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妄想オッパイグランプリにパブリシティ権を認めなかった判例紹介1

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平成27年 2月 5日:初稿
○パブリシティ権(right of publicity)とは、人に備わっている、顧客吸引力を中核とする経済的な価値(パブリシティ価値)を保護する権利を言い、プライバシー権、肖像権と同様に、人格権に根ざした権利と解説され、パブリシティ権を侵害するか否かは、その「使用が他人の氏名、肖像権の持つ顧客吸引力に着目し、もっぱらその利用を目的とするものであるかどうかにより判断すべきである」とされています(東京地判平成12年2月29日判時1715号76頁)。

○女性芸能人8人が、「週刊実話」に無断で合成写真を掲載され、パブリシティ権等を侵害されたとして、1人当たり1100万円の損害賠償を求めていたところ、平成27年1月29日東京地裁判決(裁判所ウェブサイト)は、、「肖像写真を無断で利用して意図的に露骨な性的表現をし、肖像権などを侵害した」として、1人あたり80万円、計640万円の損害賠償を認めました。原告側が主張していた、芸能人などが写真などから生じる利益を独占できる「パブリシティー権」の侵害については、「写真の顧客誘引力を利用したとはいえない」として認められませんでした。

○当事務所に依頼されるような案件ではありませんが(^^;)、NHK大河ドラマ出演経験者等有名芸能人の起こした裁判で備忘録とします。

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主  文
1 被告株式会社日本ジャーナル出版,同J及び同Kは,連帯して,原告らそれぞれに対し80万円及びこれに対する平成25年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2 原告らの同被告らに対するその余の請求及び被告Iに対する請求をいずれも棄却する。
3 訴訟費用は,原告らと被告株式会社日本ジャーナル出版,同J及び同Kの間ではこれを15分し,その14を原告らの,その余を同被告らの各負担とし,原告と被告Iの間ではすべて原告らの負担とする。
4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 

事実及び理由
第1 請求

1 被告株式会社日本ジャーナル出版(以下「被告会社」という。)は,別紙雑誌目録記載の雑誌(以下「本件雑誌」という。)を印刷し,販売してはならない。
2 被告株式会社日本ジャーナル出版は,本件雑誌を廃棄せよ。
3 被告らは,連帯して,原告らそれぞれに対し1100万円及びこれに対する平成25年11月8日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要
 本件は,被告会社が,原告らの肖像写真に裸の胸部(乳房)のイラストを合成した画像を用いた記事(以下「本件記事」という。)を掲載した本件雑誌を出版し,販売したことについて,原告らが,原告らのパブリシティ権並びに人格権及び人格的利益が侵害されたと主張して,(1) 被告会社に対し,本件雑誌の印刷及び販売の差止め並びに廃棄を,(2) 被告会社,その代表取締役であった被告I(以下「被告代表者」という。),発行人である被告J(以下「被告発行人」という。)及び編集人である被告K(以下「被告編集人」という。)に対し,被告発行人及び被告編集人につき民法709条,被告代表者につき民法709条又は会社法429条1項,被告会社につき民法709条,715条又は会社法350条に基づく損害賠償金並びにこれに対する不法行為の後の日である平成25年11月8日(本件雑誌の販売開始日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の連帯支払を求めた事案である。

1 前提事実(当事者間に争いのない事実並びに後掲の証拠及び弁論の全趣旨により容易に認められる事実。ただし,書証の枝番の記載は省略する。以下同じ。)
(1) 当事者

ア 原告らは,いずれもテレビ番組,映画等に出演する,写真集を出すなどして幅広く芸能活動をしている芸能人である。(甲3)
イ 被告会社は書籍,雑誌及び新聞の出版及び販売等を業とする出版社,被告代表者は本件雑誌の発売当時被告会社の代表取締役であった者,被告発行人は本件雑誌の発行人,被告編集人は本件雑誌の編集人である。

(2) 本件雑誌の出版等(甲18)
ア 被告会社は,別紙雑誌目録記載の本件雑誌を出版し,平成25年11月7日以降,定価380円で販売した。
イ 本件雑誌は,表紙を含めて全体で248頁(うち広告が46頁)のB5判(縦約25.7cm,横約18.2cm)の週刊誌である。本件雑誌の巻頭,巻末及び中間の数か所にはカラー印刷のグラビア,記事,広告等が掲載されており,その余の部分にはモノクロ印刷のグラビア,記事,広告等が掲載されている。本件雑誌には,芸能界やスポーツ界の話題を取り上げる記事のほか,女性芸能人等の水着写真やヌード写真のグラビア,男女間の性を取り上げた記事等が複数掲載されており,表紙にはそのようなグラビア,記事等の見出しが複数掲載されている。ただし,表紙に本件記事に関する記載はなく,目次においても本件記事の見出しは特段目立つように記載されていない。

