をかけてしまいました。直せと言われ続けていたのに,何も変われなくてごめんなさい,とりあえず私はあなたが嫌いです。大嫌いです。でも,言われ続けていたことに嘘はなかったです。全て私と,私に関わる人たちのために,言われていたのだと思います。」

(6) dには特異な性格傾向や既往症,生活史,アルコール依存症などいずれにおいても特に問題はなかった(甲35,36,証人e証言,原告本人供述)。

(7) dは,12月6日からその週及び翌週と続けて被告bと2人だけでmの現場に行くことになっていた(甲9・54頁,被告b供述38頁)。
 同日午前6時13分に被告会社からの不在着信があり,dは,同14分に折り返し会社に荷電し,被告bと会話し,その後間もなくdは自宅の2階の自室において,カーテンレールにロープをかけ,そこに首をつり,同日午前6時30分ころ,eによって発見された(甲6,15,原告本人供述)。

 (判断)
 上記手帳の記載は,被告bの指導に従って,被告bから受けた指導内容,言われた言葉やこれらを巡っての自問自答が記述されたもので,被告b自身も自分が注意したことは手帳に書いてノートに写すように指導していたことを認めている(被告b供述・23~24頁)。また,証拠(乙7,8)によると,上記アないしタの判明しているすべての日付けが被告bをチームリーダーとして業務に従事した日であることが認められる。8月11日には,当日本社に戻ったのが午後6時半になってしまい,予定より時間がかかったこと,当日の現場である「n」の受託業務料が3万円であること(乙3の83頁,被告b供述・24~26頁)と一致していること等上記記述内容が客観的事実と符合していることが認められる。これらからすると,上記手帳の記載内容は,一部自問自答の部分を含むため,不明瞭な部分があるとはいえ,この記載によると,dは被告bから次のような言葉又はこれに類する言葉を投げかけられたことが認められる。乙8号証,被告b供述中のこの認定に反する部分はこれを採用できない。

 「学ぶ気持ちはあるのか,いつまで新人気分」,「詐欺と同じ,3万円を泥棒したのと同じ」,「毎日同じことを言う身にもなれ」,「わがまま」,「申し訳ない気持ちがあれば変わっているはず」「待っていた時間が無駄になった」「聞き違いが多すぎる」,「耳が遠いんじゃないか」,「嘘をつくような奴に点検をまかせられるわけがない。」「点検もしてないのに自分をよく見せようとしている」「人の話をきかずに行動,動くのがのろい」「相手するだけ時間の無駄」「指示が全く聞けない,そんなことを直さないで信用できるか。」「何で自分が怒られているのかすら分かっていない」「反省しているふりをしているだけ」,「嘘を平気でつく,そんなやつ会社に要るか」「嘘をついたのに悪気もない。」「根本的に心を入れ替えれば」,「会社辞めたほうが皆のためになるんじゃないか,辞めてもどうせ再就職はできないだろ,自分を変えるつもりがないのならば家でケーキ作れば,店でも出せば,どうせ働きたくないんだろう」「いつまでも甘甘,学生気分はさっさと捨てろ」「死んでしまえばいい」,「辞めればいい」「今日使った無駄な時間を返してくれ」

 これらの発言は,仕事上のミスに対する叱責の域を超えて,dの人格を否定し,威迫するものである。これらの言葉が経験豊かな上司から入社後1年にも満たない社員に対してなされたことを考えると典型的なパワーハラスメントといわざるを得ず,不法行為に当たると認められる。なお,被告bがdに対して暴行を振るったことに沿う証拠はない。


以上:6,240文字

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