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転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-まとめ

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平成24年10月 6日:初稿
○「転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-過失等」から始まり、「転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-判決理由6」まで9コンテンツに分けて紹介した平成19年4月10日神戸地裁判決(判タ1295号295頁、判時2031号92頁)を私なりにまとめて説明します。実は当事務所でも現在最終的には転送義務違反も問題になる医療過誤事件を扱っており、色々転送義務違反判例を調べている内にこの判例が見つかりました。驚いたのは、
第一 当事者の求める裁判
一 請求の趣旨
主文と同旨

との記述です。
 これは原告の請求額が全額認められたと言うことです。交通事故損害賠償請求の世界では殆どあり得ず、まして、敗訴事例が圧倒的に多いはずの医療過誤損害賠償請求の世界では更にあり得ないと思っていたからです。

○先ず事案概要です。
・B(昭和13年生まれ、64歳)が、平成15年3月30日12時頃,自宅で息苦しくなり、12時15分頃被告病院でA医師の診察を受け、急性心筋梗塞の疑いでがあり,12時45分から点滴を受け、更に13時03分から血管拡張薬の点滴を開始した。
・A医師は、転送を決定し13時50分転送を決定して転送先病院に連絡し、14時15分頃受入了承連絡を受け、14時21分救急車を要請し、14時21分救急車が到着し、14時30分救急隊でストレッチャーに移す際容態が悪化し、心停止に陥り、15時36分死亡が確認された。
・Bは、急性心筋梗塞発症後、心室期外収縮を発症し、これが引き金となって、心室細動を発症し、これを直接の原因として死亡した。


○これについてB相続人である妻と子が次の理由で被告病院に損害賠償請求をしました。
①転送義務違反
急性心筋梗塞は、突然死に至る危険性がある疾患で、最善の治療法は、PCI(経皮的冠動脈再建術)であり、被告病院はPCI実施設備がないので速やかに設備のある病院に転送すべきところ、これを怠った。
②不整脈管理義務違反
急性心筋梗塞を発症した患者は、合併症として、心室性期外収縮及びこれが引き金となって起こる心室細動を発症し死に至る危険があるから、担当医師は、この危険に対処するため、心電図モニター等によって厳重に不整脈を監視し、心室細動が生じた場合電気的除細動をする義務があるところこれを怠った。
①、②を尽くしていればBは救命されたのにこれを怠り死亡に至らしめたのでその損害賠償としてBの慰謝料2500万円と逸失利益約1049万円を相続人として請求する


○これに対し被告病院は以下の理由で損害賠償義務を否認しました。
・B相続人の反対でBの解剖による死因究明が出来ず、Bの死亡原因は特定されていない
・Bが被告病院に赴いた当日は日曜日である上,血液検査を実施した上転送を要請しようとしたのであるから,転送要請まで思いのほか時間がかかったとしても,担当医師の責に帰すことはできないし,不整脈管理義務の懈怠はない。
・仮に速やかに転送措置をとったとしてもBの救命可能性はなく、転送遅れと死亡との間の因果関係はない。


○これに対する判決概要は以下の通りです。
・被告病院のA医師は,心電図検査と問診により,Bには急性心筋梗塞を発症していたと診断することができた
・同病院では,PCII等再灌流療法は実施できないから,早急に近隣の専門病院にAを転送する義務を負う
・血液検査の結果を待つなどして,約70分も転送措置の開始が遅れたことは過失である
・早期に転送されて適切な治療を受ければ,90パーセント程度の確率で生存していたと推認できる
・よってA医師の過失とBの死亡との因果関係が認められる。


○救急医療であっても,診療当時の実践における医療水準に則った医療を行う義務があります(昭和57年3月30日最高裁判決、判タ468号76頁,判時1039号66頁)。従って人的・物的設備の不備等によりその医療を行うことができないときは,それが可能な病院へ転送させるべきで義務があるとされています(菅野耕毅「救急医療に関する法的問題」太田幸夫編『新・裁判実務大系(1)医療過誤訴訟法』434頁参照)。

○医療過誤裁判は、裁判官自身が相当医学知識を積む必要があり、且つ、難しい判断を迫られることが多く通常の訴訟よりズッと労力がかかるため、訴額がそれ程大きくなくても合議制となり3人の裁判官で担当することが多く、私が現在取り扱っている事例もさほど訴額は大きくありませんが合議制です。

○この神戸地裁判決も、判決理由第一で、急性心筋梗塞について裁判所が勉強した知見を相当詳細に披露して、その上で、第二から第四までに、この事案での診療経過や死因について詳細な事実認定をし、更に第五で転送先の受入体制まで詳細に事実認定をし、第六から第七までに過失評価と死亡との因果関係について詳細に説明し、結論として損害賠償額は原告主張通りアッサリと認めています。複数の医師鑑定書も登場し、原告被告間で相当厳しい準備書面の遣り取りがあり、更にA医師自身の法廷証言も取り上げて評価しており、転送義務違反裁判例としては大いに参考になるものです。

以上:2,076文字

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