(3) 本件記事の内容(甲18)
 本件雑誌巻末のカラーグラビア(裏表紙を除いて28頁に及ぶ。)の前にはモノクロ印刷のグラビア部分が4頁あり,その冒頭の3頁にわたり,見出しを「勝手に品評!!」「芸能界妄想オッパイグランプリ」とする本件記事が掲載されている。
 本件記事は,上記見出しに続き,「手の届かない美女だからこそ,エッチな妄想は膨らむばかり。そこで,本誌が勝手に検証した結果をもとに,彼女たちのオッパイを大公開します。禁断のヌードを股間に焼き付けろ!」との文章と,原告らを含む女性芸能人(1頁目が6名,2頁目が10名,3頁目が9名。合計25名)の肖像写真(そのほとんどは上半身のみの写真であり,大きさは縦6cm,横4cmのものから縦12.2cm,横10.7cmのものまである。)に裸の胸部(乳房)のイラスト(原告らは写真であると主張するが,証拠上明らかにイラストであると認められる。甲18,乙1,2)を合成し,各芸能人の氏名と,記事執筆者による短いコメント,胸の推定サイズ並びに評価項目を「感度」,「母性本能」,「パイズリ具合」,「成長度」及び「張り」とする5角形のレーダーチャートを付したものを並べて掲載したものである。
 本件記事のうち,原告らの上記肖像等が掲載された位置,大きさ及び内容は,別紙原告らの記事目録に記載のとおりである(なお,原告らのうち芸名を用いる者については,以下,芸名で表記する。)。

2 争点
(1) パブリシティ権侵害の成否
(2) 人格権及び人格的利益の侵害の成否
(3) 被告らの責任
(4) 損害の額
(5) 差止め及び廃棄の必要性

3 争点に関する当事者の主張
(1) パブリシティ権侵害の成否

 (原告らの主張)
 芸能人には,その固有の名声,社会的評価,著名性,それらがもたらす顧客吸引力等の商業的・経済的価値(パブリシティ価値)があり,当該芸能人に無断でその顧客吸引力を表す肖像等を利用する行為は,パブリシティ権の侵害として当該芸能人に対する不法行為を構成する。
 原告らは,本件雑誌が出版,販売された当時から,いずれも写真集等に登場し,テレビ番組に出演するなど固有の名声,社会的評価を有する芸能人であって,パブリシティ権の主体となり得る著名性を有していた。
 本件記事における原告らの氏名や肖像の使用態様は,専ら原告らの肖像を裸の胸とともに鑑賞させることを目的としていることは疑いようがなく,肖像等それ自体を独立して鑑賞の対象となる商品等として使用するものであり,専ら肖像等の有する顧客吸引力の利用を目的とする場合に相当する。
 したがって,本件雑誌を出版,販売する行為は,原告らのパブリシティ権を侵害する。

 (被告らの主張)
 本件記事において,肖像等それ自体が「独立して鑑賞の対象となる商品」になっていないことは明らかである。
 本件記事における原告らの肖像の胸部は,画像編集・加工ソフトにより作画したイラストをパーツとしてはめ込んだものであり,服を着た状態で胸だけが露出するという不自然なものとなっていることや胸部の輪郭線が太く実線であることからして全く稚拙なものであり,「妄想」等の添え書きがあることからしても,このようなものを読者は本物の乳房とは思わない。このような「合成されていることがわかりやすいもの」は鑑賞の用に耐えるものでもない。個々の写真の大きさを見ても,B5判の1頁に9名又は10名の写真が組み込まれているが,週刊誌のグラビア写真として用いられる場合,1頁に何枚も写真を掲載することはまれであり,本件記事が「ミニ写真集」というような性格を有することもない。
 顧客が本件記事を目当てに本件雑誌を購入することはかなりの程度限定されるし,被告らに顧客吸引力を利用する目的がなかったことは明らかであるから,本件雑誌の出版,販売は原告らのパブリシティ権を侵害しない。

(2) 人格権及び人格的利益の侵害の成否
 (原告らの主張)
 本件記事は,読者の性的な好奇心や関心を呼び起こさせる侮辱的で卑猥な内容の記述とともに,各原告の肖像写真に,裸の胸の写真あるいは精巧に作成されたイラストを合成した写真を無断で掲載するものであり,女性であれば当然に羞恥心を覚え,自尊心を傷つけられるとともに強く不快に思い,名誉感情を著しく害するものである。
 このような態様での氏名及び肖像の無断掲載は,原告らが芸能人であるからといって受忍しなければならないものではなく,原告らの人格権としての氏名権,肖像権及び名誉権や,人格的利益としての名誉感情を侵害するものとして不法行為法上違法となる。

 (被告らの主張)
 前記(1)(被告らの主張)のとおり,原告らの肖像に合成された胸部のイラストを読者が本物の乳房等と誤解するおそれは皆無である。
 また,原告らは芸能人としてメディアに露出しており,ヌード写真を公にしていないとしても,水着や露出度の高い服装で女性的なプロポーションをある意味「売り」にし,写真集を出したり,テレビ番組,映画等に出演したりして自らのファンを獲得しており,一般女性の羞恥心ないし社会生活上の受忍限度と尺度を同じにして判断することはできない。芸能人は,メディアに取り上げられて著名性を増幅させる過程で,「社会生活上」ではなく「芸能活動をする上」での受忍限度を負っているというべきである。

