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違法収集証拠に関する平成10年5月29日東京地裁判決紹介2

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平成25年 8月19日(月):初稿
○「違法収集証拠に関する平成10年5月29日東京地裁判決紹介1」の続きです。
 判決は、不貞行為開始時期についての、被告側の弁解について、非常識、非合理、不自然と厳しく批判しています。

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2 原告本人の供述(甲六の陳述書を含む。他の人証について同じ。)、並びに弁論の全趣旨によれば、原告は、水道料金の領収書から被告の氏名を知り、その住所を捜し出し、平成9年8月10日の深夜から早朝にかけて、被告のアパートの前で見張っていたことが認められ、午前5時ころ、被告と春子が一緒に被告のアパートから出てきたことは当事者間に争いがない。

 この点について、被告は、被告が前日深夜から被告方で春子のほかいつもの飲み友達と談笑するなどした後、春子を送るためアパートから出てきたにすぎないと主張するが、被告の右主張の真否を判断するためには、物証がない以上、汚染された証人から真実の供述を得るには、被告の主張する関係者を全員一堂に喚問し、各自隔離のうえ、尋問をする必要があるが、被告は、そのうち女性のみ証人として申出しているにすぎず、不十分である。

 仮に、被告の主張するとおりであるとすると、被告及び春子は、狭いワンルームのマンションにおいて、男女4人が、深夜から明け方まで、数時間にわたって、酒を飲み、談笑していたというのであるから、隣室等の住人に多大な迷惑をかけているはずであり、分別盛りの齢40歳前後の社会人の行為としては極めて非常識で、あまりにも考えにくい愚行である。2人が早朝連れ立って出て来たその直前に、被告と春子との間に情交関係があったか否かについて、当裁判所としては、これをいずれとも決することを避けるが、いずれにしても、被告と春子との不倫行為の存在を推認させる間接事実であることに変わりはない。

3 原告本人の供述、並びに弁論の全趣旨によれば、二人の姿を現認した原告は、2人に声をかけることなく、一足先に自宅に戻り、春子の帰りを待ち、春子を大声で難詰すると、春子から、いつもの答えが返ってきたことが認められる。しかしながら、春子が被告との関係を白状したとの原告主張の点は、これを認めるに足りる的確な証拠はない。

4 原告は、同日の早朝に春子を連れて被告方に赴き、そこで、被告と初めて会い、原告が被告に対し「どういうことだ」と問うたこと、原告が先に1人で帰ったことは、いずれも当事者間に争いがない。

 そこで、その際の原告と被告及び春子とのやりとりについてみるに、原告本人は、本人尋問において、原告の「どういう関係か」との質問に対し、被告は「見てのとおりだ」と答え、「どういうつもりだ」との質問に対し、被告が「本気だ」「あなたは春子を幸せにできるか」「一緒になることも考えている」などと言ったことから、原告は、もう2人はできているな、もう負けだなと思い、言い返すことばもなく、春子に対し「お前はどうなのだ」と言ったところ、春子は「まだわからない」と答えたと供述している。

 被告本人及び証人春子は、尋問において、原告本人の右の供述の一部を否定するが、いずれも原告本人の供述を否定するにとどまっているため、原告が被告及び春子を問詰したことは明らかであるのに、これに対する被告及び春子の対応がどうであったのかについて、単に不明とならざるを得ない。仮に、被告が春子との関係を否定していれば、2人の不倫行為を確信している原告とこれを否定する被告との間に激しい対峙応酬があったはずであるのに、そのような激しいやりとりがなかったことは、原被告の本人の供述及び証人春子の供述によっても明らかである。

 被告は、原告が言い返さなかったという供述が不合理で、通常人であればとらない態度であるかのごとく主張するようであるが、被告が不倫関係を認めるといういわば開き直った態度をとったことにより、原告としては、もはや問詰することはなくなったといえるのであるから、原告がそれ以上の言動に出るとしたら、もはや暴言・暴力などしか考えることができず、原告本人の供述する右の態度には不自然・不合理な点はないというべきである。
 そうすると、原告と被告及び春子とのやるとりは、原告本人が供述しているとおりに認定するのが相当である。


三 請求原因五の事実(春子の家出)について
1 平成9年8月17日の夜、春子が子供2人を連れて被告方を訪れ、その後現在に至るまで被告が春子及びその子供2人と同居している事実は、当事者間に争いがない。

 被告は、この点について、原告が春子と子供2人の生活の面倒を見ず、また、春子と子供2人も他に行くところがないことから、気の毒に思い、やむなく同居を容認し、その生活の面倒を見ているにすぎないと主張するが、証人春子及び被告本人の各供述によっても、被告と春子親子が同じアパートの二階の広い部屋(2DK)に移り住んだ平成9年11月以降に初めて、被告と春子は情交関係に入ったとされており、単身生活者である被告が、子連れとはいえ、既に夫である原告に疑われていることを認識しながら、その女性を自分の住居に住まわせることは、軽率極まりなく、右の出来事も、被告と春子とはそれまでに既に相当進んだ男女関係にあったと推認させる間接事実である。

 この点に関する被告の弁解は、一人前の社会人のいうべき弁解とはとうていいうことはできない(もっとも、被告本人は、本人尋問においては、軽率な行為であったと供述している。)

2 甲4、5、被告本人の供述によれば、被告は、昭和38年2月10日の生まれであり、昭和58年6月4日にOと婚姻し、2人の男児をもうけたが、平成6年4月11日に調停離婚をしたこと、同年6月13日にSと婚姻し、Sの2人の男児と養子縁組をしたが、平成9年9月2日、協議離婚をしたことが認められる。なお、被告本人の供述によれば、被告は、二度目に結婚したSともかなり早くから不仲になり、早急に家を出るように言われていたが、住む住居を確保するには、平成9年6月に支給されるボーナスでその資金に当てるほかないため、結局、同年7月4日にSのもとから出たが、それまでの長い間、家庭内別居を続けていたことが認められる。

3 請求原因六の事実(離婚調停の申立て及びその不調等)は当事者間に争いがない。


以上:2,612文字

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