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ボロもうけ利益返還を命じた胸のすく最高裁判決紹介

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平成26年10月31日(金):初稿
○A社が無限連鎖講の防止に関する法律及び出資法に違反する事業を行い、その後、債務超過となって破産手続開始決定がなされ、Xが破産管財人になりました。Xが、A社事業内容を調査したところ、会員の中に約818万円の出資で約2951万円も配当を受け、差額約2133万円利益を得ていたYが居たことを発見しました。そこで破産管財人Xは、Yに対し、A社事業は公序良俗に反し無効であるとして、この利益約2133万円を不当利得として返還請求の訴えを提起しました。

○ところが一審平成24年1月27日東京地裁判決、二審平成24年6月6日東京高裁判決、いずれも、A社事業は無限連鎖講に当たり、同社のYに対する金銭の交付はいずれも法律上の原因を欠くとしつつ、本件不当利得返還請求権は、遅くともA社からYに最後の配当金等の交付が行われた時点には発生しており、破産開始決定前からA社に帰属していたが、A社自身はYに対し、不法原因給付により返還請求できない性質を有していたものであるから、A社破産管財人であるXが破産財団の管理処分権に基づき同請求権を行使したからといってYに返還を請求することが許されないとして請求を棄却していました。

○確かに民法不法原因給付の理屈を形式的に当てはめると一審・二審判決の結論になります。しかし、実態としては全く不公平です。そこでXが上告していましたが、平成26年10月28日最高裁判決は、当該給付が不法原因給付に当たることを理由として拒むことは信義則上許されないとの単純明快な理屈でXの主張を認めました。胸のすくような判決です。以下、補足意見を除いた判決全文を紹介します。

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主 文
1 原判決を破棄し,第1審判決を取り消す。
2 被上告人は,上告人に対し,2133万2835円及びこれに対する平成23年6月4日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 訴訟の総費用は被上告人の負担とする。 

理 由
 上告人及び上告代理人○○○○ほかの上告受理申立て理由について
1 本件は,破産者株式会社A(以下「破産会社」という。)の破産管財人である上告人が,被上告人と破産会社との間の契約が公序良俗に反して無効であるとして,当該契約により破産会社から金銭の給付を受けた被上告人に対し,不当利得返還請求権に基づき,上記の給付額の一部及びこれに対する遅延損害金の支払を求めた事案である。

2 原審の適法に確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1) 破産会社は,平成22年2月頃から,金銭の出資及び配当に係る事業(以下「本件事業」という。)を開始した。本件事業は,専ら新規の会員から集めた出資金を先に会員となった者への配当金の支払に充てることを内容とする金銭の配当組織であり,無限連鎖講の防止に関する法律2条に規定する無限連鎖講に該当するものであった。

(2) 被上告人は,平成22年3月,破産会社と本件事業の会員になる旨の契約を締結した。被上告人は,同年12月までの間に,上記契約に基づき,破産会社に対して818万4200円を出資金として支払い,破産会社から2951万7035円の配当金の給付を受けた(以下,上記配当金額から上記出資金額を控除した残額2133万2835円に係る配当金を「本件配当金」という。)。

(3) 破産会社は,本件事業において,少なくとも,4035名の会員を集め,会員から総額25億6127万7750円の出資金の支払を受けたが,平成23年2月21日,破産手続開始の決定を受け,上告人が破産管財人に選任された。上記破産手続においては,本件事業によって損失を受けた者が破産債権者の多数を占めている。

3 原審は,上記事実関係の下において,本件配当金の給付が不法原因給付に当たり,上告人は民法708条の規定によりその返還を請求することができないと判断して,上告人の請求を棄却すべきものとした。

4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
 本件配当金は,関与することが禁止された無限連鎖講に該当する本件事業によって被上告人に給付されたものであって,その仕組み上,他の会員が出えんした金銭を原資とするものである。そして,本件事業の会員の相当部分の者は,出えんした金銭の額に相当する金銭を受領することができないまま破産会社の破綻により損失を受け,被害の救済を受けることもできずに破産債権者の多数を占めるに至っているというのである。このような事実関係の下で,破産会社の破産管財人である上告人が,被上告人に対して本件配当金の返還を求め,これにつき破産手続の中で損失を受けた上記会員らを含む破産債権者への配当を行うなど適正かつ公平な清算を図ろうとすることは,衡平にかなうというべきである。仮に,被上告人が破産管財人に対して本件配当金の返還を拒むことができるとするならば,被害者である他の会員の損失の下に被上告人が不当な利益を保持し続けることを是認することになって,およそ相当であるとはいい難い。
 したがって,上記の事情の下においては,被上告人が,上告人に対し,本件配当金の給付が不法原因給付に当たることを理由としてその返還を拒むことは,信義則上許されないと解するのが相当である。


5 以上によれば,上記のような点を考慮することなく,上告人の請求を棄却した原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は,この趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,上記事実関係及び上記4に説示したところによれば,本件配当金に相当する2133万2835円及びこれに対する返還の催告後である平成23年6月4日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める上告人の請求には理由があるから,これを棄却した第1審判決を取り消し,同請求を認容すべきである。
(中略)
 (裁判長裁判官 木内道祥 裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官 山崎敏充) 

以上:2,506文字

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