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セクハラ懲戒処分が重すぎて無効との高裁判断を覆した最高裁判例紹介1

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平成27年 3月 4日:初稿
○セクハラによる懲戒処分としての出勤停止・降格処分について、第一審平成25年9月6日大阪地裁判決が有効としていたものを、第二審平成26年3月28日大阪高裁が、「被上告人らが,従業員Aから明確な拒否の姿勢を示されておらず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたことや,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,本件各行為について上告人から事前に警告や注意等を受けていなかったことなどを考慮すると,懲戒解雇の次に重い出勤停止処分を行うことは酷に過ぎる」として無効としました。

○この大阪高裁判断についての上告審が、平成27年2月26日最高裁判決です。その結論は、次ページで紹介します。最高裁はセクハラ発言を厳しく戒めています。次ページ別紙にセクハラ発言一覧表も掲載しますが、セクハラ発言と糾弾される発言を恒常的にしている私も、ここまでひどい発言は、決して、しておりません(^^;)。

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主  文
原判決中上告人敗訴部分を破棄する。
前項の部分につき,被上告人らの控訴を棄却する。
控訴費用及び上告費用は被上告人らの負担とする。 

理  由
 上告代理人○○○○ほかの上告受理申立て理由について
1 本件は,上告人の男性従業員である被上告人らが,それぞれ複数の女性従業員に対して性的な発言等のセクシュアル・ハラスメント(以下「セクハラ」という。)等をしたことを懲戒事由として上告人から出勤停止の懲戒処分(以下「出勤停止処分」という。)を受けるとともに,これらを受けたことを理由に下位の等級に降格されたことから,上告人に対し,上記各出勤停止処分は懲戒事由の事実を欠き又は懲戒権を濫用したものとして無効であり,上記各降格もまた無効であるなどと主張して,上記各出勤停止処分の無効確認や上記各降格前の等級を有する地位にあることの確認等を求めている事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は,次のとおりである。
(1) 上告人は,水族館の経営等を目的とする株式会社であり,大阪市が出資するいわゆる第三セクターとして,同市港区に所在する水族館(以下「本件水族館」という。)及びこれに隣接する商業施設の運営等を行っている。
 被上告人X1は,平成3年に上告人に入社し,同21年8月から営業部サービスチームのマネージャーの職位にあり,同24年3月当時,上告人の資格等級制度規程(以下「本件資格等級制度規程」という。)に基づき,M0(課長代理)の等級に格付けされていた。
 被上告人X2は,平成4年に上告人に入社し,同22年11月から営業部課長代理の職位にあり,同24年2月当時,本件資格等級制度規程に基づき,M0の等級に格付けされていた。

(2) 上告人の営業部は営業チームとサービスチームで構成されており,営業部の事務室内では,サービスチームの責任者の役割を担うマネージャーである被上告人X1,同チームの複数の課長代理の1人である被上告人X2,売上管理等担当の女性従業員(昭和56年生。以下「従業員A」という。)及び拾得物担当の女性従業員(昭和61年生。以下「従業員B」といい,従業員Aと従業員Bを併せて「従業員Aら」ともいう。)を含む二十数名の従業員が勤務していた。なお,従業員Aは,営業部の事務室の一部を壁で仕切った精算室において,主任のC(以下「C」という。)とともに勤務していた。
 従業員Aは,D社(以下「D社」という。)から上告人に派遣されている派遣社員であり,従業員Bは,D社の従業員として同社が上告人から請け負っている業務に従事していた。

(3) 平成23年当時,上告人の従業員(管理職,正社員,派遣社員等を問わず,上告人の事業所において勤務する者をいう。以下同じ。)の過半数は女性であり,本件水族館の来館者も約6割が女性であった。また,上告人は,職場におけるセクハラの防止を重要課題として位置付け,かねてからセクハラの防止等に関する研修への毎年の参加を全従業員に義務付けるなどし,平成22年11月1日には「セクシュアルハラスメントは許しません!!」と題する文書(以下「セクハラ禁止文書」という。)を作成して従業員に配布し,職場にも掲示するなど,セクハラの防止のための種々の取組を行っていた。

(4)
ア 上告人の就業規則には,社員の禁止行為の一つとして「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」が掲げられ(4条(5)),就業規則に違反した社員に対しては,その違反の軽重に従って,戒告,減給,出勤停止又は懲戒解雇の懲戒処分を行う旨が定められていた(46条1項)。また,社員が「会社の就業規則などに定める服務規律にしばしば違反したとき」等に該当する行為をした場合は,上告人の判断によって減給又は出勤停止に処するものとされていた(46条の3)。

イ セクハラ禁止文書には,禁止行為として「①性的な冗談,からかい,質問」,「③その他,他人に不快感を与える性的な言動」,「⑤身体への不必要な接触」,「⑥性的な言動により社員等の就業意欲を低下させ,能力発揮を阻害する行為」等が列挙され,これらの行為が就業規則4条(5)の禁止する「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」に含まれることや,セクハラの行為者に対しては,行為の具体的態様(時間,場所(職場か否か),内容,程度),当事者同士の関係(職位等),被害者の対応(告訴等),心情等を総合的に判断して処分を決定することなどが記載されていた。上告人において,セクハラ禁止文書は,就業規則4条(5)に該当するセクハラ行為の内容を明確にするものと位置付けられていた。

ウ 平成24年2月及び3月当時の本件資格等級制度規程には,M0(課長代理),S2(係長,主任)等の等級が定められ,社員が精神若しくは身体上の故障のため当該等級に該当しないとみなされたとき,等級に格付けされた後も職務遂行能力が甚だしく低く当該等級への格付けが不適当と認められたとき,又は就業規則46条に定める懲戒処分を受けたときは,社長,専務取締役及び総務部長により構成される審査会における降格に係る審査を経て降格を相当とされた社員につき,社長が降格の決定をする旨が定められていた。