 原告らは,その芸能活動において,ファンの性的な好奇心や関心を呼び起こさせることはもとより,妄想をかき立てることも承知の上で,上記のような写真集やビデオを販売している。また,少なくとも,本件記事において原告らの写真に添えられた「コメント」や「見出し」は原告らの従前の芸能活動と関連するものであり,まさに芸能活動をする上での受忍限度の範囲内というべきである。さらに,胸の推定サイズについては,従前スリーサイズは公開されており,芸能記事でもよく書かれているところである。レーダーチャートも,細かな記載すぎて気が付かない読者がほとんどであると考えられるし,妄想自体を違法といわない限り,これをランク付けすることが違法となるものではない。
 そうすると,本件記事における氏名及び肖像の無断掲載は違法でなく,仮に違法と評価し得る部分があるとしても,タレントとして芸能活動をする上での受忍限度の範囲内にあり,原告らの人格権及び人格的利益の侵害はないというべきである。

(3) 被告らの責任
 (原告らの主張)
ア 被告代表者,被告発行人及び被告編集人について
(ア) 被告代表者には被告会社の雑誌の編集方針を決定する権限があり,被告発行人及び被告編集人には雑誌の編集,発行の方針を現場で決裁する権限があるから,掲載される芸能人らのパブリシティ権,人格権及び人格的利益を侵害しないように編集方針を決定すべき義務を負っている。
 上記被告らは本件記事がパブリシティ権,人格権等を侵害することを容易に認識できたはずであり,原告ら芸能人の所属する芸能プロダクション等を構成員とする団体と被告会社等の雑誌社を構成員とする団体が作成した肖像権,パブリシティ権等の権利処理に関するガイドラインがあることからしても,上記被告らには故意又は過失がある。

(イ) さらに,被告代表者については,被告会社の業務全般の執行責任者として,被告会社における出版物の発行に当たって権利侵害を防止するための実効性のある体制を整備すべき義務があるにもかかわらず,何ら実効的な防止策を講じていないから,上記不法行為に加え会社法429条1項に基づく損害賠償責任を負う。

イ 被告会社について
 被告会社は,原告らのパブリシティ権,人格権及び人格的利益を侵害する本件記事の掲載された本件雑誌を法人として出版,販売したものであり,法人としての不法行為責任を負う。
 また,被告代表者,被告発行人及び被告編集人による上記不法行為につき,民法715条による使用者責任又は会社法350条による代表者の行為についての責任を負う。

 (被告らの主張)
 本件記事による不法行為の成否は一義的に明らかなものではなく,被告代表者,被告発行人及び被告編集人に故意又は過失は認められない。また,原告らが援用するガイドラインは紙媒体の雑誌には適用がないし,これに従うかどうかは各出版社,各編集部の任意である。
 したがって,本件記事の掲載につき被告らに責任原因はない。

(4) 損害の額
 (原告らの主張)
ア パブリシティ権の侵害に係る損害額は,民事訴訟法248条を適用して認定すべきであり,以下のとおり,原告ごとに合計500万円となる。
(ア) 被告らは,本件記事の内容が原告らのキャラクターイメージに反するものであり,本件雑誌の出版がパブリシティ権侵害になることを十分に認識しつつ確信犯的に本件雑誌を出版したものである。かかるパブリシティ権の毀損による損害額は,原告ごとに少なくとも400万円である。

(イ) 原告らにおいて本件記事のような内容の記事の掲載を許諾することはあり得ないが,本件雑誌が23万部も発行されており,被害が甚大であること等に鑑みれば,本件記事に関する原告らのパブリシティ権の使用料相当額は,原告ごとに少なくとも100万円である。

イ 本件記事の掲載により原告らの人格権及び人格的利益が侵害されたことによる慰謝料の額は,本件記事の内容に加え,本件雑誌の発行部数や,近時人格権の重要性がますます増していることに鑑みれば,原告ごとに少なくとも500万円となる。

ウ 本件訴訟の弁護士費用は原告ごとに少なくとも100万円である。

 (被告らの主張)
 争う。なお,パブリシティ権の使用料相当額に関して,被告会社は,本件雑誌の本件記事が掲載された部分にグラビアを掲載した場合,巻末で白黒であることから数万円程度の掲載料しか支払わない。本件では原告ら8名で実質1頁しか紙面をカバーしていないから,原告らに支払う額は数万円が限度である。

(5) 差止め及び廃棄の必要性
 (原告らの主張)
 被告会社は,本件雑誌をバックナンバーとしていまだに販売しているから,本件雑誌の印刷販売の差止め及び廃棄の必要性がある。

 (被告らの主張)
 本件雑誌は週刊誌であり,発売から1週間後,次の号が店頭に並ぶと同時に取次会社により回収され,被告会社に戻ることなく破棄されている。被告会社に在庫があるものは直近の数号分でごくわずかであり,本件雑誌の在庫は既になく,バックナンバーとして販売していない。したがって,差止め及び廃棄の請求は認められない。


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