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無断録音証拠能力認定昭和46年4月26日東京地裁判決紹介2

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平成25年 8月10日(土):初稿
○「無断録音証拠能力認定昭和46年4月26日東京地裁判決紹介1」の続きです。
今回は、裁判所の認定理由ですが、この中で「甲第6号証、同第14号証の証拠能力(証拠適格性)につき判断する。」で無断録音された録音テープの内容を反訳した書面についての証拠能力について判断しています。

○このケースでは、話した本人の面前で直接録音したのではなく、会談の行われた隣室で、いわば盗聴とも言える形態で無断録音しており、違法性が高いとも評価出来ます。しかし、その会談内容は、特に会談の当事者以外に聞き取られまいと意図した形跡がないとして、その会談内容の秘密性を吟味して、「公序良俗に反し違法に収集されたものであつて、これにもとづいて作成された証拠に証拠能力を肯定することが社会通念上相当でないとするにはあたらない。」と結論付けています。無断録音の違法性については、かなり緩やかに解釈しているように思えます。

○「無断録音された録音テープの証拠能力-厳しい判例紹介」での昭和46年11月8日大分地裁判決(判時656号82頁)の立場では、「対話の相手方の同意のない無断録音テープは不法手段で収集された証拠と言うべきで、法廷においてこれを証拠として許容することは訴訟法上の信義則、公正の原則に反するもの」となり、無断録音テープの内容を示す本件甲第6、14号証いずれも証拠としては採用されないと思われます。

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理  由

1 被告D正行本人尋問の結果、証人Hの証言、および弁論の全趣旨によれば、請求の原因一、1の(一)ないし(10)記載の各期日に、訴外Eが被告Dに対し同所記載の各金員を貸し付けたことを認めることができ、甲第1号証(被告Dの委任状)中「債権者H」との記載、甲第2号証(昭和41年1月10日被告D振出の約束手形)中「受取人L」との記載、甲第四号証の一(契約書案)中「訴外Hを債権者とする」趣旨の記載、甲第七号証(被告D作成の念書)中「被告D経由にて訴外○○株式会社および同Gが訴外Eに対して債務を負担している」趣旨の記載は、これをもつて直ちに前認定を覆すに足りず、他に右認定を覆すに足る証拠はない。

2 請求の原因1、2記載の事実中、従前の債務の当事者について被告らはこれを否認するが、右1認定のとおり従前の貸借当事者は訴外Eおよび被告Dであり、その余の点につき当事者間に争いがない。

3 抗弁1、の1および2記載の各事実は当事者間に争いがない。

4 以上の認定事実によれば、
(一) 抗弁1、1記載の各支払にかかる利息金中、利息制限法所定の最高限の利息(請求の原因1、1の(一)、(二)、(七)、(九)、(10)の各貸付金については年1割8分、同(三)ないし(六)、(八)の各貸付金については年1割5分)超過分はそれぞれその元本の支払いに充当されるものというべく、右(一)ないし(10)の各貸付金につきそれぞれ右の充当関係を計算すれば、別紙計算表(その一)の(一)ないし(10)のとおりとなり、昭和40年11月12日当時、被告Dは訴外Eに対し右(一)ないし(10)の各借入金債務合計金551万9795円15銭の債務を負担していたものというべきである(別紙計算表(その二)(一)参照。)。

(二) 従つて、前認定の昭和40年11月12日締結にかかる訴外E、被告D間の準消費貸借契約は右金551万9、795円15銭の返還債務を目的とする限度で有効であつたというべく、これに対する利息制限法所定の最高限の利息は年1割5分であるから、前認定の抗弁1、2記載の各支払利息金中これを越える部分は右準消費貸借契約に基づく債務の元本の支払に充当されるものというべく、別紙計算表(その二)(二)記載のとおり元本の支払いに充当されて、被告Dは訴外Eに対し昭和41年1月31日当時金530万2、951円75銭の元本およびこれに対する支払期限後(訴状送達の翌日)である昭和42年3月6日以降約定による日歩八銭二厘以内である年五分の割合による遅延損害金の支払義務があつたものというべきである。

二 そこで詐害行為の成否につき判断する。
1 被告Bが、昭和41年4月22日、被告Dから本件不動産を譲受けて、同月23日、右につき所有権移転登記を経由した事実は当事者間に争いがない。

2 甲第6号証、同第14号証の証拠能力(証拠適格性)につき判断する。
 証人M、同Nの各証言によれば、昭和41年7月18日被告Dが訴外E方を訪れ、同人宅で訴外E、同人の子たる原告A、原告Aの妻たる訴外Hと本件事件について会談した際、原告Aの子たる訴外Mにおいて右会談の行なわれた部屋の隣室で右会談の内容を被告Dに断らないままにテープレコーダーにより録音し、後日訴外Mにおいて右録音テープを反訳して甲第六号証を作成したものであること、しかして更に後日、訴外Nにおいて右テープを新たに別のテープに吹き替えて当該新テープを反訳し(但し一部は要約し)て甲第14号証を作成したものであることが認められ、他に右認定に反する証拠はない。

 右によれば、右録音テープに録取された会談の内容は、本件事件の当事者間で本件事件について質疑がなされた際にこれを一方当事者側において録取したものであり、特に会談の当事者以外にききとられまいと意図した形跡はないから、右録取に際し他方当事者の同意を得ていなかつた一事をもつて公序良俗に反し違法に収集されたものであつて、これにもとづいて作成された証拠に証拠能力を肯定することが社会通念上相当でないとするにはあたらない。とすれば、甲第六号証、第14号証もその証拠能力を否定することはできないというべきである。


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