(5) 被上告人らは,従業員Aらに対し,平成22年11月頃から同23年12月までの間に,少なくとも別紙1(被上告人X1の行為一覧表)及び同2(被上告人X2の行為一覧表)のとおりの行為(以下「本件各行為」という。)をした。
 なお,被上告人X2は,以前から女性従業員に対する言動につきD社内で多数の苦情が出されており,また,平成22年11月に営業部に異動した当初,上司から女性従業員に対する言動に気を付けるよう注意されていた。

(6) 上告人は,平成23年12月,従業員Aらから,被上告人らから本件各行為などのセクハラ行為等を受けた旨の申告を受け,被上告人らから事情聴取等を行った上で,次のア及びイのとおり,被上告人らに対し,本件各行為などのセクハラ行為等を懲戒事由として,それぞれ出勤停止処分をした。

ア 上告人は,被上告人X1の行為がセクハラ禁止文書の禁止行為(前記(4)イの①,③及び⑥)に該当し,就業規則4条(5)「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」に当たるとして,同被上告人に対し,平成24年2月17日付けで,就業規則46条の3の規定により,同月18日から30日間(同年3月18日まで)の出勤を停止する旨の懲戒処分をした。

イ 上告人は,被上告人X2の行為がセクハラ禁止文書の禁止行為(前記(4)イの①,③,⑤及び⑥)に該当し,就業規則4条(5)「会社の秩序又は職場規律を乱すこと」に当たるとして,同被上告人に対し,平成24年2月17日付けで,就業規則46条の3の規定により,同月18日から10日間(同月27日まで)の出勤を停止する旨の懲戒処分をした。
 なお,従業員Aは,被上告人らの本件各行為が一因となって,平成23年12月末日限りでD社を退職し,本件水族館における勤務を辞めた。従業員Aは,被上告人らのセクハラ行為等について,被上告人らによる報復や派遣元であるD社の立場の悪化を懸念し,被上告人らに直接抗議したり上告人に訴えたりすることを控えていたが,本件水族館での勤務を辞めるに当たり,職場に残る従業員Bや後任者のことを考えて,従業員Bとともに上告人に対する上記の被害の申告をしたものであった。

(7)
ア 上告人は,平成24年2月23日に審査会を開いた上で,被上告人X1が上記(6)アの出勤停止処分を受けたことを理由に,同被上告人の等級をM0からS2に1等級降格することを決定し,同年3月19日付けで,その旨を同被上告人に通知した。また,上告人は,同日付けで,同被上告人を営業部サービスチームのマネージャーから解任し,施設部施設チームの係長に任命した。

イ 上告人は,平成24年2月23日に審査会を開いた上で,被上告人X2が上記(6)イの出勤停止処分を受けたことを理由に,同被上告人の等級をM0からS2に1等級降格することを決定し,同月28日付けで,その旨を同被上告人に通知した。また,上告人は,同日付けで,同被上告人を総務部連絡調整チームの係長に任命した。

(8) 被上告人らは,それぞれ上記(6)及び(7)の出勤停止処分及び降格により,次のとおり給与及び賞与の減額等を受けた。
ア 被上告人X1は,上記(6)アの出勤停止処分により,平成24年3月分及び同年4月分の給与につき合計49万2933円,同年6月分の賞与につき15万5459円を減額されるとともに,同年4月に行われた基本給の一つである年齢給の昇給(1490円の増額)を受けられなかった。また,同被上告人は,上記(7)アの降格により,同年3月から課長代理以上の管理職に支給される管理職手当(同月まで月額6万9000円,同年4月から月額5万5000円)及び同年4月に新設されたマネージャー手当(月額2万円)の支給を受けられなくなり,基本給の一つである職能給がM0の26号俸からS2の36号俸へと月額1万6600円減額された。

イ 被上告人X2は,上記(6)イの出勤停止処分により,平成24年3月分の給与につき17万2774円,同年6月分の賞与につき15万5459円を減額されるとともに,同年4月に行われた年齢給の昇給(1490円の増額)を受けられなかった。また,同被上告人は,上記(7)イの降格により,同年3月から管理職手当(同月まで月額6万9000円,同年4月から月額5万5000円)の支給を受けられなくなり,職能給がM0の19号俸からS2の36号俸へと月額6800円減額された。

3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断して,被上告人らの各出勤停止処分の無効確認請求や各降格前の等級を有する地位にあることの確認請求等を認容すべきものとした。
(1) 前記2(5)のとおり被上告人らは本件各行為を現に行ったものと認められるところ,被上告人らがこれらの行為を行ったことは,セクハラ禁止文書の禁止するセクハラ行為など会社の秩序又は職場規律を乱すもの(就業規則4条(5))に当たり,会社の服務規律にしばしば違反したものとして,出勤停止等の懲戒事由(就業規則46条の3)に該当する。

(2) しかし,被上告人らが,従業員Aから明確な拒否の姿勢を示されておらず,本件各行為のような言動も同人から許されていると誤信していたことや,被上告人らが懲戒を受ける前にセクハラに対する懲戒に関する上告人の具体的な方針を認識する機会がなく,本件各行為について上告人から事前に警告や注意等を受けていなかったことなどを考慮すると,懲戒解雇の次に重い出勤停止処分を行うことは酷に過ぎるというべきであり,上告人が被上告人らに対してした本件各行為を懲戒事由とする各出勤停止処分は,その対象となる行為の性質,態様等に照らして重きに失し,社会通念上相当とは認められず,権利の濫用として無効であり,上記各処分を受けたことを理由としてされた各降格もまた無効である。


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