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転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-判決理由6

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平成24年10月 5日:初稿
○「転送義務違反での請求額全部認容判例紹介-判決理由5」の続きで、ようやく最終回です。



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七 前記過失とB死亡との因果関係 
 前記第二に認定の事実経過によると、被告病院から高砂市民病院に転送要請の電話がされた後、受入れ了承の連絡がされ、実際に救急車が到着するまでの時間が35分間であったことが認められるところ、仮にA医師が本件注意義務を果たし、12時39分ころに、転送措置に着手していたならば、救急車が13時15分ころ、被告病院に到着していたと推認することができる。 

 そして、前記第二の一に認定したとおり、被告病院から高砂市民病院又は神鋼加古川病院まで患者を救急車で搬送し、処置室に運び込まれるまでの時間は、約20分であると認められるから、Bが処置室に運び込まるのは、13時35分ころであると認められる。 

 前記第一の三に認定の医学的知見及び調査嘱託の結果によれば、急性心筋梗塞患者を受け入れた専門病院としては、PCIが実施されるまでの間、CCUにおいて効果的な不整脈管理がされ、致死的不整脈が発生すれば、速やかに除細動などの救急措置が行われたであろうということができる。すなわち、本件注意義務が尽くされていれば、14時25分に心室細動が発生したのに電気的除細動さえもされないという最悪の事態を避けることができたはずである。 

 次に、前記第五に認定の事実によれば、神鋼加古川病院が平成15年2月から4月までの間の休日に他院から急性心筋梗塞患者の転送を受け入れ、PCIを実施した症例(四例)のうち、緊急MRI検査を実施して余計に時間がかかった症例を除き、患者が来院してPCIを実施し退室するまでもっとも長く要したのは、3時間10分であったことが認められ、これら事実によれば、専門病院において、他院から転送を受け入れた場合、患者が来院してから、PCIの処置を完了するまでの時間は、特段の事情がなければ、長くても3時間程度であると推認することができる。 

 これらから、Bが13時35分ころに高砂市民病院又は神鋼加古川病院の処置室に運び込まれていれば、PCIの処置を終えるのは、遅くとも16時35分ころであったとみるのが相当であり、仮にA医師が本件注意義務を果たしていたならば、Bは、11時30分に心筋梗塞発症後、約5時間後である16時35分ころには、PCIの治療を完了していたと推認することができる。 

 前記第一の三に認定の医学的知見によれば、再灌流療法は、発症から再疎通までの時間が短いほど効果が大きく、発症後12時間以内に達成されると有効とされること、特に、発症12時間以内のST波上昇型の心筋梗塞であれば、再灌流療法のよい適応であるとされるから、A医師が本件注意義務を果たしていたならば、Bは、有効な再灌流療法を受けることができたといえる。 

 そして、前記第一の四に認定の医学的知見を総合すれば、急性期再灌流療法が積極的に施行されるようになってからは、病院に到着した急性心筋梗塞患者の死亡率は10パーセント以下であるとみるのが相当である。 

 このようにしてみると、本件注意義務が果たされていたならば、Bは、併発する心室細動で死亡することはなく、無事、再灌流療法(PCI)を受けることができ、90パーセント程度の確率で生存していたと推認することができるから、A医師の本件注意義務の懈怠とBの死亡との間には因果関係が肯定される。 

第八 原告らが賠償を受くべき損害について
一 Bに生じた無形損害
 
 本件にあらわれた一切の事情を斟酌すれば、心筋梗塞に対する効果的な治療を受けられずに死亡したBの無念さを慰藉するための慰藉料の額は、2500万円と認めるのが相当である。 

二 Bの財産的損害(逸失利益) 
(1)前記争いがない事実、《証拠省略》によれば、Bは、死亡時満64歳で、年額285万9702円の厚生年金及び厚生年金基金を受給していた事実が認められる。 

(2)したがって、もし本件事故に遭わなければ、Bは、生きている間、年金を受給することができたのに、本件事故により、その受給を得ることができなくなったものである(統計上、その余命は18・74年と認められる。)。 

(3)そして、その得べかりし年金収入の総額から、生活費を控除し(50パーセント)、中間利息を控除して計算すれば、Bに生じた逸失利益の額は、少なくとも1049万2439円となる。 

三 相続 
 争いのない身分関係によれば、原告X1は、上記1、2のBの合計3549万2439円の損害賠償債権の2分の1(1774万6219円)、その余の原告らは各6分の1(591万5406円)をそれぞれ相続によって承継したものと認められる。 

四 弁護士費用 
 弁論の全趣旨によれば、原告らは、いずれも、上記損害賠償債権の弁済を求めるため、本訴の追行を原告ら訴訟代理人弁護士に有償で委任せざるを得なかったと認められるところ、本件訴訟の内容に照らせば、被告の債務不履行と相当因果関係に立つ弁護士費用の額は、原告X1につき180万円、その余の原告らは各60万円と認めるのが相当である。 

第九 結論 
 以上の次第で、本件請求は、すべて理由があるからこれを認容することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法61条を、仮執行宣言につき同法259条を適用して、主文のとおり判決する。 
 (裁判長裁判官 橋詰均 裁判官 山本正道 宮端謙一) 


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